好き好きアーツ!#18 DAVID LYNCH —CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE

20121118-top【ラフォーレの垂れ幕にリンチの名前がっ!交差点手前から撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2012年11月10日よりラフォーレ原宿にあるラフォーレミュージアムにて、「デヴィッド・リンチ展~暴力と静寂に棲むカオス」が開催されている。
この情報を教えてくれたのは、またもやROCKHURRAHだった。
それはもう今から2ヶ月くらい前のことになるのかな。
心待ちにして、展覧会の初日に鑑賞してきたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
2012年7月に鑑賞した渋谷ヒカリエで開催された「Hand Of Dreams」の記事に

「リンチは平面の作品だけじゃなくて、立体作品も制作しているのを海外のサイトで知った。
その作品もまた稚拙な雰囲気だけど怖いんだよね。(笑)
そんな作品群も鑑賞できたらいいなあ。 」

と書いていたのだけれど、今回の展覧会でその希望が叶うことになった。
なんて幸運なんでしょ!(笑)
1991年今はなき東高現代美術館での個展、1996年渋谷パルコギャラリーでの写真展「Dreams」、今年7月ヒカリエにおけるリトグラフ展に引き続いての鑑賞。
どうやら2010年に大阪でも個展を開催していたようだけれど、全然知らなかったよー!
その時に情報を入手していたら、初の大阪入りができたかもしれないのにね。(今まで一度も大阪に行ったことがないSNAKEPIPE)
今回は絵、写真、映像に加えミクストメディアの展示ということでリンチの世界を堪能できる企画になっているようだ。
ワクワクしながら原宿に向かう。

ラフォーレミュージアムという名前は聞いたことがあったけれど、そもそも原宿大好きだった少女時代(ぷっ)から、ほとんどラフォーレ原宿にすら足を踏み入れたことのないSNAKEPIPE。
聞いてみるとROCKHURRAHも同じく、ラフォーレ原宿には思い出がないと言う。
フロアの天井が低く、細かく店舗が分かれているため、買い物がし辛い印象があったんだけど?
やっぱり今回も同じように感じてしまった。
店内を物色することもなく、最上階にあるラフォーレミュージアムへ。

チケット売り場の前にはリンチの「ようこそ」的な映像が流れている。
なんだかこれって…夏に開催されたヒカリエの時とほとんど同じ。(笑)
前回は「愛・平和」の漢字を空中に書いていたリンチが、今回は日本語を喋っていること、モノクロからカラーに変わったこと以外は似た映像だね。

チケット売り場の横には物販店があった。
ポストカードと、リンチの絵をプリントしたTシャツや関連書籍などを販売している。
おや?お目当ての図録がないよ?
どうやらこれは完全予約制での受付となっているようで、11月下旬発送予定で受付だけ行なっているとのこと。
帰りに予約することにして、逸る気持ちを抑えながら会場へ。

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最初は写真作品の展示からである。
ポーランドの廃工場を撮影した作品群が並ぶ。
イレイザーヘッドの舞台にもなっている、フィラデルフィアのリンチ撮影の写真を観たことあるけど、やっぱりそれらも工場地帯の写真だったんだよね。
工場にある魅力はSNAKEPIPEもよーく解る。(笑)
きっと今回のポーランドの工場なんて、目の前にしたらヨダレが出るだろうな。
クレジットを確認すると、今年の撮影ってことみたいね。
2012年にもまだこんな工場があるとは、ポーランド恐るべし!(笑)
他にも写真作品が続き、男女のヌードのクローズアップシリーズ、snowmenという雪だるまシリーズ、と全てモノクロームである。

ヌードのクローズアップの写真群には「その手があったか」と唸ってしまった。
クローズアップにすることで、体のどのパーツを写してるのか判らなくなるんだよね。
そして明らかに、通常ならば服や下着で隠れている部分を露出させた写真(まわりくどい言い方だけど)と並べて展示されることで、謎のパーツ写真が想像によってエロティックな方向に進んでしまうから不思議だ。
もしかしたらそれは肘を曲げたり、首のしわだったりするような、普段から目にしている部分かもしれないのにね?
この、ちょっとトリックめいたシリーズは興味深く感じたよ。

短編映像作品3作品を鑑賞する。
2009年、2011年、2012年の作品、というかなり最近の作品なんだけどね。
映像作品ガイドで確認しないと「最近の?」と思ってしまう映像作品。
だってリンチの初期映像作品との違いがはっきりしないんだもん。(笑)
1968年制作ですよ、と言われても何の疑いも持たないかもしれないなあ。
途中で出てきたゴッホは、やっぱり「耳つながり」ということでOKかしら?

続いては夏に鑑賞したリトグラフと同じ系列の、和紙への「にじみ」を活用したような絵画が並ぶ。
これらの絵画は、ヒカリエで鑑賞したリトグラフのような黒っぽさ、線の太さはなくて、強烈なインパクトは残さなかった。

またもや映像作品2作品。
リンチ自身が出演していて、まるでツインピークスのゴードン・コール並に声を張り上げて喋り、おかしい。(笑)
17分と13分、という合わせて30分の映像のため、全部を鑑賞するのを諦めることにする。
字幕もなかったので、さっぱり意味が解らなかったし。(笑)

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次は油絵の登場である。
1991年に鑑賞した時のリンチの油絵は、色彩や題材がいかにもリンチらしく暗いもので、あの時には確かバンドエイドが貼り付けられてる作品もあったはず。
それでもほとんど「平面」の作品ってことになるよね。
今回は油絵、といっても単なる絵画ではなくて、油絵の具と粘土のような物を組み合わせたり、立体物がキャンパスに貼り付けられているような作品であった。

上は「I see my Love」と、そのまんま絵にタイトルが書かれてる作品である。
リンチの作品にはこのようにタイトル記載が多いんだよね。
以前も言ったことだけど、その字がまた「リンチ・フォント」とでも名付けたら良いような独特の風合を持ったアルファベットで、それだけでもアートになってしまう。
色彩の暗さは相変わらずだけど、立体になっている部分が新しいね。
そして貼り付けられているのは…じっと見ていると、もしかして歯?
ぎゃーっ、怖いっ!
目から飛び出してるのも嫌だけど、なんだか歯が本物っぽいんだよね。
ひー、顔が顔として写実的じゃないところが余計に不気味!
ROCKHURRAHは「レザーフェイスみたい」と言う。
リンチの娘であるジェニファー・リンチが監督した「サベイランス」にも、似たお面が出てきたことを思い出す。
世界一カルトな親子の作品!Surveillance鑑賞」 に画像を載せているので、ご参照くだされ。

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いよいよ大詰め!ミクストメディアの登場である。
今回の展覧会で一番観たかったのがこのシリーズ。
立体油絵(変な造語だけど)だけでもかなりのインパクトがあったけれど、ミクストメディアはまずその大きさに驚いてしまう。
「Boy Lights Fire」という作品は208.3cm x  330.2cmという巨大さ!
下地になっているのはどうやらダンボールのよう。
そこに「にじみ」を加え、更に立体を貼りつけたり、マッチ部分が光るように細工がされていたり、と実験的な要素が満載である。
このタイプと同系統の「Bob’s Second Dream」などを含めた巨大ミクストメディアが全部で4点展示されている。
川村記念美術館の「ロスコ・ルーム」ならぬ、「リンチ・ルーム」といった感じだろうか。
ゾワゾワと背中から寒気が襲ってくるような恐怖感。
それでもずっとその場に留まっていたいと思う相反する心情。
「怖いもの見たさ」なんて簡単な言葉では説明し切れない摩訶不思議な引力のある空間だった。
あの感覚はやっぱりあの場で体験・体感しないと解らない類のものだろうね。
行って良かった、鑑賞できて幸せだった、と心から思ったSNAKEPIPEである。

以上で展覧会の概要のまとめは終わりなんだけど、出口近くに設けられたスペースに、何やらゴージャス感漂うガラスケースがいくつか置かれている。
なんとそれはフランスのシャンパンであるドン・ペリニヨン
なんでリンチの個展にドンペリなの?

どうやらリンチがドン・ペリニヨンのボトルとパッケージデザインをした、ということらしい。
リンチアンを名乗って長いSNAKEPIPEがそんなことも知らないとは!(笑)
お詫びにドンペリ購入させて頂きますっ!
ではお値段を調べてって…えーっ!
「ドンペリニヨンヴィンテージ 2003」が2万1000円、「ドンペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2000」が4万3050円だって。
2本購入なら6万4050円だよー!
ドンペリってやっぱり高額品なんだね。
小さいことだけど、最後の50円ってところがものすごく気になるなあ。(笑)
2本買うから6万ちょっきりでどおだ?と言いたくなるよね!
いや、スミマセン、買えません。(涙)
カリフォルニアのスタジオで2日間かけて撮影されたのは、光や煙の中に浮かび上がるドンペリのマーク。
キラキラしていてとてもキレイ。
リンチらしいのかどうかは不明だけど、ドンペリのイメージには良く合ってるように思うね。

リンチの絵の怖さについてずっと考察していたら、結局行き着いたのは「境界」という言葉かな。
夢なのか、現実なのか。
正常なのか、異常なのか。
リンチの絵はまるで、知的障害者や精神障害のある人が、勢いに乗って制作しましたという雰囲気がある。
何も考えず、ただその欲求に駆られ、想いのまま筆を動かしたような。
子供が描いたようにも見えてくる。
その稚拙そうに見える部分が余計に怖いのだ。
例えば小説などで犯人が子供時代に描いた、心理検査として使用されるような絵、もしくは犯罪を目撃してしまった後、ショックで喋ることができなくなった子供が現場を描いたような絵、と説明したら解ってもらえるだろうか。
何かを内に秘めた人物の絵。
それは凶暴性だったり残酷性なのかもしれない。
展覧会のタイトル通り「静寂と暴力が棲むカオス」だね。(笑)
きっとそのカオスを、SNAKEPIPEの頭でも心でもなく、皮膚が反応していたようである。
背中がゾワゾワしたのはそのせいね、きっと。
図録の到着が楽しみである。

2012年は「Crazy Clown Time」のCDデビューに始まり、ヒカリエでの個展、そして今回のラフォーレミュージアムにおける個展と続きリンチ大活躍、ブログに登場することも多かった。
リンチアンには幸せな年だったね!
そしてリンチに、また子供ができたらしい。
「リンチ、66歳で再びパパに!」なんて記事も発見。
そんな精力的なリンチに、これからも期待しちゃおうね!

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