ザ・ホーンテッド・コレクション 鑑賞

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【地下にあるヴァニラ画廊に降りる階段途中のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

先週の「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio」で銀座を訪れた時、もう一つの展覧会を鑑賞していたんだよね。
それはヴァニラ画廊で開催されている「ザ・ホーンテッド・コレクション -HNコレクション奇妙な書斎-」。
2016年6月の「シリアルキラー展」、その6年後になる2022年7月の「シリアルキラー展2022」で、モノホン(!)の連続殺人鬼、いわゆるシリアルキラーが描いた絵画を鑑賞した画廊だよね。
作品を所持していたのがHN氏というコレクター。
今回は「シリアルキラー展」の範疇に収まらないHN氏のコレクションを展示する企画だという。
どんな作品に出会えるのか期待しちゃうね!(笑)

「シリアルキラー展」は大盛況で、コロナ渦で人数制限されていた会場だったのに、作品鑑賞するために順番待ちする必要があったことを思い出す。
これは2016年の時も同様で、キャプションと作品を見比べようと、あちらこちらで渋滞するんだよね。
ヴァニラ画廊は、かなり小さめの会場なので、少しストレスを感じてしまう。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」は、事前予約なくて当日券のみ販売とのこと。
「シリアルキラー展」のように大混雑もあるかもしれない。

12時の開場時間少し前にヴァニラ画廊に到着。
行列ができているかと思いきや、地下への階段を降りていくと、なんと一番乗りだった。
大混雑の懸念はなくなったので、安心したよ。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHの後ろに4,5人が並んだくらいで、「シリアルキラー展」ほどの人気ではないみたい。
ゆっくり観て回れるのは良いことだね。(笑)

ヴァニラ画廊は撮影禁止なので、今回も別の場所で画像を集めてみたよ!
感想をまとめていこう。

ヴァニラ画廊は会場がAとBに分かれていて、小さめの会場Bから鑑賞してみる。
ここには怪奇・ホラー漫画の原画が展示されていた。
水木しげるをはじめ、花輪和一、古賀新一、楳図かずお、つのだじろうなどの漫画家の作品が並んでいる。
元古本屋だったROCKHURRAHが、ほとんどの漫画家を知っているのはさすが!
壁に展示された漫画の原画の前に、ガラスケースが置いてある。
「わっ!黒死館だっ!」
ROCKHURRAHが驚いて声を出す。
小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」の初版本が展示されていた。
ROCKHURRAHが偏愛する作品なんだよね。
SNAKEPIPEもお勧めされて読んだことを思い出す。
黒死館と呼ばれる屋敷に関係する人は、召使ですら相当な知識人で文化的素養もあり、すべての会話についていかれることに驚いたっけ。(笑)
漫画の展示よりも本に大反応していたROCKHURRAHは、貴重な初版本が欲しかったのかもしれない。
昭和10年、1935年というと約90年前の初版本、一体おいくらなんだろうね?
はっきりした色使いと、アール・デコの影響を受けているような装丁が美しかったよ。

会場Aに移動して、一番最初に目を引いたのはピエール・モリニエの作品。
Wikipediaに「フェティシズムとエロティシズムを表現した官能的な作風」と書かれていて、ザッツ・ライト!(笑)
木炭を使ったような太くて黒い線で、女性を描いた作品が並んでいる。
これがとても小さくて!
近づかないとよく見えないほどだったよ。

写真も展示されていた。
モリニエが尻、足、ストッキングと靴のフェチだということがよく分かる。
倒錯者と敬遠されてしまうのも納得かも。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」では、作品リストがなかったので、タイトルや制作年についての情報がないんだよね。
「シリアルキラー展」では小冊子付きで親切だったのにな。
画家、写真家、人形作家と紹介されているので、モリニエの展覧会で全貌を観てみたいと思ったSNAKEPIPEだよ!

モリニエを鑑賞後、壁づたいに作品を観ていく。
「サーカスコレクション」として、古い時代のサーカス団員を撮影した写真が展示されている。
これはまるで映画「フリークス(原題:Freaks 1932年)」(画像左)や「エレファント・マン(原題:The Elephant Man 1980年)」みたいに、見世物小屋と曲芸などを披露するショーが合体しているサーカス団の写真なんだよね。
すでに衝撃的な映画を鑑賞していたせいか、「サーカスコレクション」に驚くことはなかったなあ。

「ザ・ホーンテッド・コレクション」で最も多く展示されていたのが、映画監督ティム・バートンのドローイングだったよ。
インクで線を引いたあと、水彩で色をつけている作品で、人物や謎の生物(?)が生き生きと描かれている。
ティム・バートン、絵が上手いなあ!
元アニメーターなので、サラサラと描けるのかもね?
作品はネットでも販売されていて、左の作品「On Pins and Needles」は、$8,775(約130万円)とのこと。
これが最も高額だったので載せてみたよ。
HN氏はたくさん購入しているので、お金持ちだよね!

映画監督で絵も描いているといえば!
敬愛するデヴィッド・リンチのリトグラフも展示されていたよ。
リンチ教という宗教あったらとっくに入っているSNAKEPIPEだけど、この作品は初めて観たかも。
右側の顔に斑点があり、左の額には「D.L.」の文字があるね。
リンチの頭文字だ!(笑)
どうやらこれは自画像みたい。
あまり意味は考えなくて良い気がするよ。
そしてこちらもネットで販売されていたようで、お値段$300、日本円で約45,000円だった。
リンチの作品がこんなにお手頃だったと知ってショックを受けたSNAKEPIPEだよ。
一桁間違ってない?

ROCKHURRAHと別に作品を鑑賞していたSNAKEPIPE。
慌てた様子でROCKHURRAHが駆け寄ってくる。
「イレイザー・ヘッドの赤ん坊が展示されているよ!」
えっ、嘘だ、そんなはずはない。
「イレイザー・ヘッド」の赤ん坊(通称スパイク)については、リンチが絶対に口を割らなかったとして有名だからね。
どんな仕掛けになっていたのか、未だに謎のまま。
展示品を観てみると、確かに「あの赤ん坊」によく似ている人形(?)がケースの中に横たわっているけれど、「実物」というキャプションはなかった。
帰宅後調べてみると、赤ん坊のレプリカを手作りして販売しているサイトを発見!
頭部はシリコン製で、注文を受けてから1週間で発送とのこと。
お値段はアメリカからの送料込みで約5万円くらい。
いくらリンチ教信者のSNAKEPIPEでも、赤ん坊のスパイクを可愛がる自信はないなあ。(笑)
HN氏のようなコレクター向けなのかもね?

他にも「羊たちの沈黙(原題:The Silence of the Lambs 1991年)」に出てきた髑髏の柄が入ったメンガタスズメの標本や、「シリアルキラー展」でも紹介されていたクレイ兄弟が描いた絵などの展示もあった。
クレイ兄弟の絵は、あの時と同じ作品だったのかどうかは覚えていないけどね。(笑)
全体的に「ホーンテッド(恐怖や不気味さ)」とタイトルにするほどの内容ではなかったように感じた。
期待していただけに、落胆も大きい。
リンチ関連の作品がなかったら、かなり不満だったかも。
行って観たから言える感想だ、ということにしておこう。(笑)

YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio 鑑賞

20240218 03
【gggの旗を撮影。よく晴れた冬の空】

SNAKEPIPE WROTE:

2023年2月に「横尾忠則 銀座番外地」を鑑賞して以来、約半年ぶりにギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称ggg)を訪れたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
第400回の企画展として「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio ヨシロットン 拡張するグラフィック」が開催されているんだよね。

ヨシロットン、という名前は初耳だけれど「ロットン」の文字に反応しちゃったわけ。
セックス・ピストルズのヴォーカル、ジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)から取られていることが明白だからね!
まさかアメリカの映画評論サイト「Rotten Tomatoes」からヒントを得ていたりして?(笑)
展覧会の案内文をみてみよう。

「R.G.B.」は光で色を表現する際の「3原色」。
パンク・ロックはたった「3コード」で世界を変えた

やっぱりパンクのほうだったね!(笑)
YOSHIROTTENについて調べてみようか。
1983年生まれの魚座。
2015年にクリエイティブ・スタジオを設立。
ファインアートと商業美術、デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、複数の領域を往来するアーティスト(YOSHIROTTENのサイトより)だという。
一体どんな作品なんだろう?

今年の2月は雪が降ったかと思うと夏日に迫る気温の高さだったり、不安定だよね。
出かけた日は予報通りの晴れ!
風が強いから寒かったけれど、お出かけ日和だったよ。

gggはいつでも撮影許可してくれるありがたい場所のうちのひとつ。
念のため撮影について尋ねると、写真も動画もオッケーだけど、風景として撮って欲しいとのこと。
一枚だけをアップで撮影しないで、と理解したよ!

壁一面にモニターが並んでいる。
それぞれ別のスクリーンセーバーが流れていて圧巻の光景!
これは「Signal RGB」という作品で、「RGB PUNK」シリーズ最初の作品だという。
「どれか一つを選ぶなら?」
ROCKHURRAHから質問され、じっくり観察する。
出した結論は「60台という集合体だからこその迫力」だということ。(当たり前?)
一つには絞れなかったよ。(笑)

レトロな雰囲気の作品が展示されている。
わざと昔っぽいイメージにしていることは明白だね。
「RGB Machine」という作品で、鑑賞者が操作ができることを帰宅後に知ったSNAKEPIPE。
自動的に画面が切り替わっていたので、画像を映すための装置だと思っていたんだよね。
ボタンを押すとどんなことが起こったのか、体験しなかったのが悔やまれる。

「RGB Blueprint Series」という作品は、スクリーンセーバーの作品をプリントしたものらしい。
近寄って観ると、ところどころがシールみたいに盛り上がっていたので、てっきりコラージュだと勘違いしていたよ。
最近のアーティストは切り貼りなんかしないのか。
デジタルだもんね。(笑)

黒い壁に発光するように展示された1階から地下会場に移動する。
途中の階段はオレンジ色の光に包まれていて異空間のよう。
とてもキレイ!と見惚れながら降りていたSNAKEPIPEは、足を踏み外し転びそうになる。
たまたますれ違ったgggのスタッフの女性の腕をつかみ、コケずに済んだよ。
スタッフの方、助けてくれてありがとう!(笑)

地下は眩しいくらいの光の空間が広がっていた。
大小様々なディスプレイが並び、YOSHIROTTENの過去10年に及ぶ「全仕事」が映し出されている。
まるでパラパラ漫画のように、目まぐるしく画面が変わっていく。
「さっきの瞬間が良かったのに」
とシャッターチャンスを待っていても、同じ組み合わせにはならないんだよね。
動画で記録すれば良いのに、写真にこだわってしまうところがSNAKEPIPEらしいけど。(笑)

YOSHIROTTENの作品を観て、2021年3月に鑑賞した「佐藤可士和展」を思い出した。
有名な企業がこぞって起用するデザイナーというところに共通点があるからね。
グラフィック・デザインやディレクションという仕事は、キャプションがついて誰の作品なのかを初めて知ることが多いはず。
今回初めてYOSHIROTTENの作品を鑑賞したと思っているけれど、どこかで目にしていた可能性もあるよね。

YOSHIROTTENのカラフルな作品を満喫できたよ。
入場料フリーで素晴らしい企画を見せてくれるgggに感謝だね!

SNAKEPIPE MUSEUM #69 Benjamin Mackey

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【ツイン・ピークスのタロットカードが秀逸!】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEが仮想美術館に所蔵したいと思う作品を紹介するカテゴリー「SNAKEPIPE MUSEUM」の更新は久しぶりになるね。
今回は2017年9月に書いた「ビザール・TWIN PEAKS選手権!27回戦」に登場したBenjamin Mackeyを特集しよう!
読み方はベンジャミン・マッキーで良いのかな?
一番上に画像を載せたツイン・ピークスのタロットカードを作成したイラストレーターなんだよね。

ツイン・ピークスをこよなく愛していることが分かる、素晴らしいタロットカードだよ!

これ、本当に欲しいなあ!

こんな文章を載せているSNAKEPIPE。
タロットカード以外の作品を調べてみると、ベンジャミン・マッキーはSNAKEPIPE同様デヴィッド・リンチが大好きなことが分かる。
リンチをモデルにした作品に愛があるよね。(笑)
「ブルー・ベルベット」「イレイザー・ヘッド」や「ワイルド・アット・ハート」などほとんど全てのリンチの映画作品をポスターにしているんだよね。
恐らく「リンチ映画祭」のような企画のために描かれたみたい。
写実的というよりは、おどけた雰囲気の作品なので、ちょっともったいない感じがする。
ベンジャミン・マッキーだったら、もう少しスパイスの効いたポスターが作れたように思うけど?

この「ツイン・ピークス」のイラストは素晴らしいよね!
カイル・マクラクラン演じるクーパー捜査官を中央にして、シンメトリー構図になっている。
赤とブルーで2分割されているところがポイント!
ツイン・ピークスでは「ホワイト・ロッジ」と「ブラック・ロッジ」のように2つの世界があることが前提になっていたことを効果的に表現しているんだろうね。
テーブルの上に置かれたコーヒーとドーナツ、チェリーパイもファンにはたまらないよ!(笑)

「ピンク・フラミンゴ」の映画監督ジョン・ウォーターズを描いた作品もあったよ。
囚人服を着たジョン・ウォーターズが中央に立っているね。
手前にフラミンゴ、その後方にはディバインが見える。
そして右後方には映画「マルチプル・マニアックス」に出てきた巨大ザリガニ!
ベンジャミン・マッキーが好む題材は、SNAKEPIPEの嗜好と似てるみたいで嬉しいね。(笑)
ジョン・ウォーターズの映画は大昔に観たきりになっているので、再鑑賞したいよ。

カルト映画の代表作「ロッキー・ホラー・ショー」も描いているね。
通常は主役のティム・カリーを中心にすることが多いのに、ベンジャミン・マッキーはメガネの男を手前にしているところが珍しい。
何か特別な思い入れがあるのかも。(笑)
SNAKEPIPEは、強烈な個性があるティム・カリーがポスターになっているほうが好みだけどね!
色合いがとても美しい作品なので、ちょっと残念。

2007年4月に書いた「インダスとリアル(意味不明)」に、SNAKEPIPEが装飾を施したトイレの画像が載っている。
ポストカードを壁に貼って、小さな美術館のようにしていたんだよね!
その中の1枚に1968年のアメリカ映画「The Mini-Skirt Mob」(画像左)があったことを思い出す。
ベンジャミン・マッキーは、そのポスターのパロディ版「MONDO MONDAYS」を描いているんだね。
骸骨のポーズはほとんど同じだけれど、細かい点が描き直されていて「間違い探し」をするように見比べるのも楽しい!

大友克洋の「アキラ」もパロディになっているよ!
こちらも「Mini-Skirt〜」同様、構図は踏襲しながらも描き直されているんだね。
血のスープや人肉ミンチを作るシーンなので、ホラー映画のためのポスターだったのかもしれないね?
結構グロい。(笑)
ベンジャミン・マッキー日本文化にも興味があるようで、ウルトラマンの怪獣もシリーズとして描いているよ。
親近感が湧くね!

2022年1月に国立映画アーカイブで鑑賞した「MONDO 映画ポスターアートの最前線」も、似た傾向の作品が展示されていたね。
現役のイラストレーターが独自視点で切り取ったシーンを描いていて、興味深い展覧会だった。
もしかしたらベンジャミン・マッキーも展示されていたかもしれない、と調べてみたけれど名前はなかったよ。

雑誌や映画のフリーランス・イラストレーターとして活動しているベンジャミン・マッキー。
作成年ごとに作品をアップしているようだけど、2015年から観ていくと、どんどん失速しているように感じる。
ベンジャミン・マッキーには、トップに載せたツイン・ピークスのタロットで見せてくれたようなセンスがある作品を描き続けて欲しいと思う。
やっぱりあのタロット、買うべきだったなあ。(笑)

「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 鑑賞

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【松濤美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「この展覧会が気になる」
ROCKHURRAHから誘われたのは渋谷区立松濤美術館で開催されている『「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄』だった。
かつて写真の勉強をしていたSNAKEPIPEには聞き覚えのある写真家の名前が並んでいる。
そしてタイトルに「前衛」という単語があるじゃないの!
この言葉に弱いんだよね(笑)
松濤美術館は、2023年5月の「エドワード・ゴーリーを巡る旅」以来になるよ。
雨から雪になるかもという寒い日、ROCKHURRAHと一緒に出かけたのである。

残念ながら松濤美術館は展示作品の撮影が禁止されているんだよね。
「ここだけはオッケー」みたいに指定された場合のみ、許可されていたことがあったっけ。
『前衛」写真の精神:なんでもないものの変容』は、2023年4月の千葉市美術館からスタートして新潟、富山と巡回し、最後に松濤美術館での開催になっているらしい。
他の美術館でも撮影禁止だったのかな?

渋谷に着くと、予報通り雨が降ってきた。
松濤美術館までは道のりが長いので、ポチポチだけど傘をさして歩くことにする。
渋谷からは徒歩15分、井の頭線神泉駅からは徒歩5分。
次回は駅を変えてみるか?などと話しているうちに到着。

会期終了が近いせいか、会場内にお客さんは少なかった。
以前は展示作品を観るために、列ができていたことを思い出す。
今回はストレスなく鑑賞できるね!

展覧会は年代順に3つの章で構成されていた。
「第1章 1930-40年代 瀧口修造と阿部展也 前衛写真の台頭と衰退」では、瀧口修造がシュルレアリスムについて紹介する文章が載った雑誌が展示されていたよ。
瀧口修造とは、近代日本を代表する美術評論家、詩人、画家であり、日本でシュルレアリスムを最初に紹介した人。
展覧会の説明では「瀧口修造がダリの家を訪問したら偶然マルセル・デュシャンに会った」と書いてあったよ。
すごいエピソードだね。(笑)

瀧口修造がピカソの「泣く女」やマン・レイのモデルとして有名なドラ・マールについて書いていた時に「ドオラ・マアァル」(うろ覚え)のように記載されていて面白かった。
画像は、瀧口修造の詩と阿部芳文のシュールな絵とのコラボで1937年の作品ね。
鉛筆で描かれた不思議な形の絵がとても気に入ったよ。
阿部芳文(展也)という画家を知ることができて良かったね。

下郷羊雄の「超現実主義写真集メセム属」も、強く印象に残ったよ。
これは多肉植物をオブジェとして撮影した作品集だという。
多肉植物と聞くと「植物男子 ベランダー」の「多肉 愛の劇場」を思い出してしまうね。(笑)
1940年に200部限定の私家版として制作されたという「メセム属」、多肉植物のフォルム自体のユニークさはもちろんだけど、コラージュした作品などもあって興味深い!
下郷羊雄の名前も初めて知ったよ。
勉強になるね!

1930年代に大阪で活動していた小石清には以前から興味があったSNAKEPIPEは2点だけでも、作品が展示されていることが嬉しかった。
展覧会は前期と後期で展示作品の入れ替えがあったらしいので、左の画像「疲労感」は鑑賞できなかったよ。
これは1936年の作品で、まさに「前衛」だよね!
Photoshopだったらレイヤーで作業できるだろうけど、アナログで制作するのは至難の業だったはず。
小石清の作品をもっと観てみたいよ。

「第2章 1950-70年代 大辻清司 前衛写真の復活と転調」は大辻清司が主役だったよ。
大辻清司とは写真家であり、写真教育者としても有名な人物だという。
大御所なので名前は知っていたけれど、写真作品をじっくり観たことなかったかも。
1953年の作品「アサヒグラフ APNのためのカット」がとてもカッコ良かった!
Asahi Picture Newsの3つの頭文字をあしらったオブジェを造形作家が構成し、大辻清司が撮影した作品が毎号コラム欄に発表されていたんだとか。
55回続いたというから人気があったんだろうね。
それにしても「APN」を「あぷん」って読んでたという記事があったけど、ほんとかな?(笑)

1957年の作品「航空機」もモロに「前衛」!
光った白と影の黒をクローズアップで撮影している。
遠くからだとまるで岡本太郎の作品のようにも見えるよ。
ズバッと切り取った大胆さもシビレる。
モノクロ写真の魅力に溢れてるよね。
今まであまりよく知らなかった大辻清司の作品を鑑賞できて良かったよ!

「第3章 1960-80年代 牛腸茂雄 前衛写真のゆくえ」は、大辻清司から写真を学んだ高梨豊と牛腸茂雄の作品が展示されていた。
SNAKEPIPEは写真家だった父親から、この二人の写真家の話を聞いていたことを思い出したよ。
「すごい写真家だ」と褒め称えていたっけ。
スナップショットや人物写真を目指している人にとっては「垂涎の的」となる作品を発表している写真家ということになるのかな。
画像は牛腸茂雄の作品。
「あの世」と「この世」の境界のようで、吸い込まれそうな一枚。
遠くの光に向かって、輪廻のチャンスを逃すまい、と走っているように感じてしまう。
いつかは自分も経験することを見せられたような怖い写真だなと思ってしまった。
想像力を掻き立てられる作品だよね。

「前衛」という言葉に惹かれて出かけた展覧会、新しい発見もあり鑑賞できて良かったよ!
1930年代の日本にも印象的な作品がたくさんあったね。
誘ってくれたROCKHURRAHに感謝だよ!