ROCKHURRAH紋章学 鉄道会社編

【トレインと聞いて連想するのはこの曲だね!】

SNAKEPIPE WROTE:

久しぶりに「ROCKHURRAH紋章学」にしてみようか。
「紋章学」などと大それたタイトルを付けてはいるものの、特に学術的な要素はない。(笑)
パッケージデザインやラベル、会社のロゴなどを紹介するコーナーである。
もちろんSNAKEPIPEの琴線に触れたデザインでね!
今回は鉄道会社のロゴを集めてみたよ。
何故かといえば、それはもちろんSNAKEPIPEが鉄道ファンの鉄子だから!(うそ)
インダストリアルが好きなので、鉄鋼関係に関するデザインに興味があるんだよね。
今だったら「トレイン」と聞いて一番最初に思い浮かぶのは、3月下旬に鑑賞した「マイク・ケリー展」での「トレイン・ダンス」か。(笑)
未だに強烈な印象を残しているからね。
前置きはさておき、早速いってみようか!

最初に目に止まったのはこれ。
タイの鉄道会社STATE RAILWAY OF THAILANDのロゴなんだよね。
寺院と鳥の羽、てっぺんには太陽からの日差しが降り注いでいるデザイン。
いかにも仏教的で、これを会社のロゴに設定するところは、さすがにタイたい。(九州弁)
HPで使用されているのは涅槃像と象、そして寺院という三位一体に鉄道まで加わった画像なんだよね。
ちょっとてんこ盛りにし過ぎな感じはするけど、タイのイメージを前面に出していて、分かり易い。
微笑みの国、タイに行って鉄道に乗ってみタイね。(ぷっ)

次はクロアチアだよ!
とはいっても、、、クロアチアの公用語は「クロアチア語ラテン文字」らしい。
なんでクロアチア語だけじゃなくて「ラテン文字」まで入るんだろうね?
そのためHrvatske Željeznice Putnički Prijevozという名前の読み方すら分からないよ。
ロゴはこの名前の頭文字を取ってることだけは分かったけどね!
赤、水色、青の3色を使った記号(?)だけで表現しているシンプルなデザイン。
知らないと鉄道関係のロゴとは思わないかもね?
列車の車体にもロゴマークと共に周遊しているローマ、スウェーデン、リスボン、ハノイなどを代表する建造物や名所が描かれているところも秀逸。
大陸の場合には横断鉄道で東西南北移動できるからね。 
島国に暮らす日本人には珍しく感じてしまうけれど、大陸の人には鉄道で他国に旅行するのは当たり前なのかな。

いてはアメリカ!
シエラと聞くとMacのOSを思ってしまうね。
地名だから間違いではないか。(笑)
Sierra Northern Railwayはカリフォルニア州の主要工業地帯に位置し、鉄道輸送を行っている会社なんだよね。
このロゴマークからは物資の輸送をしている会社とは思わないなあ。
山脈の後方から太陽が昇り、その明るい方角に向かって道が続いているデザイン。
色合いもオシャレだし、明日への希望に満ちあふれている雰囲気だよね。
物資の輸送により、人々の暮らしが豊かになり、国の繁栄につながるからね。
カリフォルニア州の100マイル(約160km)の距離を輸送します、と謳い文句が書かれているよ。
右の画像の背景を見るとだだっ広い大地をひたすら走る黄色い列車は、まるで映画の中のワンシーンみたい。
例えば「パリ・テキサス」とかにありそうだもんね。(笑)

「グレート・ノーザン」と聞けば「ホテル」と答えるよね!
これはデヴィッド・リンチが手がけたアメリカのTVシリーズ「ツイン・ピークス」に出てくるホテルの名前ね。
そのためなのか「Great Northern Railway」に反応してしまったよ。 (笑)
もちろんこのロゴ・デザインもお気に入り!
赤・白・黒の3色のみ使用で、中央に鎮座しているのは(多分)シロイワヤギかな。
「ツイン・ピークス」の舞台になっていたカナダ国境近くのアメリカ近辺には、こんな野生動物がいそうだよね。
これはきっと北米の会社に違いないと思っていたのに、Great Northern Railwayはイギリスの会社だったんだよね!
これがその列車の画像なんだけど、この色合いとても素敵。 
オレンジとチョコレート色に黄色いラインなんて、ちょっとエルメスっぽいよね。
エルメスなんて縁がないのに、知ったかぶりして書いてるよ。(笑)
Great Northern RailwayのHPも紫が主体の変わった配色なんだよね。
日本の鉄道会社は、こんな冒険しないだろうな。

これまた縁がないであろう豪華絢爛列車だよ!
イギリスのチェシャー州に本社がある会社の名前は、なんとGOLDEN EAGLE LUXURY TRAINS。 
社名に「ラグジュアリー」って入ってるくらいだからね。(笑)
しかも王冠載せてる双頭の「金の鷲」がロゴだもんね。
これは最強クラス!
HPにはこの列車が企画したツアーがたくさん載ってるんだよね。
車内の様子が右の画像。
確かにラグジュアリーだよね。(笑)
試しにシベリアへのツアーを調べてみるとウラジオストク空港から4つ星ホテルに向かい、それからゴールデン・イーグル・シベリアン・エクスプレスに乗り、15日間の日程で旅をするんだって。
最終目的地はモンゴルで、ナーダム祭を鑑賞するという。
料金は最も高いインペリアル・スイートで5000ドル、日本円で約55万円だね。
ビザの料金や旅行保険、バーカウンターでのドリンク以外は全て料金に含まれているようだけど、そう考えると55万円というのはそこまで高くないのかも?
左が列車の画像なんだけど、素晴らしく美しいよね!
赤と青の配色の鮮やかさはもちろんのこと、タイヤが赤いところが素敵。
一番お手頃価格のシルバークラスなら16万円だって。
この値段なら手が出せるかもしれないね?

最後はカワイイのでしめようか。 
このロゴには何が描かれているのか、分かるかな?
アメリカの鉄道会社The Chess Systemが採用したのは、なんと子猫!
チェサピークとオハイオ鉄道のシンボルとして使われた人気のある猫で、ウィーンのアーティスト、Guido Gruenwaldによるエッチングから生まれたキャラクターだという。
1933年のFortune誌の「Sleep Like a Kitten」という白黒広告に初めて登場して以来、チェスシーの愛称で親しまれている子猫ちゃん。
比べてみると影絵になった状態がロゴに採用されているのが分かるかな?
なんとも微笑ましい寝姿に、見ているだけで心が和むよ。(笑)
日本で猫がキャラクターになったロゴで有名なのはクロネコヤマトだと思うけど、原画はあるのかな?
調べてみると、なんと!クロネコヤマトの原画も発見されていた記事があったよ。
しかも描いたのは当時6歳の子供だって!
ロゴマークに原画はつきものなのか?(笑)
これが列車にペイントされているロゴマーク。
車体横と先頭にも描かれているよね。
会社が合併したり統合されているようで、現在もこの機関車が走っているのかどうかは不明だよ。
名前も変わっているみたいだしね。
チェスシーのキャラクターは今でも愛されているようで、 チェスシーがプリントされたTシャツやマグカップなどが販売されているよ。
SNAKEPIPEもちょっと欲しいかも。(笑) 

鉄道会社のロゴをまとめてみたよ!
個性的なロゴに加えてHP上でのサービスやデザインも素晴らしかった。
記事にも書いたことだけれど、海外の場合は鉄道を利用した海外旅行が可能なので、夢が広がるよね。
検索していて楽しかったな!(笑) 

好き好きアーツ!#50 鳥飼否宇 part20−隠蔽人類−

20180506 top
【「隠蔽人類」映画版(想像)のポスターをROCKHURRAHが作成】

SNAKEPIPE WROTE:

NHKスペシャル「人類誕生」第1集が放映されたのが2018年4月8日のこと。
ヒトはどのように進化していったのかを探る全3回のシリーズである。
録画しておいた番組を鑑賞し、CGとは思えないほどのリアルな映像に驚く。
「人類誕生」第2集の放映も楽しみだね!

「人類誕生」を鑑賞して、しばらく経ったある日、ROCKHURRAHが興奮気味に叫んだのである。
「鳥飼先生の新作が出るよ!」
電子書籍「ジャーロ」に連載されている時は我慢して、1冊にまとまるのを待っていた小説の刊行である。
待ちかねていた、その時がやってきたのだ!
タイトルは「隠蔽人類」。
前述のNHKスペシャルとのシンクロを感じてしまうよね。
NHKスペシャルは恐らく多くの人が目にする番組だと思うし、日頃から人類について考えたり、思いを馳せる人ばかりではないはず。
大勢の人が日頃ほとんど耳にすることがないであろう「ホモ・サピエンス」という単語を意識した後、鳥飼先生の「隠蔽人類」が発売されるなんて、まるでNHKスペシャルとのコラボみたいじゃない!(笑)
鳥飼先生に追い風が吹いているように感じて嬉しくなる。
嬉しいサプライズにより新作を入手したことは、先週の冒頭でも書いていたね。
本当にありがとうございました!(笑)

鳥飼先生の新作「隠蔽人類」はどんなお話なんだろう?
光文社の紹介ページに載っていたあらすじを引用させて頂こう。

形質人類学者の日谷隆一率いる日本人学者の調査団は、アマゾン奥地の未接触民族キズキ族の村で世紀の大発見をした。
DNA分析から、彼らがホモ・サピエンスではない別種の人類、隠蔽種の可能性が見つかったのだ。
しかし沸き立つのもつかの間、調査団メンバーの一人が首を切断され、発見された。
調査団以外の全員にアリバイが。
犯人は──!? 
さらに、隠蔽人類と殺人の「秘密」は日本へ。
殺戮の連鎖が巻き起こり、探偵役が次々に死んでいく。
ことごとく読者の予想を裏切り、皮肉と逆説をはらんで疾走していく事件の展開。
誰にも結末を読ませない、圧倒的に面白い驚愕ミステリー!

アマゾン奥地で大発見、なんてワクワクするよ。(笑)
ROCKHURRAHは、タイトルと冒頭のシチュエーションから香山滋の「オラン・ペンデクの復讐」や昔の探偵小説でいう「魔境冒険物」を連想したらしい。 
SNAKEPIPEが思い出したのは、 鳥飼先生の「桃源郷の惨劇」。
外国を舞台にしていて、新種の鳥「ミカヅキキジ」を追うミステリーだったからね!
それにしても「隠蔽種」ってなんだろうね?

隠蔽種とは本来は別種であるが、外見上の区別がつかず、同一種として扱われていた種。
遺伝子の塩基配列などを調べる分子系統学的な手法で、別種の存在が明らかになることが多い。

似ていたから気付かなかったけど、よく調べてみたら別物だったということだね。 
簡単に説明し過ぎ?(笑)
本当はDNAやRNAやヌクレオチドとか遺伝子が、などと書くべきなんだろうけどね。
詳しく知りたい方は専門家の文章を参照してちょ。
「隠蔽人類」とは、人のように見えるけど、実は「ホモ・サピエンス」ではなかった人類ということなんだね。

「隠蔽人類」は5章からなる連作短編。
章ごとに感想をまとめていこうと思うんだけど、果たしてうまく書けるかどうか。(笑)
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

隠蔽人類の発見と殺人
綾鹿科学大学の形質人類学者である日谷隆一教授他、4人の日本人がアマゾンに行くところから話が始まる。
ということは「隠蔽人類」は「綾鹿市シリーズ」ってことで良いんだろうね?
「綾鹿市」という架空の地域で起こるミステリーは「綾鹿市シリーズ」と呼ばれ、鳥飼先生の代表的なシリーズとして有名なのである。
鳥飼先生のWikipediaがまだ更新されていないようなので確認できなかったけれど、新作は「綾鹿市シリーズ」だね!
綾鹿市は架空の都市だけど、地図が欲しくなるほどだよ。(笑)
何故、綾鹿科学大学の学者がアマゾンに行くことになったのか?
それはアメリカ人冒険家クリス・グロールの手記により、未接触部族の存在が明らかになったためである。
クリス・グロールにより、その部族はキズキ族と名付けられていた。
クリス・グロールが濁流に飲まれ不慮の死をとげたことにより、キズキ族についての詳細は不明なまま。
世界各国の人類学者がこぞってアマゾンに向かい、調査を開始するも発見には至っていなかったのである。

クリス・グロールというのはニルヴァーナだね、ROCKHURRAHが言う。 
アメリカのバンド、ニルヴァーナのメンバーだったクリス・ノヴォセリックとデイヴ・グロールの名前を組み合わせるとクリス・グロールになっちゃうよ! (笑)
よく分かったね、と感心するSNAKEPIPEに「初心者レベル」との返答!
鳥飼先生の小説には、名前の由来を解く楽しみも隠されていて、「痙攣的」や「爆発的」では夜な夜な謎解きに明け暮れたっけ。
「隠蔽人類」の登場人物も試行錯誤して考え続けていたけれど、日本の城や半島の名前が多い、ということしか見いだせなかった。
全員が城の名前じゃなかったので、恐らく不正解だろうな。(笑)

世界中の調査団はキズキ族を発見することができなかったのに、日谷チームは見事に発見し接触に成功する。
これだけでも充分な成果だけれど、日谷チームはキズキ族のDNAサンプルの入手にも成功し、驚くべき結果を目にするのである。
あらすじにもあるように、そこで事件が起こってしまうんだよね。

キズキ族は白人のような容姿で、アスリートのような引き締まった体型をしているという。
菜食主義で性格は温厚、富を蓄えるという概念がないなんて、それだけでもう人間じゃないかも。(笑)
部族の全員がお釈迦様みたいだよね。
キズキ族の一員になりたいかと聞かれたら迷ってしまうかもしれない。
ええ、SNAKEPIPEは欲にまみれて生きてますから。(笑)

綾鹿科学大学の准教授である尾崎が殺されてからの展開には驚いた!
まさかそんな秘密が隠されているとは。 

隠蔽人類の衝撃と失踪

日谷教授は、キズキ族の女性・ミラを伴って帰国した。
未接触部族というだけでも衝撃的なのに、ミラは美しくモデル並のスタイルの持ち主。
衣服を身に着ける習慣がないため真っ裸だというのもセンセーショナルだよね。
学術目的以上に、男性陣がこぞって見物にやってくるのも仕方ないかもしれないね?(笑)

そんなミラをイメージしてROCKHURRAHが作成してくれたのが一番上の画像。
「隠蔽人類」が映画になったら、という想定なので真っ裸にはしなかったという。
ジャングルと塩基配列をバックにした半裸体美女とはニクい演出だね。(笑)
いつも作成してくれてありがとう! 

第2章は密室に関するトリックが使われる。
完璧に思われたセキュリティを突破することができたのは何故か、という点がポイントかな。
第1章でも予想外の展開に付いて行かれるか不安になりながら読み進めてきたけれど、第2章でまたもや先が全く分からない展開になっていく。
SNAKEPIPEの頭で理解できるだろうか?(笑)

隠蔽人類の絶滅と混乱

混乱してしまったSNAKEPIPEは第3章を読んで安心する。 
第2章の顛末が説明されていたからだ。
内容を理解しないと読み進めることができないという、当たり前のことを改めて認識したよ。(笑)
これですっきりした気分で第4章に進むことができるね!

第3章にはロバート・ハンダという外国人留学生が登場する。
日本語が堪能な日系アメリカ人で、形質人類学を専攻している。 
日谷教授を紹介する時にも何気なく形質人類学と書いてしまったけれど、やっぱり調べてみようね。

人類やチンパンジーやゴリラなどヒト科の共通祖先からどのように原生人類が進化してきたのかを解明する学問である。
主に発掘された霊長類や人類の化石を対象に、その形態を分析する。
骨や歯の形態からその古人類の運動様式・食性・性・生活環境・社会構造などを明らかにする。

まさにNHKスペシャルの「人類誕生」なんだね。
どうしてロバート・ハンダが日本の大学に籍をおいているのかは不明だけど、第3章では大活躍する。
片言の日本語かと思いきや、かなり長いセリフを喋ってるんだよね。
ロバートのパートはカタカナ表記されているので、いつの間にか変なアクセントを付けて読み進めていることに気付く。
ケント・デリカットが喋ってるみたいな、ね。(笑)

いやはや、こんなにハチャメチャになってしまうなんて!
「芸のためなら女房も泣かす」(浪花恋しぐれ!古い!)
じゃないけど、善悪は後回しになっちゃうものなのかなあ?
成果を求めるあまり、行き過ぎた行動に出るジャーナリストを描いた映画「ナイトクローラー」を思い出したSNAKEPIPE。
「ナイトクローラー」のジャーナリストには共感する部分もあったから、そう考えると「隠蔽人類」での行動も納得できるかもしれない。
そうだよね、自分なりの目的あったら普通じゃないこともやっちゃうかもね。(笑)

隠蔽人類の発掘と真実

舞台は再びアマゾンへ。 
スペイン語が堪能で、生物に詳しい宮路司という翻訳家が登場する。
元・形質人類学教授だった父親と共に、キズキ族の村を探すためである。
恐ろしい鳴き声の正体をホエザルだと見抜いたり、飛んでいる鳥の名前を言ったりするシーンはまるで「観察者シリーズ」のトビさんが出てきたようで嬉しくなるね。
「観察者シリーズ」は2015年の「生け贄」が最後の刊行なので、3年前になるんだね。
またトビさんやネコに会える日が来ると良いな!(笑)

手がかりを得て帰国した宮路親子は驚愕の事実を知ることになる。
いや、驚いたのは宮路親子ばかりではない。
読んでいるSNAKEPIPEも顎が外れるほどだった。(大げさ)

ここまで「どんでん返し」が繰り広げられる鳥飼先生の作品は初めてだよ!

隠蔽人類の絶望と希望

最終章では綾鹿市を離れて、世界規模にまで広がりを見せる壮大なストーリーになっていた。
この章で、今までの疑問が解決することになる。 
まさかそんな事実が隠蔽されていたなんて!
「隠蔽人類」は章ごとの殺人事件と共に「DNA」に関するミステリーを合わせ持った小説だったんだね。
 生物学meetsミステリー、最後はSFになった感じかな?

実際に「ホモ・サピエンス」ではない、別種の人類が隣にいたらどうなるんだろう。
想像しようとしてもできないのは、全く経験がないからだろうね。
世界中の人が温和なキズキ族のようだったら、何の問題もなく全ての人類を受け入れるだろうけど。(笑)
隔離したり殲滅させようとする意見が出るのも納得できる。
前から虫が好かなかったとしたら尚更だろうね。

次々と探偵役がいなくなってしまう(光文社のあらすじより)「隠蔽人類」は、鳥飼先生の作品では初の試みかも?
アマゾンから始まり綾鹿市に移って、最終章ではインターナショナルな舞台に発展するなんて思いもよらなかったよ。

ROCKHURRAHが連想していた「オラン・ペンデク」や「魔境冒険物」とは全く違う作品だったね。
読み進める程に混乱し、死体はどんどん増えていく!
分かったと安心するのも束の間、新たな疑問にぶつかる、どんでん返しの連続だったね。
展開は急だったけれど、決して奇想天外ではない。
本当にこんな状況が訪れたら、と想像してROCKHURRAHとの議論が白熱したのは言うまでもない。(おおげさ)
驚愕しながら一気に読み進めた鳥飼先生の新作、楽しかった! (笑)

ビザール・ポストカード選手権!30回戦

20180429 top
【アール・ヌーヴォーな雰囲気のワシントンDC・ポストカード】

SNAKEPIPE WROTE:

ビッグニュースが飛び込んできた!
なんと我らが鳥飼否宇先生の新刊が発売されたんだよね!(笑)
タイトルは「隠蔽人類」。
とても嬉しいサプライズがあって、手に入れることができたROCKHURRAH RECORDS。
既にROCKHURRAHもSNAKEPIPEも読み終わっているけれど、感想は次週に死体、じゃなくてしたいと思う。(ぷっ)
今週はビザール・シリーズをお届けしましょう。 

いよいよゴールデンウィークがスタートしたよ!
今年は5月1日と2日を休みにすると9連休の大型連休になるんだよね。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは暦通りのお休みにした。
あまり長く休んでしまうと体も頭も鈍りそうだからね。(笑)

長い休暇ではないというのも理由だけれど、ROCKHURRAH RECORDSは基本的に引きこもるのが好き。
当然のように連休中も遠出する予定はなし。(笑)
それではせめて外国のポストカードでも集めてみようか?
目に留まるのは、やっぱりビザール系になってしまうね。 

まずはアメリカ、シカゴのポストカードから!
シカゴは「Windy City」と呼ばれているらしい。
これはシカゴの政治家が「Long Winded」(息が長い)と評したことから来ているという記事も見つけたけれど、実際に強風が吹き荒れるとのこと。
その強風に乗じて、あわよくばスカートの中が覗けるかも!という意味合いのポストカードがこれ。(笑)
盗撮が問題になっている日本で販売されることはないだろうなあ。
この辺のジョークはいかにもアメリカって感じで良いと思うけど。
強風でもスカートを穿こうとする勇気のある女性ならば、スカートがめくれても
「Oh!モーレツ!」 
と笑いでしめくくりましょう。(笑)

次はアイスランドにしようか。
テレビをあまり観ないROCKHURRAH RECORDSだけれど、録画しておいて観るのが旅行番組なんだよね。
アイスランド、とても良かったなあ。
オーロラや氷河、間欠泉などが観光としては有名だけど、それよりも惹かれたのは人の少なさかな。(笑)
アイスランドのポストカードは、名所とパフィンという鳥、その上に取って付けたように配置されている花をあしらったもの。
「ICELAND」の文字、いたずら書きにしか見えないような稚拙さなのが素晴らしい。(笑)
ちょっと「トホホ」な感じが良いんだよね!

メキシコもテレビで観て、良いなと思ったんだよね。 
まずは食べ物が美味しそう!
事実上の公用語がスペイン語というのも、スペイン好きとしては良いんだよね。 
麻薬に絡んだ犯罪が多発しているというニュースはよく耳にするけれど、ROCKHURRAHも惹かれたというから、2人にとって魅力のある国なんだろうね。
メキシコで使用されることが多い帽子・ソンブレロをモチーフにした、アメリカ国境にある都市ティファナのポストカードをチョイスしてみたよ。
ティファナというのは、カリフォルニアのサンディエゴから車で15分の距離だという。
アメリカからの日帰り観光名所らしいね。
日本は島国だから、日帰りで外国って想像し辛いけど、15分だったらランチにタコス食べに行ったりね?(笑)
気軽にメキシコ行かれるなんて羨ましいな!

今から4週間前に「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン 鑑賞」にも書いたのが聖パトリックの祝日の話だったね。
これはアイルランドにキリスト教を広めた聖人聖パトリックの命日である3月17日のこと。
この日は緑色の物を身に着けるのが決まりだという。 
ならわし通りにおめかしして、これからお祝いに出かけようとするカップルが描かれているポストカードを見つけたよ!
「聖パトリックの祝日の夜明けに心が若くなるようにしましょう」
直訳すると、こんな意味合いの文章が書かれているんだよね。
まさかと思うけど、このカップルって意外と年寄りなのかな?
ちょっと縮尺が変だと思ったのは、左の男性正面からだから分からなかったけど、腰が曲がってるのかも。
腰痛も気になって腰に手を当てているのか?
右の女性はスカート持つ手が逆手になってるように見えるところに注目しちゃう。
もしかしたら実は老女で、スカートの中にズロースを重ね穿きしているため、外から見えないかチェックしているのか?
見るほどに謎が深まるポストカード、なかなか良いね!

ポストカードの下に「1174 Le Tour Eiffel」と書かれているポストカード。
エッフェル塔だということは分かるんだけど、1174って年号のこと?
調べてみると建設されたのは1880年代だというから、年号じゃないことは確かだよね。
では高さなのかな?
Wikipediaによると先端までの高さは324 m (1,063 ft)だという。
近いような気もするけど、どうだろう?(笑)
「エッフェル塔は象より大きいんだよ」
と言いたいためのポストカードなのか、これも意味不明。
恐らくフォトモンタージュで作成されたと思うけど、構図が上手(韻を踏んでる!)なためか、収まりの良い一枚になっているね。
このポストカードが作成されたのがいつなのかは不明だけど、簡単な切り貼りでもインパクトあるよね!

最後はこちら!
エジプトのスフィンクスだっ!
とは言っても、スフィンクスと聞いて想像するような神々しさや神秘性は皆無。
なんともゆる〜い雰囲気のスフィンクスなんだよね。(笑)
そもそもスフィンクスってこんな状態だったっけ?
スフィンクスとはライオンの体と人間の顔を持った神聖な存在と書いてあるよ。
ってことは、人間の状態でうつぶせのポーズを取っているポストカードは一体なんだろうね?
それでも堂々と「スフィンクスです」と言い切っているので、良しとするか。(笑)
トホホな雰囲気は抜群なので、貰ったら嬉しいね!

今回はそこまでビザールではなかったけれど、ポストカード都市編という試みが新鮮に感じたよ。
なんとなく旅行気分も味わえたしね。(笑)

俺たちヴァリー部

【恒例のValleyにちなんだビデオ。時間不足でいいかげん】

ROCKHURRAH WROTE:

タイトルに同じ単語が含まれた曲を集めて、いいかげんなコメントしてゆくだけのお手軽企画がこの「俺たち○○シリーズ」だ。
ただし時代は1970年代から80年代、パンクとニュー・ウェイブからほとんど選曲するというのがROCKHURRAH RECORDSの流儀なのだ。今、この時代にこの手の音楽に興味ある人がどれくらいいるのかは全然わかってないが、読む人をかなり選ぶブログなのは間違いない。

さて、どんな単語でもいいんだけど、今回はたまたま思いついたのでValleyという単語がつく曲を選んでみたよ。
谷とか谷間を意味する言葉なのは大抵の人が知ってるとは思うが、これをカタカナ英語で言ったり書いたりする機会はあまりないはず。
日本のカタカナ表記が曖昧なのかバレー、ヴァリー、ヴァレー、ヴァレイなどといくつもの表記がされてて、一体どれが最もポピュラーなのかよくわからないよ。 
バレーなどと書くとバレーボールのバレーと間違いそうだが、あれはVolley、つまりサッカーのボレー・シュートと同じ綴りでさらにややこしい。じゃあ何でボレーボールにしなかったんだ?と思ってしまうよ。
というわけでかなりあやふやなこの言葉、ROCKHURRAHは迷った末にヴァリーを採用したが、大多数の人にとってはどうでもいいよね。

谷間と言えばROCKHURRAHが思い出すのが子供の頃に大好きだった望月三起也の漫画「ワイルド7」。
この中のエピソードに「谷間のユリは鐘に散る」というのがあって、他の鮮烈な長編(註:「ワイルド7」はコミックス1冊だけで終わるエピソードもあれば数冊に渡って繰り広げられる長編エピソードもあった)に比べると印象は薄いんだけど、タイトルだけは即座に思い出したよ。
世の中の悪党をやっつけるために悪党、犯罪人の中から選抜した白バイ部隊というのがワイルド7の設定なんだけど、読者の度肝を抜くド派手なアクションとストーリー展開に夢中になった少年(今はおっさん)も多かった事だろう。まだタランティーノもロバート・ロドリゲスも登場してなかった時代、70年代初頭の日本にこんな派手なアクション漫画があったのは全世界に誇れる事だと思うよ。
メンバー全ての描写が細かくて本当に生き生きしてたからね。

などと関係ない回想にひたってしまったが、これはもう本気で全く関係ないので書いた本人もビックリ。 

ヴァリー部として真っ先に挙げたいのがスキッズのヒット曲「Into The Valley」だ。
彼らの最も有名な曲であり70年代パンクでValleyと言えばこれが決定版というほどの知名度。
タイトルをGoogle翻訳してみると「イントゥザバレー」だって、うーむ。そりゃ訳になってないぞよ。
次にエキサイト翻訳で直訳してみると「谷に」だとさ。それ以上の意味はないんだろうけどなんかそっけないぞ。

このブログでも何度も書いてるけど、スキッズは70年代後半にデビューしたスコットランドのパンク・バンドだ。こんな記事でも特集したね。
中心となるのはヴォーカルのリチャード・ジョブソンとギターのスチュワート・アダムソンで残りのメンバーはパートタイムみたいな感じだったな。後にヴィサージでスティーブ・ストレンジの相方になるラスティ・イーガン(元リッチ・キッズ)や元ウェイン・カウンティ&エレクトリック・チェアーズのJJジョンソンなどもパートで働いていたね。

パンクとは書いたが初期のスキッズにいわゆるロンドン・パンクっぽさは特になく、スコットランド民謡のバグパイプみたいなギターとリチャード・ジョブソンの野太いヴォーカル、応援団風の男っぽいコーラスが一体となったところに独自性があったな。
それからパワー・ポップのような路線にもなったし、ニュー・ウェイブ世代の正統派ブリティッシュ・ロックみたいな方向に落ち着くかと思いきや、この辺でスチュワート・アダムソンが脱退。
自身のバンド、ビッグ・カントリーを結成しスキッズの路線をことごとく継承、そしてスキッズ以上の大人気バンドになってしまった。大半の曲をアダムソンが書いてたのでスキッズ路線を継承して当たり前なんだけどね。
音楽的な要だったアダムソンが抜けて、最後の方のスキッズはよりトラッド色を全面に打ち出した予想外の方向に進んで行くが、これはあまりポップでもなくロックっぽさも大幅に減少というマニアックな世界。当然元からのスキッズ・ファンに受け入れられず、売れるはずもなく、ここで解散という事になる。
実はROCKHURRAHはこの時代のスキッズを高く評価してるんだけどね。

「Into The Valley」はそんな末期のスキッズなど想像も出来なかった1979年、彼らにとっては初期のシングル。
本国イギリスでヒットしたから日本でもリリースされた数少ないパンク・シングルの一枚だな。
この邦題、というかカタカナ・タイトルが「イントゥ・ザ・ヴァリー」、ROCKHURRAHがタイトルにヴァリーを採用したのはここからなんだよ。「俺たちバレー部」じゃ当たり前過ぎる全然違う話を想像してしまうからね。

誰でも知る大物パンク・バンド以外は義理で一枚出して、売れなかったらそれ以外のシングルは出さないというのが日本のレコード会社のやり方なんだろうかね?
結局、売れなかったのかスキッズのシングルは日本ではたぶんこの一枚のみ。
アルバムの方も1st「恐怖のダンス」と3rd「アブソルート・ゲーム」のみが出て、どう考えても売れそうじゃなかった4th「Joy」はともかく、売れそうだった2nd「Days In Europa」も出さなかったのは何で?と思ってしまうよ。当時、ヴァージン・レーベルを出してたのはビクターだったかな。

さて、これはライブ映像ではあるけど音声の方はスタジオ録音そのまんま、いわゆるプロモーション・ビデオになるのかな?このビデオの頃はまだ19歳くらいだったリチャード・ジョブソンのスポーツマンらしい激しいアクションが大げさ過ぎるけど、今でもノリノリになれる大名曲。みんなで拳を振り上げて「アホイ、アホイ!(船乗りが他の船に呼びかける「おーい」というような意味の言葉)」と怒鳴れば気分はもう1979年だね。

お次のヴァリー部はこれ、ジェネレーションXの1979年作「Valley Of The Dolls」だ。
同年に出た彼らの2ndアルバム「人形の谷」のタイトル曲でもありシングルにもなったけど、このアルバムには「King Rocker」という強烈なヒット曲があり、その陰に隠れてあまり知名度はない曲。
イチイチ翻訳する必要はなさそうだけどGoogle翻訳してみると、ちゃんと「人形の谷」になってたよ。

「Valley Of The Dolls」という原題を検索すると出てくるのはジャクリーヌ・スーザンのベストセラー小説「人形の谷間」とそれを映画化した「哀愁の花びら」だが、60年代にチャールズ・マンソン・ファミリーの一員によって惨殺されたシャロン・テートが出演していた映画として一部で有名。
ジェネレーションXの曲はタイトルが一緒なだけでおそらく何も関係なさそうだけど。

ジェネレーションXは上のスキッズなどと同じく、ロンドン・パンクの第二世代くらいにデビューしたバンドだが、レコード・デビューがやや遅かっただけでパンク初期から有名人だったのが後にソロとして大ヒットするビリー・アイドルだった。元チェルシーだしね。
後にド派手な見た目と音楽でセンセーショナルな話題を振りまいたジグ・ジグ・スパトニックを結成するトニー・ジェイムス、少年っぽさが残るアイドル系ギタリスト、ボブ・アンドリュースなど、ルックスの良さもあってさらに曲も良い。
ジェネレーションXは他のパンク・バンドと比べるとバラード的大作志向があり、いわゆるチンピラなだけのバンドよりはずっと構成力も演奏力もあり、つまりはこの時代に売れる要素が詰まったバンドだったと思うんだけど、予想ほどには大ヒット曲もなかったのが残念。
パンク直後のニュー・ウェイブ世代にうまく乗り換えする事もなく、割と短命に終わってしまったという印象があるけど、最初の二枚のアルバムは聴きまくったものだ。

「人形の谷」は特にROCKHURRAHの地元、北九州の図書館の視聴覚室で何度もリクエストして聴いてた覚えがある。ここのお姉さんがパンク好きだったからよく通ってたんだよね。
こんなに聴いてたくせになぜか自分では持ってなくて、東京に出た数年後にひっそり買ったんだった。
この頃はまだ知らない新しいバンドを仕入れるのにほとんどの金を使うという方向性だったからなあ。

ビリー・アイドルの歌声も聴けばすぐにわかる特徴のあるもので、顔立ちのインパクトも際立ってるな。

今回集めたヴァリー部はパンク系が多いけど、次はコープス・グラインダーズの「Valley Of Fear」にしてみよう。しつこくGoogle翻訳してみたら「恐怖の谷」となってた。シャーロック・ホームズのシリーズに同名タイトルがあるが、このジャケット写真見てたらあまり関係はなさそう。

元はニューヨーク・ドールズ(の母体となるバンド)のギタリストだったというリック・リヴェッツがドールズ脱退した後に作ったのがこのコープス・グラインダーズだ。ちなみにリヴェッツが辞めた代わりにドールズに入ったのがシルヴェイン・シルヴェインだった。
コープス・グラインダーズの初期にはドールズのアーサー・”キラー”・ケインもいたというからまさにドールズ直系。
そっくりな名前の日本のバンドがいるので間違えられやすいが、別にマネしたわけではなくてたぶん「人間ミンチ」という70年代のB級ホラー映画の原題がCorpse Grinders、どちらのバンドもここから取ったんじゃないかな? 

ニューヨーク・ドールズと言えばあらゆるバッド・テイストが集まって奇跡的にもその筋の主流となってしまったバンドとして名高いが、ニューヨーク・パンクを語る上では外せない最低で最高のロックンロール・バンドだね。

で、このコープス・グラインダーズの方はベースとギターにそのDNAが流れていたわけで1stシングルは確かにラウドでB級テイストに満ち溢れた乱暴なパンク路線、ホラー映画っぽいメイクもドールズ時代にはなかった新要素なので、これは好きだった。
しかし”キラー”・ケインがいなくなった後の本作、1984年に出た唯一のオリジナル・アルバム「Valley Of Fear」ではリズム・マシーンにシンセサイザーまで取り入れた迫力ない異端のロックンロールが展開してゆく。このチープさウソっぽさも魅力なんだけど、ニューヨーク・ドールズ直系を想像してた人にはあまり受けなかったかもね。
見た目からするとポジティブ・パンクやサイコビリーのバンドみたいでもあるが、それともちょっと違う独自のアングラ感があるので、ROCKHURRAHはその点を評価しているよ。

時間があまりないので手早くいってみよう。
お次のヴァリー部はこれ、ROCKHURRAHの大好きなスクリーミング・デッドの「Valley Of The Dead」。1982年のデビュー・シングルだな。
またまた翻訳してみると「死の谷」、え?いちいち翻訳しなくてもわかる?

「死の谷」と聞いても特に何も思い出さなかったが、橘外男の「死の蔭(チャブロ・マチュロ)探検記」というのを急に思い出した。少年時代は戦前戦後くらいの探偵小説が大好きで教養文庫の小栗虫太郎、夢野久作、久生十蘭、香山滋、橘外男などを片っ端から読み漁っていた。夢野久作だけは米倉斉加年が扉絵を書いてた角川文庫版の方が好きだったけど、他の作家はこの教養文庫のシリーズが最も手軽で探すのに苦労しなかったから愛読してたものだ。
橘外男は全然興味ないタイプの著作も多かったけど、刑務所に入ってたなどかなりの無頼漢で独特の魅力があった作家だ。
小倉(福岡県北九州市)のナガリ書店や福家書店、宋文堂などなど、今はあるのかどうかさえ知らないけど、当時よく行ってた本屋が懐かしい。ROCKHURRAHが少年の頃の小倉には輸入レコード屋がほとんどなかったから、本屋に行けばROCKHURRAHがすぐに見つかるというくらいに長時間をこの辺で過ごしたものだ。
これまた全然関係ない話だったか。時間ないなら先を急げよ、と本人に突っ込まれてしまうありさま。

スクリーミング・デッドはいわゆるポジティブ・パンクと呼ばれた音楽で「永遠の中堅」とROCKHURRAHが常に思ってたバンドだ。初期はレコード出す金もなかった(?)ようでカセットを自主制作販売してたみたいだが、結局シングルのみでアルバムも出さずに解散してしまったところが中堅以下。
ちょっと鼻にかかったチンピラ声でパンクっぽいのから日本のGSみたいな曲調までを歌い上げるところが個人的には好みだった。 彼らのディスコグラフィを調べてみると、当時はほぼ全シングルを所有していた事が判明した。それくらい気に入ってたんだろう。
ポジティブ・パンク、ゴシックという音楽のような重苦しさはあまりなく、単にホラー要素があるパンクというだけで、音楽的な印象は違うが上のコープス・グラインダーズとかと同じような立ち位置なのかも。そう言えばジャケットの構図も似てるしね。 

動かない動画が続いたので飽きてきたろうから、お次は動きのあるこれを選曲してみよう。
ソニック・ユースとリディア・ランチによる「Death Valley 69 」だ。ヴァリー部としてはこれを見過ごすわけにはいかないからな。
もはや翻訳する必要性はないけど律儀にやってみたら「デスバレー69」、そりゃそうだ。
車のボンネットで目玉焼きが出来ると評判のデスヴァレーはアメリカ人だったら誰でも知ってるところなのかな?ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも地理には疎く、日本に住んでても阿寒湖と屈斜路湖の区別さえつかないけどね。
パット見のタイトルはカッコイイけど、デスヴァレーは国立公園だから日本で言えば「十和田八幡平(国立公園)78」などとタイトルつけるのと同じノリかね? 

ソニック・ユースは1980年代初頭から活動していたニューヨークのバンドでロック界随一の巨人(推測)のサーストン・ムーアとキム・ゴードンの夫妻がバンドの中心だった。
独特のギターによるノイズとパンクやサイケデリックがごちゃ混ぜになったような音楽は90年代以降ではよくあるオルタナティブってヤツだけど、彼らが始めた頃はまだアングラなものだったな。
それよりちょっと前の時代、ニューヨークで流行ってたノー・ウェイブという動きがあったけど、ソニック・ユースのはそこまでヒステリックではない感じ。最初はどちらかというとイギリスのオルタナティブ系と呼ばれた音楽寄りだったと記憶するよ。 個人的にはこの初期の頃の方が好きだった。 
こないだ観てきてSNAKEPIPEが記事を書いてくれたマイク・ケリーやゲルハルト・リヒターなどレコード・ジャケットにもこだわったバンドだね。 

この曲は1985年の「Bad Moon Rising」に収録されてシングルにもなった大作。
この頃はまだ大人気になる前のインディーズ・バンドだったにも関わらず映画風のプロモーション・ビデオが作られている。
ゲストの金切り声ヴォーカリストがノー・ウェイブ界の裏女王、リディア・ランチという組み合わせ。
ビデオはカルト宗教っぽい感じがしてかなり不穏な雰囲気の危ないもの。銃社会アメリカだから、この映像はシャレにならんぞ、というリアルさがあるな。 

何だか明るくない系統のものが続いたから最後はあまり毒のなさそうなのにしてみよう。
Allez Allez、綴りは難しくないのにこういうのが一番読めん・・・とずっと思ってたバンドだがディスク・ユニオンによるとアレ・アレというらしい。ではそれでいってみよう。
アレ・アレの「Valley Of The Kings」だ。
「どんだけ英語が苦手なんだよ」と言われそうだが例によって翻訳してみると予想通り「王の谷」。

NHKスペシャルとかで去年くらいやってたピラミッド特集や王家の谷、などと聞くとついつい興味を持ってしまうが、SNAKEPIPEもそういう知的好奇心が豊富なタイプで良かった。
二人の見た目からはすごく意外だけど歴史モノも好きで、王家の谷とはまるで関係ないが「英雄たちの選択」とかも毎回観てるからね。

アレ・アレはリアルタイムでレコード屋ではよく見かけたジャケットだったが、レゲエかアフリカンのような印象があったから、その辺が苦手なROCKHURRAHは素通りしていたよ。
実はアフリカともジャマイカとも関係なさそうなベルギーのバンドで黒人も一人しかいない、それでもアフロとかファンク、ダブという夏向けの曲調でたぶん人気もあったらしい。本格派ではなくてあくまでニュー・ウェイブの一種だったらニセモノ音楽が大好きなROCKHURRAHでも理解できるだろう。
という事でずっと食わず嫌いだったこのバンドのビデオを観てみたら、これがなかなかいいでないの。
バックのメンバーは何だかわからないがバカっぽい派手な動きをしているしヴォーカルの紅一点はこの衣装と姿だったらクールじゃないか?と思わせておきながら結構微妙な表情だし、決して暑苦しくならない感じがいかにもニュー・ウェイブ世代。

今回はかなり遅くなってしまってSNAKEPIPEにも迷惑かけてしまったよ。
次からは下準備して取り掛かるからね。

それではまた、パアラム(タガログ語で「さようなら」)。