CULT映画ア・ラ・カルト!【06】JOHN WATERS part1

【ジョン・ウォーターズ監督をROCKHURRAHがアニメ化。a-haのPVみたいね!】

SNAKEPIPE WROTE:

ついにこの「CULT映画ア・ラ・カルト!」にカルト映画の大御所、ジョン・ウォーターズが登場!
本当は「カルト」なんてジャンルができるよりずっと前から活動している監督だけどね!
ジョン・ウォーターズには非常に思い入れが強いSNAKEKPIPEなので、何回かに分けて書いていきたいと思う。

まずはジョン・ウォーターズについて簡単に説明してみようかな。
ジョン・ウォーターズはアメリカ合衆国メリーランド州ボルチモア出身の1946年生まれの映画監督。
この出身地ボルチモアをこれほど愛している映画監督は他にいないはず。(笑)
映画の舞台はほとんどボルチモアだからである。
ジョン・ウォーターズの名前を世に知らしめたのは「ピンクフラミンゴ」だと思うけれど、これはかなり好き嫌いがはっきりする映画だろう。
この映画を評する時に使われるのが「至上最低の悪趣味映画」だからである。
いつの間かこの「悪趣味」というのを「バッドテイスト」と読み替えて、宣伝文句に使われるようになっているけれど。
その「悪趣味」で「下品」で「最低」の三拍子を揃えた元祖がジョン・ウォーターズ、ということになるのかな。
ぷぷぷ!そのウォーターズに思い入れが強いSNAKEPIPEとはね。(笑)
ブラック過ぎるジョークが大好きだからね!
今回はそのジョン・ウォーターズの映画の中でも割と毒が薄い(?)3本についてまとめてみようかな。
思いつくままに書くつもりなので年代などは無視してるけど許してね。

1本目は「ヘアスプレー」(原題:Hairspray)1988年。
この映画2002年にはミュージカルになり2007年にはそのミュージカルを映画化したものがあって(監督はアダム・シャンクマン)、最近ではなかなかオリジナルを手に入れることが少ないと思う。
オリジナル版は調べてみると中古で安くても8500円!(2010年2月現在)
ぎょっ、そんなに高いとはびっくり!
ジョン・ウォーターズの映画って今は手に入りにくくなっているみたいね。
それでもどうしても観たかったので、仕方なく字幕なしバージョンで鑑賞。

ヘアスプレーのオリジナル版にこだわりたかったのは、この映画がディバイン最後のウォーターズ作品だからである。
ウォーターズ作品の核とも言うべきディバインは、圧倒的な印象だったためその後の不在はとても残念だ。
そのディバインは主人公トレイシーの母親役で登場。
太めトレイシーと並ぶと本当に親子みたいに見えてしまう。
その後のウォーターズ作品の常連になるこのトレイシーを演じたリッキー・レイクはリズム感が良く上手いダンスを披露。
ヘアスプレーは映画の1/3がダンスシーンといってもいいほど、いつでも踊りまくりなのだ。
1960年代初頭に流行ったダンスを良く知ることができる寸法!
とても楽しそうなのでSNAKEPIPEも参加したくなっちゃう。(笑)

かつてダンスの女王だったというベルマ役をブロンディのデビー・ハリーが演じていて、かなりいい味出している。
他にはカーズリック・オケイセック(ボルチモア出身!)もビートニク・キャットという名前で出演。
ヘンな画家という役どころで面白かった。
ジョン・ウォーターズの映画にはちょっとしたゲストが出ることがあって、見つける楽しみがあるね。
出演したいと名乗りをあげる人、多いんじゃないかな?
この映画にはウォーターズ自身も精神科の医師の役で出演してた。
先生が一番怪しげだったけど。(笑)

映画はダンス以外に差別問題(人種や体型など)なども入っていて、教育指導的要素もある。
さすがにメジャー作品だけあるね。
毒気は少なかったけど、最後に「あー面白かった」とすっきりできる映画。
いつの日か2007年版も観てみるかな。

続いては「シリアルママ」(原題:Serial Mom)1994年。
後にシリアルママ(連続殺人ママ)として有名になる主婦ベヴァリーをキャサリン・ターナーが熱演。
キャサリン・ターナーがよくこの役を引き受けたもんだ、と当時はびっくりしたものだった。
改めて今回鑑賞してみたけど、やっぱりキャサリン「はまり役」ね!
俳優という職業は「演じることができる役の幅」で勝負が決まるだろうから、こういう経験は大事だろうね。(笑)

映画はその主婦ベヴァリーの持つ基準にそぐわない、ルール違反をしたと思う人物を次々と殺していく話である。
それは自分の子供たちを守るためだったり、「勤労感謝の日」を過ぎているのに白い靴を履いているからだったり、と理由は様々。
どうやらこれは夏物と冬物の区別を示しているみたいだけど、アメリカでの昔ながらの習慣なのかもしれないね。
ベヴァリーのルールに反していない人とはとても良い人間関係を持つところが面白かった。
ベヴァリーは極端過ぎだったかもしれないけど、言いたいことはとてもよく理解できるね。
外に出ればいくらでも似たような出来事に遭遇するし、ルール違反を指摘したくなることって多いからね。
ベヴァリーが人気者になっていくのもうなずける。(笑)

この映画ではアメリカのお騒がせ女性ロックバンド「L7」が登場。
ライブ会場にシリアルママが来るという設定ね。
この時のL7のメンバーが穿いていた白いパンツのデザインがすごい。
多分売ってないよね、特注かな?
そしてこのバンドを選んだウォーターズはさすが、だね。(笑)

映画の中でシリアルママの無実を訴えるためにバッジやらTシャツを裁判所前で販売してるシーンに目が釘付け。
あまりデザインがよく見えなかったけど、もし実際売ってたら欲しかったな!(笑)

最後まで「気に障ったらシリアルママに殺されるかも」というドキドキ感が持続されていたのが良かった。
にっこりしていた次の瞬間には武器を手にしているママの変貌ぶりは最高だったよ!


3本目は「I Love ペッカー」(原題:Pecker)1998年。
主役は「ターミネーター2」で子役だったエドワード・ファーロング
ここでもまた有名俳優を起用してるウォーターズ監督だけれど、ウォーターズ・マジックとでも言うのかやっぱり溶け込ませちゃってるんだよね。
エドワード・ファーロングがちょっとヘンな人に見えてくるから不思議。(笑)

このエドワード・ファーロング演じるペッカーは写真を撮るのが大好きな役どころ。
いつでもどこでもパシャパシャシャッターを切っている。
知らない人のことも平気で撮影。
相手も全然嫌がっていないところがすごいんだけど!
最近の傾向としては「肖像権」の問題があるため、相手の承諾なく勝手に撮影(撮影した写真の発表も)してはいけないことになってるからね。
ちょっと羨ましい環境のペッカー。
とても生き生きとした人々の表情が撮られていて、映画の中といえどもさすがだよね。

ペッカーの家族や周りだけでも相当な数の個性派がいる。
知り合いの写真を撮るだけでも充分なネタになっちゃうんだよね。
ペッカーのおばあちゃんのバレバレの腹話術。
ペッカーのお姉さんが働くゲイバーでの撮影。
砂糖中毒の妹がねぼけたところ。(最後には野菜中毒に変化)
ペッカーのガールフレンド(クリスチーナ・リッチ)の写真、などなど。
ボルチモアにはこんなにたくさん個性的な人がいるのかな?(笑)

あれよあれよという間に有名アーティストになってしまうペッカーだけれど、自分が都会に出て行かないで「我がボルチモアにようこそ」とアート関係者を地元に呼ぶところが面白かった。
そうそう、そのアート関係者の中に本物のシンディ・シャーマンが本名で出演してるんだよね。
シンディ・シャーマンはスチール写真のようなセルフポートレイトで有名になったアメリカの女流写真家ね。
シンディ・シャーマンだったらウォーターズ映画のファンだろうな。(笑)

記憶があやふやだけどこの映画には「ファインダーを通すと全てが素晴らしいんだ!」みたいなキャッチコピーが付けられていたはず。
確かに撮影シーンがとても楽しそうでSNAKEPIPEも一眼レフで撮影したくなっちゃったよ!
ウォーターズ監督の自伝的映画なんて書いてあるから、きっと楽しい少年時代を過ごしてたんだろうね。
この映画もあまり毒気が強くないし、ほのぼのしたサクセスストーリーなので写真好きの人にお薦めかな!

軽く3本をまとめてみたけれど、ウォーターズ監督作品についてはまだまだ書き足りないSNAKEPIPE。
また近いうちに違う映画も特集してみたい。

CULT映画ア・ラ・カルト!【05】恨み・女任侠編

【お色気玲子とクールな芽衣子。どちらがお好み?】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のCULT映画ア・ラ・カルト!は70年代の女ヤクザ映画でテーマが恨みになっている2つのシリーズについて特集したいと思う。
恨みと言えばこの人、ご存知梶芽衣子
そしてもう一人は池玲子
二人がそれぞれ主演した「修羅雪姫」と「姐御伝シリーズ」について書いてみよう。

まずは「修羅雪姫」から。
これは小池一夫原作、上村一夫の漫画が元で、映画化されたのが1973年。
その漫画は未読のSNAKEPIPEなので、どこまで原作に忠実でどこが違っているのかを書くことができないのが残念だ。
時は明治時代、日露戦争の後が舞台になっている。
SNAKEPIPEには時代考証などは所詮無理な話だけれど、それにしても明治時代にこんな女性刺客がいたとはびっくり!

簡単にあらすじを書いてみよう。
あまりに不当な理由で亭主と子供を殺された女が、殺したメンバーの一人を殺害し投獄される。
そして復讐を託すために獄中で子供を産む。
雪の降る日に生まれたからという理由で名前は雪という女の子だ。
出産後に母は帰らぬ人となる。
修羅の道を行く運命を背負い母の恨みをはらす目的で生まれてきた子供、という設定だ。
恨みをはらす、というのは母の亭主を殺した残りの3人を同じ目に遭わせるというものである。

獄中で母親に「雪をよろしく」と頼まれた女が幼い修羅雪を連れて行った先がお寺。
そこの和尚さんが剣豪だったため特訓を受けるのだ。
寺の和尚さんが殺人マシーンにするために少女をしごくシーンがすごい!
しかも和尚さん役は水戸黄門様で有名な西村晃
ますますギャップを感じてしまう。
普通に考えて和尚さんが復讐に手を貸すというのは設定としておかしいと思うけれど、映画ということで良しとするか。(笑)
とても女の子相手とは思えないほどキツい特訓を受け、雪は剣の腕を上げ、空中で回転するような技も身につける。
こういうアクロバット的な要素も含まれているので、アクション映画として観ても面白いんだよね。

そして成長した修羅雪は女刺客として「その道」で有名で、いろんな仕事を請け負って生活しているようだ。
そのため賭場にも自由に出入りできて、壺振りまでやってるからすごい!
「入ります」「よ、ござんすか」のあれ、ね。
ここら辺はヤクザ映画らしいシーンで、梶芽衣子は凛とした雰囲気があるからよく似合っていた。
ふすまが花札の柄になっていて、その前に座る白黒の縦縞の着物を着た修羅雪がとてもカッコいい!

話の途中から登場する新聞記者役の黒沢年男演じる足尾龍嶺。(若い!)
なんと特訓をしていた和尚の知り合いで、修羅雪の身の上を知ることになる。
いつしか修羅雪の味方のような存在になっていく。
が、とても悲しい事実が発覚。(ここではあえて言わないでおこうか)
修羅雪は少しは心を通わせていたと思われる足尾龍嶺に対しても、ほとんどためらわずバッサリ。
恋愛よりも当初の目的「恨みをはらす」ほうが先、という初志貫徹ぶり!
シビれる~!

修羅雪の母の恨みをはらす目的は成就し、めでたしめでたし。
とならないのは次回作があることでも分かるよね。
修羅雪はすっかり「おたずね者」になっちゃって。

というところから始めるのが「修羅雪姫 怨み恋歌」1974年公開作品だ。
前作からの続きなので、時代設定などはもちろん全て同じ。
「日本勝った、日本勝った、ロシア負けた~」
なんて歌を子供が歌っているシーンも出てきた。
あの歌は本当にあったのかな?

修羅雪は警察に追われ続け、ついに御用となってしまう。(表現古い?)
37人を殺害した罪ということで絞首刑を言い渡されるが、執行当日に何者かの手により身柄を拘束されてしまう。
「命の恩人」と思った人物は、修羅雪の腕を買い仕事をしてもらいたいと切り出すのだった・・・。

と、まるでWikipediaのあらすじのような書き方をしてみたけど。(笑)
囚人として馬車で移送されている修羅雪を開放しに来た賊(?)が面白かった。
時代ということを考えてだろうけど、「おかめ」の仮面を付け帽子をかぶり馬に乗って来るのだ。
せめて般若の面くらいにして欲しかったんだけどね。
ちょっと間が抜けて見えたのはSNAKEPIPEだけかしら?(笑)

仕事の依頼をするのが秘密警察所属の岸田森演じる菊井。
あまり岸田森が出演している映画って観たことないんだけど、すごい役者さんだね。
まずは顔がすごい!
ドラキュラ役、と聞いて納得だね。
この菊井という男が非常に嫌なヤツで、修羅雪のライバルといったところか。

今回は原田芳雄が修羅雪の淡いロマンスの相手といった役どころで登場。
無政府主義者(アナーキスト)、明治時代当時は反政府主義者とみなされ、いつでも警察にマークされている兄(伊丹十三)がいる設定だ。
この伊丹十三の妻役として吉行和子
この映画で吉行和子の濡れ場を見ることになるとは思いもよらなかったわい。(笑)

今回の修羅雪は前回よりも更にアクション度アップ!
着物姿の女で馬にまたがるのは初めて観た!
横座りじゃなくて、またがってるとこね。(笑)
坂を下りながらの殺陣シーンは難しかったんじゃないかな。
海際での波しぶきをあげながらの横走り殺陣はチャンバラではお馴染みだけど、キレイな女性でのバージョンはあまりないよね。
ラストの急な階段での殺陣。
梶芽衣子は「他の役者さんが上手に動いてくれただけです」なんてインタビューで答えてたけど、動きがきれいでとても様になっていると思う。

ラストではまたちょっと心を通わせていた原田芳雄を背中から一突き!
今回は「とどめをさす」のが「優しさ」ともいえたけど。
修羅雪はどうも恋愛が似合わない設定みたいね。

心の中にメラメラと炎が燃えてるのに、ぐっと睨みつけるまなざしだけで表現ができる女優はあまりいないと思う。
もしかしたら日本特有の文化なのかもしれないけど、仁義な世界というのはストイックな感じだからね。
タランティーノ監督が修羅雪姫から影響を受けて映画を製作した、というのは分かる気がするね。

さて続いては梶芽衣子にはないものを持った女優、池玲子の登場だ。
池玲子って誰、という人が多いと思う。
たまたまROCKHURRAHが石井輝男監督について調べている時に知った女優だったのだ。
石井輝男はこのブログで何度か紹介しているけど、カルトな映画をたくさん残したお気に入りの監督である。

「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」は1973年の東映作品。
普通のヤクザ映画かと思いきや、観始めて5分もしない内にびっくりする。
なんと池玲子、全裸で殺陣!(笑)
入浴シーンからいきなり襲われ、反撃に出るという設定だったから不自然ではないにしてもタイトルバックが始まる前にすでにお色気満点!
雪が降る中を全裸でバッサバッサと斬りつけるのは、なんともお見事。
一体どんな展開になるのかとても楽しみになる。

池玲子扮する葛西杏子、通称「猪の鹿お蝶」は子供の頃に目の前で父親を殺される。
父の恨みをはらす、というストーリーである。
時代設定も明治時代の同じ頃、身内の恨みをはらすために女が頑張る、という大筋も前述の修羅雪姫とほぼ同じ!
ただどちらも同じ1973年公開作品で、どっちが先なのかよく分からなかった。

梶芽衣子の修羅雪姫は剣の腕前で悪人をなぎ倒していったけれど、池玲子の猪の鹿お蝶は使えるものはなんでも使う。
武器はドスも拳銃も使う。
相手が敵と分かっていても、自分の肉体まで差し出しとどめをさす。
女だからできる、いや女ならではの方法で手段を選ばず目的達成するところが梶芽衣子との大きな違いだ。

そしてその脱ぎっぷりの良さには恐れいってしまうほど。
ヌードモデルをやっていたというだけあって、さすがに整ったプロポーション。
演技力もあって、殺陣の動きもいい。
池玲子、すごい!とすっかりファンになってしまった。(笑)

お色気シーンあり、でもやっぱり任侠の道も忘れてないのよ、というミックス感が新しい感じがする。
明治時代だから鹿鳴館、と外人がいっぱい出てくるのも珍しい。
スウェーデンの女優クリスチーナ・リンドバーグまで出演しているし。
セリフが英語になっちゃうところもあって、国際的な映画でもある。

最後にどんでん返しがあったけれど、猪の鹿お蝶は当初の目的である父の仇を討つ。
雪の降る中、足をひきずりながら歩いて行くところで終了。
一体猪の鹿お蝶はどうなっちゃったのか、と想像にお任せしますというラストね。

次回作の「やさぐれ姐御伝 総括リンチ」も1973年と同年の作品だ。
こちらの監督が石井輝男。
1年のうちに2本も撮ってるってすごいパワフルだね!

今回の姐御伝シリーズは前作の続き、というわけではなくて別の物語が進行する。
池玲子の「猪の鹿お蝶」という設定だけが同じ。
麻薬密売しているヤクザにお蝶が関わる話である。

今回はタイトルバックの殺陣のシーンで、またまたやってくれてる池玲子。
誰も着物に刀入れてないと思うのに、どんどん着物が脱げていつの間にか全裸に。(笑)
池玲子=全裸殺陣の構図が出来上がったね。
面白過ぎだよ!

麻薬取引に利用された女スリ集団やまた別のズべ公グループ(死語)など、女ばかりの集団が入り乱れ、その時代にこんなに悪さをする女が多かったのかなと疑問。
最後にはそれらの女集団が一丸となって麻薬密売ヤクザを撲滅するために立ち上がる。
そしてその時にまた全員がわざわざ脱いじゃうところがおかしい!
あまり必然性がないところでヌードお披露目があるんだよね。
その昔「女ばかりの水泳大会」などでよく「出ました、ポロリ!」なんてヤラセ放送があったけど、そんなの目じゃないほどの女全員脱ぎまくり!(笑)
あそこまで「あっけらかん」としていると笑いになるから面白い。

前作に比べると「恨み」の度合いが低いため、壮絶感はあまりない。
いくつかの女集団が出てきたことで話も複雑になっていて、スカッとしない。
この映画の魅力は池玲子だけ、かな?(笑)

梶芽衣子と池玲子、名前も似てるし。
恐らく梶芽衣子の向こうを張るような女優として存在してたのかなと想像する。
今回の修羅雪姫と姐御伝も役柄に近いものがあるしね。
他にも梶芽衣子主演の「野良猫ロック」に対抗したと思われる池玲子の「女番長ブルース」があるので、またの機会に書いてみたいと思う。

CULT映画ア・ラ・カルト!【04】屋根裏の散歩者

【屋根裏の散歩者に出演の個性派俳優達】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも、今まで何度も読み返している作家の一人が江戸川乱歩である。
乱歩の作品は何本も映画化されている。
今年(2009年)も若松孝二監督が「芋虫」を映画化、なんてニュースがあった。
乱歩の作品は製作者の創作魂に火を点ける要素があるのかな。(笑)
今回取り上げる「屋根裏の散歩者」も今までに4回制作されているようである。
そして実際鑑賞したのはそのうちの2本。
CULT映画の「くくり」に入れていいのかどうかは疑問だけど、まあいいか。

最初は1970年、木俣堯喬監督で映画化されているようだけど詳細は不明。
調べてはみたけれど情報がほとんどなくて、出演者が誰だったのかも全然分からない。
当然のように観ていない。

続いて1976年版、田中登監督。
タイトルは「江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者」。
日活宮下順子、とくればそれだけである年代の方には内容が想像できるというもの。(笑)
にっ、日活ロ・マ・ン・ポ・ル・シェ!じゃなくてポ・ル・ノ!(ボケ)
そして実際観てみると、やっぱり想像通りだったのである。
原作には全くなかった設定、清宮美那子(お金持ちの奥様)こと宮下順子が主人公の物語。
この奥様が人目を忍んで「自分の快楽のため」にお出かけするアパートがある。
黒塗りの車から降りて、まっすぐ前を向きヒラヒラのついた日傘をさし、颯爽と歩く姿は秘密の場所に行くには派手過ぎる。
とても「こそこそ」しているようには見えず、かなり目立ってると思うけどいいのかなあ?(笑)
そのアパートには「奥様専用」の情人がピエロの扮装で待っている、という寸法。
このピエロってところが乱歩っぽい設定でなかなか良かった。
いつでも帽子と手袋を着けたまま狂態を魅せる宮下順子もいい味だしてるし。(笑)
そして奥様とピエロの様子を屋根裏から覗き見しているのが本来は小説の主人公、石橋蓮司演じる郷田三郎である。
石橋蓮司にはアブノーマルのイメージが強いので、覗き見をしている姿に全く違和感を感じなかった。

原作とはかなりかけ離れたストーリーが大部分を占めていて、宮下順子主体の展開については「日活だからいいのか」と思うけど、一つ重要だと思ったのは毒薬を使う場面。
映画だけ観ているとあまりに唐突に殺人計画を実行してるんだよね。
原作を読んでいるから理解できるけど、ちょっとその部分の説明が足りない気がした。
かなり無理のあるお話になってるから仕方ないのかな?
ま、それを言ってしまうとラストシーンなどはハチャメチャだし!
こんなのアリ?
時代考証されてるの?
なんてあまり深く考えなくていいのかな。
ラストの井戸のシーンが一番怖かったね!

1992年版はウルトラマンで有名な実相寺昭雄監督。
主演は三上博史演じる郷田三郎。
大抵の乱歩作品の映画化というと上述した1976年版にも「人間椅子」が、以前記事にした「 CULT映画ア・ラ・カルト!<02>石井輝男」にも「盲獣VS一寸法師」があるように2つ以上の物語がミックスされる傾向が強い。
そんな中、この作品は他をミックスさせずに純粋に「屋根裏の散歩者」に迫っているという時点で素晴らしい。(笑)
退屈を持て余した三上博史が女装して遊ぶシーンもあったりして、かなり原作に忠実に映像化されていることが分かる。
そして三上博史もとても良かった。

原作と違う点は、明智小五郎が同じ下宿にいること。
推理するためと考えてみれば、そんなにおかしな設定ではないか。
この明智小五郎を嶋田久作が演じている。
おお!嶋田久作!懐かしき東京グランギニョル!(笑)
怪優のイメージがある嶋田久作だけど、意外にも明智小五郎が似合ってたね。
それにしても天井から逆さになってニタニタ笑う嶋田久作、怖っ!

下宿には様々な芸術活動を行う人がたむろしていて、その雰囲気は面白そうだった。
創作活動だけで食べていかれたのかな、などと想像するのも面白い。
それらの芸術家達に混ざって、またもや原作にはない設定の宮崎ますみが登場するけれど、あんまり意味がなかったような気がする。
ちょっときれいどころ入れときましたから、ってな具合か?(笑)

総合的に判断すると乱歩作品の映画化として「かなりいい線いってる」作品だと思う。

そして2007年版「エロチック乱歩 屋根裏の散歩者」、三原光尋監督。
ズバリ「エロチック」とタイトルに入ってるし!
本来の主人公である郷田三郎の「ご」の字も見当たらない「屋根裏の散歩者」ってどうなの?
全く原作からかけ離れた話になってるんじゃなかろうか、と推測。
あまり観る気がしない。

「屋根裏の散歩者」はどうしても「覗き」という犯罪行為を主題にした物語のため、R-18指定になってしまうようで。
そのため「皆様是非ご鑑賞ください」とお薦めはできないけどね!

CULT映画ア・ラ・カルト!【03】ILSAシリーズ

【どのポスターもダイアン・ソーンが仁王立ちの構図。全部同じパターン?】
SNAKEPIPE WROTE:

今回はカルト映画「ILSA」シリーズについてまとめてみたい。

ILSA ナチ女収容所 悪魔の生体実験」は1974年に制作されたアメリカ/カナダ映画。
タイトルからしてすでに危ない雰囲気を漂わせているけれど、内容もそのまんま!
ナチスの医療収容所での残酷な実験を描いている映画である。
医療収容所の女所長の名前がイルザ、その後のシリーズもすべてダイアン・ソーンが演じている。
このダイアン・ソーンの存在感が映画の要であり、彼女のおかげで映画が大ヒットしたといえるだろう。

なんといってもダイアン・ソーンの魅力はその肉体美!
グラマラスボディの持ち主で、いかにもアメリカ版プレイボーイのグラビアに出てきそうなタイプ。
そのグラマーさんがナチスの制服をピチピチ状態で着こなし、冷たい美貌で怖い命令を下すとは!
さて一体何が起こるのだろう、と期待に胸を膨らませること間違いなし!(笑)

結局グラマー所長はどのくらいまでの熱や圧力に耐えられるか、病気に対する抵抗力など「人の限界」のようなデータを取ることが目的だったようで。
そのデータを取るシーンだけが残酷かな。
それ以外は収容所とは言っても、建物は掘っ立て小屋みたいだし、収容されている人達は部屋を自由に歩いているため厳重に管理されている収容所というイメージとは程遠い。
あとは所長の趣味に多少の問題があるくらいなので、恐る恐る指の間から覗き見しなくても大丈夫な映画である。(全員がオッケーとまでは言わないけど!)
最後はその「趣味」がきっかけで転落する所長。
やっぱりこんな人体実験、許す国はないよね?

2009年の現在観ても「ナチスで生体実験」とタイトルにあるような映画はマズいんじゃないか、と感じるので制作された1974年などはもっと危なかっただろうね。
キャストの中に「この作品のみ変名」と書かれている俳優が多いので、お金欲しさで出演はしたけれど、できれば出演したことは知られたくないという意味だろう。
まあ、代表作として堂々といえるのはやっぱりダイアン・ソーンのみだろうね。(笑)

それにしても「ILSA」にはモデルがいた、と書いてあってびっくり!
イルゼ・コッホという女性らしい。
本当にそんな残虐な女性がいたとは驚きだね!
一文字違いにして「イルザ」なのか、と納得。

イルザ アラブ女収容所 悪魔のハーレム」は1976年の作品。
主演は同じくダイアン・ソーン。
今回はタイトル通りアラブの石油王国が舞台で、国王専用ハーレムの守備隊長を任されているイルザ。
主人が国王で命令を受けて行動するため、前作のようにイルザが絶対の命令権を持っているわけではないところが違うんだよね。
そして今回はあまりダイアン・ソーンの脱ぎっぷりもよくなくて、ほんの数シーンでその肉体を披露しているのみ。
前作の「これでもか」というほどの肉体誇示はないので要注意。(意味不明)

石油王国の国王がポール・マッカートニーに似てる。
うっ、「に」を3回も書いてしまった。(笑)
そのポール国王のハーレムは誰しもが思う通りの「いかにもアラブのハーレム」状態。
美味しい料理にお酒、美しいダンサーがくねくね踊る宴。
周りに侍る訓練された女性達。
みんな国王のための演出。
背いたら罰が待っている、命がけのご奉仕。
アラブ編では前作よりもグロさがプラスされている。
今回は顔をそむけてしまうシーンもあったので、グロさを求める人にはいいかもしれない。
そしてアラブ社会ってこんな習慣あるんだっけ?と信じてしまうような不思議なエピソードがいくつか挿入されている。
お客様への最高のもてなし料理とか泥棒に与える罰について、など。
本当なのかどうかアラブの人に聞いてみないと。(笑)

今回のイルザは、普通の女みたいにアメリカ人スパイに恋する設定で。
国王のためにハーレムを維持・守備している冷徹な女隊長とは随分イメージが違ってきて、とまどってしまう。
最後はやっぱりイルザが笑って終わるようにはできてないんだな。
というか、そういうラストにはできないのかもね?

「女体拷問人グレタ」は1977年の作品。
この映画では名前はイルザじゃなくてグレタになっている。
グレたからかな?(ぷっ)
ここでも大筋はさほど変わらず、病院の院長になっているダイアン・ソーン。
治療と称して、前作と同様に自分の好き勝手をやっている。
そして警察関係者と手を組み、テロリストに自供をさせるために拷問を繰り返す役割も果たしている。

今回は病院に入ったまま行方が分からなくなった姉を探して、実態をあばくため妹が潜入するストーリーになっている。
最後は姉に会えたけれど、この手の映画の中で感動的な再会シーンは期待できないよね。
結局はグレタ院長が微笑みながら残酷なことをして終わってしまった。
なんの作戦も練らないで潜入すること自体が無謀だったともいえるけど。

ラストで手下だと思っていた男の裏切りや、グレタが復讐を受けるシーンが衝撃的だった。
今回はジェス・フランコという先の2本とは違うスペインの監督なので、ちょっと雰囲気が違っていたのかもしれない。

本当はイルザシリーズにはもう一本「イルザ シベリア女収容所 悪魔のリンチ集団」(1977年制作)があるのだけれど、今の時点ではまだ入手できていない。
それにしても「~収容所」で「悪魔の~」って、全部同じパターン!
ちょっとマンネリ気味?(笑)
暑い国の次は寒い国にしたってことか。
設定その他は同じだろうけど、いつか観られる日を楽しみにしたい。