テート美術館展 鑑賞

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【いつも通り国立新美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2023年8月に鑑賞した「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」の別会場で開催されていたのが「テート美術館展」で、「この夏に行われるビッグ・イベントを一日で消化してしまうのも惜しい」という理由により、会期が長い「テート美術館展」を先延ばしにしたんだよね!

9月になったら少しは涼しくなるだろうという予想は裏切られてしまった。
新居でのペンキや漆喰を塗り終えてから、六本木に向かう。
こんな体力が残っているうちは、まだまだ大丈夫だね。(笑)
気温が下がらず、暑さが残っている。
7月から開催している「テート美術館展」の客足は落ち着いているかと思いきや、チケット売り場には列ができていたよ。
「蔡國強展」に来た先月のほうが空いてたのかもしれない。

「テート美術館展」は、「テート・ブリテン」「テート・モダン」「テート・リバプール」「テート・セント・アイヴス」という4つのイギリス国立美術館が所蔵している7万7千点以上の作品から、「光」をテーマにした120点を観ることができるという。
撮影は一部作品を除いてオッケーとのこと。
気になる作品を撮らせてもらおう!(笑)

展覧会は7つのチャプターで構成されていた。
「Chapter1 精神的で崇高な光」で気になったのは、ウィリアム・ブレイクの作品だよ。
2011年12月に上野の国立西洋美術館で版画展を鑑賞したっけ。
今から12年も前のこととはびっくり!(笑)
今回展示されていたのは「アダムを裁く神」で、1795年の作品だって。
炎をバックにした神の姿が印象的だね。

ターナー賞でおなじみのジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの作品も4点展示されていたよ。
ほとんど抽象画のようにみえてしまう「湖に沈む夕日」は、1840年頃の作品だという。
淡い色使いと、クローズアップにした構図が特徴的。
心象絵画みたい、という感想を持ったSNAKEPIPE。
イギリス在住のアーティストに贈られるターナー賞で名前が有名だけど、ターナー自身の作品は、ほとんど知らなかったので、今回鑑賞できて良かった。

「テート美術館展」は、予想以上にお客さんが多く、展示作品の前を列になって順番に鑑賞していく人がほとんどだった。
いわゆる印象派のような落ち着いた作品は飛ばして、興味がある現代アートに近い方向まで「流し見」することにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
牛歩が苦手なんだよね!
「Chapter5 色と光」で足を止めたのがペー・ホワイトのインスタレーション「ぶら下がったかけら」。
2004年の作品だという。
色とりどりの「かけら」がキレイで、影の形も面白かったよ。

モホリ=ナギやカンディンスキーをはじめとするバウハウスに関連する作品すべてが撮影不可!
ハナヤ勘兵衛、ルイジ・ヴェロネージ 、ケペシュ・ジェルジらのフォトグラムや実験写真が素晴らしかったのに残念だよ。
マーク・ロスコも駄目だった中で、オッケーになっていたのが画像を載せたリヒター。
タイトルは相変わらず「アブストラクト・ペインティング」だね。(笑)
色合いと雰囲気が2022年7月に「ゲルハルト・リヒター展」で鑑賞した「ビルケナウ」に似ていたよ。
暗い色調に惹かれるんだよね。

左はスティーヴン・ウィラッツの「ヴィジュアル・フィールド・オートマティック No.1」で1964年の作品。
長方形の四隅に配置された赤、青、緑、黄色がランダムに発光する仕組み。
少し待って3色が光るところを撮影したよ。(笑)
コンピューター・アートの先駆け的な作品になるのかな?
右はデイヴィッド・バチェラーの「ブリック・レーンのスペクトル 2」で、2007年の作品だという。
高さが7m以上あるので、全体を鑑賞するためには、かなり後ろに下がる必要があるよ。
意味が分からなくても、印象に残る作品だね!

観ているとトリップしそうになったのがピーター・セッジリーの「カラーサイクル III 」。
動画撮影は禁止だったので、Youtubeの映像を載せようか。

頭の中がぐるぐるしてきちゃうよね。
1970年の作品なので、時代的にもサイケデリック・アート全盛だったのかも?

鑑賞するのを楽しみにしていたジェームズ・タレルの「レイマー、ブルー」は撮影禁止!
こちらもYoutubeの動画にしてみよう。

陳腐な言い方だけど、SFの世界に迷い込んだような、もしくはあの世に行ったような感覚に陥ってしまう。
隣にROCKHURRAHがいなかったら、自分の存在すら疑いたくなるほど。
なんとも言えない崇高で精神的な空気感が漂う。
こんな作品を1969年に発表しているタレル、恐るべし!
もっとタレルの作品観たいな。

2020年9月に「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を鑑賞したことを思い出した。
会場が大混雑して、チケットを購入するための行列に並んだっけ。
オラファー・エリアソンは、非常に人気があるアーティストで、今回の展示も大盛況だったよ。
恐らく鑑賞した人の全員が「キレイ」と感じて、撮影したくなる作品なんだよね。
毒気がある作品を好むSNAKEPIPEには、少し物足りないかもしれない。

会場を出て、ミュージアム・ショップに向かう。
図録とグッズをチェックするために、必ず展覧会後には立ち寄ることにしてるんだよね。
ショップに入った瞬間、SNAKEPIPEの目を釘付けにしたのが、謎のポーチ。
なんだこれは!と衝撃を受けてしまった。
説明を読むと、どうやらウィリアム・ブレイクの「善の天使と悪の天使」をモチーフにしているという。
今まで色んなグッズを目にしてきたけれど、こんなにヘンテコなのは初めてだよ!(笑)
これは絶対に欲しいと手にしていたら、ROCKHURRAHがプレゼントしてくれると言う。
ありがとう、ROCKHURRAH!本当に嬉しいよ!(笑)
レジを待つ行列に並び、他の人が何を買うのか見ていたけれど、このポーチを買う人は一人もいなかったよ。

念願だった「テート美術館展」に行かれて良かった!
イギリスの本家テートは、一体どんな雰囲気なんだろうね。
テート・モダンは入場無料だって。
一度行ってみたいよ!

蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる 鑑賞

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【国立新美術館の看板を撮影。いつも通り!】

SNAKEPIPE WROTE:

蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」の開催を知ったのは、国立新美術館の別会場で開催されている「テート美術館展」を調べていたからだった。
どちらの展覧会も非常に楽しみ!
本当は2つを同時に鑑賞しようかと思っていたけれど、体力が持つかどうか不安。(笑)
この夏に行われるビッグ・イベントを一日で消化してしまうのも惜しい。
そのためまずは会期が短い蔡國強展を先に鑑賞することにしたのである。

蔡國強といえば、2015年10月に横浜美術館で開催された「蔡國強展 帰去来」が記憶に残っているよ。
あの時に感じたインパクトは今でも強く残っている。
8年も前だったとは、びっくりだね。(笑)

Netflixで鑑賞できる「空のはしご」という蔡國強のドキュメンタリーも観たっけ。
構想から20年、空へと続く燃えるはしごを架けるプロジェクトなんだよね。
蔡國強の作品への情熱のみならず、バックグラウンドや人柄にも迫り、見ごたえがあったよ。
9年間日本に住んでいた蔡國強、日本語が堪能なんだよね!
親近感が湧くよ。(笑)

今回はどんな展示がされているんだろう?
ワクワクしちゃうよね!

夕方になっても強い日差しが照りつける六本木に、ROCKHURRAHと向かう。
コロナ真っ盛りの頃にはオンライン予約で日時指定が必須だったはずなのに、今はもうオンラインでチケットを購入するだけのサービスになっていた。
オンラインでも直接窓口で購入してもチケットの金額は同じなんだよね。
今回は窓口で購入することにした。

蔡國強展は6月29日から始まっていたので、少し落ち着いた頃じゃないかと見込んだSNAKEPIPEの予想はほぼ当たったかも。
会場が広いせいもあるけれど、苦痛を感じることなく鑑賞することができた。
そして全作品、動画以外は撮影オッケー!
蔡國強の太っ腹な対応に感謝だね。(笑)

展覧会は5つのチャプターで構成されていたようだけど、広い空間に決まった順路はなくて、好きなように歩いて鑑賞することができた。
そのため特に構成を気にせず感想を書いていきたいと思う。
入り口近くに、初期の作品が展示されていたよ。
1985年の「地球はわたしたちの共同の家」は、蔡國強には珍しい油彩画なんだよね。
フランシス・ベーコンの「トリプティク(三幅対)」みたいに、3枚でワンセットの作品。
一番右側の赤い部分は何を意味しているんだろう?

日本の現代美術館が所蔵しているという「胎動II:外星人のためのプロジェクト No. 9」は1991年の作品。
展覧会のタイトル通り、宇宙やビッグバンを思わせる迫力だよね!
中央に、まるで即身仏を思わせる白い人影が見える。
そして右側に、設計図のようなメモ書きが残っているのが面白い。
「こうやって火薬を置くこと」みたいな感じなのかな?(笑)
横幅が6mを超える大型作品なので、遠ざかってかなり後方からじゃないと全体像を把握できないよ。

「闇に帰る」(画像左)と「ノンブランド・非品牌 5」(画像右)は、ガラスと鏡を使用した2019年以降の作品だよ。
砂で曼荼羅を描き、爆破させた「闇に帰る」は、隣に動画が展示されていた。
一度作ってから壊す、という行為がアートなんだね。
どちらの作品も色合いが美しくて、とても気に入ったよ!

2020年の「銀河で氷戯」は横幅9mを超える大型作品で、一枚には収まりきらなかったよ。
ROCKHURRAHがパノラマで撮影してくれた。
ぐるぐるした渦巻きに飲み込まれそうで、めまいがしたよ!
赤い色と流線が、とても中国的に感じる。
任天堂の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」で、空にドラゴンが舞っている時に流れる音楽が似合いそう。(笑)
人影のように見える白色は、宇宙を漂う魂みたいに見えてくるね。

「cAI™ の受胎告知」は2023年の作品だという。
ガラスと鏡を使った火薬ドローイングの最新作になるんだね!
最初に載せた1991年の「胎動II」から約30年。
作品が洗練されて、色合いや爆破痕の美しさが際立っているよ。
屏風のように展示された作品が他にも数点あって、どの作品も素晴らしいの。
欲しくなってしまったよ。(笑)
蔡國強が進化し続けていることがよく分かるよね!

会場の半分ほどの広さを使って展示されていたのが「未知との遭遇」と題されたインスタレーションだった。
「宇宙にまつわる古今東西のさまざまなイメージをLEDで表現した」という説明があったよ。
くるくると回転したり、LEDの光が七色に変化していく。
タイトルにちなんだモチーフは、特に新鮮味がなく、蔡國強らしさを感じることはできなかったのが残念。

大きな会場から少し外れた場所に「蔡國強といわき」という別会場が設けられていた。
1986年から9年間、日本で生活していた蔡國強にとって、第二のふるさとと呼ぶのが福島県いわき市なんだとか。
2023年6月に、ファッション・ブランドであるイヴ・サンローランの協力を得て、いわきプロジェクト「満天の桜が咲く日」を実行したという。
この映像が素晴らしいの!

Netflixで観た「空のはしご」も感動的だったけれど、浜辺に咲く桜にも驚いたよ。
今まで観たことがない風景を現実化してくれるイリュージョニスト!
構想しているけれど、未だに実現していないプロジェクトが100以上あるという。
これから先に、どんな景色を見せてもらえるのか楽しみだね!

ワールド・クラスルーム 鑑賞

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【展覧会入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

7月5日はROCKHURRAHの誕生日。
おめでとう、ROCKHURRAH!(笑)
ここ数年、誕生日と休日が重なることが少なかったので、今年は休んでお祝いすることにしたよ!
森美術館で開催されている「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」を観に行くことにする。
NHKで放送している「日曜美術館」でも紹介されていたので、どんな作品が展示されているのかある程度知っていたんだよね。
テレビで紹介された作品だけではないので、実物を観てみることにした。
天気の良い暑い日、ROCKHURRAHと六本木に向かう。

前回SNAKEPIPEが森美術館を訪れたのは、2022年3月の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」以来、ROCKHURRAHに至っては2019年12月の「未来と芸術展」からおよそ3年半ぶりの訪問になるんだね。
開館と同時刻に予約していたのにも関わらず、エレベーターを待つお客さんでいっぱい!
こんなに人が多いのかと驚いていたら、どうやら別会場で開催されているディズニー・アニメーションの来場者がほとんどで安心する。
2018年3月に鑑賞した「レアンドロ・エルリッヒ展」で、チケットを購入するまでに約40分程度並んだ苦い経験があったからね。
コロナの影響で、チケット予約制度が確立したのは喜ばしい。
安心感があるからね!

入場すると最初に展示されていたのは、ジョセフ・コスースの「1つと3つのシャベル」。
この作品は撮影禁止だったけれど、テレビでは紹介されていたんだよね。(笑)
同様にヨーゼフ・ボイスが1984年に東京藝術大学で講義をした時の黒板も撮影禁止。
こちらも日曜美術館で説明があった作品だったので、不思議に感じてしまう。
公共放送と一般レベルの撮影の違いってなんだろうね?

撮影オッケーだった作品の感想をまとめてみよう。
展覧会は「国語・算数・理科・社会・哲学・音楽・体育・総合」で区切られていたよ。
かなり「こじつけ」っぽかったけど、面白い試みだよね。(笑)

森村泰昌の作品は「社会」に分類されていた。
画像上は1989年の「肖像(双子)」で、下は2018年の「モデルヌ・オランピア2018」。
マネの「オランピア」をモチーフにした作品を、更にセルフ・カヴァー(?)したということになるんだね。
もう森村さんに何も言うことはありません!
どんどん好きなこと、やっちゃってください!(笑)
楽しみに待ってます!

2009年に森美術館で開催された「アイ・ウェイウェイ展」に行かなかったことを今でも後悔しているSNAKEPIPE。
当時は「中国の現代アーティスト」と聞いても、あまりピンと来なかったんだよね。
「漢時代の壷を落とす」は3枚の連続写真で構成された作品。
漢時代とは前漢と後漢の総称らしく、紀元前206年から紀元後220年までの中国王朝を指すという。
手前も貴重な壺らしいんだけど、「コカ・コーラ」のロゴが描かれていて、社会的なメッセージを投げかけているんだろうね。

パンクロック・スゥラップの作品は、どうやら2017年9月の「サンシャワー:東南アジアの現代美術展」で鑑賞していたSNAKEPIPE。
作品リストに説明がされていたので、当時撮影した画像を確認してみたら、撮影していたことが判明。
「この作品面白いね」などとROCKHURRAHに話かけていたけれど、2017年のことを失念していたよ。
パンクロック・スゥラップはPUNK ROCKではなくPangrokで、多様なメンバーで構成されたマレーシアのコミュニティだという。
「どうやら3つの国家の統治は簡単にはいかなそうだ」というタイトルの作品は、マレーシア、フィリピン、インドネシア3国の連合体に関しているらしい。
社会派アート集団なんだね。

「Lime Works」から大ファンになった畠山直哉の作品も展示されていたよ。
2011年10月に東京都写真美術館で開催された「畠山直哉展 Natural Stories」以来、まとまった展示を鑑賞するのは久しぶりかもしれないと思っていたら、2017年の「ヨコハマトリエンナーレ」でも作品を鑑賞していたことが分かった。
記憶力が低いなあ。(笑)
「陸前高田シリーズ」は、静謐で彼方が霞み、儚い印象を受ける作品だった。
撮影地を知らないと、日本ではない場所のように見えるスタイリッシュさは健在だね!

青山悟の作品は、「六本木クロッシング2010」「ヨコハマトリエンナーレ2017」でも鑑賞したね。
工業用ミシンでミッチリと刺繍された作品は、インパクトがあるよ。
室内を暗転させ、ポッカリと浮かび上がる展示方法は効果的だったね。
久しぶりに観たけれど、やっぱりとても好きな作品群だよ!
ウチにある工業用ミシンでも作成できるんだろうか?(笑)

今回の展覧会で最も驚いたのがアラヤー・ラートチャムルンスックのビデオ作品だったよ。
「授業」というタイトルで、教授としてアラヤー本人が出演し、引き取り手のない6体の遺体に死についての講義をしている。
ブラック過ぎるブラック・ジョークだよね!
アラヤーの経歴を調べると、「タイのシラパコーン大学で版画を学び、ドイツのブラウンシュヴァイク美術大学に留学し修士号を取得。その後、30年にわたりチェンマイ大学で教鞭をとる(森美術館より)」というから、驚いてしまう。
アラヤーも「サンシャワー展」に出品していたらしいけど、ビデオ作品は最後まで鑑賞することが少ないので記憶に残りにくいよね。
今回の作品はバッチリ覚えたよ!(笑)

宮島達男の作品は見間違うことがないよね!
少し離れて鑑賞すると、床に反射した光まで含めて美しい赤色を堪能できる。
画像は引いた状態(上)とアップ(下)を2枚つなげているよ。
上部は、まるでマーク・ロスコみたいだね!
近づくと、無数の数字が並んでいる。
LEDの一つ一つが生命を表し、9から1へとスピードを変えてカウントしているという。
0は死を意味し暗転するんだとか。
そしてまた9からスタートするというので、輪廻転生なんだね。
デジタルと仏教的な思想が融合した作品、素晴らしい!

杉本博司の「観念の形」シリーズは初めて鑑賞する作品だよ。
三次関数の数式を立体化した小さな模型を撮影したんだとか。
展示された作品の横に書かれていた数式を解くと、あの形になるんだろうね。
建築家がイメージする世界を肖像写真として作品化したという解説を読んだよ。
説明を受けなくてもカッコ良い作品群だけど、説明を受けて更に魅力が増したね!(笑)

2022年7月にミヅマアートギャラリーで開催された「くぼみに眠る海」の宮永愛子も展示されていたよ。
感想をまとめたブログで「全体的にロマンチックな少女趣味だったため、
SNAKEPIPEは少し居心地が悪くなった」と書いている。
今回の展示は全てナフタリンで作成された靴で、可愛らしい作品だったよ。
やっぱりSNAKEPIPEには向いてないかも。(笑)

福岡の太宰府天満宮に所蔵されているという田島美加の作品。
背面からのライトにより、淡い色彩が浮かび上がり神秘的だったよ。
それはまるで原始の記憶を呼び起こすようなイメージ。
夕暮れ時や朝日が昇る空を見ていた遠い祖先を連想してしまう。
田島美加は、ロサンゼルス生まれの日本人だという。
アメリカに生まれ育ったアーティストの作品をもっと観てみたいね!

ヤン・ヘギュの「ソニック・ハイブリッド」は、とてもユニークな作品だった。
まるで子供が描いたロボットみたい。
鑑賞した時は静止していたけれど、どうやら動くみたいだね。
画像左の緑と紫の作品は「移り住む、オオタケにならって」という副題が付いている。
オオタケとは、大竹伸朗ではなく大竹富江というアーティストのことだって。
背景も含めてカラフルで楽しい空間だったよ!

ヤコブ・キルケゴールの「永遠の雲」は、薄衣のようなスクリーンに繰り返し雲が映し出されるビデオ作品だったよ。
ベンチに座って鑑賞してみる。
空っぽの空間に浮かぶ雲は、ゆったりしていて観続けると意識が飛びそうになる。
重低音のサウンドも含めての作品なんだけど、SNAKEPIPEの好みとしては音がないほうが良かったかも。
調べてみるとヤコブ・キルケゴールは、サウンドと映像のアーティストなんだとか。
音がないほうが好きと言ってごめんなさい!(笑)

「ワールド・クラスルーム」は全体的に物足りない展覧会だったかも。
ワールドと銘打ってる割には、アジア中心だったし。
今まで全く知らなかった作品に興奮することが少なかったからね。
前述したように「こじつけ」感が強いな、というのが正直なところ。
次の展覧会に期待だね!(笑)

ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画 鑑賞

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【太田記念美術館前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

太田記念美術館で開催されている「ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画」が気になる、とROCKHURRAHが言う。
フランス人の浮世絵ってどういうことだろうね?
ポール・ジャクレーという名前も初めて聞くよ。
まずは経歴を調べてみよう。

1896 パリに生まれる
1899 3歳の時に来日
1907 若礼(ジャクレー)という号で日本画を学ぶ
1929- 毎年南洋諸島に滞在
1934 若礼版画研究所を設立
1945 長野県軽井沢に疎開
1960 糖尿病により死去

明治29年にジャクレーの父親がフランス語の教師として来日して、その後母親と一緒に来日してるんだね。
一時フランスに帰国したようだけど、生涯を日本で過ごしたフランス人なんだって。
日本語はもちろんのこと、書道や音楽、ダンスなどの日本文化を習い、浮世絵と同じ技法で木版画を制作したという。
ジャクレーが着物姿でポーズを取っている画像を見ると、日本文化に慣れ親しんでいる様子がよく分かるよね!
フランス人が手掛けた浮世絵、確かに気になるよ。

6月なのに青空が広がる暑い日、ROCKHURRAHと一緒に原宿に向かう。
表参道駅は先月出かけたけれど、JRの原宿駅を使うのは本当に久しぶりかも。
2人とも若い頃から馴染んでいる場所なので、全く迷わずに太田記念美術館に到着。(笑)
早速会場の中へ。
そこまで多くはなかったけれど、そこそこお客さんが入っていた。
一人で来ている人がほとんどだったので、静かに鑑賞することができたのが良かったよ!
作品の感想をまとめていこう。
太田記念美術館では撮影が禁止されていて残念だった。
載せた画像はSNAKEPIPEの手によるものではないので、ご了承ください!

作品を目にした途端「キレイ!」と感嘆の声が出る。
南方の女性を描いた画家といえばゴーギャンが有名だよね。
ありのままの、野性味溢れる生命体として被写体を捉えたゴーギャンに対して、ジャクレーの作品には優美さが漂う。
浮世絵の大首絵みたいに、人物を大きく描いて背景には手を加えていないんだよね。
なんとも言えない中間色の美しさ。
版画作品でこんな色を観たのは初めてかも。

横座りしている女性が眺めているのは極楽鳥だという。
赤いターバンの布と鳥が呼応していて、見事な構図。
優雅な極楽鳥を間近で鑑賞できるなんて、羨ましいね!
上の女性たちも同様だけど、身につけている服の模様が細かく表現されていて、異国情緒をより一層感じさせるよ。
昭和初期に毎年海外を訪れ、水彩画を描いていたというジャクレー。
その絵を基に版画にしていたという。
モデルになった島の女性たちが、これらの作品を目にしたら喜ぶだろうね。(笑)

ジャクレーが男性をモデルにした作品もあるんだよね。
左は人形を手にしている中国の少年。
背景の黄色、敷物の赤、青い着物というくっきりした色使い。
背景を細かく描きこまないのに、ぽっくりを履いた人形や横に置かれた装身具は細かく描写されているよ。
右はモンゴルの王族が鷹狩りをしている様子だって。
すでに鳥やうさぎを仕留めていて、優秀な鷹のようだね。
モンゴル王族の着衣はもちろん、鷹や帽子についた孔雀の羽がいかにも日本画らしくて素晴らしい!
ジャクレーの作品を鑑賞すると、海外旅行に行った気分になっただろうね。

左は、真珠の飾りを頭に着けた満州の婦人だって。
とても裕福な身分なのか、身につけているもの全てゴージャスじゃない?
中でもSNAKEPIPEの目に留まったのは、薬指と小指につけた装身具。
これは「指甲套(しこうとう)」と呼ばれるアクセサリーで、身分の高さを表していたんだとか。
薄い絹から見える表情に貫禄があるよね!
右は陶磁に腰掛ける中国旧家の上流婦人だという。
タイトルを知らなかったら、男性に見えてしまうね。
まるで花輪和一が描いた漫画みたいな顔立ち、とROCKHURRAHとひそひそ話す。
もしかしたらジャクレーからの影響を受けたかもしれないよね?

今回の展覧会で最も惹かれたのが「満州宮廷の王女たち」という連作だよ!
日本の浮世絵では通常の場合、多くても20回の摺りで完成させるらしいけれど、「満州宮廷の王女たち」は223回摺っているんだって!
摺りが少ない作品でも113回だというから驚いてしまう。
これほど回数を重ねた理由は「色を出すため」だったというから、ジャクレーの美意識の高さが良く分かるよね。
ジャクレーには彫師と摺師がいて、摺師の談話によれば摺ることは問題ないけれど、色が難しかったらしい。
SNAKEPIPEが驚くのは、そこまで摺っても問題ない和紙があったこと。
特別注文していたらしいけど、ジャクレーの絵師としての才能以外にも、材料やスタッフの存在全てが噛み合って、唯一無二の作品が完成したんだね!

細やかな絵とビビッドな中間色は、豪華絢爛で華やかだった。
ジャクレーの作品は、アメリカ人が好んで買い求めたというエピソードも納得だよ。
東洋の神秘という言葉通りの、エキゾチックで極彩色の世界を独り占めできるんだもんね。(笑)

印刷やインターネット画像では色が違っていて、実物のほうがくっきりしていて鮮やかだったよ。
今まで知らなかったジャクレーの世界を観られて良かった!
教えてくれたROCKHURRAHに感謝だね。