ゲルハルト・リヒター展 鑑賞

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【どんよりとした空をバックに看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

ゲルハルト・リヒター展が開催されることは、5月に富士フォトサロンでチラシを入手した時から知っていた。
開催予定日は6月7日からで、整理券を配布するほどの人気だという。
いつ行こうか迷ってしまうね。(笑)
コロナも配慮し、夏休みになる前の夜に鑑賞することに決めたのである。

今にも降りそうな重い雲が空を覆う夕刻、ROCKHURRAHと竹橋に向かう。
東京国立近代美術館を2人で訪れるのは、2016年9月のトーマス・ルフ展以来6年ぶりのこと!
SNAKEPIPEは2019年12月の窓展から約3年だね。

竹橋駅に着くと、ついにパラパラと傘を使うか迷う程度の雨が降ってくる。
駅と美術館は5分もかからない距離なので、そのまま早足で美術館へ。
夕方のせいか、SNAKEPIPE命名の、いわゆる国立系(高齢のアート好き)が見当たらない。
目立ったのは年齢層低めのカップルや一人で来ている女性かな。
少人数で鑑賞することができるのは良いね!

館内の職員に訊いてみると、嬉しいことに2作品以外は全て撮影可能とのこと!(笑)
ここの美術館はトーマス・ルフの時もオッケーだったんだよね。
アーティスト側の意図なのか、素晴らしいよね!

いよいよ会場へ。
どうだ、と言わんばかりの、作品群が並んでいる。
リヒターの代表作といえる、アブストラクト・ペインティングのシリーズが壁一面に展示されている様子は圧巻だよ!
SNAKEPIPEは通常、作品とタイトルの両方を撮影することにしているんだけど、リヒターの場合は、作品名のほとんどが「アブストラクト・ペインティング」で、タイトルに重きを置いていないみたい。

キャンパスの大きさに違いがあって、並べて観ると大きいサイズのほうが迫力あるんだよね。
どうしても色合いが鮮やかな作品に目がいってしまう。
どの作品も素晴らしくて夢中になって撮影しているうちに、だんだん作品の区別がつかなくなってくる。
次第に落ち着いた色調の作品のほうが目立つようになってくるのが不思議。
載せた作品は「グレイ」。
タイトルがシンプルで、色も一色だけなのに、筆のタッチが魅力的な作品だった。
重ねる技法は同じでも、印象がまるで違うよ。

今回の展示の中で「これが一番」と思ったのが、2014年の作品「ビルケナウ」。
280cm×200cmという大型の作品が4枚展示されていた。
その隣には1944年にビルケナウ強制収容所で撮影された写真が並んでいる。
それら4枚の写真から制作されたのが、大型作品「ビルケナウ」だという。
強制収容所の写真が同時に展示されていなかったとしても、「ビルケナウ」からは独特の血生臭さや恐怖、哀愁を感じたSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHも同様に不穏な空気を感じ取ったらしい。
この大作には圧倒されたよ!
デジタルプリントが向かい合わせに展示されていたのは、匂いやザラつきのないツルツルした表面だけの過去の記録といった意味合いなのかな。
記憶と記録の違い。
本物は油絵のほうで、プリントされた偽物と比べて観てみろ、というメッセージなのか。
陳腐過ぎ?(笑)

次の作品は少し時代がさかのぼって、1966年にシカゴで起こった殺人事件をもとに描いた8人の女性たちを、1971年に写真パネルとして制作したものだという。
恐らく彼女たちは、事件の被害者なんだろうね。
描いた時と写真にした時の解像度の違いなのか、少しブレてコントラストが付き過ぎていて、不気味な雰囲気だよ。
ボルタンスキーやトーマス・ルフは影響を受けたのかもしれないね。

展覧会の最後には、ドローイングが展示されていた。
タイトルがすべて日付で、描いた日を表しているみたい。
ちなみに載せた作品は「2021年10月5日」ね。
2020年9月に鑑賞した「オラファー・エリアソン展」の「クリティカルゾーンの記憶」みたいな線だったよ。
SNAKEPIPEやROCKHURRAHの誕生日に描かれた作品はないかな、と探してみたけれど見つからなかった。(笑)

常設展でもリヒターの作品を観ることができるんだよね。
自ら作った木製のオブジェを撮影した、1969年の作品群が展示されていた。
1932年生まれのリヒター、37歳頃になるんだね。
写真作品も面白かったよ!
そして国立近代美術館が所蔵しているリヒター作品「赤」も展示されている。
「赤」は制作プロセスが写真に記録され、公開されているという。
図録に製作途中のキャンバスが載っているけれど、全く完成形が見えないんだよね。
どれだけ色を重ねていくのか想像してみようか。(笑)

白髪一雄の時にも感じたことだけど、迫力がある作品ばかりが並んでいると、一点ごとの凄味が軽減されてしまうんだよね。
別のアーティストの作品の中に、一つの作品だけが展示されていると、その特異性が際立つのかもしれない。
遠くから観ただけでリヒターの作品だと判断できる個性的な作品群を、100点以上も鑑賞することができて良かったよ!
行って良かった展覧会だったね。(笑)

シリアルキラー展2022 鑑賞

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【ヴァニラ画廊入り口のポスター】

SNAKEPIPE WROTE: 

2016年6月に鑑賞した「シリアルキラー展」は、その後も何度か展覧会を開催していたようだね。
シリアルキラー展2022」の情報を知らせてくれたのは、6年前同様に長年来の友人Mだった。
友人MとSNAKEPIPEは鑑賞している展覧会だけれど、ROCKHURRAHは未鑑賞。
観てみたいというROCKHURRAHと一緒に、狂気の世界を再び覗き見ることにしたのである。

以前は銀座方面から歩いたはずのヴァニラ画廊だけれど、銀座8丁目に位置しているので、ほとんど新橋なんだよね。
今回は新橋から向かうことにする。
サラリーマンの街として有名な新橋で降りるのは、乗り換え以外では初めてかも。
心なしか銀座とは空気が違う感じがするよ。

蒸し暑くて、たまに日差しがあると体感温度が上がる。
ヴァニラ画廊は親切に、画像付きで道案内を載せてくれているので迷わないで到着!
オンラインチケットを予約しているので、チケットを提示しようとネットにつなげようとしたけれど、ヴァニラ画廊が地下2階のためか電波が入らないんだよね。
画廊側も心得ていて、名前を言うことで予約確認してくれる手際の良さ。
テキパキしているのは良いね!(笑)
コロナの関係で人数制限をしていて、1時間ごとの完全入れ替え制なので、6年前よりは快適に鑑賞できそう。

すでに並んでいるお客さんは若い女性2人組。
後ろに並んだのは40代くらいのカップル、次にはまた若い女性。
おそらく1時間に10名程度のお客さんだけ入場させているのかな。
これもまた6年前と同じだけど、「いかにも」な雰囲気のお客さんは見当たらない。
アイドルに歓声を上げているように見える女性たちなのに、シリアルキラーに興味があるとは。
人は見かけによらないんだね。
「いかにも」に見えた1位は、やっぱりROCKHURRAHだろうね。(笑)

いよいよ入場。
ヴァニラ画廊はAとB、2つの展示会場があり、所狭しと作品が並んでいる。
10名程度の入場でも、作品の前で立ち止まりじっくり鑑賞する人がいると、相当苦労して回避する必要がある。
シリアルキラーがどんな犯罪を犯したのかを説明する文章をすべて読むと、「じっくり」になっちゃうんだろうね。

6年前も今回も、撮影はすべて禁止。
カタログからの転載も駄目という厳しい条件のため、これから先の画像は別の場所で見つけた「シリアルキラー展」には展示されてなかった作品なのでご了承ください。

ヘンリー・リー・ルーカス(Henry Lee Lucas)

娼婦だった母親から虐待を受けながら育つ。
1983年に逮捕され、11人殺害の有罪判決を受ける。
逮捕後にFBIに協力していたことから「羊たちの沈黙」のレクター博士のモデルの一人と言われる。2001年、獄中で病死。

「シリアルキラー展」ではルーカスの自画像が展示されていた。
その絵は、左の画像とは似ても似つかない、穏やかな表情をした人物なんだよね。
シリアルキラーが描いたと言われなかったら、「バッド・アート展」に紛れ込んでいてもおかしくない雰囲気。
左は邪悪な存在そのもので、とても怖い絵だよね。
まさにシリアルキラーを表現しているので、「やっぱり!」と納得できてしまう。
自画像の時よりは格段に腕前が上達しているので、獄中でたくさん描いていたのかも。
育った環境が劣悪過ぎているので、違う家庭に生まれていたら、別の人生を歩んでいたかもしれないね。

ハーバート・ウィリアム・マリン(Herbert William Mullin)

高校時代には「将来最も成功する人物」に選ばれるほど、明るく人気があるスポーツマンだったという。
薬物中毒の果てに統合失調症となり、1970年代初頭に13人を殺害する。
アインシュタイン博士からの命令で大地震や自然災害から人類を守るためだった、と主張する。
現在も服役中で、2025年には仮釈放の資格がある。

マリンには「連なる山」の絵が多く、今回も青と白を使った作品が展示されていた。
アーティストが何枚も同じ主題の作品を描くことがあるのと似てるのかな。
絵だけを観る限りでは、薬物や統合失調症の影響は見受けられないように感じるよ。
構図もシンメトリーに近いし、光と影も正確に捉えられているよね。
2025年に仮釈放されたとしたら、マリンは78歳くらい?
1973年から50年以上獄中にいた後、社会生活を送ることができるのか。

ウェイン・ロー(Wayne Lo)

1974年台湾生まれのローは、パイロットの父親とバイオリン指導者の母親という恵まれた家庭環境で育つ。
若干7歳でバイオリニストとしてデビュー、音楽もスポーツもできる成績優秀な生徒だったという。
1992年、大学で銃を乱射、教授と学生を殺害し、4人に重症を負わせる。
現在も服役中。

シリアルキラーという定義からは、少し外れているように感じるローだけど、「シリアルキラー展」に入っていたので、作品を載せてみよう。
ローが台湾系アメリカ人というのが、作品観ても分かるよね。
シリアルキラー展で鑑賞したのは、人物の顔写真に刺繍を施したものだったけれど、載せた画像はドラゴンを美しく刺繍している。
写真にミシンをかけるアートはどこかで観たことあるけれど、印画紙にここまで精巧な刺繍をするとは驚き!
頭脳明晰で音楽もスポーツも万能だったのに、どこで間違ってしまったんだろうね。

ハドン・クラーク(Hadden Clark)

1970年代半ばから1993年の間に2名の女性を殺害。
他にも殺人を自供しているが起訴にはいたっていない。
殺害後食べていたことを証言している。
現在は矯正施設に収監中。

まるで小学校に通う女の子が描いたような絵。
これをシリアルキラーが描いたと聞くと、印象がまるで違うものに変化してしまう。
クラーク自身が少女を好んでいたせいか、にこやかに笑う少女ばかりをキャラクター化して描いているんだよね。
そして特徴的なのが、手話をしている少女を登場させること。
クラークの署名の他に、「Nikayla(ニカイラ)」というクラークの分身の署名も加えることがあるという。
クラークの作品は、Serial Killers Inkで購入できることが分かったよ。
大量に在庫があるらしく、2つで$50だって。
買ってみる?(笑)

オーティス・エルウッド・トゥール(Ottis Elwood Toole)

6件の殺人事件で有罪判決を受ける。
ヘンリー・リー・ルーカスと共謀して30人から50人の殺害を自供。
1996年刑務所内で病死。

ルーカスの絵こそ、まさにシリアルキラーが描いた絵として認識されるだろうね。
稚拙だけれど残酷に見える、いかにもシリアルキラーだから。
トゥールの顔も、出会った瞬間から悪人だと分かる顔立ちなので、この人物ならこの絵を描くだろうと予想できるほど。
育った環境が劣悪で、精神障害をわずらっていたという。
教育や躾、家庭環境がトゥールに影響を及ぼしていたみたい。
時代が違っていたら、別の未来が開けていたかもしれないよね。

6年前と2022版を見比べたことになるけれど、印象としてはさほどの違いはなかったように思う。
シリアルキラーと一般大衆に、それほどの違いがないんだよね。
非常に絵が上手かったり、筆跡が几帳面な素人なんて、世間にはたくさんいるし。
本当に紙一重の世界だなと感じたよ。
どこかで、ほんの少しだけ違ってしまった方向が、どんどん思いもよらぬ世界に歩を進めてしまったような。

6年前にはHN氏だけしか書かれていなかったけれど、2022版にはH.Nakajimaと記されていた。
なかじま氏は、ずっとコレクターを続けていることが分かった。
人間像への興味ゆえ、だという。
答えが見つかることはあるのかな?
また何年後か、シリアルキラー展に行ってみたいと思う。

金沢初上陸続編!KAMU kanazawa 鑑賞

20220703  01
【温泉旅館から見えた風景】

SNAKEPIPE WROTE: 

先週書いた「金沢初上陸!金沢21世紀美術館 鑑賞」の最後に予告していた、金沢観光2日目を書いていこう!
SNAKEPIPEの希望は金沢21世紀美術館に行くことだったけれど、ROCKHURRAHは追加の企画を立てていてくれた。
それは山中温泉にある鶴仙渓の散策と、金沢21世紀美術館近くにある私設現代アート美術館「KAMU」に行くこと!
温泉旅館を山中温泉に決めたのは、鶴仙渓が目的の一つだったからなんだよね。

金沢観光初日は、旅館の夕食に舌鼓を打ちすぎてしまい、お腹が破裂するくらい食べ過ぎてしまったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
更に「利き酒セット」という日本酒3種の飲み比べもしたため、早目に床につくことに。(笑)
露天風呂付きの部屋を取っていたので、早起きした翌朝、ゆっくり湯に浸かってから鶴仙渓の散策に出かけたのである。

朝から日差しが照りつけているのに、宿の方からは傘を持つように勧められる。
晴れているけれど念の為、宿の傘を借りて歩き始める。
地図を見ながら歩いていたはずなのに
「遊歩道ってゆうほどうの道じゃないよね」
バカなダジャレに大笑いするROCKHURRAH。
確かこのダジャレは、10年以上前にも使ったはずだけどね。(笑)
ここで道を間違えていたことが判明し、正しい道を見つけて一安心。
大聖寺川に沿って遊歩道があり、気持ちの良い朝の散歩になった。

前日の夜に雨が降ったのか、木々の葉から雫が落ちる。
晴れているのに傘が必要、に納得するSNAKEPIPE。
傘をさしていなかったら、全身濡れてしまったはずだからね。
朝靄が川や木々を薄いベールで包むような風景の中を歩き続ける。

遊歩道とはいっても、予想以上のアップダウンがあるので、奥多摩に雰囲気は近いと思ったよ。
朝の時間帯を選んだせいか、誰もいない空間はとても気持ちが良かった!

「あやとり橋」という、S字型の赤い橋も見事で、木々の緑に映える。
橋の中央から川を見下ろすと、かなりの高さに驚く。
実はROCKHURRAHとSNAKEPIPE、高所恐怖症なんだよね。(笑)
「あやとり橋」から折り返して、宿に戻ることにする。
1時間ほどの散策だったけれど、清々しい気分になったよ!
早起きして良かった。

昨日の食べ過ぎを警戒しながらも、やっぱり旅館のごはんが美味しくて!
お昼がいつになるか分からないからね、などと言い訳しながら、「おかわり」してしまう。
お米がおいしい、というSNAKEPIPEに、「水が良いから」と答える宿の方。
こんなにおいしいごはんを毎日食べていたら、絶対太っちゃうよね。(笑)

宿の送迎で加賀温泉駅まで戻る。
昨日から気になっていたのが、道路脇の電柱に貼ってある「娘娘饅頭」という広告だった。
どうやら山中温泉名物のお饅頭のようだけど、「娘娘」を「にゃあにゃあ」と読むところが可愛い!
これはお土産に買って帰らなければ、などと話しながら金沢へ。
金沢21世紀美術館方面に行くバスに乗るところで、JRバスが走っていることに気付く。
ICカードが使える!(笑)
北陸鉄道バスでは小銭が必要だったので、JRバスを見つけてラッキーだったよ。

私設現代アート美術館KAMUは、金沢21世紀美術館からすぐの場所にあった。
この美術館は6つの異なる会場で展示を行うタイプとのこと。
すべての会場は徒歩圏内なので、アートと街巡りを楽しむことができるという。
最初に向かったKAMU Centerでチケットを購入し、会場のマップを手に入れる。
Centerは3F建で、フロアごとに1人のアーティストがフィーチャーされている。
作品保護のため、すべての荷物をロッカーに預けよう指示される。
小さいポシェットまで禁止と言われるのは初めてかも。

1Fにはレアンドロ・エルリッヒの「インフィニティステアケース」が展示されている。
前日の金沢21世紀美術館では、1週間前に予約をして、代表作である「スイミング・プール」を鑑賞したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
KAMUでは、予約の必要もなく、入り口入ってすぐに鑑賞することができるよ!
降りて行くはずの螺旋階段が横向きに展示され、鏡による効果も加わり、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうんだよね。
エルリッヒのトリックアート、面白かった。(笑)

2Fではステファニー・クエールの彫刻作品が展示されている。
1982年イギリスのマン島生まれというから、現在40歳になるのかな。
作品はすべて粘土で作られている。
クエールの作風なのか、粘土でキッチリ形を作り上げているのではなく、少し溶けたように見えるところがユニーク。
それなのに動物の種類が特定できる出来栄えなんだよね。
小さな作品が会場の階段に配置されていて、とてもかわいかった。

3Fには桑田卓郎の陶芸作品が並んでいた。
1981年広島生まれ、現在は岐阜在住とのこと。
桑田卓郎の作品、ものすごく気に入ったよ!
いわゆる陶芸とはまるで別物。
ポップで色鮮やかな作品は、岡本太郎にも通じる遊び心にあふれている。
調べてみるとロエベの2020年秋冬コレクションに、桑田卓郎の作品が使用されていたみたい。
伝統工芸とファッションの融合とはね!(笑)

最初に受付を訪れた時、12時から13時は展示を取りやめているギャラリーがあるけれど、よろしいですか?と確認される。
訪れたのが11時半頃だったからね。
Centerの次に、12時までに余裕で行かれるのはKAMU k≐kですね、と受付の方に勧められ、行ってみることにする。
MAPに記載されたQRコードを読み取ると、Googleマップが表示され、現在位置から目的地までの道のりを知ることができる。
無事に会場に到着することができたのは、ROCKHURRAHのおかげだね。(笑)
ここでは諏訪綾子の「TALISMAN in the woods」が展示されていた。
白山で間伐された杉の枝葉が中央にモニュメントとして吊り下げられている。
暗い室内には杉の香りがたちこめ、原始に帰るような印象の音が鳴っていた。
作者の思いがあることは理解できるんだけど、作品として見ると難解系だね。

次の会場は13時まで開かないので、その間にランチを取る。
金沢来たからには、やっぱり寿司だよね!(笑)
朝ごはんを「おかわり」してたらふく食べたのに、まだ食べるつもりか!
量が調整できるから回転寿司にしよう、と近くの店に入ってみる。
適当に何皿か注文すると、これがすべて美味しいの!(笑)
「のどぐろの炙り」、目ン玉飛び出るくらい美味で感動してしまう。
回転寿司でこのレベルとは、金沢すごいよ!

13時を過ぎたので、次の会場に向かう。
KAMU Lでは森山大道のインスタレーション「Lip Bar」が常設展示されているという。
さすが森山大道だけあって、会場は裏通りの夜の街にあった。
ちょっとわかりづらくて、暑い中を何度も行ったり来たりしながらたどり着く。
入ってみると、一面赤い唇、唇、唇!(笑)
口がポカンと開くほどのインパクトで、圧巻の一言だよ。
室内のエアコンまで唇柄になっていて笑ってしまった。
20時〜24時はバーとしても営業しているようで、メニューを見せてもらうと「オリジナルカクテル Lip」やジン、ラム、ウォッカなどが記載されている。
Lipがラベルになった日本酒も置いてあったよ。
サイン入りの限定100本が、通販でも手に入るみたい。
お値段は27,500円なので、ちょっとお高めだね。
「Lip Bar」で飲むから良いのかもしれないし?

次はKAMU BlackBlackへ。
受付に入ると、表の注意事項を確認してから中に入るよう指示される。
光の点滅に関する注意喚起などが書かれていたので、読んでから再び会場へ。
ここでは黒川良一の作品「Lithi」を鑑賞できる。
黒川良一は1978年大阪生まれ、現在はベルリンで活動を続けるビジュアルアーティスト。
テート・モダンやポンピドゥー・センターで展示されたという国際派なんだって。
ビジュアルと音を体感するアートなので、ここは動画を載せておこうか。

KAMUには、他に2つ展示会場があるけれど、新幹線の時間などを考えて、これにてアート鑑賞は終了!
初めての場所を地図を頼りに歩いて鑑賞するのも楽しかった。
歩きやすい気候の時だったら、もっと良かったのかもしれないね?

金沢駅に戻り、お土産を物色する。
絶対に買って帰りたかった「娘娘饅頭」は、お土産屋の受付嬢に場所を訪ね、探し当てることに成功!
帰宅後食べてみると、普通のいわゆる温泉まんじゅうだったよ。
これはネーミング勝ちだね。(笑)

アートあり、温泉あり、渓谷散策ありと大満足の金沢旅行だった。
ひとつ失敗だったのは、KAMUに行く前に、リュックをロッカーに預けておくべきだったこと。
二人揃って、わざわざ大きな荷物を背負って、暑い中歩き回ってしまった。
特にROCKHURRAHには、旅館で飲むはずだった酒類が入っていたため、余計に重かったんだよね。
その後数日は背中に痛みが残ったというので、申し訳ないことをしてしまった。
旅慣れていないとはいえ、もっと楽になる方法を考えないとね!
次回の旅へ教訓としておこう。(笑)

金沢初上陸!金沢21世紀美術館 鑑賞

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【加賀温泉駅に設置されていた販売機。Lady Kagaに大笑い!】

SNAKEPIPE WROTE: 

3月に誕生日を迎えたSNAKEPIPEに、プレゼントとして旅行を提案してくれたROCKHURRAH。
どこにしようかワクワクしながら考えていたけれど、当時はまだコロナのため、遠出できる状況じゃなかったんだよね。
もう少ししてからと言い続けているうちに、桜が咲き、つつじの鮮やかな色に目を奪われ、あじさいの季節になっていた。
月日が経つのは速いよね。(笑)
来月にはもうROCKHURRAHの誕生日が控えているので、2人の誕生祝を同時に執り行うことに決定!
せっかくなので、今まで行ったことがない場所を旅してみようということになった。

SNAKEPIPEには以前から密かに実現したいことがあった。
それは金沢にある金沢21世紀美術館に行くこと!
現代アートの展覧会情報などでもよく目にするので、一度行ってみたい美術館なんだよね。
ROCKHURRAHに提案すると快く承諾してくれる。
せっかくなので温泉旅館に宿泊し、日頃の疲れも癒やす計画を立てる。
そうと決まれば新幹線や宿、美術館のチケットなどの予約を素早く完了させるだけ!
あっという間に出発の日を迎えたのである。

朝早くに家を出て、東京駅から新幹線「かがやき」に乗車。
約2時間半で金沢に到着する予定である。
ROCKHURRAHも金沢に行くのは初めてとのこと。
東京駅で朝ごはんを買い、新幹線で食べると旅行気分が高まるよね!(笑)
少し眠ったり、景色を眺めているうちに金沢に到着。
テレビの旅番組などで目にするシンボル的存在の「鼓門」は、圧倒的な迫力。
「もてなしドーム」と呼ばれる幾何学模様のガラスの屋根もカッコ良くて、ここだけで何枚も写真を撮ってしまったほどだよ。(笑)
そしてバス乗り場の配置が非常にわかりやすくて、初めて訪れた人でも迷わない構造なんだよね。
到着した瞬間から「金沢、素晴らしい!」とROCKHURRAHとうなずきあったよ。(笑)

どのバスに乗っても、たいていは金沢21世紀美術館近くまでは行くことができるようなので、最初に来たバスに乗ってみる。
乗車の時にICカードをタッチしようとすると「SuicaなどのICカードは使用できません」と書かれているじゃないの!
えー?使えないの?
仕方なく整理券を取り、小銭を用意する。
調べてみると、どうやら北陸鉄道バスでは独自のICカードのみ対応とのこと。
JRバスの場合は問題ないようだけど、走ってるバスはほとんど北陸鉄道バスなんだよね。
金沢行く時は、100円玉を大量に用意しないと駄目かも!
そうこうしているうちに見覚えがある建物が見えてきた。
金沢21世紀美術館だ!(笑)

オラファー・エリアソンの「カラー・アクティヴィティ・ハウス」が見えてくる。
2020年9月に東京都現代美術館で「ときに川は橋となる」を鑑賞したアーティストだよね。
「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」という黄色、緑色、青色3色のハロゲンランプを使用した作品は、自分の影が壁に投影されることで表情が変化する作品だったっけ。
「カラー・アクティヴィティ・ハウス」も同様にシアン、マゼンタ、イエローの色ガラスの壁が渦巻のように立っていて、その中を歩くと色が重なり、自分や外の風景が変化していく「参加型」の作品だった。
画像で観ているだけでは分からない面白さがあったよ!

金沢21世紀美術館ではいくつかの企画展が同時に開催されていて、今回は「ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ:どこにもない場所のこと」を鑑賞することにした。
SNAKEPIPEは全く知らないアーティストなんだけど、韓国を代表する2人組とのこと。
また韓国になってしまったか。(笑)
ユニットを結成した当初の2009年より「現代世界における芸術の社会的機能と役割は何か」と問い直すプロジェクト「News from Nowhere」(ウィリアム・モリスの小説からインスピレーションを得て名付けられた)を展開しているという。
なんだかちょっと難しそうじゃない?

ほとんどの作品がいわゆるビデオ作品で、最初に鑑賞したのが2012年の作品「世界の終わり」。
2つの画面で進行している「現在(左)」と「未来(右)」。
未来のほうに出てくる小道具が面白かったよ。
物語そのものは、そこまで突飛ではないので、まるで映画を鑑賞しているようだった。
これからは、電飾見る度に、この作品を思い出すはず。(笑)

「どこにもない場所のこと:エクリプス」は2022年の作品だって。
小さな船の中で、漂流する孤独な男を描いているんだよね。
時々表示される升目のせいで、男の船はプールに浮いているだけに見える。
SNAKEPIPEは、漂流や孤独が男の心の内側を描いているだけで、実際に大海原を漂っているわけではないように感じたよ。
韓国人ユニットの作品を一通り鑑賞したあと、いよいよ金沢21世紀美術館一の有名作品に移動する。

レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」は、今まで何度テレビで観たことか。
2018年3月に森美術館で鑑賞した「見ることのリアル」も、最初のエリアソンと同じように参加型のアート作品が多かったよね。
感想を書いた記事にも「エルリッヒの最も有名な作品は、金沢21世紀美術館にある『スイミング・プール』」だって。それはテレビで観たことある!(笑)」と書いているよ。
ついに今回、初めて鑑賞することができた!
「スイミング・プール」は、展覧会チケット購入とは別に、プール用の予約をする必要があるんだよね。
5人くらいまでをワンセットにして、5分のみ入場が許されている。
タイミング良く、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの2人だけの時間があったので、夢中になって撮影する。
日差しが出てきたので、プールの底に光の美しい模様と影が写ってキレイ!(笑)
プールの上に人がいなかったのが残念だけど、楽しい時間を過ごすことができたよ。

無料展示コーナーにジェフ・クーンズのバルーン・シリーズが並んでいた。
バルーン・シリーズは、風船でできているように見せかけたステンレスの作品だけど、今回展示されていたのは、フランスの磁器ブランド、ベルナルドとのコラボなので、素材が磁器だったとは!
SNAKEPIPEは説明見るまでてっきり従来のステンレス素材だと思っていたよ。(笑)
ジェフ・クーンズの作品は高額取引されることで有名だけど、自分の作品を高く売り、自分の価値を高めようとするジェフ・クーンズの姿勢や行動がアート行為なのかなと勘ぐったりもする。
パッと観ただけで「ジェフ・クーンズだ」と分かるところは、すごいしね。

無料スペースにAKI INOMATAの展示もあったよ。
Acting Shells」というタイトルで、真珠貝をモチーフにした作品が並んでいた。
AKI INOMATAといえば、2022年6月にジャイルギャラリーで鑑賞した「世界の終わりと環境世界」で作品を鑑賞したアーティストだったね。
この前は南部馬で、今回は真珠ということは、動物系アートということか?(笑)
展示室が暗かったので、あまりよく見えなかったけれど、真珠に彫刻されてたみたいだね。
監視員の高齢女性が、全くアートとは無縁なタイプの方のようで、
「ロープありますから、そこから中へは入らないでくださいねっ」
と大声で注意する。
いやいや、あなたの大声と傲慢な態度のほうが、よほど迷惑に感じるんですけど?(笑)

2018年5月に「SNAKEPIPE SHOWROOM 物件13 建築家設計の物件編」で初めて名前を知ったジェームズ・タレル。
記事の中で「金沢21世紀美術館などには常設展示されている作品もあるみたい」と書いているよ。
ついに!
その展示を目にすることができたんだよね。(笑)
1,117cm四方の何もない部屋の天井部分にポッカリと広がる空間。
タレルの作品は、長く滞在して空や壁に映る色の変化を感じることだとは知っていたけれど、この日の金沢の気温は35℃!
少しの間だけど、「ブルー・プラネット・スカイ」を体験することができて感動したよ。
パシャパシャ撮影して、開口部を見上げて撮ったのがこの画像。
右上の画像と比べてみても全く別物。
まるでQRコードのように見えた空、面白いね!(笑)

大型の立体作品が多いせいか作品数自体は少なめだけれど、憧れの場所に行くことができて本当に嬉しかった!
こんなにワクワクしたのは久しぶりかもしれないよ。
この後、ROCKHURRAHと温泉旅館に向かい、夕食を苦しくなるほど食べて翌日に備える。
金沢観光、翌日の話は次週に続くよ!(笑)