石井聰亙の暴走~追悼:山田辰夫~

                   

【「狂い咲きサンダーロード」のラストで見せた山田辰夫の笑顔。合掌。】

SNAKEPIPE WROTE:

「ぎゃっ」
とROCKHURRAHが叫ぶ。
何事か、と見ると震える手でパソコンを指差している。
なんとそこには俳優、山田辰夫氏死去のニュースが。
実はその26日に何年(何十年?)ぶりかで山田辰夫スクリーンデビュー作「狂い咲きサンダーロード」を観たばかり。
二人で山田辰夫について語り合ったばかりだったのである。
あまりの偶然にびっくりするのも無理はない。
そこで今回は山田辰夫追悼の意味も含めて石井聰亙監督の3本の映画についてまとめてみたい。

石井聰亙監督といえばやはり80年代、新宿だったか吉祥寺だったか忘れてしまったけれどオールナイトの映画館で鑑賞したような記憶がある。
パンクテイストと暴力的な雰囲気が夜にはぴったり合っていた。
恐らく一番初めに観たのは「爆裂都市 BURST CITY」だったと思うけれど、年代順に書いてみようかな。


「狂い咲きサンダーロード」(1980年)は80年代以降にも何度か観ているはずだけど、細かい部分についてはすっかり忘れてしまっていたSNAKEPIPE。
そんなSNAKEPIPEとは違って、さすがは地元北九州で撮影が行われていたというこの映画をROCKHURRAHは何度も鑑賞していたらしい。
石井聰亙監督も福岡出身だしね!
そんな二人で揃って鑑賞したのは今回が初めてだった。
改めて観ると、石井聰亙監督の美意識や描写のカッコ良さがよく解る。
SNAKEPIPEも写真撮影したいな、と思うような風景もたくさん出てきた。
いいなあ、この時代の北九州!(笑)

この作品は暴走族を描いた作品で、一人だけ突出してしまった主人公ジンを演じる山田辰夫が非常に印象的である。
「つっぱり」の信念を貫き通し、我が道を行くジン。
走りたいから走る、嫌なことはしたくない、と自分に正直な人間である。
その正直さが好まれたり、反感を買うことになったりする。
好まれたのは右翼団体に所属する小林稔侍演じるタケシ。
反感を買ったのは他の暴走族チーム。
最後まで自分の好きなことをしよう、と筋を通す人はなかなかいないだろうね。

山田辰夫は顔もそうだけど、なんといっても特徴的なのはその声。
いかにもチンピラ声というのだろうか、野次を飛ばすのに最も適してる声質。
実はこの映画以外の山田辰夫が演じてるのを観たことないSNAKEPIPE。
最近では話題作「おくりびと」にも出演していたみたいだけど、この手の映画はあまり得意ではないので。
「ずっと俳優やってたんだね」とROCKHURRAHと感心していたところに訃報。
53歳じゃまだまだ若いのに、非常に残念である。合掌。


続いて「爆裂都市 BURST CITY」(1982年)。
この映画も「スターリンが出てる」とか「泉谷しげるが嫌な役」などというとても簡単な感想しか覚えていない、かなり昔に観た記憶しか残っていない映画である。
この映画に関してはなんといっても当時のロックスター、ロッカーズとルースターズ(のメンバーが合わさったバンド)、そしてスターリンが実際に演奏してるシーンが観られるだけでも充分ウレシイ!
ミチロウ、若い!(笑)
ストーリーがどうの、というよりも音楽とファッションに興味がいってしまう。
ファッション、と書いてはみたけれど、この映画の中でのファッションというのがやや特殊。
これはどうやらこの当時の北九州では割と当たり前の光景だったらしいんだけど、パンクと暴走族とヤクザが全部ごっちゃになったという妙な組み合わせ。
実際に北九州で生まれ育ったROCKHURRAHによると、パンクと暴走族が友達同士でツルんでるなんてことはざらにあったみたい。
ま、結局「アウトロー」として考えればおかしくないのかな?
ただ、これは東京のパンクシーンとは当然だけど違っていて、地方都市特有の文化なのかな。

この映画には後に芥川賞作家になる元INUの町田町蔵(現在は町田康)と、同じくルポライターで作家の戸井十月がアブナイ兄弟役で出演していたり、暗黒舞踏「大駱駝艦」の麿赤児がうなじに「DEATH」と刺青してたり、若いコント赤信号室井滋の姿を観ることもできる。
80年代を知るのにはとても面白い映画かな?


そして最後は「逆噴射家族」(1984年)である。
この映画のことは以前「さて、今週のリクエストは」にも書いたことがあるけれど、主演の小林克也の大ファンであり、石井聰亙監督の作品上記2本を鑑賞した後のことだったのでとても楽しみにしていた記憶がある。
これまた以前の記憶が飛んでいたので、今回改めて観直した。

タイトル通りに家族の一人一人が「逆噴射しちゃう」という話で(簡単過ぎか?)、実は幸せそうに見えている家族にもこんなにストレスがあるんだな、と日本の病理について描いている作品である。
撮影が浦安だったようで、恐らく当時は開発が今ほど盛んではなかった殺風景さ。
うーん、どうやら石井聰亙監督は「空っぽ」な風景が好みなんだね。
若い工藤夕貴は顔が違って見えたり、狂気が宿ってくる小林克也の顔の変化など見所満載である。
SNAKEPIPEは以前から大学受験を控えている工藤夕貴のお兄さん役の俳優、有薗芳記の異常さに目を奪われていたけれど、残念ながらこの作品以外では知らないな。
原作と脚本が小林よしのりだったとは知らなかったけれど、所々で「らしさ」が出ていたような気がした。

以上石井聰亙監督初期の代表作3本について書いてきたけれど、簡単にまとめてみるならば
「テーマは暴走」
といえるのではないだろうか。
実際にバイクで暴走する場合もあれば、精神的に暴走してしまうこともある。
追い詰められて制御できなくなり、もっと先に突き抜けちゃった状態を描いているのかな。
全部80年代の作品だけで25年も経っているけれど、決して古くない映像だと思う。

調べてみると石井聰亙監督はコンスタントに作品を発表している模様。
上の3本以降については全く知らないので、今度また機会を作って鑑賞してみようかな。
暴走の先に何があるのか。
答えが見つかるかもしれないからね!(笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です