映画の殿 第43号 エクストリーム・ジョブ

20210411 top
【盗聴している麻薬班の5人。このシーンも大笑いしたよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSでは、週に2本程度の映画を鑑賞している。
以前はレンタルを利用し映画を楽しんでいたけれど、最近はご無沙汰になってしまった。
Netflixの中で映画を見つけて観ることが多くなったのが理由だよ。
ただ残念なことに、Netflixには例えばTSUTAYAやGEOでの新作映画となっている作品は入っていないことがほとんど。
Amazonプライムなどでは、新作は別料金を払って鑑賞が可能だけれど、Netflixは定額なので難しいんだろうね。

今回久しぶりにレンタル店に足を運んだのは、どうしても観たい映画があったから。
2021年1月に書いた「映画の殿 第42号 サイコキネシス -念力-」で主役を務めたリュ・スンリョンの作品が気になったんだよね!
変顔連発のスンリョンに魅了されたので、他の映画も観てみたい。
タイトルは「エクストリーム・ジョブ(原題:극한직업 2019年)」で、韓国の歴代興行収入1位を記録したアクション・コメディだという。
Netflixで公開される気配はないので、早速レンタルして観ることにする。
まずはあらすじを書いてみよう。

ひょんなことから大人気フライドチキン店を経営することとなった麻薬捜査班の姿を描いたコメディ。
忙しく走り回りながらも、思うような実績を積めずに解散の危機を迎えている麻薬班。
国際犯罪組織の国内麻薬密搬入情報を入手したコ班長は、チャン刑事、マ刑事、ヨンホ、ジェフンの4人のチーム員たちとともに潜伏捜査を開始する。
24時間監視のため、犯罪組織のアジト前にあるチキン屋を買い取り、麻薬班メンバーによるチキン屋稼業をスタートさせるが、絶対味覚を持つマ刑事の隠れた才能により評判が広まり、チキン屋は捜査にも手が回らないほどの大人気店となってしまう。
そんなある日、麻薬班に捜査の絶好の機会が訪れるが……。(映画.comより)

続いてトレーラーね。

あらすじやトレイラーで分かるように、かなりハチャメチャな展開だよね。(笑)
これは期待しちゃうよ!
※ネタバレしていますので未鑑賞の方はご注意ください

実績をあげられず解散危機に瀕している、麻薬班のコ班長を演じる我らがリュ・スンリョン。
冒頭から情けない捜査状況で、こんな顔をしているよ。(笑)
ダメダメ男役がウィル・フェレルに負けないくらい似合っているんだよね!
もしかしてSNAKEPIPEは、こういうタイプの役者が好きなのか?(笑)

麻薬班の紅一点、チャン刑事。
男勝りの性格で、女らしさが全く見えない役どころ。
演じているイ・ハニは、元ミス・コリアでミス・ユニバースで4位になるほどの美貌の持ち主で、しかもソウル大学校大学院国楽科卒業だというから驚いちゃうよね。(笑)

かなり個性的な顔立ちをしたマ刑事。
麻薬班の予算をギャンブルに使うなど、お荷物的存在のよう。
マ刑事の実家が焼肉店だったことが、チキン屋を成功させるヒントになるとはね!
特技があって良かったよ。(笑)

麻薬班の中で一番真面目なキム・ヨンホ刑事。
他の4人がチキン屋で奮闘している時にも、一人で捜査を続けている。
こういう人がいないと、金儲けに走りがちな麻薬班が正気に戻らないもんね。(笑)

一番若いキム・ジェフン刑事。
姓にキムが多いんだね。
2000年の調査によれば、韓国の全人口の2割がキム姓だとwikipediaに書いてあったよ!
ジェフン刑事は真面目な性格で潜入捜査にも積極的に取り組む。
職安前でサクラとして監視していたせいで、他の職探しの人たちに混ざって建設現場に送り込まれることまでやるとは熱血過ぎだよね! 

監視対象の人物がいるビルの前にあるチキン屋で張り込みする麻薬班。
張っているのがバレバレなこの行動からも、いかにダメなチームなのか分かるよね?
そしてこのチキン屋が店をたたむ話をしたことから、ここで商売を始めるという展開に!

誰がチキンを揚げるのかを決めるための試食会。
紅一点のチャン刑事は、以前にもひどい料理を振る舞った経験があることも明かされる。 
そしてマ刑事のチキンが最高という結果になるから驚き! 
実際にお客さんが入店し、即興で味付けタレを作ったことが大成功になってしまうんだよね。(笑)
その味のレシピが公開されていたので、転記させてもらおう。
・醤油(75ミリリットル)
・砂糖(65グラム)
・味の素(1.25グラム)
・胡椒(2.5グラム)
・水あめ(3.75ミリリットル)
・食用油(7.5ミリリットル)
・ごま油(5ミリリットル)
・チリパウダー(3.25グラム)
・玉ねぎ・長ネギのみじん切り(43.75グラム)
・にんにく(18.75グラム)
・コーラ(31グラム)
これを混ぜて、揚げたチキンに絡めるんだよね。 
実はこれ、カルビのタレなんだって。
ということは焼き肉にも応用可能ってことなので、試してみたいよね!(笑)

カルビのタレを思いついたマ刑事の発言を聞いたスンリョンの変顔。
「サイコキネシス」の時ほど、顔芸が出なかった今回の映画だけど、ところどころに発見することができて笑ってしまう。
期待を裏切らないスンリョンに拍手を贈りたいね。(笑) 

カルビソースの唐揚げは大人気になって、行列ができる店になってしまう。
本来の目的である監視はそっちのけで、商売するだけで精一杯の麻薬班なんだよね。
こういう発想を映画にするところがすごいなあ!
「もし〜だったら面白いよね?」という話、韓国映画やドラマでよく観るんだけど、アイディアを形にする力がある国なんだろうね。

監視対象のイ・ムベ。
麻薬を扱う犯罪組織のボスで、麻薬班が尻尾をつかむために必死になっている大物なんだよね。
イ・ムベを逮捕できたら麻薬班を存続することができる! 
さすがにボスなので、頭が切れるしブレーンもいるから難しいんだよね。

麻薬組織に属しているようには見えないブレーンの人物。
名前が分からなかったのが残念。
普通のサラリーマンにしか見えないのに、犯罪に手を染めているところが恐ろしいよね。
この人のアイディアで、チキン屋が知らぬ間に悪の手先となってしまうとは!

途中にすったもんだがあり、危機を脱して最終的に麻薬班は犯罪組織を撲滅する。
画像は表彰されてるところね。
ダメダメのチームが勝利する、というのはウィル・フェレルの黄金パターンと同じなんだけど、やっぱりスッキリするよ。(笑)
「エクストリーム・ジョブ」は、麻薬班の5人のキャラクター設定が良かったことと、チキン屋の繁盛という発想の面白さが際立っていたね。
笑ってしまうシーンも多かったので、お勧めの映画だよ!(笑)

映画の殿 第42号 サイコキネシス -念力-

20210131 top2
【念力で人を吹き飛ばすソッコン】

SNAKEPIPE WROTE:

Netflixを堪能している話は、前回の「映画の殿 第41号 Netflixドラマ編」で語っている。
ドラマを鑑賞することが多いけれど、映画も観てるんだよね。 
今回紹介するのは日本未公開で、Netflixだけで公開されている「サイコキネシス -念力-(原題:염력 2018年)」 という韓国映画。
今までにもポン・ジュノパク・チャヌクなどの作品をはじめ、俳優であるソン・ガンホが出演している韓国映画はかなりの本数観ている。
ROCKHURRAH RECORDSでは、韓国映画がスペイン映画の次に来たブーム、という感じかな?(笑)
タイトルだけ見るとオカルト系の話なのかなと思いながら観始めた「サイコキネシス」は、SNAKEPIPEの予想を大きく裏切ってくれた。
もちろん良い意味で、ね。(笑)
どんな映画なのか、トレイラーを載せてみよう。 

簡単にあらすじを書いておこう。

突然超人的な能力に目覚めた父親と、大切なものを守るため必死で戦う娘。
頼りない中年男はスーパーヒーローになれるのか。
すべてを賭けた戦いがいま幕を開ける。(Netflixより)

ここからは感想をまとめていこう。
ネタバレしていますので、未鑑賞の方はご注意ください!

警備員として生計を立てている、しがない男やもめのシン・ソッコン。
出勤前、公園で水を飲むのが習慣のようで、その日も水を口にする。
映像だけが流れ詳しい説明がないけれど、どうやら宇宙から落ちた隕石から出た何かが混ざった水だったようで。
ソッコンは飲んだあと、「腐っている」と表現している。
その水が不思議な力を習得する原因になるんだよね。

これが主人公シン・ソッコン。
寝起きの村上龍か蛭子能収か、といった雰囲気なんだよね。(笑)
演じているのはリュ・スンリョン
この俳優が出演している他の作品は観たことないかも。
勤務先で備品をちょろまかしたりする、器の小さい男。
ひとり暮らしを良いことに布団は敷きっぱなしで部屋は荒れ放題。
こういう生活送ってる人、多いのかな?
横着して寝たままタバコを吸おうとした時、初めて自らの超能力に気付く。

 シン・ソッコンの娘、ルミ。
演じているのは、まるですっぴんの荻野目洋子かといった風貌のシム・ウギョン
両親は離婚しているので、母親と一緒に暮らしている。 
激辛チキンの店を成功させ、テレビ取材を受けるほどの人気なんだよね。
ところが、ルミの店がある商店街一帯が、再開発地域に指定されてしまう。
中国人観光客向けの免税店を作る、というのがいかにもありそうな話だよね。
立ち退きを迫る建設会社と、反対する商店街の人たちとの攻防が繰り広げられることになる。 
その攻防の真っ只中、母親が巻き込まれて死亡してしまう悲劇が起こる。

地上げ屋を雇っている建設会社の社長と部下。
利益を得るためなら何でもやる、といったズルそうな人相なんだよね。
左にいる社長は、間延びした五木ひろしといった雰囲気だよね。(笑)
社長なのに小心者。
汚れ仕事は人任せ、自分は動かないんだよね。
こういうタイプも現実にいそうだよ。

母親が死亡したことを知らされ、葬式に顔を出したシン・ソッコンとルミは何年ぶりの対面だったのやら。
ルミは父親に対して、自分を捨てた人という認識を持ち、今更父親面をされることが許せない様子。
それでもソッコンは、ルミの状況を知り、商店街の攻防に力を貸すことにする。
暴力を振るう地上げ屋に対して、超能力を使っているシーンがこれ。
見て、この顔!
思わず吹き出してしまうほどの面白さよ。(笑)
ルミの驚いた顔も良いよね。

続いての念力シーンがこれ。
リュ・スンリョンの顔芸とでも言おうか、 変顔の連発に大笑いしちゃうんだよね!(笑)
このシーンでは、手にとどまらず、膝や舌まで使って物を動かしている。
手からパワーを出すのは漫画だったり、Netflixのドラマ「ストレンジャー・シングス」でも見るけれど、ここまでおバカな方法を使うのは初めてだよ。
いや〜、最高!(笑)

おバカな顔ばかりじゃなくて、娘のために闘う決意の表情がこれ。
この時にはニコラス・ケイジに似てるな、と思ったSNAKEPIPE。
ニコラス・ケイジもおバカなキャラクターからハードボイルドな役までこなす俳優だから、雰囲気が近いのかもしれないね。
リュ・スンリョンの他の作品も観たくなったよ!

ソッコンの超能力はなんでもアリで、自分が欲したことができちゃうみたい。
人や物を投げ飛ばすし、空を飛ぶことも可能!
こんな能力あったら良いだろうね。(笑)
ルミを救うため、スーパーマンのように飛んで助けるシーンがこれ。
父と娘に絆が戻った瞬間といえるだろうね。

建設会社や地上げ屋の執拗な立ち退き話は現実的なのに、ソッコンの超能力が加わると途端に荒唐無稽になるところが秀逸だと思ったよ。
筋自体は単純なのに、強い印象を残すのはやっぱりリュ・スンリョンの顔芸のおかげだね。(笑)
ウィル・フェレルのおバカ映画が大好きなSNAKEPIPEなので、「サイコキネシス」も非常に気に入ったよ!

監督は「新感染 ファイナル・エクスプレス(原題:부산행 2016年)」のヨン・サンホ
「新感染」は鑑賞済で、電車の中というシンプルな設定なのに、スリルのある目が釘付けになる映画だったことを思い出す。
元がアニメーション監督だというので、「何でもアリ」の発想ができる人なのかなと推測する。
ソウル・ステーション/パンデミック」 はこれから鑑賞するので、とても楽しみ!
「新感染」の続編である「新感染半島 ファイナル・ステージ」もいつか観たいと思う。
楽しみが増えて嬉しいね! 

映画の殿 第41号 Netflixドラマ編

【「映画の殿」初!動画による表紙だよ!】
SNAKEPIPE WROTE:

早いもので、今年最後のブログになるんだね。
2020年は「自粛の年」だったので、いくつもの計画が強制的に中止になることが多かったなあ。
そんな中、自宅にいて楽しく過ごせたのは、Netflixの存在が大きいよ。
そこで今回は、ROCKHURRAH RECORDSが観たドラマについてまとめてみようかな!
今頃そんな昔のドラマについて書いてるの?と呆れないでね。
今年の5月に加入した新参者だから!(笑)

Netflixに加入する前から気になっていたのが「Black Mirror」。
2011年から放映されている1話完結のイギリスのドラマなんだよね。
かなりブラックでSF色が強く、放送禁止になりそうな内容も含まれている。
以前観た「UTOPIA」も過激なシーンが多くて驚いたけれど、さすがイギリスはパンクの国だよね!
VIVA LA REVOLUTION!(意味不明)
載せた画像はシーズン5の「Striking Vipers」。
えっ、そんな展開になるの?と驚いたものよ。(笑)
他にもドライブレコーダーのように記憶を録画再生できる装置が出てくる話や、亡くなった家族そっくりのロボットを作る話など、実現したら怖いような嬉しいような内容もあったね。
やっぱりイギリス、すごいな!

「Black Mirror」を観終わった後、次に選んだのがスペインのドラマ「ペーパー・ハウス」だった。 
ROCKHURRAH RECORDSはスペイン映画の大ファンなので、今までスペインドラマを観ていなかったのが不思議なくらい。
「ペーパー・ハウス」はスペインの造幣局に立てこもった8人組の強盗団の話で、強盗同士が都市名をニックネームとして呼び合っている。
これは例えばタランティーノの「レザボア・ドッグス」で、互いをオレンジやピンクなどの色で呼び合っていたのと同じだね。
8人の犯罪者達がそれぞれ魅力的なキャラクター設定されているのが見どころかな。
強盗団を指揮する自らを「教授」と名乗る首謀者が、知的で完璧な計画を立てているかと思いきや、意外と体を張ったギリギリのピンチ脱出大作戦を繰り広げるところに大注目だったよ!
この辺りがスペインっぽいのかもしれないね?
犯罪に使うのがお揃いの赤いつなぎで、スペインらしく仮面のモチーフがダリというのもイカしてる!
そして結束を高めるように使われた曲も印象的だったね。

邦題は「さらば恋人よ」という「Bella ciao」は、レジスタンスの賛美歌として世界的に有名だという。
「ペーパー・ハウス」で使用されて、更に歌う人が増えただろうね。
現在パート5が制作されているというので、放映を楽しみに待っていよう!

「ペーパー・ハウス」の終了に嘆きながらも次のドラマを探すことにする。
続いて観たのが韓国ドラマ「梨泰院クラス」。
これは先日新大久保に行った話の時に書いたけれど、長年来の友人Mから強力に勧められ、観始めたドラマなんだよね。
韓国ドラマには手を出さないと思っていたSNAKEPIPEだったけれど、食わず嫌いだったことが判明したよ。
「梨泰院クラス」は、漫画が原作ということもあり、あり得ないような展開が面白い。
個性的な髪型の主人公パク・セロイの信条を貫き通す心の強さには感服しちゃうよ。
セロイをとりまく仲間たちが良い味出していて、単なる復讐劇に終わらないキャラクター設定がポイントだよね。
最も強烈な印象を残すのは、復讐相手のチャン・デヒ会長!
この会長の存在がなかったら、「梨泰院クラス」はここまでの話題作にならなかったかもしれないね?
韓国の外食産業トップの会長でありながら、食べる時や飲む時に音を出す下品さ。
憎々しげな表情がピカイチだったね!
この会長役のユ・ジェミョン、現在観ている「刑務所のルールブック」では、まるで別人になっていて驚いたよ。
さすが役者だね!(笑)

ドラマの挿入歌にも注目!
「won!」と一緒に声を出し、拳を突き上げたものよ。(笑)

「梨泰院クラス面白かった」と感想を言うと、「じゃあ次はこれ観て」と友人Mから再びお勧めされる。
マイ・ディア・ミスター 〜私のおじさん〜」という、自分からは探さないようなタイトルのドラマ。
半信半疑で観始めると、次の展開がどうなるのか気になってくる。
全く笑わない女主人公イ・ジアンと、心に空洞を抱えた男主人公パク・ドンフンの心の交錯がテーマになるのかな。
SNAKEPIPEが気に入っていたのが、ドンフンの兄弟たち!
兄弟が出てくると、本筋とは違って笑いの要素が加わるんだよね。
そしてその時に流れる音楽にも大注目だよ!

ロック演歌とでも言おうか、GS調の曲に聞き惚れる。
カラオケあったら歌いたいくらい気に入ったよ。(笑)
そして三兄弟の地元、後渓(フゲ)愛の強さも良かったね。
ジョンヒの店に集まる常連さん達も良い味出してたよ!(笑)

韓国ドラマを連続して観たので、今度はアメリカにしてみたよ!
Netflixの人気ドラマとして必ず上位にランクインするのが「ストレンジャー・シングス」。
1980年代を舞台にしたSFホラーなんだよね。
80年代といえば、これはまさにROCKHURRAH RECORDSの得意分野じゃない?
使用される音楽がクラッシュだったりして嬉しくなっちゃうね!
超能力者の主人公イレブンが仲間と共に怪物を退治する話、と書いてしまうと簡単過ぎて荒唐無稽に聞こえちゃうかな?
ROCKHURRAH RECORDSも、子供が主役と聞いて躊躇していたけれど、観始めるとハマっていくんだよね。(笑)
子役とはいっても、アメリカの子供は一人前以上の役者で観ていて安心!
それぞれキャラクターが立っていて、良いんだよね。
ウィノナ・ライダーが母親役だったり、ユマ・サーマンの娘マヤ・ホークの出演も見どころだよ!
現在シーズン4が制作されていて、来年続きが観られるのかも。
子役が大人になってしまい、顔立ちが変わりそうだよね。(笑)

続いてはまたもや韓国ドラマで、漫画が原作の「ミセン -未生-」。
「絶対観て!」と友人Mの強い要望で観始めることになる。
ROCKHURRAHから「ミセンは見せん!」と言われるかとヒヤヒヤしたけれど、あっさり承諾を得る。(ぷっ!)
韓国では2014年に放映されていたというから、今頃観るのは遅いだろうけど?
学歴社会の韓国で、高卒の主人公が一流企業で奮闘する様を描いているドラマなんだよね。
数ヶ国語話せるエリートな同期入社の面々と上司達のキャラクター設定が良い味出してる!
それにしても、フラッと屋上に行くシーンが多くて、休憩時間が多いなと感じてしまうよ。
ドラマだからいいのか。(笑)
韓国は日本より就職が厳しいことがよく分かるドラマだったね。

他にもROCKHURRAHが「俺たちダーク村」で書いているドイツのドラマ「DARK」、「私立探偵ダーク・ジェントリー」、「マインド・ハンター」など数多くを視聴している。
ROCKHURRAH RECORDSにとって2020年はドラマ鑑賞の年になったね!

今年も残すところあとわずか。
来年はもっと良い年になりますように!
2021年もROCKHURRAH RECORDSをよろしくお願いいたします。

映画の殿 第40号 アウェイデイズ

20201101 top
【本編で流れるバンド達とフーリガンどもの記念撮影。縮尺合ってないな】

ROCKHURRAH WROTE:

映画館まで観に行った作品をこの「映画の殿」というシリーズ企画で取り上げる事は今までなかったんだけど、何と2年半も自分で書いてなかったのに気づいたから、こっちの方で書いてみよう。

新宿シネマカリテで細々と上映中の「アウェイデイズ」を観たい、とSNAKEPIPEを誘ったのは珍しくROCKHURRAHの方だった。
映画に関する興味の範囲がとっても狭く、大作や話題作にはまず行かない。
よほどの事がない限り映画館まで観に行きたいとは言わないROCKHURRAHなので「珍しく」なのだ。

ネットで面白そうな映画ないかな?と探していて、この映画の予告編を見たら突然、初期ウルトラヴォックスの「Young Savage」がかかっていたから「こりゃ観るしかない」と単純に思い込んだだけの話。
公開日を待って出かけようと計画したが、週末に別の用事が入ってるし上映期間が短そうだし、それで平日の夜を選んで行ってきたのもウチとしては珍しい出来事。

新宿シネマカリテは駅前映画館と言ってもいいくらいにアクセス抜群の位置にある小さな映画館。
過去にはジョニー・サンダースの映画「Looking for Johnny ジョニー・サンダースの軌跡」を観に行ったけど、この時もROCKUHURRAHが行きたがって観たんだった。
その手の音楽映画が多いってわけか。
19:20からの夜の上映だったけど、客の入りは予想よりは多く、ただし映画館としては情けないくらいのボチボチでかわいそうになるくらい、この業界も厳しいなと思ったよ。
しかも客層のほとんどが何でこの映画に来たのかわからないようなタイプの人々で理解に苦しむ。
まあ「とんかつDJアゲ太郎」とか行かずにここを選んだだけでも良しとしよう。

「アウェイデイズ(Awaydays 2009年)」は英国の作家ケヴィン・サンプソンによる小説が原作の映画で、2009年の作品なのになぜか11年も経ってやっと日本で公開されたというもの。
1979年のリヴァプールを舞台とした破滅的な青春映画に仕上がっていて、この当時のパンクやニュー・ウェイブがふんだんに使われているのが売りとなってる。

タイトルの”Awaydays”はフットボールのサポーターがライバル・チームの試合に遠征する事が本来の意味なんだが、この映画の中で扱ってるのは熱狂的すぎてタチの悪いフーリガンども。だから遠征といっても試合そっちのけで相手チームのフーリガンと乱闘やらかすのが目的、サッカーの試合シーンは皆無というありさま。
そんな人はいないけどフットボール青春映画だと勘違いしてサッカー好きの彼氏と観に行かないように。

1979年、イギリスのマージーサイドにあるバーケンヘッドという街が舞台となっている。
有名な都市リヴァプールの対岸にある街だそうで、造船所があるらしい。
ROCKUHURRAHが育った北九州で言えば戸畑と若松みたいなものか?地域の人以外にはさっぱりわからん例えだったかな。

主人公カーティは公務員をやっている若者で父親や妹と同居しているが、どうやら母親はすでに他界している模様。
具体的に何をしているのかはわからなかったが、叔父さんが上司を務める役所みたいなところで仕事中に似顔絵描いたりしてて、何もお咎めがないといういい身分。
おまけにアートスクールにまた戻りたいと言ったら「そりゃでかした」みたいに言われるお気楽な環境だよ。

しょっぱなから言うのも何だがこのカーティ、顔立ちも設定もファッションも全然イケてるとは思わなくて(おしゃれな人が多かった1979年だからなおさら)、主人公なのにどうでもいいキャラ。
パッとしないけどもう少し存在感がある俳優なら他にもいるだろうに、と思ってしまうよ。

妹とも仲が良く、写真は(こっちの勝手な理由で)遅れてしまった誕生日だかクリスマスだかのプレゼントを給料日に一緒に買いにゆくシーン。
孤独で平凡で面白くなかろうけど、これだけ見てると問題ない生活で恵まれてる方だと思うよ。
妹は高校生くらいなのか、あまり描写は出て来なかったが彼氏の代わりにお兄ちゃんに甘えるような、まだ幼い感じがする。写真では1960年代に誕生したイギリスのアウトドア・ブランド、マウンテン・エクイップメントのダウン・ベストを着ているね。こんなどうでもいい事を映画評で語るのはROCKUHURRAHくらいか。

カーティは地元リヴァプールの売出し中バンド、エコー&ザ・バニーメンのライブ会場でエルヴィスという若者に出会い、友達になる。
この映画のもう一人の主人公エルヴィスはカーティよりは顔立ちもまともだし、服装や髪型はすごく若い頃のジュリアン・コープをイメージしたような感じ。
革のジャケットにセーターはいかにも1979年、ニュー・ウェイブ以降のイギリスのバンドでありがちなファッションだし、大きめのM-65とか肩章のついたミリタリーっぽい服装とか、この時代のリヴァプールで流行ったものだ。

劇中でエコー&ザ・バニーメンらしきバンドを演じてるのはラスカルズだとの事だが、うーん、1970年代と80年代ばかりを語るROCKUHURRAHだからこの辺の(2000年代)バンドについては知らん、興味ないとしか言えない。
見た目だけでもせめてもう少し似たのはいなかったのかと残念な気持ちになるよ。

これが本物のエコー&ザ・バニーメンで曲は「All That Jazz」ね。
1980年に出た1stアルバムに収録。

リヴァプール出身としては最も有名になったバンドで、一番最初の頃はドラムがなく、ドラムマシーンを使っていた。
コルグのドラムマシーンがエコーと呼ばれてて(何でかは不明)、それがバンド名の由来になったという話。
ドラムがいなかった初期の頃もすごく良くて愛聴してたもんだ。
レコーディングのテクニックを使わなくてもシンプルなコードだけでも、後世に残る曲を作れるという見本みたいなのが初期のバニーズ(80年代的略称)だった。
うーん、上の曲とは関係ない感想だったな。
名曲揃いの1stの中では地味な曲で、何でこの曲を敢えて選んだんだろう?と思ってしまうよ。

エルヴィスは「パック」と呼ばれるフーリガンの一員で、カーティはその集団の仲間になりたがっているという設定。
エルヴィスのツテにより「俺の友達」みたいな感じでパックに出入り出来るというわけだ。
つまらん願いだが、願いは叶ったね。

イギリスを語る時に誰もが労働者と中流階級の格差、隔たりみたいなものを言うが、大昔の「小さな恋のメロディ」でも坊っちゃんの主人公、労働者階級の娘(ヒロイン)、労働者階級の親友という構図があって、その中での恋や友情が難しかったのを思い出す。
この映画もその辺の格差友情をテーマにしてるんだろうが、そこまで階級差を感じるものでもなかったから「小さな恋のメロディ」の方がよほど心に響いたよ(大げさ)。
もう一つの大きなテーマはあるんだけど、ネタバレなしで書くつもりだからエルヴィスの心情はしまっておこう。

パックに属するのは労働者階級の頭悪そうな奴らばかり(全く迫力ないが)、30代で6人の子持ち男がリーダーという、見るからにどうでもいいような集団。
そんな中にアートスクールなど行ってたカーティが入って受け入れられるものか、というのがエルヴィスの見解だが、うん、その通り。
一見さんお断りのような排他的な集団なんだよね。
こういうヤンキーどもの中でいっぱしに認められるにはもっとバカでクレイジーな事をしなけりゃいけない。

無理してなのか本気でこういう事をやって「はけ口」にしたかったのかは不明だけど、カーティはどんどんエスカレートして暴力的になる。右は乱闘中にキレたカーティのクレイジーさを表した写真だが、本編ではもっと変顔を見せてくれるよ。
カーティとエルヴィスのフラストレーションがあまり描かれてなかったから、おとなしい人が急に暴れだした、単なる危ない人が主人公の映画にしかなってなかったのが残念。え?描かれてたけど読み取れなかっただけ?

乱闘シーンでかかるのがマガジンの「The Light Pours Out Of Me」だ。
1978年の1stアルバムに収録でずっと後にバウハウスのピーター・マーフィーがカヴァーしてたな。
サッカー・チームとしてはリヴァプールの宿命のライバルだと思えるのがマンチェスター・ユナイテッド。マガジンはその敵地(?)マンチェスター出身のバンドだね。
シングル1枚だけでバズコックスを辞めたハワード・ディヴォートがやってたバンドで、粘着質のいやらしいヴォーカルと重厚で妖しい雰囲気の演奏が魅力だった。この曲単独のライブ・クリップがなかったので途中から貼り付けてみたよ。
これだけ画面のデカさが違うけど、諸事情があるので気にしないで。
マガジンは素晴らしいバンドなのでこの映画で興味持った人がもしいたら、ぜひ全曲聴いて欲しい。

左の写真見てわかる通り、何でこんな軍団に属したかったのかわからんほどにカッコ良くないのがパックの面々。
「アウェイデイズ」の原作者も監督もこの時代に実際にこういう事をやってたらしいので、これがその当時のリアルな姿で間違いないんだろうがなあ。
モッズやOi!(スキンズ)、テッズなどと違ってライフスタイルと音楽、ファッションが一致した集団じゃないのは仕方ない。単に同じチームを熱烈に応援してるだけの集まりだからね。
サッカーだからアディダスの限定モデルのスニーカーというのはわかるけど、そしてみんな制服みたいに同じ服装してたのはわかるけど、主人公を含め俳優たちの着こなしが全然似合ってなくて、SNAKEPIPEもROCKHURRAHも「こりゃひどい」という事で見解が一致したよ。

日本で言えばヤッケまたはカッパってところだろうが、アノラックというプルオーバー型のマウンテンパーカーみたいなもの。
ピーターストームというメーカーのはイギリス軍も使ってた由緒正しいアウターなんだが、雨が多く傘をさしたくない人が多いイギリスでは大変に重宝するから、アクティブな若者に大人気となる。

音楽的に言えば80年代にスコットランドで発生したギターポップの一派をアノラック(みんな着てたのが由来)と呼んでいたり、その後にマンチェスターで大ブームとなったマッドチェスターというムーブメントの頃に流行ったスカリーズというスタイルもアノラックが重要アイテムとなる。
どちらにも言える事だが、いわゆるスカッとカッコ良いロック・ミュージシャンのファッションとはほど遠い、その当時としては冴えない格好だった。
ROCKHURRAHも一時期アノラックなギターポップを聴いて、アノラックな音楽を作っていたが、こんな格好はしてなかったもんな。

今はゴアテックスとかの防水アウターがものすごく普及して立派な街着になってるから、マウンテンパーカーとかのヴァリエーションのひとつとして、またアノラックが流行り物になってるみたいだね。
確かにゲリラ豪雨とかスタジアムや野外フェスとかで雨が降った時には役立ちそう。

話が大幅にそれてしまったが、こんな乱闘ばかりしてるバカな集団と切れたがっているエルヴィスは音楽や芸術を愛する若者で、パックの中では浮いた存在。
同じく音楽好きのカーティとはいい関係になれると思っていたのだが・・・。
カーティはなぜか知らないがそんなバカな軍団の仲間になりたがっていて「そのココロは?」と問いたくなるよ。
エルヴィスと「仲間になるな」「いや、フーリガン王に俺はなる」などと諍いを起こしながらも友情を育んでゆく(?)。

写真はリヴァプールに実在したレコード屋プローブに仲良く買い物に行くところ。
並みの「アウェイデイズ」評では決して教えてくれないROCKHURRAHならではの得意分野になるが、妙なところで考証がしっかりしているのがこの映画の(個人的には)評価出来る部分。
レコード屋のドアにはリヴァプールに実在した伝説のライブハウスEric’sのポスターが貼られててマニアならニンマリしてしまう。

エリックスは70年代後半から80年代に花開いたリヴァプールのニュー・ウェイブ・バンドの多くがホームグラウンドにしていたライブハウスで、デフ・スクールやビッグ・イン・ジャパンなどを元祖として、数多くの有名バンドが巣立って行った場所だ。
物語の1979年には「言い伝え」並みの伝説的バンド、クルーシャル・スリーから別れた3人がエコー&ザ・バニーメン、ティアドロップ・エクスプローズ、ワー!ヒートという偉大なバンドをそれぞれ立ち上げて、その後に人気となる。その夜明け前くらいの時代だ。
ただしクルーシャル・スリーなどと探しても発掘音源も出てこない。
ただ単に有名になったミュージシャンが学生時代に一緒にやろうと始めたバンドに過ぎず、インタビューとかで「昔こういうバンドやってたんだよね」くらいのシロモノ。実際にちゃんと活動してたかさえ怪しいのに、ここまで有名になったバンド名というのも珍しい・・・。
そういう意味での「言い伝え」というわけだ。

他にも80年代ニュー・ウェイブ好きなら誰でも知るデッド・オア・アライブやフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、オーケストラル・マヌヴァース・イン・ザ・ダークなどなど、みんなエリックスのお世話になってるのは確か。
リヴァプール出身のバンドについて語っていたら「サタンタンゴ(7時間超えの長い映画)」が終わるほど。
実際は誰も知らんようなバンドがその何十倍もひしめき合ってたのが80年代リヴァプールの世界だ。

で、入ってゆくレコード屋プローブもリヴァプール好きにはたまらないプローブ・プラスというレーベルを持っていて、ちょっとマイナー系が多いが、メロトーンズやハーフ・マン・ハーフ・ビスケットなどは愛聴してたもんだ。愛聴多いな。
話がまた大幅にそれてしまったが、まともな映画評じゃなくてこの脱線こそがROCKHURRAHの書ける部分なのは確か。

この事をぜひ書いて欲しいという要望があったから書くが、映画の中で何回も出てくるのが頭突き。
レコード屋のシーンでも登場したんだけど、イギリスではポピュラーなケンカ術なのだろうか?不意打ちという点では有効だろうけど、これもまたフットボール文化の国ならでは。

エルヴィスが普段何をやってるのかは知らないが、途中で私物を売ってる古道具屋みたいな露店に立ってたから、きっとそういう仕事をしてるんだろうかね。ブラブラしてそうな割には意外といい部屋に住んでいるんだよね。
こんな出口のない生活を「いつ終わる?」とか、抜け出してベルリンに行きたいとか、彼らくらいの歳にもっと情けない四畳半の極貧暮らしをした我が身を思うと羨ましいばかり。
世の中には上も下(「男おいどん」とか「マイ・ディア・ミスター」のイ・ジアンとか)もあるからROCKHURRAHくらいでもまだマシな方なんだろうね。

写真中央に写ってるのが上に書いたリヴァプール・パンクの偉大な先駆者、ビッグ・イン・ジャパンのポスターで、これにもニヤリとしたROCKHURRAHだった。
このバンドが偉大なわけではなく、メンバーの大半が後の時代に有名になるという点で、80年代リヴァプール好きなら最重要だと言えるバンドなのだ。
「 From Y To Z And Never Again 」はたった2枚しか出なかった彼らの2ndシングルでROCKHURRAHも持ってたよ。
これまたリヴァプールを代表するZOOレーベルの記念すべき最初のシングルだったね。だからこんなに大きなポスターがあったのか。
本物が残ってたのか後から美術の人が作ったのか知らないが、この時代の音楽好きの部屋をうまく再現したものだ。
当時はものすごいヴィジュアルのジェーン・ケーシーがROCKHURRAHのアイドルで、Eric’sレーベルからの1stシングルも2枚も持ってたな。

エルヴィスの会話の中で「ダレク・アイのライブに行こう」と名前だけ出てきたのがこれ、リヴァプールの相当マニアじゃないと知らないマニアックなバンドがDalek I Love You。
後にティアドロップ・エクスプローズの主要メンバーになるデヴィッド・バルフェとアラン・ギルを中心にしたB級バンドだ。
かつてはROCKHURRAHも数枚持ってたが、錚々たるメンバーの割にはチープで、熱烈に好きになる要素がなかったな。
デヴィッド・バルフェは上に書いたビッグ・イン・ジャパンのメンバーでもあったけど、ブラーやシャンプーで有名なフード・レーベルのオーナーとして後の時代に名高い人だ。
Dalek Iには後のオーケストラル・マヌヴァース・イン・ザ・ダークのアンディ・マクラスキーもいたけど、複雑怪奇なリヴァプールの人脈をいちいち語ると「アンビアンス(上映時間720時間という世界一長い映画)」が終わってしまうほど(大げさ)。

後半になるとせっかく仲を育んだ二人の行き違いが増えて、さらにパック内での内紛、カーティの家庭内事情が情けない暴行事件にまで発展して、映画としては一番見どころとなる。この辺については敢えて書かないけどね。

ハナからまともな映画感想にはならないと自分で予想してたけど、ROCKHURRAHの書きたい部分が映画のテーマや物語ではなく、79年のリヴァプールや音楽について。興味の方向が違うので他の人の参考にはならないだろうな。

物語の冒頭、カーティが全力疾走するシーンで使われていたのがウルトラヴォックスの「Young Savage」、予告でも使われていたからこれがメインテーマとなるのかね。
映画の舞台となったリヴァプールとは特に関係なさそうだから、単に監督か音楽監督が当時好きだったから使ってみた、という感じかな?
元々タイガー・リリーというグラム・ロック寄りのパブ・ロック・バンドをやってたのがウルトラヴォックスと改名して、パンクの初期から活動してたバンド。
当時大ヒットしたチューブウェイ・アーミーのゲイリー・ニューマンが影響を受けたと公言して、そこから再評価されたけど、早すぎたニュー・ウェイブ・バンドだったね。
日本では三宅一生が出てたサントリーのCMで使われたので有名になり、ニュー・ロマンティックの時代に活躍した印象が強いけど、ミッジ・ユーロ加入前のジョン・フォックス時代が最高(ミッジ・ユーロもPVC2とかリッチ・キッズの頃は良かったけどね)って人も多いだろう。そんな初期ウルトラヴォックスの代表曲がこれ。釘を打つようなリズムと早口言葉のようなアグレッシブなヴォーカルに痺れるね。

過去に何度もジョン・フォックスを「エラの張ったオバチャンみたいな顔」とブログ記事で書いたのに、今はじめて自分で気づいたかのように「オバチャンみたいな顔だね」とSNAKEPIPEに言われてしまった。うーむ、人の記事全然読んでないな。

ライブハウスでカーティがナンパしようとした女の子が実はエルヴィスの幼馴染(?)だったというシーンで使われていたのがジョイ・ディヴィジョンの「Insight」だ。この曲は他のシーンやエンド・クレジットでもしつこく使われていたな。よほどこの曲が好きだったと見える。
「Insight」を歌ってるライブ映像がなかったから、これは誰かが他の映像と組み合わせて捏造したものだけど、一応動いてる映像が欲しかったんで我慢するか。イアン・カーティスの伝記映画「コントロール」のシーンが合成されてるね。
マガジンと同じくリヴァプールの宿敵、マンチェスターを代表するバンドで、今でもあちこちに名前が出てくるほど信者が多いね。
1979年はジョイ・ディヴィジョンがファクトリー・レコードから1stアルバムを出した頃で、誰もが熱狂・・・とまでは言わないが至るところで「すごいバンド」と評判になってた頃だね。
エルヴィスがジョイ・ディヴィジョンから特に影響を受けてたような言動もあったが、ROCKHURRAHも大昔に書いた記事にある通り、このバンドから連想する数々の思い出があるよ。

音楽的にも文化的にもこの当時の北九州に馴染めず疎外感を持っていた若き日のROCKHURRAH、映画のエルヴィスのように「この街を逃げ出したい」といつも考えていたもんだ。
楽しみは高速バスに乗って福岡まで一人でレコードを買いにゆくだけという孤独な少年だったが、そんな危険な精神状態の時に出会ったのがジョイ・ディヴィジョンだった。

関係ないけどROCKHURRAHが高1の時、直接知らない先輩が飛び降り自殺をしたというショッキングな出来事があった。
その先輩が綴った、世に出る予定のなかった文学作品が死後に自費出版されて、不謹慎だとは思うが興味本位で買ったものだ。
それから何十年・・・ROCKHURRAHの出た高校の人以外、誰も知らないだろうと思ったその人の遺作と日記が普通にアマゾンとかに売ってて、知ってる人も多数だと知り、とても驚いた。
山田かまちと一緒で17歳で夭折した作家として、普通に文学作品として語られているのだ。
逼塞感に満ち溢れたその人の詩を読むとイアン・カーティスと見事にオーバーラップしてしまう。
なんて事を思い出した次第。

ちなみにウチのブログにはじめてコメントを頂いたのがこの記事(上のリンク)で、北九州出身のミステリー作家、鳥飼否宇先生からのコメントだった事にSNAKEPIPEと二人で大喜びしたものだ。
それからも何度もコメントを頂いて、それを励みに14年も休まずブログを続けられた。
これもジョイ・ディヴィジョンやディス・ヒートにペル・ユビュといった音楽を、偶然同じ頃に同じ北九州で聴いてたという奇妙な「縁」から始まったんだな。
どこにも居場所がないような故郷の街だったけど、その窮屈さが懐かしくもあるよ。
いや、文脈的に今書くような話じゃないのは承知だけど、自分で当時に書いた事を読み返して懐かしむのも老化現象のはじまりなのか?

ブログの後半は映画というよりはROCKHURRAHのいつものパターンとなってしまったね。

全体として当時のニュー・ウェイブがふんだんに使われているところはいいけど、音楽がとても盛んなリヴァプールを舞台にした割にはご当地のバンドがあまり使われてなかったのが残念なところ。ポスターとかマニアックに用意したんだから余計にね。

最後に映画とは関係ないが、ライブ・クラブ、エリックスの歴史を振り返る映像で締めくくろう。
曲はジョニー・サンダースでこれまたリヴァプールとは特に関係ないけどな。ピート・ワイリーのWah!がこの曲をカヴァーしてたからそっちにしてれば良かったのに。

ネタバレを全然しないように書いてきたから映画後半の筋も全く触れてないけど、まあ明るく終わる雰囲気の映画じゃないのは予想通りだろうね。
カーティとエルヴィス、そしてパックの面々との関係がもっと描かれていたらもう少し映画としては見どころがあったんだろうが、そこまで深い絆もなかったところが逆にリアルな当時の姿だったのかな、と思うよ。

おそらく大ヒットするとは思えないし、公開が終わった後でDVDになったり、どこかで配信されるかさえ不明の映画だから、11年後でも観れて良かったよ。

それではまた、Ta-ra for now!(リヴァプール的表現で「またね!」)