好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇–痙攣的–

                   

【現在でも充分斬新的!なCAN。一番右がダモ鈴木。クリックで音が鳴ります。】

SNAKEPIPE WROTE:

以前にも「お気に入りの作家」として記事にしたことがある鳥飼否宇
すべてを読破したわけではないけれど、中でも一番のお気に入りの作品「痙攣的 モンド氏の逆説」を読み返し改めてその面白さを実感した次第である。
「痙攣的」は全部で5章から成る小説で、それぞれが独立した短編でありながらも最後には種明かしがある連作短編である。
ただ「痙攣的」は殺人事件を扱うミステリー小説であるにも関わらず、あまり一般的ではない音楽や芸術を主題に置いた日本唯一(?)の作品なのである。
今回はその「痙攣的」の中で使われているパロディについて書いてみたいと思う。

と言ってはみたものの、どうやら鳥飼否宇が詳しい音楽の分野はジャーマン・プログレッシブ・ロック。
クラウト(酢漬けのキャベツ)ロックとも言われているそうで。
このジャンルに関するパロディを多様しているため、この手の音楽について知らない人にとっては全然分からない話になってしまう。
かくゆうSNAKEPIPEもはっきりと自分で分かったのは1名のみ!(笑)
パロディなんだな、と分からなくても充分楽しめる小説である。
が、パロディだということが分かると更に面白さ倍増。
一粒で二度おいしい、になると思う。
ミステリーファンよりもジャーマンロックファンの人にお薦めの小説といえるのかもしれないね。
SNAKEPIPE一人ではとても追いつかないので、ROCKHURRAHにも協力してもらい解読(?)してみた。
「多分こうなんじゃないか」と予測して書いているので、これが正解なのかどうかは分からないけどね!(笑)

第1章 廃墟と青空(ファウスト
音楽に関連したミステリー。
これから先に何度も漢字を変えて出演する相田彰(あいだあきら)。
これはもうそのもの、間章(音楽評論家)の「もじり」だろう。

ロック雑誌を主宰していた宇部譲(うべゆずる)。
これはロックマガジンの編集長だった 阿木譲とドイツのバンド、ファウストの仕掛け人ウーヴェ・ネテルベックを足した感じか?
ウーヴェを宇部にしちゃうのってすごい!(笑)

宇部譲がメンバー募集して作ったロックバンドの名前が「鉄拳」。
これは前述したドイツのバンド、ファウストからのものか?
ドイツ語で「ファウスト」とは「げんこつ」を意味するとのこと。
なるほどね!(笑)

宇部譲に見出されてメジャーデヴューした「ファンク・ポテト」のメンバーの名前が京都ヨシミ(みやこよしみ)。
これは「じゃがたら」の江戸アケミのパロディか?

「鉄拳」のメンバー入村徹(いりむらとおる)。
これはファウストのメンバー、ハンス・ヨアヒム・イルムラーから来てるのか?

実在する伝説となったバンドについての解説などがさらっと書いてあり、それも面白い。
ミステリーとしても「ほほう」と感心する成り行きになっていて、音楽とミステリーの融合がいい感じだ。

第2章 闇の舞踏会(CAN
現代アートに関連したミステリー。
またもや間章(音楽評論家)をもじった会田昶(あいだあきら)が登場。

キュレーターとして登場する檐木貫(ひさしぎかん)。
もう名前が「かん」なので、すでにCANをもじってる!

舞踏で登場するのは掘賀舟海(ほるがしゅうかい)。
これはCANのメンバーだったホルガー・シューカイからの引用だね。
まんまだし!(笑)

「ミサ」と呼ばれるパフォーマンスを行うのはウム鈴木(うむすずき)。
こちらもCANのメンバーであったダモ鈴木をもじったようで。
これもかなり大笑いのパロディだ。(笑)

「十牛図」を使ったパフォーマンスをするのが現代アート界のドン、伴鰤人(ばんぶりと)。
これはアメリカのミュージシャン、ドン・ヴァン・ヴリートことキャプテン・ビーフハートか!
だから牛だし、ドンなのね。(笑)

土方巽から始まる暗黒舞踏の歴史や現代アートにおける「盗用と盗作」の違いについて書いてあり、これらもなかなか興味深い。
パフォーマンスもデジタルアートも本当にありそうな作品だった。
一番笑わせてくれたのは「レディメイド」かな。傑作!
SNAKEPIPE個人的には「痙攣的」の中で一番好きな短編がこれ。

第3章 神の鞭(アモン・デュールII
イリュージョンアートに関連したミステリー。
気象学者として登場する英田暁(あいだあきら)。
この漢字で「あいだ」って読むのかな?

イリュージョニストとして栗須賀零流(くりすかれいる)という名前がある。
これはアモン・デュールIIのメンバー、クリス・カレールでは?
クリス、と区切らないで「くりすか」を苗字にしたところが秀逸!(笑)

アースワークやランドアートといった壮大なスケール感を持つ現代アートについても簡単に説明されている。
実際に目にすることがなく航空写真での作品群が多いため、抽選で1名だけご招待というこの小説の企画は本当にありそうな話だと思った。
SNAKEPIPEは怖いから、あまりこのイリュージョンアートは見たくないなあ。(笑)

第4章 電子美学(ノイ!
この章でいきなり話はイカになる。
イカを研究する研究所が舞台のミステリー。
綾鹿イカ学研究所の副所長としてまたもや愛田亮(あいだあきら)。
ここまでこの名前にこだわるのってすごい!
それにしても4回も漢字を変えながらも登場してくるので、余程気に入ってるんだろうね。

綾鹿イカ学研究所員に老田美香(ろうたみか)。
これはクラフトワーク、ノイ!のメンバーだったミヒャエル・ローターか。
ローターが老田。(笑)

老田美香と同じく研究員の砂井田(すないだ)。
これもクラフトワークのフローリアン・シュナイダーから来てるのか。
シュナイダーを「すないだ」ね。

研究所所長の名前がクラウス殿下。
クラフトワーク、ノイ!のメンバー、クラウス・ディンガーからの命名ね。
これ、やっぱり最高!(大笑い)

研究所で使われているシステムの名前が「ハローガロ」。
これはノイ!の曲名のようね。

突然話が「イカ」になってしまい、あまりの展開の唐突さに付いて行かれない読者が続出じゃないかと思う。
ただし、上にも書いたように同じ名前が出てくるため「ああ、やっぱり続いてるんだ」と確認ができるけど。
ここからの章はミステリーの本質に迫ってしまうので、あまり詳しく語るのはやめる。
SNAKEPIPEはイカ皮スーツは着たくないな。
そんな「いかがわしい」もの!(プッ)

第5章 人間解体(クラフトワーク
この章は第4章からの続きなので、イカの話である。
イカの知能指数の高さを示すお話が綴られていて、確かにイカってちょっと不思議な生物だよね。
先日も巨大なダイオウホウズキイカが発見された、なんてニュースもあったし。
謎が多い生物としてみるとミステリーにはもってこい、かな?(笑)

こんな感じで「痙攣的」はミステリーの領域だけにとどまらず、音楽やアートに興味がある鳥飼否宇の好きなモノ満載の小説でとっても面白いのである。
この作品以外にも横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した「中空」や「非在」などに登場する鳶さんとカメラマンの猫田のシリーズも面白い。
鳶さんのキャラクターは鳥飼否宇の分身かな、と勝手に想像するSNAKEPIPE。
ひょうきんでちょっととぼけたインテリで、いい味出してるんだよね。(笑)
今回特集した「痙攣的」のような「~的」シリーズも好き。
「爆発的」と「官能的」は未読なので、早く手に入れないと!(笑)

鳥飼否宇は九州大学理学部生物学科卒業、というインテリ!
ジャーマンロックのような難解な音楽を好むかと思えば、「昆虫探偵」のような作品を書く生物好きでもあるとても不思議な人だ。
現在は奄美大島在住で奄美野鳥の会の会長やってるらしい。
アドレスに「シナプス」が入ってるところが「らしい」よね。(笑)
なんと「奄美大島ツアーで夜の森の特別ガイド」もやってるみたいだから、奄美大島に行って是非とも鳥飼ガイドの説明を聞いてみたいね!

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