ビザール・インテリア選手権!29回戦

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【素晴らしいインテリア・デザインと聞くと最初に思い浮かぶのが「時計じかけのオレンジ」かな】

SNAKEPIPE WROTE:

先週はデヴィッド・リンチが手がけるインテリアを特集したんだよね。
インテリアについて調べていたら、あるのよ、ビザールがいっぱい!
リンチネタから入ってインテリアつながりってことで、今週はビザールなインテリアについて書いてみようかな!

最初に紹介するのは水玉で「いかにも彌生」なデザイン!(笑)
これはロンドンにあるルイ・ヴィトンのショップで展開された、草間彌生とのコラボレーションだという。
店内の装飾も、彌生一色。
ショップに足を踏み入れるたら、どんな気分になるんだろう?
目に入るのは全て水玉だからね。
SNAKEPIPEだったら、足元がおぼつかなかなくなって、めまいを起こすかもしれないな。(笑)
ここまで来ると、ショップというよりは美術館の一室みたいに見えるよ。
商品もコラボして展示されていたみたいだね。
2016年10月の記事「収集狂時代 第6巻 Louis Vuitton編」で取り上げた草間彌生とコラボしたカボチャ・バッグも、恐らくこの時の商品だったんだろうね。
カボチャ・バッグのお値段$133,400、日本円で約1,390万円と書いているよ。
他にも洋服や靴などをコラボレーションしていたようなので、どれも目ン玉が飛び出るような金額なんだろうなあ。
ルイ・ヴィトンはユニークなデザインを多く手がけているので、またいつか特集したいな!

アート的なインテリア・デザインはやっぱり面白い
これはサンパウロにある「Casa Cubo」で、ゲストハウス兼ギャラリーだという。
カップルが宿泊できるような設計だと書いてあるけれど、空間を広く取っていて、非常にゆったりしてるんだよね。
日本人の感覚でいうと、2世帯住宅くらいの広さ。(笑)
なんといっても天井からニョキッと出ている銅像のインパクトがすごい!
吊るされてるのか、これから降りてくるのか。
この銅像があっても、まるで気にならない天井の高さも素晴らしいなあ。
実際に住んでみたいかと聞かれたら、悩むかもしれないけど。(笑)
デザインしたのはIsay Weinfeldというサンパウロ生まれの建築家。
1952年生まれだというから現在61歳かな。
ブラジルというと2015年8月に「『オスカー・ニーマイヤー展』と『ここはだれの場所?』鑑賞」でオスカー・ニーマイヤーの建築に初めて触れて、感動したことを思い出す。
南米のイメージが大きく変わったSNAKEPIPEなので、もうブラジルの建築家と聞いても驚かないし、むしろ「さすがブラジル!」と思ってしまうね。

次も天井シリーズにしてみようか。
ミュージシャン用に設計されたというキエフにあるアパートだという。
キエフ?麸が消えるってこと?(ぷっ)
大変失礼致しました、ウクライナの首都がキエフね!
言語はロシア語とウクライナ語が使用されているとのこと。
ウクライナでミュージシャンというと、どんなジャンルの音楽なんだろう?
民族音楽か、クラシックなのか、もしくはロック?
どのジャンルになっても似合うアパートに見えるよ。
それにしても150㎡のアパートって、ここも広いよね。
そして天井から吊るされている女体ランプったら!(笑) 
アパートの設計やインテリア・デザインをしたのはキエフにあるONEDESIGN 。
とても好きなタイプのデザインがHPに載っていて、見ているだけでもワクワクしてくるよ。
そして女体ランプが販売されていることが分かった! 
正式名称は「Chandelier “WOMAN”」、日本語訳の「女体ランプ」も間違ってないけどね。(笑)
90cmと180cmの2サイズ用意されていて、お値段は小さいサイズが$1,900(約20万円)、大きいのが$2,940(約30万円)とのこと。
秘密クラブのインテリアにしても良さそうじゃない?
江戸川乱歩の世界のような雰囲気があるからね。
色も黒、赤、黄色など8色展開してるんだよね。
これはいつか広い家に住んだら欲しい逸品だね!(笑)

戸川昌子は「青い部屋」だけど、これは「紫の部屋」だね!
紫というと、やっぱりプリンスの「パープルレイン」?
もしくは美輪明宏の「紫の履歴書」かな。
SNAKEPIPEが連想すると、どうしても時代が古い物になってしまうね。(笑)
自分が紫色を身につけることがないので、その魅力について語れないんだけど、好きな人にとっては絶対的な色になっている紫色。
この色だけを使ってインテリア・デザインをすると、この画像のようになるんだね。
ここではリビングの様子しか載せてないけれど、本当はベッドルームもバスルームも全て紫なの!
徹底していて、素晴らしいよね。(笑)
これはイギリス、ミドルセックスにある販売されていた一軒家の内部なんだよね。
外観は白い壁に煉瓦色の屋根で、全く紫色が使用されていないところがすごい。
中に入ると紫の世界が広がっているなんて「脱ぐとすごいんです」みたいな感じじゃない?(笑)
4つのベッドルーム、庭付きでガレージもあるという。
気になるお値段は£400,000、日本円で約5,960万円也!
販売の情報は2013年の物だったので、現在は紫好きの誰かの持ち物になってるかもしれないね?

最後は外観も内装も、こだわっているこちらにしてみようか。
アメリカ、ニュージャージー州にある「Luna Parc」 は、アーティストであるリッキー・ボスカリーノの自宅兼アトリエだという。
ボスカリーノ家はメヂィチの時代にまで遡ることができる芸術と職人技の家系だった、なんて書いてあるよ。
あの有名なメヂィチ家の時代ということになると、13世紀か14世紀ってことになるみたい。
何百年も続く家系というだけでもすごいのに、代々職人だったというのは驚きだね。
1960年生まれのリッキーが1989年から作り続けているというので、29歳から始めておよそ30年になるということかな。
33年の歳月をかけて「シュヴァルの理想宮」を1人で建築したフランスの郵便配達人、フェルディナン・シュヴァルみたいだよね!


「Luna Parc」の外観がよく分かる動画を載せてみたよ。
内装もすごいけど、外からだけでもリッキー・ボスカリーノの熱意が伝わってくるよね。
歩いてる時に突然この建物に出現したら驚くだろうね。(笑)
そしてリッキー・ボスカリーノは、このアトリエで金属、粘土、ガラス、木材、セメントなどの素材を使用した作品作りをしているとのことで、HPで購入可能なんだよね。
絵も描いているようだけど、得意なのは立体作品みたい。
昆虫のブローチなどは非常に美しいよ。
それでもきっと一番力を入れているのが、家を作ることなんだろうね。
ガウディみたいな「うねり」や、サイケデリックな色合いに加えて、様々なオブジェが配置されているカオスな空間は、見学したらきっと面白いだろうね。
観光名所にもなっているのがよく分かるね!

今回はビザールなインテリア・デザインを特集してみたよ!
ビザールってやっぱり面白いなあ。
それでは、次回もお楽しみに。
サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!(笑)
 

好き好きアーツ!#49 DAVID LYNCH_Interior Design

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【リンチが手がけるパリにある「Silencio Club」の内部 】

SNAKEPIPE WROTE:

先週は敬愛する映画監督デヴィッド・リンチを追ったドキュメンタリー映画について特集した。
その中で、子供時代に父親と毎週のようにDIYで何かを作っていた、という話があったことも書いたっけ。
デヴィッド・リンチは自分の映画のセットを作っている、というのは前に聞いた(読んだ)ことがあった。
例えば映画「ロスト・ハイウェイ」では、ジャズ・ミュージシャンのフレッドと妻レネエの室内に置いてあったランプと台をリンチが作成した、とかね。
それを聞いた時には驚いたけれど、「デヴィッド・リンチ:アートライフ」を鑑賞して、DIYが得意だということを知って納得する。
ところがリンチのDIYは映画だけにとどまっていないことをROCKHURRAHが調べてくれた。
なんと、様々な家具のデザインを手がけていたんだよね。
検索すると出てくる出てくる!(笑)
今回はリンチがデザインした家具を特集してみよう。

このテーブルの雰囲気は、前述した「ロスト・ハイウェイ」のランプに似ているね。
1988年製で、100点のみの限定販売だったみたい。 
素材はバーチ材合板、スチール、ターンバックル付き鋼線だという。
「エスプレッソ・テーブル」と名前が付いているところが、いかにもコーヒー好きのリンチらしいね。(笑)
このテーブルはオークションで販売されていて、$2,188、日本円で約24万円だったようで。
ちゃんとリンチの手書きサインも入っているんだよね。
こんな値段でリンチの作品が手に入るなんて驚き!
ファンにはたまらない逸品だよ!

次もテーブルにしてみようか。
ランプが接続されたキャスター付きのサイドテーブルだね。
真ん中あたりにあるのはリモコンやメガネ、奥にはティッシュも見えるよ。
きっとリンチ自身がパッと手に取れるように設計したんじゃないかな?
テレビショッピングで見たたことがある多機能テーブルみたいな感じ?(笑)
「ツイン・ピークス The Return」の最終回近くを放映していた頃作ったような記事を読んだけど、このサイドテーブルについての詳しい話は書いてなかった。
 販売されているのかどうかも不明だけど、ランプの雰囲気がリンチらしいなと感じるよ。

引き出しがいっぱいあるキャビネット。
中に入っている写真(?)が謎なんだよね。
あまり大きな画像がなくて、何が映っているのか不明だけど、不気味に感じてしまう。
この作品は「Do It: How To Make A Ricky Board」というんだけど、20ある引き出しの名前がリッキーなんだって。
それぞれのリッキーに別の名前を付けることで、20の人格ができあがるという。
元はすべて同じだけれど、名前から変化が現れるでしょう、なんて書いてあるよ。
これは2012年の作品で、Gund Galleryで展示されていたみたい。
人格が変わるというのはリンチの映画では定番のテーマ(?)なので、余程気に入っているんだろうね。
この家具はサイズ調整もできるというので、どんな変化が起こるのか実際に観てみたいよ!

これはもしかしたらリンチ・デザインの家具というよりはアート作品になるのかもしれないけどね?
コードが伸びているので、赤い部分が光るライトだと思われるんだけど。
ぐんにゃりした形状と、色使い、中から飛び出している黒い棒状の物、というモチーフは「いかにも」リンチ!(笑)
リンチの絵画作品「I See My Love」の別バージョンに見えるなあ。
これは2011年の作品で、William Griffin Galleryで展示されたという。
リンチは絵画作品にもライトを取り入れたり、立体感を出しているので、オブジェも得意なんだね。

次もランプにしてみよう。
高さがあって、少しぐんにゃりして、ライト部分が小さめ。
実用性というよりは、オブジェなんだろうね。
このライトもリンチの絵画作品「Boy Lights Fire」に近いと感じるよ。
どんな絵画なのか載せておこうか。

少年が火遊びをしているところを描いているんだろうけど、不自然に長い腕、絵画の中に実際のライトを点けているところが特徴なんだよね。
この少年の腕部分を切り取って立体にしたら、上のライトにならないかな?
ライトといえば、「ツイン・ピークス The Return」に出てきたコンビニエンスストアの2階に住んでいる黒い男の「gotta light?」を思い出してしまうね。(笑)
「Fire Walk With Me」もそうだけど、リンチにとっては火は重要な意味があるんだろうね?

映画の音響にもこだわり、「ブルーベルベット」ではカイル・マクラクラン演じるジェフリーが野原で切り取られた耳を拾うシーンがあったことから、リンチと耳を結びつけて語る人が多いんだよね。
「耳の監督」なんて言われていたもんね。
リンチ自身もCDデビューを果たしているし、音楽への「こだわり」が強いことは知られている。
「ツイン・ピークス The Return」でも毎回必ずライブシーンが収められていたしね。
そのリンチがデザインしたスピーカーがこちら!
タールとラッカーでペイントされているという。
さすがにタバコ好きのリンチ、タールだって。(笑)
土台の部分が幾何学的で面白いんだよね。
一体どんな音が出るんだろう。
タールで塞いだせいで、音が歪んだりしないのかな?
それがリンチの狙いかもしれないけどね!

リンチのデザインについて調べていたら、2011年にリンチがパリのナイトクラブをプロデュースした話が出てきて驚いた!
クラブの名前は「Silencio」、そう「マルホランド・ドライブ」に出てきた劇場と同じ名前なんだよね。(笑)
クラブのオーナーはリンチの作品のファンで、「マルホランド・ドライブ」の雰囲気を打ち出したナイトクラブをイメージしていたのかもしれない。
アートを理解する大人のためのクラブなんて、リンチにとっても楽しい仕事だったんじゃないかな?
そのクラブでは映画の視聴もできるようで、シネマ・シートのデザインをリンチが担当したという。
人間工学的に設計されているようで、快適に映画鑑賞できるようだよ。
このシートが「Silencio Club」に並ぶと左の画像のようになるんだね。
これはすごい! (笑)
どんな座り心地なのか気になるよね。
それにしてもその「Silencio Club」は一体どんなシステムなんだろう?
700㎡の敷地に1階ギャラリー、24座席あるシネマ、図書室、喫煙室、黒幕、2つのバー、1つのステージがあるという。
黒幕ってなんだろうね?(笑)
毎週土曜日は一般でも入れるようだけど、通常は会員制を取ってるみたい。
どんな人が集い、どんな文化的な交流が図れるのか?
非常に気になる場所だよね! 

きっとリンチは自分の居心地を良くするために、オリジナルの家具をDIYで作成していたんだろうね。
そのデザインが、他の人にとっても使い勝手の良い家具として商品化されていると知って驚いたよ!
好きなことが商売になるなんて、アーティストとして最高だろうね。
今回はリンチの別の側面を知ることができて、とても楽しかった!
絵画、映画、音楽、家具デザインと多岐に渡る活動を観て、益々ファンになったよ。(笑)
また別のリンチ特集を組んでみたいね! 

「デヴィッド・リンチ:アートライフ」鑑賞

【「デヴィッド・リンチ:アートライフ」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

前回のROCKHURRAHが書いているけれど、2人揃ってインフルエンザによりダウンしてしまった先週。
医者に行って「インフルエンザですね」と宣告されたのは、人生初のことかもしれない。
もしかしたら子供の頃には経験しているかもしれないけど、自分で医者に行って宣告されるというのは初めてのこと。
これはかなり衝撃的だったよ!
今年はかなりインフルエンザが流行しているらしいけれど、ROCKHURRAH RECORDSもその流行に乗ってしまったんだね。
実は今でも少しお腹の調子が悪いSNAKEPIPEだけど、インフルエンザB型の特徴らしいので、まだ完治していないサインなのかもしれない。
おかげで更に痩せてしまったよ。とほほ。

本来であれば、敬愛する映画監督デヴィッド・リンチに関する映画だったら公開初日である1月27日に勇んで出かけたかったのに、、、。
体調の悪さをこらえてまで行くことはできないからね。
ということで、ようやく回復してきた今週映画鑑賞に出かけることにしたのである。

2週連続で雪が降るほどの寒さは少しだけ緩み、晴れてお出かけ日和だったのは良かった。
病み上がりに寒さはこたえるからね。(笑)
それでも万全の寒さ対策をして行くことにする。
「デヴィッド・リンチ:アートライフ」は渋谷のUPLINK、新宿のシネマカリテ、千葉の千葉劇場の3劇場で鑑賞することができることは調べていた。
体調が良かったらUPLINKにしていたはずだけど、今回は一番マイナーな千葉をチョイス。
行ったことないんだけど、どんな劇場だろうね?
セレクトしている映画は、アート系が多いようなので、意外と「通好み」の映画館かもしれない。

千葉に行くのは何年ぶりだろう?
販売を仕事にしていた頃は、毎年夏には千葉に通っていたSNAKEPIPE。
千葉パルコの水着特設会場が仕事場だったからね。(笑)
今はもう、そのパルコすら存在していない。
街の様子も変わっただろうな。
自他共に認める方向音痴なので、無事に千葉劇場にたどり着けるか不安だよ。

千葉駅に到着。
駅構内は随分長い間工事をしていた記憶があるけれど、いつの間にか駅ビルが完成していたようで。
電車の電光掲示板も見易く近代的な物に変わっている。
千葉駅、頑張ってるね。(笑)
ROCKHURRAHがいてくれたおかげで、不安だった千葉劇場への道のりも難なくクリア!
無事に辿り着けて良かったよ。
映画館としては、かなり辺鄙な場所にあるし、更に映画はリンチのドキュメンタリー。
どれだけお客さんが入るんだろうね?

映画の開始前に小じんまりしたロビーで次回上映を待っていたのは2人。
千葉劇場は60歳以上の観客は1,000円という料金で鑑賞できるシステムを採用しているようで、待っていたのはその恩恵を受けている年齢層の方々。
あっ、ROCKHURRAH RECORDSは恩恵受けてませんから!(笑)
最終的に映画が上映するまでの間に観客数は約15人程度かな。
年齢層はかなり高めだよ。
ROCKHURRAH RECORDSの周りは、全然人がいなかったのに、予告映像が始まる直前に走り込んできた年配の女性がすぐ目の前に座ってしまった。
しかもバッグの中をずっとゴソゴソ探っている。
これはきっと迷惑なタイプの客だな、と予想する。
その予想は当たってしまったんだよね…本当に迷惑な人って嫌っ!
なんでそんな高齢の女性が1人でリンチの映画観るのか、不思議でならないよ。

いよいよ上映が始まった。
映像は絵画制作をしているリンチを捉え、音声はリンチが自身の子供時代からのエピソードを語っている。
ある時は絵画に貼り付けるためのオブジェを作り、別の時にはリトグラフなのかクレヨンのような物で絵を描くリンチ。
その合間には必ずタバコを吸う。
かなりのヘビースモーカーだね。
愛飲しているのは「アメリカン・スピリット」、ニコチンもタールも数値高いよ!
あんなにガンガン吸って大丈夫なのかな。
体の心配しちゃうよね。

少年時代のリンチは、至ってノーマル、健全な子供だったようで、リンチがリンチになった要因については語られてなかったように思う。

リンチの父親は農務省に勤めていて、仕事の関係で数回引っ越しをしたという。
家族間での特にアート的な話は出てきていない。
今回のドキュメンタリーの中で、父親とDIYで何かしら作っていた、という話はあったけどね。
そのDIYの経験から、物を作る喜びを感じたと語るリンチ。
自分の映画のセット、例えば机などを自作することは知っていたけれど、それが少年時代から続く趣味とは知らなかった。
画像はリンチ一家で、一番右が長男のリンチ。
妹と弟がいたことも知らなかったよ。

少年時代の友達の父親が画家で、アトリエを自由に出入りしていた話がある。
これはSNAKEPIPEの勝手な想像だけど、その画家の絵、もしくは画家とのコミュニケーションの中で、リンチの中に何かしらの「リンチの原型」が形作られたのではないだろうか?

最も印象的だったのは、リンチのアトリエを訪れた父親とのエピソード。
地下室で「物が腐っていく様子」を観察するために、果物やネズミの死骸などをコレクションしていたリンチ。
それを自慢気に父親に見せたという。
地下室から出て登る階段の途中で、自分の成果を見せられて嬉しかったリンチが笑顔で、後ろにいる父親を見る。
すると父親の顔は曇っていたというのだ。
更に「お前は一生子供を持たないほうが良い」とまで父親に言われてしまったという。 
そして実はその時、最初のリンチの妻ペギーが、後に映画監督になる娘ジェニファーを身ごもっていた、というオチまでついている。
リンチの父親の心配をよそに、リンチは家族の長となっていく。

映画制作を始めるリンチにとっては幸せな時間だったようだけど、リンチの父親と弟からは反対されたという。 
子供もいることだし、堅気な仕事に就いて、家族を養うべきだと説得されたらしい。
リンチには辛い時期だっただろうね。
それでも映画を作り続けて良かったよ!
奨学金が出たおかげもあるけれど、一番はやっぱり続けていこうとする意志力だからね。
順風満帆なことばかりではなかったという話を聞いても、何故かあまりリンチが苦労人だったという印象を受けないんだよね。
好きなことを続けている人、というイメージのほうが強いからかもしれない。

リンチを追ったドキュメンタリーは、2004年頃から制作されているようだけど、SNAKEPIPEが鑑賞したのは今回が初めてである。
ここまでリンチに傾倒しているSNAKEPIPEだけれど、本人の口から過去について聞かなくても、映画や絵画、もしくは音楽などの作品からリンチを自分なりに知っていれば良いと思っているからだ。
「デヴィッド・リンチ:アートライフ」を鑑賞できたのは、もちろんファンとしては嬉しい経験だけれど、リンチの過去を少し覗くことができても、今まで感じていたリンチ像に変化はない。
それにしても「デヴィッド・リンチ:アートライフ」は、余程リンチに対して興味を持っている人以外には、退屈な時間になるのではないだろうか。
こんなにリンチ愛を熱く語っているSNAKEPIPEですら、一瞬眠りそうになることがあったくらいだから。(笑)

映画は「イレイザーヘッド」の部分までで終わっていた。
ということは1976年頃までについて、ということになる。
「デヴィッド・リンチ:アートライフ」のパンフレットによれば、今回リンチを追った時間は25時間に及ぶということなので、編集で約90分にまとめられているってことだよね。
SNAKEPIPEの想像だけど、このドキュメンタリーの第二弾があるような気がしてしまう。
もし次があったら、またUPLINK等で上映してくれるかもしれないね? 

 

Funnyちゃんミュージック2

【タイトルの元になったのがこの曲。単に語呂が似てるだけ】

ROCKHURRAH WROTE:

今まで大きな病気をした事がなくて病欠などもほとんどなかったROCKHURRAHだったが、先週末くらいから滅多に出ない高熱でヘロヘロになってしまった。ロキソニンを飲むと熱は下がってスッキリするんだけど、気がつくとまた高熱になってるという繰り返し。
しかも週明けの月曜日には東京で久々の大雪、帰る頃には吹雪と言えるような状態の中、無謀にも数十分も歩いて全身真っ白けになってしまった。これが悪かったのかな。
で、滅多に行かない医者に行って検査するとあっさり「インフルエンザB型」だと判明した。
小学生くらいで罹った記憶があるけど、大人になってからは実は初めてかも。
B型はそこまで高熱が出ない場合もあるし、単なる風邪と見分けがつかないとちょっと前のTVで知ったが、まさにそれ。
熱はあっても普通に起きていられたし薬ですぐに熱が下がる、自分でインフルエンザかも知れないとは全然思ってなかったんだよね。
しかしインフルエンザだとわかった途端に急激に体調不良となって寝込んでしまった。

となると感染している可能性が高いのがSNAKEPIPE。元気に見えたけどやっぱりビックリするような高熱を出したので、ROCKHURRAHの翌日に病院に行き、予想通り同じインフルエンザと診断された。
今も寝込んでる状態。

何年か前の正月に二人で風邪ひいた事はあったけど二人揃ってのインフルエンザ、完全休養は初めての経験だよ。
人によってはありふれたものだろうけどね。大人になってここまで寝込んだのも初めて。あまりにも長時間横になり過ぎて腰や背中が痛いよ。

ちなみに医者に行くとロキソニンは飲まないで下さいと言われた。ROCKHURRAHがそういう知識もないままに熱冷ましとして飲んだのが危険だったらしい。もう遅いよ。
ちょっと体調悪いだけですぐに気軽に医者に行けるような、ヒマのある人は限られてると思うのだが、医者は必ず「何かあったらまた来てください」と気軽に言う。病院の隣に住んでるわけでもないし病院が開いてる時間には行けない人も多数だと思うけどね。

というわけで今週のブログはようやくインフルエンザのピークが過ぎたと思われるROCKHURRAHが書いている。
あまり頭が回らず朦朧としてるのでヒネリのない軽いものにしないとな。テーマはうーん、闘病記・・・というのはウソで深く考えなくても済みそうなものにしてみようか。
病気だったら無理せず休めば?と言われそうだがブログ開設以来休み無しに続けてきたものだからね。その代わり本当に軽くしか書けないと思うよ。 

さて、この「Funnyちゃんミュージック」というタイトルの記事を前に書いたのは何と2010年の事。
他の人やキャラクターの名前でFunnyちゃんというのがいるようだけど、それらとは一切関係ないので先に断っておくよ。
ファニーなんて言葉は今どきあまり使われないとは思うけど本来は「おかしくてこっけいな」というような意味だと思う。昔「ファニーゲーム」というシャレにならんくらい悲惨で後味の悪い映画もあったから逆説的に使われる事も多いんだろうね。
そんなカビの生えたようなテーマを再び持ち出して第二弾を書いてみようとしたのは、単に病気であまりネタを深く考える頭脳がなかったから。人が考えるファニーなものとは少し違うとは思うけど、構わず進めてゆこう。

L’Echo Raleur(読めん)を知ったのは「SANG NEUF EN 89」というフレンチ・ニュー・ウェイブのコンピレーション・アルバムを持っていたからだった。
タイトルにある通り1989年にリリースされたもので、もはや「ニュー・ウェイブ」って時代でもないけど、この当時は個人的にフランスの音楽に注目していて、特にレ・ネグレス・ヴェルトとマノ・ネグラのすごさは遠く離れた日本でも一部では大ブームとなったほど。ROCKHURRAHもこの二つのバンドには熱狂したものだ。
その両方のたぶん未発表曲に加えてさらに、注目していたワンパスまで収録されていたからこれは一粒で三度おいしい。このコンピレーションは普段あまり知ることのないフレンチ・ミュージックの未体験バンドが他にもいっぱい入ってるに違いないと思ってすぐに買ったのだった。
ちなみにこの当時は全く知らなかったが後に「ムード・インディゴ うたかたの日々」や「グッバイ、サマー」などなど、映画監督として著名になるミシェル・ゴンドリーが在籍していたバンド、Oui Ouiも入ってたな。

そんなコンピレーションの中で妙に気になる童謡のような曲があって、それがつまりこのL’Echo Raleurによる「La Carmagnole」だったというわけだ。
「ラ・カルマニョール」は有名なフランス革命の歌らしいが、そんな事を知ったのもずっと後になってから。この当時は聖歌隊の音楽か何かだと思ってたよ。フランスではみんな当たり前にこの歌を知ってて当然なのだろうか?

L’Echo Raleurが何者なのかは実は今でも知らないんだが、フランスのミュージカルやってる劇団なのかな?演劇もショービジネスの世界もフランス文化も疎いもので申し訳ない。
このビデオもフランス革命のような衣装でドキュメンタリー映像っぽいから、たぶんそういう公演があったんだろうかね?「ラ・カルマニョール」の方はだいぶ後半になってようやく歌い出すんだけど、とにかくハチャメチャでパンキッシュで楽しげな様子。え?歌に合ってない?いやいや、これぞフレンチ流革命パンクってヤツだよ(想像)。
ROCKHURRAHが言うところのFunnyちゃんミュージックにピッタリな曲。

お次のFunnyちゃんはこれ、ROCKHURRAH RECORDSの主旨である70〜80年代とは違ってるけどヴァセリンズ2014年作の名曲「High Tide Low Tide」より。

ニルヴァーナのカート・コバーンが大好きだったバンドで何曲かカヴァーしてた、というところで90年代に再評価されて知った人も多いだろう。あるいはその前、リアルタイムで聴いてたギター・ポップ、アノラックのコアなファンもいる事だろう。
その辺の音楽を志す人にとっては聖地であるスコットランドのグラスゴーやエディンバラの伝説的なバンドで、みんなが大好きだったのがヴァセリンズだったね。 
ちなみにアノラックというのは特定の音楽を指すジャンルなわけではなく、グラスゴー周辺のギター・ポップの立役者、パステルズあたりから言われ始めたような記憶がある。
プルオーバー型のマウンテンパーカーみたいな防水アウターをみんな着ていて、そういうバンドたちがやってる音楽がヘナチョコだったからアノラック=それ系のバンド、というような捉え方ね。

ヴァセリンズは1986年から90年という短い期間に活動してたバンドで音楽のメインストリームで語られる事はなかったけど、ユージン・ケリーとフランシス・マッキーの男女ヴォーカルを中心とした、ゆるくてなごやかな音楽はまさに「エバーグリーン(今どきあまり使われない言葉だが)」なものだった。
「Molly’s Lips」における自転車のパフパフというおちょくったような効果音、「Son Of A Gun」における迫力あるイントロとは裏腹のヘナチョコなヴォーカル。ロック的なカッコ良さ、カッコ良く見せようという気構えとは無縁の世界を愛する人も多いはず。

その彼らは解散後にニルヴァーナによってまた注目される存在になったが、解散後20年してから奇跡のような復活をして往年のファンをビックリさせた。2010年と2014年にちゃんとしたアルバムを出してるので狂喜して、あるいは複雑な思いで聴いた人も多かろう。
「複雑な思い」というのはリアルタイムでファンだった人に多いけど、あの頃はまだ若くてアノラックやギター・ポップにハマってた。でも今の歳取ってしまった自分はもはやギター・ポップ少年少女じゃなくなってしまった・・・というヴァセリンズじゃなくて自分自身に対する複雑な思いね。
音楽好きだった自分をそのまんま、今でも保ち続けていられる幸福な人たちばかりじゃなくて趣味を何かのキッカケで手放してしまう人も多いからね。

そんな人がこのビデオを観たなら、彼らが時を越えて復活した姿に驚くかも知れない。ちゃんと「いい歳の取り方」をしてるからね。いや、逆か。
とにかくユージンとフランシスは2014年当時、50歳くらいだと思うが1986年の青春真っ只中じゃなくてもまだこんなにチープなFunnyちゃんでいられるのが素晴らしい。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEもかくありたいものだ。

ROCKHURRAHが80年代に何の予備知識もないまま中古盤屋で購入、聴いた瞬間に衝撃を受けたのがこのAuntie Pusのシングルだった。深みのない緑色とピンク色でモミアゲの長い男の横顔が描かれたヘタなイラストのジャケット、「これは!」と思って買う要素が皆無のレコードだったが「何だかわからんが人が手をつけなさそうなもの」を好んで漁っていたので、きっとこのシングルもそういう趣向で選んだのだろう。
メンバー・クレジットもレーベルも知らない変なジャケットのレコード、演奏はこれよりチープなバンドはいくらでもいるけれど、何この酔っぱらいの調子っぱずれみたいに力の抜けた歌い方は?

ヴィック・ゴダード&サブウェイ・セクトもかなりヘロヘロな歌い方が特色のバンドだけど、それを上回るB級オーラ漂う変なバンドを見つけたので、この当時は嬉しくて友達みんなに勧めたけど、誰も認めてくれなかったよ。 

日本語で書かれた情報が少ないんだが、アンティ・パス(パスおばちゃん?)なるモミアゲ男、テニスで有名なウィンブルドン出身のパンク吟遊詩人みたいな人物らしい。バンドのメンバーにはダムドのラット・スキャビーズが本名で参加してるようだし、プロデュースはプリティ・シングスのディック・テイラーという、どういう結びつきなのかよくわからん人脈を持っていたようだ。こう聞くと上記のサブウェイ・セクトの方がよほどB級という気がしてくるが、日本での無名度ではダントツでこちら。
途中のやる気なさそうな「フゥ~」という掛け声はFunnyちゃん度も満点だね。

前置き長かった割には本文の方はアッサリ、まだ病み上がりなのでこんなもんで許してね。
最後のFunnyちゃんはドイツより、ディー・ドラウス&ディー・マリナスの1981年の大ヒット曲「Fred Vom Jupiter(木星から来たフレート)」だ。

ROCKHURRAHがよく話題にするドイツ産のニュー・ウェイブ、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの一種だが、ドイツ国内で大ヒット・・・などと言われても遠く離れた日本では一般的にはほとんど無名だったりする。
1981年当時、まだ弱冠17歳だったアンドレアス・ドーラウがさらに若いローティーン少女数人を侍らせて歌わせて踊らせる、年齢差がそこまでじゃないからロリコンとまでは言われないかも知れないけどなあ。
全員を水着にしてニヤついてたり(そういう写真が残っている)マリナスの衣装が微妙に彼の好みが見え隠れするようなものだったり、結構禁断な感じのヘナチョコ・エレポップに仕上がってる。

この曲は学校の課題で作曲したもので、ドイツのヘナチョコ大御所であるデア・プランのアタタック・レーベルよりリリースしたところ、予想外の大ヒットだったというような話を聞いたが、みんなが想像するような苦労知らずの軽薄才子ではないみたいだよ。

が、映像はあくまで軽薄才子に徹していて、浮世離れした御曹司みたいなイメージを売り物にしていたんだろうか。創作ダンス&やる気なさそうな歌声の女の子たち、どういう縁でこの晴れ舞台に立ってるのかが不明なんだけど、何か光るものがあったのかそれとも単にアンドレアス・ドーラウの好みなだけなのか?

以上、あまり盛り上がった事も書けなかったがROCKHURRAHの意図するFunnyちゃんな音楽というものが少しは伝わっただろうか?

SNAKEPIPEは一旦熱が下がったものの、また高熱が出て治りが遅いのでかなり心配してるところ。インフルエンザ菌と戦うための高熱だとは思っていても、体力がイマイチないからなあ。
予定では今週に「デヴィッド・リンチ:アートライフ」を観に行くつもりだったが、今はそれどころじゃないよ。
早く良くなって一緒に出かけたり、二人で料理を作ったり、楽しく過ごしたいものだ。ウチのFunnyちゃんだもんね。え?それはハニーちゃんの間違いか・・・?

ではまたドヴィジダネ(ブルガリア語で「さようなら」)。