映画の殿 第31号 Pedro Almodóvar「ペピ・ルシ・ボンとその他大勢の娘たち」

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【タイトルとは違ってボン、ルシ、ペピの順番で座ってるね!】

SNAKEPIPE WROTE:

7月5日はROCKHURRAHの誕生日!
おめでとうROCKHURRAH!(笑)
いつもは難航するプレゼント選びも、今年はすんなり決まって良かった。
気に入ってもらえたようで何より。
ささやかだけどお祝いもできて良かったね!

前回の「映画の殿」で紹介したのは、スペインの映画監督であるペドロ・アルモドバルの作品「マタドール」である。
32年前に公開された映画を鑑賞できて嬉しかったことを綴っている。
アルモドバル監督作品については、2013年に「好き好きアーツ!#22 Pedro Almodóvar part1」から驚きの4回連続で特集しているので、ご参照下され!
アルモドバル監督の未鑑賞作品は、全部で4つ。
あともう少しで全作品制覇だね!

2017年3月にHDリマスター版として、DVD化されていたことに気付いたのは今年に入ってからかもしれない。
まさか30年以上も前の作品が脚光を浴びて、現代に蘇るとは思っていなかったからね。
アルモドバル監督作品の鑑賞を心待ちにしていたROCKHURRAH RECORDSにとっては嬉しい誤算だよ!(笑)
また調べてみたところ、どうやら未鑑賞作品である「ハイヒール」も「欲望の法則」もDVD化されている模様。
これもいつの日か鑑賞できることが分かって楽しみだね!

今回はアルモドバル監督の処女作とされる「ペピ・ルシ・ボンとその他大勢の娘たち(原題:Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón 1980年)」を鑑賞した。
今から38年前の作品だね!
早速、感想をまとめてみよう。
まずはトレイラーね。

タイトルにトレイラーと書かれてはいるけれど、これが本当のトレイラーだったのかは不明。
なんとなくの雰囲気が分かってもらえたら良いかな?
タイトルバックで使用されている曲はLittle Nellの「Do the swim」みたい。

せっかくなので「Do the swim」も載せておこうね。
イントロ部分がRamonesの「Beat on the Brat」に似てる、とROCKHURRAHが言う。
確かに似てるんだよね。(笑)
ポップな曲調をキャンディーボイスで歌う王道タイプ。
コミカルな感じもウケるだろうね。
「ポロリ」があるところが、いかにも70年代だよね!(笑)
この映像、テレビだったみたいだけど大丈夫だったのかな?
ちなみにLittle Nellはカルト映画として名高い「ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー」や「ジュビリー」などにも出演しているんだね。
どうやら今でも現役のようだよ!

では「ペピ・ルシ・ボンとその他大勢の娘たち」のあらすじを書いてみようか。

自宅の窓際で大麻を栽培していたペピは近所の警官に見つかり、口外しないことをタテにレイプされてしまう。
復讐のため友人のボンを使って警官の妻ルシを凌辱するが、極度のマゾヒストであるルシの性癖が意外な方向に働き、3人は逃避行を始める。
怒った女性差別主義者の夫はペピ、ルシ、ボンの3人を追跡する…。(Amazon商品ページを一部改変)

このあらすじを読むだけで、どれだけハチャメチャな内容なのか分かるよね。(笑)
「大麻」「レイプ」「陵辱」「マゾヒスト」という単語が並んでるし。

主役の一人であるペピを演じたのはカルメン・マウラ。
アルモドバル監督作品ですっかりお馴染みだし、他のスペイン映画にも数多く出演しているスペインの国民的女優だよね。
どうやら良い家柄に生まれたようだけど、離婚をきっかけに好きな道に進んだようで。
アルモドバルと知り合った時には演劇をやっていたみたいね?
恐らく意気投合して映画に出演することになったのだろうと想像する。
映画は完成までに1年半かかっているらしいので、監督はもちろん、関係者全員の情熱が分かるよね。

ペピも遺産で暮らしていくことができる身分で、楽しいことをするためだけに生きているような女性。
どんな時でも楽しそうにしてたしね!
あらすじにあった大麻栽培をネタにレイプされた、というのはちょっと違うような感じだったよ。
実際には「体で許して」のように、自分から誘っていたようだったけど?
ペピにしか分からない理屈があるんだろうねえ。(笑)

父親から遺産だけを当てにしないで、自立を促されると広告代理店で働き始める。
そこでペピは、下着メーカーのコマーシャルを制作するんだよね。
この内容が下品で大笑いしちゃうんだよね。(笑)
そしてコマーシャルに出演しているのがセシリア・ロス。
「お漏らししたら色が変化するパンティ」や「おならのニオイが香水に変わるパンティ」って想像しただけで面白い。
この映画の時のカルメン・マウラは35歳くらいかな?
肌を露出する大胆な服装や、ど派手な化粧をしていたからもう少し若く見えたよね?

左は割と最近の写真なんだけど、そんなに変わってみたい。
多分70歳くらいだと思うけど、ずっとカメラの前で演じているとシャキッとするんだろうね。
これからも女優を続けて欲しいね!

ペピ、と来たので次はルシね。
ルシ(画像右)は 性差別主義者でペピをレイプした警察官の妻なんだよね。
家事や編み物をして夫の帰りを待つ貞淑な妻だったはずなのに、ペピと関わることで本来の自分になることができた女性。
言い方がきれい過ぎたかな?(笑)
あらすじにあった極度のマゾヒストが、このルシだからね。
警察官と結婚したのは、乱暴に扱われるだろうという期待があったからだった。 
ところが母親のように扱われ期待ハズレだった、と告白するのである。
そしてペピの家に遊びに来たボンから「ゴールデンシャワー」を浴びて悶えてしまう。
うーん、変態だね。(笑)
そしてボンの恋人になってしまうのである。

平凡な主婦だったルシが、バンド関係者やアーティスト達に物怖じせずに接したり、バンドに興味を持つのは少し不自然な感じがしたけど、愛するボンがいるからということにしておこうか。(笑)
編み物している平凡な主婦の時と、ボンと恋仲になってからでは顔つきが変わって見えたのは、さすがに女優だな、と思ったよ。
そしてまたルシは変化するんだよね。
自己主張する権利があると気付くと、更にマゾっぷりがエスカレートしちゃうんだもの。
主役3人の中で一番の変態はルシに決定だね!(笑)

ルシを演じたのはエヴァ・シヴァ。
「ペピ・ルシ〜」以降も「セクシリア」や「バチ当たり修道院の最期」などの初期作品に出演していたようだね。
現在もまだ女優として活動しているようだけど、スペインのテレビドラマなのかもしれない。
これが最近の画像なんだけど、昔の面影は残っているかな? 

最後はボンね。
ボンはパンク・バンド「Bomitoni」のギターとヴォーカルを担当している。
ROCKHURRAHが「映画の殿 第28号 パンクロッカー、スクリーンに現る」で記事にしたデレク・ジャーマン監督の「ジュビリー」の影響を受けているように見える化粧をするんだよね。
アダム・アントが片目だけメイクしていたように、ボンも片方の眉だけ描いたりする。
TOYAHの雰囲気にも似ていたように思うよ。
ボンは同性愛者であることを公言し、40代の年増が好みだという。
ルシを一目見て気に入り、恋人になるのである。

ステージに立つボンが歌うのは、恋人ルシに捧げる曲なんだけど。
この歌詞に放送禁止用語が入っていて、またもや大笑いしてしまう。
聴いているルシは大感激してたけどね。(笑)
「Bomitoni」は同性愛者で構成されているようで、ボンの右にいるトニもゲイ。
キーボード兼ヴォーカルもゲイだったよ。
ボンとルシはうまくいっているかと思われたけど、運命の相手にはならなかったようで、残念だったね。

ボンを演じたのはMaría Olvido Gara Jovaこと、アラスカ。
アラスカってステージ名、珍しいよね。
どうやら「ペピ・ルシ〜」の時は17歳だったようで、映画の設定と同じなんだよね。
それなのに年増好みとは。(笑)
ものすごく自然に演じていたし、35歳のカルメン・マウラ相手に全く動じてなかったのは見事!
現在も歌手として活動しているみたいだよ。
化粧のせいで「アダムス・ファミリー」っぽく見えてしまうね。

ルシの夫で、ペピをレイプした警察官がこの男。
いかにも助平そうな顔立ちだよね。 
前述したようにレイプとは言っても、ペピ自らスカートをめくって股間を露わにして見せたからね。
行為に対してというよりも、処女を奪われたことにのみ怒りを感じているようなので、貞操観念の違いがあるみたいだけど。
処女に関しての考え方もかなりペピは特殊だと思うので、警察官だけを一方的に責めるわけにもいかないような?

警察官は実は双子だったんだよね。
真ん中にいるのがルシで、警察官が左。
ペピの仕返しにより殴る蹴るの暴行を受けたのが右の弟(?)なんだよね。
あんなに近所に住んでいながら双子だったことに気付かないのもどうかと思うけど?(笑)
この警察官、余程の女好きと見えて、近所の別の女にも手を出す始末。
最後には大団円になって良かったけど、SNAKEPIPEは、こういう男はまた隙を見て浮気を繰り返すはずだと予想する。
ルシは大丈夫なのかねえ。

「ペピ・ルシ〜」にも、やっぱりアルモドバル監督は出演していたね。
時代のせいか、かなり長髪だよ。
このまま「ペドロ&カプリシャス」のメンバーになっていてもおかしくない風貌! 
名前も同じだしね。(笑)
この映画の中での一番お下品なシーンが、アルモドバル監督の登場により行われることになる。
名付けて「息子自慢大会」!(笑)
長さと太さを掛け算した点数で順位を付けるというのだ。
「18cm☓6cm」などとアルモドバルがメジャーで測り、叫ぶ。
それを電卓で叩いて「108よ!」と発表するペピ。
右の画像はズボンを下ろしている男たちの尻と、屈んでメジャーを使用しているアルモドバル。
信じられないようなサイズの持ち主がいることになっていて、アルモドバルが「夢でも見ているのか?」と嬉しそうにしているのが印象的だよ。(笑)
かなり昔に観たパゾリーニ監督の「ソドムの市」にも、少年達の股間を見定めるシーンがあったことを思い出した。
「ペピ・ルシ〜」のほうには笑いがあるけどね!

大好きなペドロ・アルモドバル監督の処女作が鑑賞できて、この上ない幸せだよ!
「ペピ・ルシ〜」は「4年にわたって深夜上映が続くほどのカルト的人気を博し、予算の7倍の興行収入を叩き出した(Wikipediaより)」 というから驚いちゃうよね。
スペイン人はお下品に寛容ってことが分かるよ。
自主制作で完成までの時間がかかり、深夜上映されたというエピソードは、デヴィッド・リンチの「イレイザー・ヘッド」と同じだよね。
本当に自分が撮りたい映画を撮るには自主制作しかないだろうから。
処女作から同性愛について語り、女性を自立させ、おかしなコマーシャルが入り、バンドの曲が流れ、アート作品が点在していたことがわかったね!
こうしてみると、アルモドバル監督の原点を観ることができたし、今でもその原点に近いところにいることがよく理解できたと思う。

最初にも書いたけど、未鑑賞作品が鑑賞可能なようなので、なんとかして手に入れないとね!
完全制覇、頑張ります、(笑) 

好き好きアーツ!#51 世界アート(仮)探訪 2

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【ワシントンD.C.にある国立航空宇宙博物館も行ってみたいね!】

SNAKEPIPE WROTE:

「もし行かれたら嬉しいな、と思う博物館特集」として記事にした「好き好きアーツ!#46 世界アート(仮)探訪」の続編を書いてみよう。
実際に行かれたらもっと楽しいんだけどね?

最初に紹介するのは、オランダはアムステルダムにある「拷問博物館」だよ!
行かれたら楽しい博物館なのかどうかは不明だけど、近くにあると聞いたら行ってみたいと思うだろうな。
数ある博物館/美術館の中からでも、選んでしまったくらいだからね。
左の画像は入り口の様子なんだけど、そんなに「おどろおどろしく」ないよ。
道を歩いていたら通り過ぎてしまうかもしれないね?

ヨーロッパの中世と聞くと「異端」や「魔女裁判」といった単語が浮かぶよね。
2012年2月に「大人社会科見学—明治大学博物館・爆音劇場—」という記事を書いた。
レプリカだけれど「鉄の処女」という拷問器具(?)を鑑賞する目的で見学に訪れた内容だった。
「鉄の処女」は実際に使用されていたのか不明だったけれど、この椅子は本物だろうね。
鉄のトゲトゲが鋭く体に突き刺さる仕組み。
鍼灸どころじゃないよね?(笑)
ウェブサイトには、他にもどうやって使うのかよく分からない器具の写真が載っている。
オランダ語で説明されても理解できないかも。(笑)
「拷問博物館行ってきたよ」と話のネタにするような博物館かもしれないな。
恐らく今は、この程度では済まされない苦痛を与える方法が編み出されているだろうね。
以前鑑賞したイギリスのドラマ「好き好きアーツ!#48 UTOPIA」での拷問シーン、すごかったもんね。
日常的に使う、誰の家にでもあるスプーンを使うというところが余計に恐怖だったよ。
ああ、恐ろしい!

次も「ちょっと痛そう」な博物館を紹介してみよう。
アメリカ、カンザス州にある「有刺鉄線博物館」だ!
有刺鉄線と聞いて思い浮かべるのは何だろう?
立入禁止、もしくは出られないようにする目的で使用されるのが有刺鉄線だよね。
フランスで発明された有刺鉄線は、アメリカにおいては牧場や農場の境界線を示すために使用されたらしい。 
「有刺鉄線博物館」が掲げる使命の中にも「有刺鉄線の歴史とアメリカの発展における重要性」を伝えること、と書いてあるよ。 
実はSNAKEPIPE、有刺鉄線って好きなんだよね。(笑)
鉄でできていて尖っているので、パンクな雰囲気を感じるからかもしれない。
好き、と言ってもこんなに種類があるとは知らなかった!
しかもそれぞれに名前が付いているみたいなんだよね。
その名前が手書きで書かれているところも味があるなあ。
博物館にはショップがあるようなんだけど、有刺鉄線グッズが販売されているのかな?
残念ながら商品ページのリンクが切れているようで確認できなかった。
非常に興味あるよ!(笑) 
カンザス州に行くことがあったら、是非見学してみたい博物館だね。 

次に紹介するのは「International Clown Hall of Fame and Research Center」というアメリカ、ウィスコンシン州にある「ピエロ博物館」だよ!
好き好きアーツ!#38Alex de la Iglesia part3」の中で「気狂いピエロの決闘」について書いた時、ピエロとクラウンの違いに触れたことを思い出した。
道化師というのがクラウンを意味し、ピエロとは涙を描いているクラウンのことをいうらしい、と非常に簡潔にまとめているよ。(笑)
日本ではどちらもピエロになってるので、「ピエロ博物館」で良いね?
「ピエロ博物館」のウェブサイトを観ても、何が鑑賞できるのかイマイチ分からないんだよ。
ほとんどリンクがないからね。(笑)
HPに記載されているミッションには「歴史を超越する希少な芸術形態であるピエロの役割を理解し、伝統を守り共有すること」とある。
ピエロと聞くとどうしても江戸川乱歩や前述の「気狂いピエロの決闘」などを連想してしまう。
スティーブン・キングの「IT」に出てくるペニー・ワイズや、そのモデルとされるシリアルキラーのジョン・ウェイン・ケイシーも思い出す。
ジョン・ウェイン・ケーシーが描いたピエロの絵については「シリアルキラー展 鑑賞」に書いているね。
SNAKEPIPEにとってピエロは笑いの対象というよりは恐怖を感じる存在になっているみたい。
「ピエロ博物館」は怖いもの見たさ、で行ってみたいね !(笑)

最後は「ROCKHURRAH RECORDSが死ぬまでに一度訪れたい博物館」の紹介ね。
ドイツはワイマールにある「Bauhaus Museum(バウハウス博物館)」だ!
1919年、建築家ヴァルター・グロピウスを初代校長としてスタートした学校「バウハウス」。
工芸・美術・写真・建築・デザインなどの総合的な教育機関だった。
1933年にナチス・ドイツにより閉鎖されるまで、合理的で機能主義的なアートを模索する。
現代にまで強い影響を与える活動をしたのが「バウハウス」なのである。
SNAKEPIPEが入学したかった憧れの学校なんだよね!(笑)
ROCKHURRAHが好きなバンド「バウハウス」もここからバンド名を採用しているとのこと。
機能性とデザイン性を兼ね備えていながらシンプルを極めるのが「バウハウス」の特徴なんだよね。
ROCKHURRAHは昔からそのデザイン性に惹かれていたという。
SNAKEPIPEもモホリ=ナギやカンディンスキーは知っていたけれど、「バウハウス」について知れば知るほど、興味が湧くアーティストがたくさんいることが分かる。
例えば「バウハウス」のポスターとして有名な左の画像だけど、作者は「Joost Schmidt」。
読み方はユースト・シュミットでいいのかな?
残念ながらSNAKEPIPEは知らないアーティストだったんだよね。
作品は観たことがあっても、作者名は知らないことが多い「バウハウス」。
建築や工芸の世界になったらもっと知らないことがいっぱいなんだろうな!
これは「バウハウス博物館」に行って勉強しないとね。
2019年に「バウハウス博物館」がリニューアル・オープンするようで。
その宣伝用映像を最初に載せてみたよ!
やっぱりカッコ良いね。

今回は「世界アート(仮)探訪」の第2弾を書いてみたよ!
きっと他にも面白そうな美術館や博物館があるはず。
将来の計画のために続けていきたい企画だね!

ダニエル・アーシャム Architecture Anomalies鑑賞

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【展覧会のタイトルを撮影。ライブハウスみたいだね】

SNAKEPIPE WROTE:

最近展覧会の鑑賞から遠ざかっていたため、アート作品に触れたい病にかかっていたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
「ちょっと面白そうじゃない?」
とROCKHURRAHが提案してくれたのは、渋谷にあるNANZUKA というギャラリーで6月30日まで開催予定のダニエル・アーシャム展だった。
NANZUKAも初めてだし、ダニエル・アーシャムというアーティストも初耳のSNAKEPIPE。
他に渋谷に用事もあったので、行ってみることにする。

ヒカリエの近くにあるギャラリーということなので、方向音痴のSNAKEPIPEでも分かるはず!
ヒカリエを目指し、裏手のシオノギビルまで来れば、ギャラリーはその隣のビルだからね。
地下にあるというので階段を降りてみる。
地下1階に到着すると「後ろにあるエレベーターで地下2階まで降りてください」と書かれた張り紙を発見!
まるで秘密地下組織のメンバーになるような気分で、エレベーターに乗り込む。
このエレベーターが小さくて古めかしいのよ。(笑)
こんな些細なことでも、ちょっと冒険めいた気分になってワクワクしてしまうんだよね。

エレベーターを降りると、また数段の階段を降りて会場に入る。
バーンと開けた会場なので、好きな順番に観て歩くことが可能だね。
作品数は多くないけれど、無料で開放されていて、更に撮影OKだというのは太っ腹!
もちろんバシバシ撮らせて頂いたよ。

では最初にダニエル・アーシャムについて簡単に説明しようかな。
1980年アメリカ、オハイオ州生まれの38歳。
現在はニューヨークを活動拠点にしているという。
芸術活動が多岐にわたり、立体作品やペインティング、建築やパフォーマンス、映画制作も行っているという。
「Fictional Archeology」(フィクション考古学)や「Future Relic」(未来の遺物)なんてタイトル聞くだけで興味が湧いてくるよね。
今回のタイトルは「Architecture Anomalies」で「科学的常識、原則からは説明できない逸脱、偏差を起こした現象を含む構造」がテーマだという。
解説すると難解な文章になるんだろうけど、作品はちっとも難しくなかったよ。(笑) 

会場入ってすぐ目に飛び込んできたのがこの作品。
椅子に座っている人にシーツが被せられているようで、観た瞬間にゾッとしたよ。
どんな状態で人がいるのか分からない、というのがこんなに恐怖を感じさせるとはね!
2017年12月に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #45 Sam Wolfe Connelly」の中に、同じようなシーツを被った人物を描いた作品があったことを思い出す。
あの絵も怖いんだよね!
今回の立体作品は、シーツだと思っていたら石膏みたいに固い素材でできていて意外だったよ。
中にマネキンが入っていたりするのかな。
どんな造りになっているのか不思議だったよ。

アーシャムのHPで確認すると、これは2017年のモスクワ・ビエンナーレで発表された作品みたいだね。
壁をギューっと引っ張って、紐状にして、結ぶ。
この作品も壁に張られた布を使用してるわけじゃないんだよね。
やっぱり石膏みたいな固い素材で作成されている。
説明にあったように「常識では説明できない現象」ということになるんだね。(笑)
結び目が和風な感じがして、ちょっとおめでたい雰囲気に見えたよ。

今度は手がニョッキリ壁から突き出てるよ!
右からと左から出てるので、このまま突き出して行って、握手したいように見えるよね。
もしくはこれらのパーツ全てが1人の人間の物なのかも。
その想像はまるでバラバラにされたパーツが壁に塗り込められている、江戸川乱歩を連想してしまうね!(笑)
壁に埋まっている人物は足だけ出てるけど、ちゃんと靴履いてる。
よく見るとアディダスのマークがちゃんと入ってるじゃないの!
どうやらダニエル・アーシャムとアディダスがコラボして「NY PRESENT ARSHAM」 というスニーカーが実際に販売されていたようで。
もしかしたらそのスニーカーが使用されていたのかもね?
アディダスの部分も撮影したんだけど、ピンぼけだったので載せていないよ。(笑)

まるで時計が自らの意思で壁の中に滑り込んでいくように見えてしまう作品。
無機物に意識が芽生えるというのは「2001年宇宙の旅(原題:2001: A Space Odyssey 1968年)」に出てくるHAL以来、特に目新しいテーマではない。
それでもやっぱりこうした作品を目にすると考えさせられるんだよね。
時を刻み続けることへの嫌悪、過去の悔恨と消去願望とか?
えっ?陳腐?(笑)

完全に壁の中に埋まってるよ!
どう見ても好きで埋まったとは思えないんだよね。
財産目当てで始末されて、壁に埋め込まれて上から石灰かけられたけど、実際にはまだ生きていて、壁から出てこようともがいているところ?
もしくは隠れんぼしてシーツの裏にいたけど、発見されないまま年を取ってしまったとか?
ちょっと肥満体に見えるので、新手の吸引式ダイエットを行っているところかも?
かなり強引な想像をしてみたけど、この作品も中に人がいるように見えるシリーズで、同じように石膏みたいに固い素材でできていたよ。
最初のシーツ被っている作品と壁男からは犯罪めいたニオイがしちゃうね。

ダニエル・アーシャム展は六本木にあるペロタン東京というギャラリーと同時開催されているよようだ。
ペロタン東京では別のシリーズ「Color Shadows」が展示されている。
今回はNANZUKAだけを鑑賞したけれど、ダニエル・アーシャムの映像作品も気になるなあ。
過去にNANZUKAで開催されたダニエル・アーシャムの作品は、「SNAKEPIPE MUSEUM #41 Regardt van der Meulen」で紹介した作風に似ているように見える。
人体をパーツとして捉える雰囲気が近いと感じたんだよね。
ダニエル・アーシャム、リガルト・ヴァン・ダー・メーレンどちらの作品も実際に目にしていないので、画像だけの判断での根拠のない発言だよ。(笑)

ダニエル・アーシャム、これからも注目だね!

俺たちペイン団

【マンネリだけど完治祈願でPainに関するビデオを作ってみたよ】

ROCKHURRAH WROTE:

半月ほど前にちょっと無理をしてしまい、急に腰を痛めてしまった。
その手の代表的な痛みというと誰もが思うのがぎっくり腰か椎間板ヘルニア、たぶんそれに近いものなのかな?
実はこの歳まで腰痛に悩まされた経験が一度もないのでよくわからないが、ぎっくり腰だろうがヘルニアだろうが、もっと激痛で動けなくなるという話をよく聞く。そこまでじゃないので毎日ちゃんと歩いて働いてはいるんだが、本当はもっと安静にしてないと治りにくいのは確かなんだろう。
ゆるい服装で家にいる時は日常の動作は問題なく出来るのに、靴を履いてバッグを持って歩くとだんだん痛みが出てくる。上半身と下半身がそこで分離したみたいな、かなりイヤなタイプの痛みなので早く完治したいものだよ。

というわけで最近ROCKHURRAHはこればっかり書いてるという噂の「俺たち◯◯シリーズ」、今回のテーマは自分にとって今一番密接な「痛み=pain」としてみよう。

割とポピュラーな英語で誰でも知ってるだろうし一部の薬の名前やペインクリニックという医院の名前で使われたりする。 が、日本人がこれをわざわざ英語で使う機会はあまりないと思える単語だな。
ペイン自体は体の痛みだけでなく精神的な痛みにも使える便利な単語らしいので、これが含まれる曲名も割と多く存在してるに違いない。さっそく探してみよう。

毎回ブログを書くのにどれだけ時間がかかってるんだ、と言われてしまうけど今回は無理な姿勢を長時間続けたくないという意向もあって、とにかく手っ取り早く書くというのをモットーにした。
だから動画を探す時間も短縮して「音と静止画のみの動いてない動画」みたいなのも採用したよ。
本当はなるべく動いてるようなのでやりたいんだけど、プロモ・ビデオもライブ映像もないようなマイナーどころから見つけて来てるので、仕方ないね。

最初に登場してもらったのは日本ではあまり知名度ないと思うが、プリンセス・タイニーミートの1986年の名曲「 Angels in Pain」だ。

歌詞の意味がまるでわかってないのにタイトルについてとやかく言うのも意味なしだが「痛みの天使」とはこれいかに?苦痛の中に光明を見出すというよくあるアレか?
そういう系列に疎いROCKHURRAHにはよくわからんがドーパミンとかエンドルフィンとかセロトニンとか、人の体の中で抑制したりバランスを取ったりするその能力はすごいなあと思いました。
大人とは思えないとても幼稚な感想で申し訳ない。
確かに電車とかで揺れるととたんに痛む背中・腰なんだが、気の持ちようでちょっとしたはずみに痛みが緩和する事がある。継続的な痛みで急に症状が良くなるはずがないので、これは脳内の何かが作用して暗示をかけてるんだなと思ったよ。これこそが痛みの天使というわけか。え?全然違う?

アイルランドのダブリンでパンクからニュー・ウェイブを通過した近所の悪ガキどもが兄弟とか従兄弟とかも巻き込んでバンドみたいなものを始めた。
1970年代後半から80年代にかけてはどこの都市でもそういうのがたくさんいたのは間違いないが、ひとつのバンドをやるにはメンバーが多すぎたのか(推測)だいぶ違う方向性で2つのバンドが同時期に生まれた。それがU2とヴァージン・プルーンズだった。
この2つのバンドはメンバー間で血縁関係があったり親交が深かったり、まさに兄弟バンドと言えるかも知れない。U2のボノとヴァージン・プルーンズのグッギ、ギャヴィン・フライデーは若い頃に同じ悪ガキ集団にいたというからね。
などと見てきたような書き方してるがもちろん見てもいないしインタビューしたわけでもない。

ROCKHURRAHは大成功したU2についてはあまり興味なかったけど、ヴァージン・プルーンズは大好きでよく聴いていたものだ。
女装した不気味なヴォーカル二人のデュエット。そして何とも言えない禍々しさに溢れたドギツイ音楽、当時熱狂して集めていたポジティブ・パンクというジャンルの中でもトップクラスの異端派変態的バンドだった。
彼らの独創的な音楽やパフォーマンスはROCKHURRAHのヘタな説明よりは映像観てもらった方が手っ取り早いだろう(いいかげん)。こんな感じね。

ん?もしかしてこの映像は前にも使ったか?しかも今回のペインとは特に関係ないよ。

そのヴァージン・プルーンズの初期メンバーでごく短い間在籍していたのがビンティ(Haa-Lacka Binttii)、プルーンズ脱退後に始めたのがこのプリンセス・タイニーミートというわけだ。

英国インディーズ・レーベルの最大手ラフ・トレードからセンセーショナルなデビューをした(ジャケットが国によっては発禁レベル?)にも関わらず、結局ちゃんとしたアルバムが出ずに短命に終わってしまったバンドだったな。 

歌い方にヴァージン・プルーンズからの影響が強く感じられるが電子楽器(言い方古い?)を多用してちょっとダンサブル、異端だけどなぜかポップという路線が個人的には好み。
グッギやギャヴィンという異常性が確立されたすごいキャラクターと比べると深みがないように感じてしまうが、愛すべき不肖の弟分という雰囲気が漂っていてプルーンズのファンからも支持されていたようだ。実際はどっちが年上かは全然知らないけどね。

さて、次のペイン団はこれ、カメレオンズの「Pleasure And Pain」だ。

「喜びと痛み」と聞くとSM的なものを連想してしまうが、英語さっぱりのROCKHURRAHは相変わらず歌詞とかは全く抜きにして話を進める。メンバーの見た目などから判断してそういう要素はたぶんないと思うよ。
キリスト教の国々で耐え忍ぶものと言えば試練などと言われたりするが、現代だろうが原始時代だろうが試練なんてものはどこにでも存在してる。物理的に乗り越えられないようなものに直面した時は内部に助けを求める・・・などと延々と書くつもりはまるでないけど、個人的にROCKHURRAHの今の痛みの状態じゃとても「喜び」などとは結びつかないよなあ。

1980年代初頭のニュー・ウェイブを語る時に必ず出てくるのがネオ・サイケデリックという音楽だが、60年代のサイケデリックとはだいぶ違ったニュアンスも感じられる。
一番多かったパターンと言えば、暗くてメランコリックな曲調と黒っぽい服装、うつむき加減の内向的な歌が特徴というバンド達。それらと同時代に本気の60年代型サイケ野郎がごっちゃに活動していたので、軽く一括りには出来ないジャンルではあるけど。

ジョイ・ディヴィジョンあたりをこの手の音楽の元祖として、その影響下にあるバンドが続々生まれたのもこの時代。そういう幾多のフォロワー的バンドを詳細に語るだけでも一冊の本が出来そうなくらいなんだが、ROCKHURRAHにはもちろんそんなウンチクもないのでネオ・サイケデリックに関しては当ブログでちょこっと書いたくらい。
それらとは少し違う路線で時代を乗り越えたバンドも多く存在してるけど代表的なのはエコー&ザ・バニーメンやサウンド、そしてこのカメレオンズとかになるのかな。え?後ろの2つは知らない?

カメレオンズはエコー&ザ・バニーメンと同じタイプの正統派ネオ・サイケのバンドで80年代前半に活躍した。本当のサイケデリックを知ってる世代には上記の「暗くてメランコリックな曲調と・・・」という雰囲気に属するのが正統派だと評されるのに違和感を覚える人も多くいた事だろう。
後の時代にはあまり「ネオ・サイケ」という言葉も使わずダーク・ウェイブなどと言われたりするジャンルだけど、その方が特徴を言い表してるのかもね。

カメレオンズと言えば・・・。
若き日のROCKHURRAHが上京してまだ住むところも決まってない頃、カメレオンズの「As High as You Can Go」という12インチ・シングルを買って、自分のステレオさえ持ってないのに友人の家でひっそり聴いていたのを思い出す。
家もなく仕事もなくただ音楽への情熱だけで、なーんの用意もないまま東京に出てきてしまった考えのない若き日のROCKHURRAHだが、その時も今も基本はほとんど変わってないのに自分でも驚いてしまう。
六畳一間くらいの部屋にこっそり居候してたから昼間でもコソコソしてたんだよね。
「ひっそり」というのはそういう意味。
出かける時は大家に会わないように静かに速足で部屋を飛び出したものだった。忍者みたいだね。
仕事を探し住む場所を探し、ここを出て行こうとしてたのにうまくゆかなくて、もがいていたな。
詳細はこの記事で書いたけど、友人には本当に迷惑かけたよ。

「Pleasure And Pain」はこのシングルに収録の曲でタイトルからすれば全然違った意味の曲なんだろうが、ROCKHURRAHにとっては「自分=真っ昼間に何してるかわからない怪しい人」この肩身の狭い思いこそがある意味のペインだったな。この頃はどこにも居場所を見つけられずさまよってたからね。

初期のエコー&ザ・バニーメンやティアドロップ・エクスプローズなどと似たような雰囲気のバンドで彼らよりもずっと長く活動しているカメレオンズ。ルックス的なスター性があまりないからか日本での知名度は低かったけど、地味で堅実ないい曲を数多く残していて80年代ネオ・サイケが好きだった人にはおなじみのバンドだと言える。
メンバーが描いたちょっと不気味なイラストのジャケットでも有名。

そう言えば元ビッグ・イン・ジャパンのメンバーだったビル・ドラモンドとデヴィッド・バルフによるプロデュース・チームで、初期Zooレーベル(リヴァプールの伝説的レーベル)のプロデュース活動をしていたのもカメレオンズという名前だったな。 このカメレオンズとは関係ないけどつい思い出してしまった。

カメレオンズの事を書いててさらに思い出したのがこれ。
またまた「俺たち〜」と書いてるのに女性アーティストになってしまったが、ピンク・インダストリーの1983年作「Enjoy The Pain」にしてみよう。個人的にはある意味ペイン団の女ボス的存在。

いやいや「痛みを楽しめ」などと言われても全くその気にはなれないこの鈍痛。これまでの他のタイトル見てても妙にネガティブじゃないものが続いてるな。多くの人が痛みの中に何か活路を見出したいんだろうか?
これまで骨折も大きな病気も怪我もなかったROCKHURRAHだが、それでも何度かは痛くて苦しい体験はしている。一ヶ月も続いた痛みはあっただろうか?と記憶をたぐってみても思い出せないって事は、そこまでひどいものはなかったんだろうね。痛みを語れるほどの人間じゃないな。

ウチのブログでも何度も書いてるけど(例えばこれ)、リヴァプールのニュー・ウェイブの歴史で最もルーツとなったパイオニア的存在がデフ・スクールとビッグ・イン・ジャパンの2つのバンドだった。
これを本気で書き始めるとえらい文章量になってしまうから敢えて詳しく書けないという事も何度も書いたな。

ビッグ・イン・ジャパンはリヴァプールのニュー・ウェイブ初期を支えたインディーズ・レーベル、Zooレーベルとも深く関わっている重要バンドだった。
パンクの時代、1977年くらいにデビューしたこのバンド、活動はごく短期間でシングル2枚しか出してないが、メンバーのほとんどが後に名を残した伝説のスーパー・グループなのだ。
時間短縮のためにメンバーの名前を出すだけにとどめるが、

  • ビル・ドラモンド(Zooレーベル経営者、後のKLF)
  • デヴィッド・バルフ(Foodレーベル経営者、ティアドロップ・エクスプローズなど多くのバンド参加)
  • イアン・ブロウディ(後のライトニング・シーズ、キングバード名義でプロデュース多数)
  • ジェーン・ケーシー(後のピンク・ミリタリー、ピンク・インダストリー)
  • ホリー・ジョンソン(後のフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド)
  • バッジー(後のスージー&ザ・バンシーズなど) 

大げさな書き方した割には冷静に見るとあまり誰でも知ってるような人材は出てないけど、80年代ニュー・ウェイブに詳しい人ならばすごいメンツだったとわかってくれるだろうか。

その中で今回主役となるのはジェーン・ケーシー嬢。などと当時のままの記憶で書いてるがすでに現在は60歳くらいにはなってる計算。うーむ、時が止まってるのはROCKHURRAHの頭の中だけなのか。
ビッグ・イン・ジャパンの派手なイメージを担っていたのがスキンヘッドで不気味なメイクをしたジェーン・ケーシーとまだこの頃はパンク野郎だったホリー・ジョンソンの二人だった。

このバンドは短命に終わり、メンバーはそれぞれ次の活動を始めるがジェーン・ケーシーは1979年くらいにはすでにピンク・ミリタリーを結成していたな。
アーティストとしての主義なのか何なのかわからないが、この頃はそのヴィジュアルを前面に出すことがあまりなくなって、断片的な画像でしかこのバンドを知る事が出来ないのが残念。もちろん動いてる映像も皆無。
スージー&ザ・バンシーズの暗い曲をさらに地味にしたような音楽をやってて、本当にこの人、見た目の割にはずいぶん控えめな印象なんだよな。

たぶんピンク・ミリタリーはあまり売れなかったバンドだと思うけど、エレクトロニクスな要素を強くしたピンク・インダストリーとして再起を図った(?)のが1981年。
こちらはピンク・ミリタリーよりは少しは売れたのかな?
それにしてもレコード・ジャケットも割とぞんざいで、音楽は相変わらず地味でキャッチーさがない曲が多い。リズムの使い方などは現代でも通じるものがあるだけに実に惜しい。
この美貌とファッション・センスを活かせばもっとスターになれたかも、などと思ってしまうが、それを売り物にせず音楽活動をしていたのは立派だ。

ビデオも少しだけ残っててこの「Enjoy The Pain」はオフィシャルなプロモなのか何なのか不明だけど、実写映像と絵画の効果がこの時代には結構斬新なもの。ちょっとデヴィッド・リンチの作品っぽいなと素人目には思ったけど、SNAKEPIPEはどう見るだろうか?

ペイン団の最後はこれでいいかな。
クロックDVAの1981年の曲「Piano Pain」だ。

うーん、これまでタイトルについてどうでもいいコメントをしてきたが「ピアノの痛み」なんぞ知ったこっちゃない。
実家にエレクトーンなどというどうでもいい楽器が置いてあったがこれを取り入れたプロのミュージシャンは滅多にいないと思える(この辺ははっきり知らないけど)。
鍵盤と言えばアコーディオンもなぜかあったけど、部屋で奏でるには意外と音が大きすぎて、結局家族の誰も使いこなせてなかった気がする。
中学生くらいになるとキース・エマーソンやリック・ウェイクマンなどの影響を受けて、家にピアノのあるのが羨ましかったが、そういう友人を持った事もなかった。
結局、ピアノよりは自力で購入出来るギターを持ったけど、ロクに練習もしなかったので演奏力もないままだよ。

英国ヨークシャー州シェフィールドと言えばパンク、ニュー・ウェイブの時代にキャバレー・ヴォルテールやヒューマン・リーグが登場した事で知られているけど、クロックDVAもこの辺の出身だ。
中心人物アディ・ニュートンはヒューマン・リーグと名乗る前のザ・フューチャーというバンドにも在籍していたけどデビュー前に脱退している。「ズーランダー」のムガトゥ(フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドがメジャー・デビューする前に脱退したという設定)みたいだね。
この後釜として入ったのが不気味な髪型で後世に名を残すフィル・オーキーだったという。

そのアディ・ニュートンによるクロックDVAもヒューマン・リーグと同時期にデビューした。ROCKHURRAHがまだレコード漁りを始めた頃からいるので名前は何十年も前から知ってるが意味不明のバンド名だな、とずっと思っていたよ。DVAはロシア語で「2」を表すらしいが、それがわかってもやっぱり意味不明。セクション25とかTV21とか同じ頃にそういう系統のバンド名が登場したけど流行っていたのかね?

音楽性はヒューマン・リーグとは大違いで、重苦しいリズムにアヴァンギャルドなサックスが飛び交い、低音の呪文のようなヴォーカルがかぶさってゆくというもの。相変わらず表現が陳腐だな。
まだニュー・ウェイブが登場して細分化されてないような混沌の時代に生まれた刺激的な音、こういうバンドがあったからこそ後の実験的な音楽が発展していったんじゃなかろうか。

体調や時間の関係もあったからちょっと短いけどこの辺でやめておくね。
腰は一回痛めると持病のようになって再発しやすいらしい。安静に療養出来るような境遇じゃないからなかなか治らないけど、早く自由に歩き回れるくらいには回復したいものだ。

それではまた、スローンラート(アイルランド語で「さようなら」)。