収集狂時代 第2巻 高額アート編#02

【ROCKHURRAHが制作した、なんとなく現代アートっぽい作品(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

シリーズ化しようと思っていたのに、すっかり忘れてしまっていたこの企画!
2011年11月に書いたきりになっていた「収集狂時代」は、コレクターズアイテムを紹介する記事である。
第1回目に書いたのは、高額で取引されたアート作品について。
写真と絵画と彫刻という分野で、最も高く売買された作品を紹介したんだよね。
アート作品の値段ということでは、2014年8月に書いた「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」鑑賞での台湾資本のヤゲオ財団が所有するコレクションを思い出すね。
この展覧会は珍しく作品の金額について触れていて、オークションでの落札金額が提示されていたっけ。
実際に展示されている作品をヤゲオ財団がいくらで買ったか、ではなくて同じタイプの作品はこんな金額でしたよ、というヒントだったけどね。
鑑定士と顔のない依頼人」という映画の中にもオークションの様子が出てきて、まるで市場のセリのように金額が飛び交っていたよね。
実際にアート作品の競売風景を見ることはないので、興味深かったね!

今回は2014年版の高額アート作品について書いてみようかな。
高額ランキングには必ず入っている印象派の絵画は抜かして、現代アートに絞っていってみよう!
2014年11月時点でのランキング、日本円のレートってことでよろしく。

2014年5月、ニューヨークのクリスティーズのオークションで売りに出され、今年の最高金額を付けたのがバーネット・ニューマンの「Black Fire I」(画像左)だ。
この手の絵画を理解するのは本当に難しくて、究極は「好き/嫌い」で良いと思っているSNAKEPIPEだけど、一応調べてみようか。
自己批判を繰り返しながら余計な物をそぎ落とし根本的な要素まで還元し、形態・輪郭・色彩が平面上ですべて一つになる「形態的な純粋性」にいたる途上にあるモダニズムの前衛として評価されているとのこと。
カラー・フィールド・ペインティングと呼ばれるそうだ。
解るような解らないような説明だけど、まあ良いか。(笑)
確かにシンプルこの上ないけれど、絶妙なバランス感が心地良いよね。
バーネット・ニューマンってどこかで聞いたことがあるな、と思ったら!
千葉県佐倉市にある大好きなDIC川村記念美術館 にバーネット・ニューマンの代表作「Anna’s Light」があったはずだけど?
残念ながら2013年10月、今から1年前に美術館が手放しているみたい。
その時の落札金額107ミリオンダラー、日本円で124億7500万円也!
うひゃー、ゼロの数を数えるのが大変なのよ。(笑)
さすがにバーネット・ニューマンの代表作なだけあるよね。
それにしても、佐倉にあるうちに鑑賞するべきだったなあ!
「Black Fire I」は今年の最高金額で84ミリオンダラー、97億8000万!
誰が買ったのか、気になるところだよね!

2014年の高額ランキング第2位はフランシス・ベーコンの「Three Studies for a Portrait of John Edwards」で80ミリオンダラー、93億9000万円!
ベーコン得意の三幅対、きっとこの絵は2013年3月に「フランシス・ベーコン展鑑賞」の時に観ているはず。
3枚で1組セットの実物は、迫力満点で存在感抜群なんだよね!
100億近い金額で購入できる人なら、絵のための部屋を用意するだろうな。
自宅にベーコンの絵があるってすごいよね!
ベーコンは非常に人気があって、144ミリオンダラーで取引された作品もあるんだよね。
144ミリオンって168億円ね!(笑)

続いて第3位はマーク・ロスコの「Untitled」が66ミリオンダラー、76億9000万円で取引されているね。
前回もそうだったけど、書いているうちにだんだん金額に驚かなくなってしまうのが不思議だよね。
ジャンボ宝くじの6億も当たらないっていうのに、76億だもんね。(笑)
1位と3位が共に抽象絵画で、どちらも前述したDIC川村記念美術館に縁のあるアーティストという点に注目かな。
DIC川村記念美術館には世界に3つしかない「ロスコ・ルーム」があるからね!
千葉県民として誇りに思うよ!(大げさ)
「ロスコ・ルーム」については今までブログに書いているから詳細は省くけれど、本当に素晴らしい何度でも通ってずっと室内に身を置いておきたい部屋なんだよね!

彫刻部門では2014年11月4日サザビーズでアルベルト・ジャコメッティの「Chariot」が100ミリオンダラー超えで落札されたとのこと。
117億3000万!
今までの彫刻部門ランキングでもトップのジャコメッティ、1位と2位を独占することになるんだね。
3位にランクインしているのがジェフ・クーンズの「Balloon Dog (Orange)」。
ジェフ・クーンズは人をおちょくっているようなタイプの作品が多いので、高額で取引されているのを知って驚いた。
かつて一世を風靡したポルノ女優で国会議員のチチョリーナと破局していたことも初めて知ったよ。(笑)

クリスティーズやサザビーズのオークションでの落札金額は、アーティストの人気度や評価の高低を知る目安になるよね。
今回はトップ3しか書いていないけれど、SNAKEPIPEには全く知識がなかったアーティストの作品が高額取引されているのを知り、どんな作品なのか興味を持つきっかけになったり。
億単位の金額に驚くだけじゃなくて、注目されているアーティストの情報を仕入れるソースとしての役割も担っているんだろうね。
購入できないからこんな書き方になっているのがバレバレだ。 (笑)
世界のコレクターズ・アイテム探し、次はどんなアイテムにしようか。
また書いてみよう!

収集狂時代 第1巻 高額アート編#01

【これが紀元前3000年の作品「Guennol Lioness」。素晴らしい出来にうっとり】

SNAKEPIPE WROTE:

先日テレビで「最も値段の高い写真」が紹介されていた。
オークションで付いたお値段が3億3千万!
ほー、写真にもそんなに高いお値段がつくんだなあと感心してしまった。
「写真は芸術ではない」
という風潮が昔にはあって、複製できる写真は一枚しか現存することがない絵画に比べると軽く見られがちだからね。
またいつひっくり返るのか判らないけれど、今のところの写真部門第一位の最高値を付けた写真がこちら。
1955年ドイツ生まれのアンドレアス・グルスキーの作品「Rhein II」(1999)である。
スティッチング技法という聞きなれないテクニックを使用して制作されているとのこと。
これは何枚もの写真をつないで一枚の写真にする方法なんだって。
そのためキメの細かい、大きな作品に仕上げることができるそうである。
今回の作品もかなり大きく81 x 140インチ…ってことは205.74 × 355.6cmとのこと。
そうね、写真としてみるとかなり大型作品になるんだろうね?
恐らくほとんどの人がこの作品を観ても意味不明だと思うけれど、観る人によっては高い価値を持つ作品なんだろうなあ。
きっと実物を鑑賞しないと解らないような気がするよ
なーんて観ても解らなかったりして?(笑)。
アンドレレアス・グルスキーという写真家は2007年にも「高額写真ランキング1位」になったことがあったらしく、その時は「99 Cent II Diptychon」という作品で2億5千万円也!
ひゃー、すごいねこの5年間で6億近くを手にするとは!
写真家ってなかなか金持ちになれないと思うんだけど、グルスキーは別格なのかな。
写真家というよりも現代アートに近い感じがするしね?

写真家で2番目に高い値が付いたのはシンディ・シャーマンだって。
1981年に制作された「アンタイトルド」シリーズ、例のシンディが女優みたいに自身を着せ替えてるセルフポートレートね。
これが今年の5月に$3,890,500、ということで2億9千800万、ほとんど3億円の値が付いてるとはすごいねえ!
やったね、シンディ!(笑)
高額写真のリストを見ると、エドワード・スタイケンアルフレッド・スティーグリッツリチャード・アベドンアッジェなどの大御所写真家の名前もあってちょっと驚き。
現代アート寄りの写真が高額、と決まってるわけじゃないんだねえ。
ふーむ。

では絵画部門はどうなってるんだろう?
これまたいつ順位が変わるのか判らないけれど、現段階での一位はジャクソン・ポロックの「No. 5, 1948」で、お値段なんと140ミリオンダラー!
ってことは…ひゃっ、107億!!!
しかもこれ、現在のレートで計算してるからねえ。
ここまでの円高じゃなかったらもっとお高いんだろうね。
見慣れない桁数でパッと金額がでてこないよ。(笑)
2位はデ・クーニングの「Woman III」で137.5ミリオンダラー、105億円也!
1位と2位の差がたったの2億か、と思ってしまったSNAKEPIPEがおかしいのかな?
金額が巨大すぎるから、1、2億の違いじゃ驚かなくなってくるから不思議だよね。(笑)
はい、続いて3位はグスタフ・クリムトの「Portrait of Adele Bloch-Bauer I 」、135ミリオンダラー、103億ね。
2億ずつの違いだから、きっと近い将来また順位の変動がありそうだよね!
その昔、調べてみたら1987年だったけど、安田火災海上が「ゴッホのひまわり」を当時の金額にして58億で購入というニュースを聞いた時には「すごい金額!」って思ってたけどねえ。
ちなみに日本人で高額落札者として名前があるのが大昭和製紙(現・日本製紙)代表取締役名誉会長だった齊藤了英って方。
1990年ゴッホの「Portrait of Dr. Gachet」を125億円で、ルノアールの「 Bal du moulin de la Galette」を119億円で落札してるんだねえ。
しかもこの2枚を買ったのが2日違い!
3日間で240億円を使うってすごいよね。
なんてバブリーな話題!(笑)

続いて彫刻部門!
10位以内に3つの作品が入っているのはジャコメッティ
104、53、27それぞれミリオンダラーってことで総額約140億円。
さすがジャコメッティ、知名度が違うよね。
彫刻部門は他にピカソやマティスが入ってることにちょっと驚き。
更に驚いたのが紀元前の作品が2つも10位以内にラインクインしているところ。
当然ながら「作者不詳」の作品なんだよね。
美術館で所蔵されていたけれど、オークションにかけられたみたい。
美術館とか博物館に展示されていたような歴史的にも美術的にも価値がある作品を自分のモノにするってどんな気分だろうね?
Guennol Lioness」という名前で呼ばれているメソポタミア文明(紀元前3000年)の彫刻は、人間のようにも見える不思議な動物をイメージしているようだ。
写真で観るだけでもその作品にはとても強い力を感じることができる。
恐らく岡本太郎が目指していたモノに近いんじゃないかな?
現代人にはとても真似ができそうにない、ピュアな作品だと思った。

美術品の値段というのは、恐らく買い手が決めることがほとんどで、その買い手側の何かしらの事情によって高額で売買されたり、されなかったりするんだろうね。
好事家が「絶対この作家の作品買う!」って決めたら、相手が「うん」と言うまでお金を積み上げるだろうし。(笑)
時代の変化が作家の評価に影響する場合もあるしね。
デパートで売られているような物品と違うから、コストに対しての利益を考えて値段が決められる種類のものでもない。
それなのに億単位のお金が動く世界、すごいよね!
世界中にたくさんのコレクターがいて、お金持ってるんだなーと改めて知ったSNAKEPIPE。
特に2000年を過ぎてから余計に高額出費に拍車がかかっているからね。
このコレクター関係の企画、また書いてみたいと思う。