好き好きアーツ!#18 DAVID LYNCH —CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE

20121118-top【ラフォーレの垂れ幕にリンチの名前がっ!交差点手前から撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2012年11月10日よりラフォーレ原宿にあるラフォーレミュージアムにて、「デヴィッド・リンチ展~暴力と静寂に棲むカオス」が開催されている。
この情報を教えてくれたのは、またもやROCKHURRAHだった。
それはもう今から2ヶ月くらい前のことになるのかな。
心待ちにして、展覧会の初日に鑑賞してきたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
2012年7月に鑑賞した渋谷ヒカリエで開催された「Hand Of Dreams」の記事に

「リンチは平面の作品だけじゃなくて、立体作品も制作しているのを海外のサイトで知った。
その作品もまた稚拙な雰囲気だけど怖いんだよね。(笑)
そんな作品群も鑑賞できたらいいなあ。 」

と書いていたのだけれど、今回の展覧会でその希望が叶うことになった。
なんて幸運なんでしょ!(笑)
1991年今はなき東高現代美術館での個展、1996年渋谷パルコギャラリーでの写真展「Dreams」、今年7月ヒカリエにおけるリトグラフ展に引き続いての鑑賞。
どうやら2010年に大阪でも個展を開催していたようだけれど、全然知らなかったよー!
その時に情報を入手していたら、初の大阪入りができたかもしれないのにね。(今まで一度も大阪に行ったことがないSNAKEPIPE)
今回は絵、写真、映像に加えミクストメディアの展示ということでリンチの世界を堪能できる企画になっているようだ。
ワクワクしながら原宿に向かう。

ラフォーレミュージアムという名前は聞いたことがあったけれど、そもそも原宿大好きだった少女時代(ぷっ)から、ほとんどラフォーレ原宿にすら足を踏み入れたことのないSNAKEPIPE。
聞いてみるとROCKHURRAHも同じく、ラフォーレ原宿には思い出がないと言う。
フロアの天井が低く、細かく店舗が分かれているため、買い物がし辛い印象があったんだけど?
やっぱり今回も同じように感じてしまった。
店内を物色することもなく、最上階にあるラフォーレミュージアムへ。

チケット売り場の前にはリンチの「ようこそ」的な映像が流れている。
なんだかこれって…夏に開催されたヒカリエの時とほとんど同じ。(笑)
前回は「愛・平和」の漢字を空中に書いていたリンチが、今回は日本語を喋っていること、モノクロからカラーに変わったこと以外は似た映像だね。

チケット売り場の横には物販店があった。
ポストカードと、リンチの絵をプリントしたTシャツや関連書籍などを販売している。
おや?お目当ての図録がないよ?
どうやらこれは完全予約制での受付となっているようで、11月下旬発送予定で受付だけ行なっているとのこと。
帰りに予約することにして、逸る気持ちを抑えながら会場へ。

20121118-01
最初は写真作品の展示からである。
ポーランドの廃工場を撮影した作品群が並ぶ。
イレイザーヘッドの舞台にもなっている、フィラデルフィアのリンチ撮影の写真を観たことあるけど、やっぱりそれらも工場地帯の写真だったんだよね。
工場にある魅力はSNAKEPIPEもよーく解る。(笑)
きっと今回のポーランドの工場なんて、目の前にしたらヨダレが出るだろうな。
クレジットを確認すると、今年の撮影ってことみたいね。
2012年にもまだこんな工場があるとは、ポーランド恐るべし!(笑)
他にも写真作品が続き、男女のヌードのクローズアップシリーズ、snowmenという雪だるまシリーズ、と全てモノクロームである。

ヌードのクローズアップの写真群には「その手があったか」と唸ってしまった。
クローズアップにすることで、体のどのパーツを写してるのか判らなくなるんだよね。
そして明らかに、通常ならば服や下着で隠れている部分を露出させた写真(まわりくどい言い方だけど)と並べて展示されることで、謎のパーツ写真が想像によってエロティックな方向に進んでしまうから不思議だ。
もしかしたらそれは肘を曲げたり、首のしわだったりするような、普段から目にしている部分かもしれないのにね?
この、ちょっとトリックめいたシリーズは興味深く感じたよ。

短編映像作品3作品を鑑賞する。
2009年、2011年、2012年の作品、というかなり最近の作品なんだけどね。
映像作品ガイドで確認しないと「最近の?」と思ってしまう映像作品。
だってリンチの初期映像作品との違いがはっきりしないんだもん。(笑)
1968年制作ですよ、と言われても何の疑いも持たないかもしれないなあ。
途中で出てきたゴッホは、やっぱり「耳つながり」ということでOKかしら?

続いては夏に鑑賞したリトグラフと同じ系列の、和紙への「にじみ」を活用したような絵画が並ぶ。
これらの絵画は、ヒカリエで鑑賞したリトグラフのような黒っぽさ、線の太さはなくて、強烈なインパクトは残さなかった。

またもや映像作品2作品。
リンチ自身が出演していて、まるでツインピークスのゴードン・コール並に声を張り上げて喋り、おかしい。(笑)
17分と13分、という合わせて30分の映像のため、全部を鑑賞するのを諦めることにする。
字幕もなかったので、さっぱり意味が解らなかったし。(笑)

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次は油絵の登場である。
1991年に鑑賞した時のリンチの油絵は、色彩や題材がいかにもリンチらしく暗いもので、あの時には確かバンドエイドが貼り付けられてる作品もあったはず。
それでもほとんど「平面」の作品ってことになるよね。
今回は油絵、といっても単なる絵画ではなくて、油絵の具と粘土のような物を組み合わせたり、立体物がキャンパスに貼り付けられているような作品であった。

上は「I see my Love」と、そのまんま絵にタイトルが書かれてる作品である。
リンチの作品にはこのようにタイトル記載が多いんだよね。
以前も言ったことだけど、その字がまた「リンチ・フォント」とでも名付けたら良いような独特の風合を持ったアルファベットで、それだけでもアートになってしまう。
色彩の暗さは相変わらずだけど、立体になっている部分が新しいね。
そして貼り付けられているのは…じっと見ていると、もしかして歯?
ぎゃーっ、怖いっ!
目から飛び出してるのも嫌だけど、なんだか歯が本物っぽいんだよね。
ひー、顔が顔として写実的じゃないところが余計に不気味!
ROCKHURRAHは「レザーフェイスみたい」と言う。
リンチの娘であるジェニファー・リンチが監督した「サベイランス」にも、似たお面が出てきたことを思い出す。
世界一カルトな親子の作品!Surveillance鑑賞」 に画像を載せているので、ご参照くだされ。

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いよいよ大詰め!ミクストメディアの登場である。
今回の展覧会で一番観たかったのがこのシリーズ。
立体油絵(変な造語だけど)だけでもかなりのインパクトがあったけれど、ミクストメディアはまずその大きさに驚いてしまう。
「Boy Lights Fire」という作品は208.3cm x  330.2cmという巨大さ!
下地になっているのはどうやらダンボールのよう。
そこに「にじみ」を加え、更に立体を貼りつけたり、マッチ部分が光るように細工がされていたり、と実験的な要素が満載である。
このタイプと同系統の「Bob’s Second Dream」などを含めた巨大ミクストメディアが全部で4点展示されている。
川村記念美術館の「ロスコ・ルーム」ならぬ、「リンチ・ルーム」といった感じだろうか。
ゾワゾワと背中から寒気が襲ってくるような恐怖感。
それでもずっとその場に留まっていたいと思う相反する心情。
「怖いもの見たさ」なんて簡単な言葉では説明し切れない摩訶不思議な引力のある空間だった。
あの感覚はやっぱりあの場で体験・体感しないと解らない類のものだろうね。
行って良かった、鑑賞できて幸せだった、と心から思ったSNAKEPIPEである。

以上で展覧会の概要のまとめは終わりなんだけど、出口近くに設けられたスペースに、何やらゴージャス感漂うガラスケースがいくつか置かれている。
なんとそれはフランスのシャンパンであるドン・ペリニヨン
なんでリンチの個展にドンペリなの?

どうやらリンチがドン・ペリニヨンのボトルとパッケージデザインをした、ということらしい。
リンチアンを名乗って長いSNAKEPIPEがそんなことも知らないとは!(笑)
お詫びにドンペリ購入させて頂きますっ!
ではお値段を調べてって…えーっ!
「ドンペリニヨンヴィンテージ 2003」が2万1000円、「ドンペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2000」が4万3050円だって。
2本購入なら6万4050円だよー!
ドンペリってやっぱり高額品なんだね。
小さいことだけど、最後の50円ってところがものすごく気になるなあ。(笑)
2本買うから6万ちょっきりでどおだ?と言いたくなるよね!
いや、スミマセン、買えません。(涙)
カリフォルニアのスタジオで2日間かけて撮影されたのは、光や煙の中に浮かび上がるドンペリのマーク。
キラキラしていてとてもキレイ。
リンチらしいのかどうかは不明だけど、ドンペリのイメージには良く合ってるように思うね。

リンチの絵の怖さについてずっと考察していたら、結局行き着いたのは「境界」という言葉かな。
夢なのか、現実なのか。
正常なのか、異常なのか。
リンチの絵はまるで、知的障害者や精神障害のある人が、勢いに乗って制作しましたという雰囲気がある。
何も考えず、ただその欲求に駆られ、想いのまま筆を動かしたような。
子供が描いたようにも見えてくる。
その稚拙そうに見える部分が余計に怖いのだ。
例えば小説などで犯人が子供時代に描いた、心理検査として使用されるような絵、もしくは犯罪を目撃してしまった後、ショックで喋ることができなくなった子供が現場を描いたような絵、と説明したら解ってもらえるだろうか。
何かを内に秘めた人物の絵。
それは凶暴性だったり残酷性なのかもしれない。
展覧会のタイトル通り「静寂と暴力が棲むカオス」だね。(笑)
きっとそのカオスを、SNAKEPIPEの頭でも心でもなく、皮膚が反応していたようである。
背中がゾワゾワしたのはそのせいね、きっと。
図録の到着が楽しみである。

2012年は「Crazy Clown Time」のCDデビューに始まり、ヒカリエでの個展、そして今回のラフォーレミュージアムにおける個展と続きリンチ大活躍、ブログに登場することも多かった。
リンチアンには幸せな年だったね!
そしてリンチに、また子供ができたらしい。
「リンチ、66歳で再びパパに!」なんて記事も発見。
そんな精力的なリンチに、これからも期待しちゃおうね!

がっちりBUYましょう!vol.8 Massif & Nike ID編

【こだわったモノ作りを強調し過ぎて全然ミリタリーっぽくないMASSIFの宣伝ページ】

ROCKHURRAH WROTE:

タイトルが長くなり過ぎて2行になるのがイヤだったから省略したけど、今回もまたまたミリタリー&タクティカル系となってしまう。 最近はライブも行かないしパンクな格好もあまりしなくなってしまったなあ。革パンだけは毎年冬になると穿くけど、これはROCKHURRAHにとってはジーンズとかよりもずっと快適だから。穿いてみた事ある人には当然わかるだろうが、サラサラの裏地がついてるから、見た目よりは動きやすいんだよね。無理して格好つけてるわけじゃないのだ。  ミリタリー系が好きだからといっても本物の◯◯軍を忠実に再現しようなんて気は全くなくて、そういうマニアとも違うから、ぱっと見にはパンクかミリタリーか、どっちつかずの得体の知れないヤツという事になる。 ある意味では独特の路線?

さて、今回紹介する持ち物は特にテーマもないんだが、そういうタクティカル系の装備(?)で買って良かったと思えるものを挙げてみよう。

Massif Army Elements™ Jacket UCP

マッシフ・マウンテン・ギアという米国オレゴン州のメーカーなんだが、名前の割にはいわゆるアウトドア・ブランドとは違って、軍隊御用達に限りなく近い商品ばかり作っているようだ。街着っぽいものもカタログには載ってるけど、よく見たら潜入捜査とか要人警護とか、そういう特殊任務の人が着そうな機能を持った服作りを得意としている感じ。ウチのブログでもしつこいくらい書いてきた5.11タクティカルと似た雰囲気だな。ただしこちらの方がずっと高級で上質、さらに5.11よりは格段にスタイリッシュなシルエットのものが多いという印象がある。5.11+アークテリクスの線を狙ったのかも。値段もかなり高級で5.11のCMみたいに泥の中にダイブしてほふく前進なんて、とてもじゃないが出来なさそう。

このメーカーは難燃性素材として名高いノーメックスをふんだんに使ったジャケットを売りものにしていて、エレメント・ジャケットもその一種だ。日本語に訳すとえーっと、成分上着。何じゃそりゃ? ノーメックスは最新の技術ではなくてデュポン社が大昔に開発したもの。MA-1の後継に当たるフライト・ジャケット、CWU-45/Pで使われて知られるようになったとミリタリー好きならば思い出すだろう。採用されたのが1973年というからかなり歴史のある素材だね。 実際に燃やしてみた事は皆無だがROCKHURRAHもパイロット用の衣服でノーメックス素材を所有している。しかしこれ、何か肌触りが非常によろしくないんだよね。ザラザラしてて体にまとわりつくいやらしさ。夏は絶対に着たくないな。耐熱性が優れてるのと着心地は別問題というわけか。 着用写真は怪人蝿男みたいで気色悪いけど加工したものなので許して。

まあこういう特殊な素材を主原料として作られたマッシフのエレメント・ジャケットは簡単に言えばノーメックスを90%使ったソフトシェル・ジャケットという位置付けになる。毎回書くのもアレなんで「ソフトシェルってなーに?」の人は自分で調べて下さい。 このエレメント・ジャケットは本国の通販サイトで見ても何と579ドルもする高級品で、日本でも扱っている数少ない販売店では7〜8万もするもの。しかしなぜかかなりの格安で手に入れてしまった。もしかして噂のパチもんか?とも思うが(ミルスペックはちゃんと本物らしく付いてたしメイド・インUSAだったが)、炎に飛び込むつもりはないので細かい事は気にしないようにしよう。細部まで丁寧な作りになってたよ。

主要な用途はエア・クルーか戦車兵か、要するに燃えるのが危ない人々ということになる。ん?燃えるのが危ないのは万人共通か? したがって迷彩は空軍の場合はABU、陸軍の場合はACUと呼ばれるデジタル迷彩になるが、ROCKHURRAHはたぶん一番普及率が高いACUにした。単に特価品はACUしかなかったから選択の余地がなかっただけだが、本国でのメインはたぶんマルチカムになるはず。ACUはすでに廃止されつつある迷彩だからなあ。ACU全盛の頃には曖昧な色合いを嫌って着ずに、こんな時期になって今さらACUとは、その辺の時代感覚のズレがさすがROCKHURRAH流と言うべきか? それらの迷彩がそもそもわからん人は当ブログの「CAMOのマイハウス」「〜2012」を読んでみてね。商品名にあるUCPとはユニバーサル・カモフラージュ・パターンの事でデジタル迷彩の総称。ACUやABU、MARPATなどはどれもUCPのヴァリエーションというわけだ。

表側はやっぱりちょっとざらついた感触で、他のソフトシェルの柔らか素材に慣れた目には着心地悪そう。しかし内側はちゃんと首の裏までフリースになってるので見た目ほどではなかった。硬くて肘を曲げるのも苦労、という事は全然ないから、購入を躊躇してる人でも安心して大丈夫。 裏側は袖のあたりまで全部総フリースとなっている。最近のタクティカル系では多い通気性とかは一切考えられてなく、脇の下のベンチレーションとかはまるで付いてない。内ポケットもなくて腰の両サイドポケット、それと右胸に縦ジッパーのポケット、左手にポケット+ペン差しのようなものが付いている。 ペン差しは袖近くにも独立して付いていて、戦車兵やエア・クルーという仕事がそこまで日常的にペンを多用してるのかとちょっと驚いた。あれば便利なのはわかるが、頻繁にペンを抜き差しするには不便だろうな。 袖のところは手首アジャスターのようなのは全くなくて、裏側にN3-Bのようなリブ(簡単に言えばトレーナーの袖みたいな感じ)が縫い込まれている。 結構手首が華奢なROCKHURRAHでさえややきついから、がっしりした体格の人は袖通すのが大変かもね。 こういう風を通しにくい袖口、そして顎のあたりまで来る高いスタンドカラーによって、このジャケットはかなりの保温性を持っている。一番の特色である難燃性や耐熱性ばかりは試してみる事は出来ないし、そういうのを試さないといけないような事態には絶対巻き込まれたくないものだ。 通常のソフトシェルでは飽き足らない珍しもの好きな人には、シルエットも非常にスマートなのでオススメ出来るよ。 製品のどこにも付いてないけどロゴマークもカッチョいい。マッシフ最高。

Nike iD SPECIAL FIELD BOOTS 

お次はこれ、スニーカー界の超メジャー・ブランドであるナイキについて。実はROCKHURRAHではなくSNAKEPIPEの持ち物だ。個人的には名のあるスニーカー、特にアメリカ・ブランドをほとんど所有した事がないし、たぶん顔つきとナイキは最も似合わないと推測されるからなあ。ROCKHURRAHよりは運動に縁のなさそうなSNAKEPIPEはヒップホップに傾倒していた時期があり、ナイキやアディダスなどにも慣れ親しんでいたそうだ。確かにジャージも似合うしな。 そんなナイキがやっているNike iDなるシステムはスニーカーのパーツや素材、色を組み合わせてカスタマイズするセミ・オーダーの事だ。 ここで偶然に割と本格的なタクティカル・ブーツを出してるのを知ったのはROCKHURRAHの方だった。 何度か書いてきた事だが、こういうスポーツ・ブランドが軍用のブーツを作るのは珍しくはなくて、アディダスのGSG9(ドイツ連邦警察特殊部隊)をはじめ、オークリーやコンバースなどもアサルト(強襲用)・ブーツを出しているし、ニュー・バランスも米軍トレーニング用シューズを作っている。ナイキがそういうのと同様に軍用ブーツを開発していたかどうかは知らないが、形を見れば紛れもなくそれ系なのは確か。 うん、これはカッコ良さそう。 ちょうど軽くて履き心地が良いブーツを探していたSNAKEPIPEにお知らせしたところ、思ったよりもずっと大反応で一目惚れした模様。ずっと本格派のミリタリーブーツを履いてたんだが、これはオールレザーでカッコ良い&高そう、しかしながらかなりの重量で足が疲れるのは確かだった。そこで軽いタクティカル・ブーツをずっと前からオススメしていたんだが、現実問題として女性サイズの本物タクティカル・ブーツは日本ではほとんど需要がないのは事実。海外サイトだと女性FBI捜査官とかもいるし小さいサイズもあるようだが、日本ではほとんどが24.5以上しか扱ってない。ところがナイキiDのものはちゃんと小さいサイズもあるようで、それだけでもSNAKEPIPEにとっては嬉しいに違いない。良かったね。

このブーツはアッパー部分やソールの色、柄、素材などを好きな組み合わせでシミュレーションしてゆき、それをオーダーすると海外で生産、一ヶ月くらいで手元に届くというシステムらしいが、実際に原宿にショップがあって、もしかしたらそこで手に入るかもと思って出かけたのが10月初旬。 迷彩柄とかもあったんだけどSNAKEPIPEが欲しいのはただの真っ黒一色のもの。ナイキiDのサイトでもやってみたけど、選ぶのは全て黒のパーツばかり。まるで全部Aボタンだけ押して一番最初の候補だけで作り上げたオーソドックスなゲーム・キャラクターみたいなもので、これだけ基本的だったら何も特注しなくても店に行けばあるんじゃなかろうかと期待したのだ。それに同じ大きさでも履き心地や微妙な幅の違いとかは実店舗で確認した方がいいしね。 で、実際に店舗で試着してサイズも素材も決めた。 が、このオーソドックス過ぎる現物は店舗には在庫がないとの事。家に帰ってオーダーするしかなさそう。

一ヶ月というから11月初旬には届く寸法。届くのを心待ちにしていたよ。ネットで調べると案外早かったという人も待たされたという人もいる。どうやら工場側の事情で出来上がりの期日に違いが出てくるらしいな。確かに小さいサイズで真っ黒一色のミリタリー・ブーツをわざわざ特注で頼む女子は少ないのかも知れぬな。 いつしか頼んだ事も忘れたある日、家にヤマト運輸の不在票があり、差出人に見慣れぬ苗字が。 「外園さん?」「一体誰だろう?」と不審がる2人だったが、そんな苗字に近い知り合いもいない。ん、待てよ。「もしかして外園じゃなくて外国?」とSNAKEPIPEがあっさりと謎解きを披露した。そう、ヤマトの配達ドライバーが英語の差出人をよく読まずに面倒だから「外国」と書いたのが、読みにくい字だったという「妄想女刑事」もビックリのオチだったわけ(笑)。しかしいくら何でもナイキを外国って・・・。しばし2人で爆笑して再配達を頼んだ。 ナイキiDが海外生産だとあらかじめ知らなかったらわからないまんまだったろうな。

届いたブーツはこちらの予想を上回るほどカッコ良くて、驚くほど柔らかくて軽い。これは素晴らしい。

オーダーのパソコン画面ではわからなかったが、現物は変なツヤがなくて、思ったよりも品が良いなあ。この手のスポーツ・ブランドはド派手な色合いやブランド・ネーム、ロゴなどが押し付けがましいほど入った商品が多くて、それがイヤだったけど、このナイキのはかかと付近にごく小さなナイキ・マークが入っただけ。見る人が見ればウチの商品だとわかるだろ、という自信がうかがえる逸品だね。

ナイキiDは注文時に好きなIDとかネームを入れられるようになっている。アップルストアの刻印サービスと同じようなものだが、これもちゃんとSNAKEPIPEと刺繍されてて、よりオーダーメイド感を味わえる。  右が着用写真。タクティカル・ブーツは足首を保護するためにクッション入りのものが多く、履き心地は良くなるものの見た目はイマイチになりやすいが、このブーツは足首も細身でシルエットも好みだよ。履いた感想は「地面で跳ねるような感じ」だそうだ。何より軽いのがいいね。大昔に流行ったフランス軍パラディウムのブーツをレザーにした雰囲気と言えばわかってくれる人もいるだろうか?

最後のオチというか何というか、今回このブーツの事を書こうと思ってナイキiDのサイトを久しぶりに覗いてみたら、どこにも載ってない。検索しまくったら「この商品は現在取り扱いがありません(11/10現在)」だとの事。単なる品切れなのか何かあってなくなってしまったのか、その辺は全然不明。まるでこんな商品は存在してなかったような扱いに謎は膨れるばかり。色んな想像をしてしまうではないか。土佐弁で言うところの「ナイキはもうないきに」という表現でよろしいか(笑)? まさに廃版スレスレのギリギリ最後のオーダーで手に入れる事が出来て本当に良かったね、SNAKEPIPE。

ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅

20121104-top【府中市美術館前の看板を撮影。「夢に、デルヴォー。」ってコピーどうなの?】

SNAKEPIPE WROTE:

9月12日から11月11日まで府中市美術館でポール・デルヴォー展が開催されていることを教えてくれたのはROCKHURRAHだった。
ROCKHURRAHは以前よりデルヴォーのファンで、
「この展覧会には是非行きたい」
と強く希望。
そこで11月3日の文化の日らしく(?)デルヴォー展に出かけたのである。

それにしても…。
千葉県から府中に行くのって遠いんだよね。
ROCKHURRAHも、もちろんSNAKEPIPEも府中に行くのは初めてのこと。
府中で知ってることと言えば、競馬場と刑務所くらいのものか?
出かけた3日も府中競馬場ではレースが行われていたようで、府中近辺の人出は多かったみたいだね。

東京の西の地域は全体的にほとんど知らないんだけど、府中駅前を歩いてびっくり!
とても開けているし、道は広いし、伊勢丹まであるし!(笑)
住みやすそうな土地だな、と感じる。
I LOVE 千葉と言い続けてきたSNAKEPIPEだけど、それはもしかしたら単に他の土地を知らなかっただけ?
色々な選択肢があるんだな、ということをこの年齢になってやっと気付いたよ。(笑)

府中市美術館のHPには
「京王線府中駅からちゅうバスに乗って府中市美術館 下車すぐ 8番乗り場から、8時から毎時30分間隔で運行。運賃100円」
なんて書いてあるからすっかり信用していたけれど、このちゅうバスが曲者!
1時間に2本しかないと思って並んで待ってたのに、
「これは違う路線で美術館には行きません」
と運転手にあっさり言われてしまう。
ROCKHURRAHが再び検索してくれて、やっと武蔵小金井駅行きバスにて美術館に到着。
やっぱり初めての土地っていうのは難しいね。

府中市美術館は府中の森公園の中にある美術館で、緑の多いゆったりした空間が広がりとても気持ちが良い。
至る所にベンチが点在していて、市民の憩いの場といった感じね。
こんな公園が近くにあったら気軽に散歩が楽しめそう。
いいなあ、府中!(笑)

まずは簡単にポール・デルヴォーの略歴をまとめてみようか。
ポール・デルヴォーは1897年生まれのベルギーの画家である。
10歳の時にジュール・ヴェルヌの「地底旅行」を愛読し、13歳ではホメーロスの「オデュッセイア」を読む。
この読書体験が後のデルヴォーに強い影響を与えている。
22歳で美術アカデミー美術科に入学。
29歳の時にアンソールの影響を受ける。
おっ、先日出かけたアンソールの名前が出てくるなんて嬉しいね。(笑)
32歳で生涯の伴侶となるタムに出会うが、両親に反対され結婚を断念する。
そのタムとは18年後に再会し、なんとデルヴォーが55歳になってから結婚するんだよね。
ずーっとタムのことを考えていたようで、絵のモチーフにも繰り返しタムが出てくるところにデルヴォーの純粋さを感じたよ。
その愛情はタムが亡くなるまで続いていたようで、その死により絶筆したとのこと。
そしてデルヴォー本人はそれから6年後の1994年に96歳で死去。

それではポール・デルヴォー展についての感想をまとめてみようかな。
今回の展覧会は5章のチャプターに分かれて展示されていたので、その章ごとに追いかけてみよう。
わざわざ書くまでもなく、いつも通りじゃん。(笑)

第1章 写実主義と印象主義の影響
20121104-01デルヴォー初期の作品はほとんどが風景画で、当たり前だけどいわゆるデルヴォーらしさは確立されていない。
いかに見たままを絵にするか、を模索している様子は良く解ったよ。
そしてその後も繰り返し描かれるモチーフである蒸気機関車や駅もすでにこの頃に登場してるね。
若くして才能を認められただけあって、さすがに上手い絵が並んでいたよ。(笑)
上は「リュクサンブール駅」(1922年)という未完の作品である。
まだ下描きが残されている状態がアニメっぽっくて面白い。

第2章 表現主義の影響

ここではセザンヌ、モディリアーニ、アンソールなどに影響を受けた風景画が展示されている。
この頃から女性を描くことが多くなったのは、前述したタムというデルヴォーにとっての永遠の愛の対象と出会ったことに起因してるんだろうね。

第3章 シュルレアリスムの影響
20121104-02ポール・デルヴォーの作品はシュルレアリスムに分類されることが多いけれども、シュルレアリスムと一括りにするだけでは真の理解は得られない、と図録に書かれている。
SNAKEPIPEも大好きな画家、デ・キリコの作品との出会いからシュルレアリスム的要素が表れたとのこと。
このチャプターからデルヴォーらしい作品が展示されていて、第2章とは全く違う雰囲気に驚かされる。

このチャプターで非常に気に入ったのが「レースの行列に基づく舞台装置の習作」(1960年)というタイトルの作品である。
確かにデ・キリコの影響を受けている様子が解るよね。
墨と淡彩で描かれていて、モノクロームの世界も素敵!
デルヴォーの作品によく出てくる背景が、荒地とでもいうのか石がゴロゴロしている空き地みたいな空間。
上の作品にも両サイドに描かれていて、SNAKEPIPEはその背景に目を奪われたよ。
ガランとした風景は大好きだからね!(笑)

第4章 ポール・デルヴォーの世界
20121104_03上の作品は「エペソスの集いII」(1973年)である。
デルヴォーに特徴的なモチーフがふんだんに使用された、幻想的な作品だよね。
奥にギリシア・ローマ建築、真ん中にはトラム(路面電車)、そしてアーモンド型の目を持つドレスを纏った女性達、裸体。
ギリシア・ローマ建築は少年時代に愛読したホメーロスから、トラムは駅長になりたかったほど少年時代から魅了された列車への興味、そしてアーモンド型の目を持つ女性はデルヴォーの愛の対象であるタムからの影響、とのことである。
ずっと好きなものを想い続け、それを自身の画風とするところは、日本で言えば横尾忠則みたいだよね。

古代建築と列車が同居していて時代錯誤なこと、夜の場面みたいだけど女性には光が当たって時間の観念が欠落していること、女性しか存在していない世界、といったあらゆる矛盾点が何の違和感もなく描かれているのがシュルレアリスムとして分類される所以なのかもしれないね?
この世界観はデルヴォーならではの独特の雰囲気。
女性の目にほとんど光がなく、まるで人形のように見えるのも不思議な魅力だよね。
デルヴォーはモデルとして採用していた女性も長い間ずっと画家とモデルとして関係を続けていた、と書かれていた。
デルヴォーのキーワードは「長期間」なのかもしれない。

第5章 旅の終わり

デルヴォー80歳代にして、視力の低下という深刻な事態に陥ってしまう。
1986年に最後の油彩「カリュプソー」を描いた後、前述したように最愛の妻タムの死により絶筆してしまう。
20代から91歳で絶筆までのおよそ70年間、デルヴォーが描き続けていたとは驚きである。
もしタムが存命していたら、恐らく絶筆の時期も違ってきたんだろうね。
そして1940年代にはすっかり完成していた、いわゆる「デルヴォー式」とでも名付けたくなる、あの定番モチーフを使用した絵画群を、その後も執拗に描き、膨大な数の作品を仕上げていることにも驚かされる。

Wikipediaでデルヴォーと検索してみると、姫路市立美術館にはデルヴォー作品139点が所蔵されていると書かれている。
エルンスト展を鑑賞した横浜美術館にも18点のデルヴォー作品があるそうだ。
ベルギーにはもちろんポール・デルヴォー美術館があるので、一体全作品数がどれくらいあるのか不明なほどの量産型の画家といえるだろうね。
「思うような成果を達成できない、といつも感じていた」
と語るデルヴォーだからこそできた偉業なんだろうね。

「詩情と夢の画家」と評されるデルヴォーの魅力を知ることができた、とても良い展覧会だったと思う。
「~主義」や「~派」のような分類には、評論家じゃないSNAKEPIPEは興味を持っていない。
鑑賞して何かを感じることができたら、ただそれだけで嬉しくなってしまうのだ。
デルヴォーの絵画は、矛盾点の発見の面白さや全体として鑑賞した時には調和の美しさにまず目を引かれる。
そしてクローズアップと遠景など、フォーカスの当て方によって違った物語を作ることができるから、一粒で二度おいしいって寸法ね。
夢想家でなくても長い間、魅入られたようにじっくり鑑賞すること間違いなしだろうね!(笑)

先日鑑賞したジェームス・アンソールもデルヴォーと同じベルギーの画家で、益々ベルギーへの興味を持ったよ。
他の国にもまだきっと好きなアーティストいるんだろうね。
次の出会いがとても楽しみだ。

時に忘れられた人々【15】◯◯になりたい編2

【一段低い扱いのせいか、たぶんまだいなさそうな半魚人バンド。】

ROCKHURRAH WROTE:

前に予告した通り、今回も色んなものになりきったバンドたちを紹介してみようか。

近年は狼のかぶりものをしたバンドとかもいるくらいだから昔に比べるとずっとなりきりバンドも多いのかも知れない。しかしROCKHURRAHの場合はあくまでも70〜80年代のパンクやニュー・ウェイブに焦点を絞った記事ばかりしか書かない事で一部有名なので、コスプレ・バンドのルーツも未来も全然見据えてないのは間違いない。要するに考察とか総括とかには無縁だと思っててけれ。

パンクやニュー・ウェイブ以降の時代は音楽と同様に見た目に対するこだわりを持ったバンドが数多く出現した。すぐに飽きられてしまう危険性はあるものの、話題になりやすいというメリットもあったのは事実。 確かに80年代あたり、すごく派手だったのに全く話題にもならなかったバンドは少ないからね。しかし考えてみたら全く話題にならなかったらこちらが知る事もないのか? ROCKHURRAHが特に見た目を重視してるわけじゃないが、今回のブログの趣旨が見た目なので、その辺の事情は何となくわかってね。 では第二部、行ってみようか。

Visage / Mind Of A Toy

色んなものになりきったという点では忘れちゃならないのが、1980年代初頭にブームとなったニュー・ロマンティックスというムーブメントだ。これはグラム・ロックの80年代ヴァージョンとも言えるが、特定の音楽ではなく、男性が化粧をしたり着飾ったバンド達の総称だと言える。
主流は当時の先端だったダンサブルなエレクトロニクス・ポップなんだが、シンセサイザーなどをほとんど使わないアダム&ジ・アンツのような音楽までニュー・ロマンティックスの一極にあり、要するに着飾ってさえいれば何でもこのジャンル呼ばわりされていた。 ほんの一時期で廃れるかと思いきや、後の時代まで語り継がれるようなバンドまでここから出現して、案外層が厚いのが特色。80年代にはいかに化粧バンドが多かったかがわかるね。 具体的に何かの扮装をしたバンドは少なかったけど、仮装バンドの総本山がニュー・ロマンティックスだったのは間違いない。
ヴィサージはそういうムーブメントの元祖的存在で、リッチ・キッズやマガジン、ウルトラヴォックスなどが合体したメンバーも一流、まさに音楽のブランド品みたいなもんか。

これはなりたい願望と言えるのかどうか、中心人物のスティーブ・ストレンジが操り人形という難しい役どころに果敢に挑戦している。 「あいつを操り人形にしたい」と思う人はいるだろうが、その逆だからね。
と思ったら、操り糸を切って自由になった、でいいのか?歌詞がわからないから映像で推測してるだけなんだが、野坂昭如が作詞の「おもちゃのチャチャチャ」の英国版という感じだね。
こんな少年のような映像が残ってるスティーブ・ストレンジももはや50代の美壮年。かつて同時代をくぐり抜けてきたアダム・アントもボーイ・ジョージもピート・バーンズも見る影もないおっさんになってしまったなあ。全盛期がきれいだったから余計にやりきれないね。 ROCKHURRAHやSNAKEPIPEはかっこいい爺ちゃん婆ちゃんになりたいものだ。

The Residents / Constantinople

どこから由来のものなのかは全く不明だが、日本人だったら間違いなく「ゲゲゲの鬼太郎」における目玉おやじをすぐに連想するだろう。
レジデンツは1960年代から音楽活動を続ける(デビューは70年代半ば)アメリカの実験的、前衛的な音楽集団で、そのトレードマークがこの目玉おやじのコスチュームなのだ。
ジャケット写真だけではなく本当に常にかぶりものをしていたらしく、目玉以外でもクー・クラックス・クラン(KKK=白人至上主義の秘密結社)のような三角形のずきんをかぶったり、さらに奇妙な宇宙人のようなマスクをしたり、得体の知れなさではトップクラスのバンドだと言える。◯◯になりたい!という願望とは趣旨が違うのかも知れないが、コスプレ・バンド特集でこのバンドをすっ飛ばすわけにもいかないから書いておく。

音楽性は通常のロックやポップ・ミュージックとは大きくかけ離れているグニャグニャなものだが、前衛的とは言ってもそこまで聴きにくいという部類ではない。
同じアメリカで数年遅れにデビューしたDEVOはレジデンツの路線をより大衆的にわかりやすく展開したと言えるだろう。
個人的に好きだったのはアヒルの首を持ったイラストが不気味な「Duck Stab」やナチス風刺漫画のような「Third Reich ‘N’ Roll」だった。この頃は情報も少なくてジャケット買いで失敗した事も多数だったけど、レジデンツは知って良かったバンドだったなあ。

The Damned / Love Song
ホラー映画ではなく大昔の怪奇映画の中でも、フランケンシュタインの怪物と並んで大スターなのが吸血鬼ドラキュラなのは間違いない。
そして70年代パンクの幕開けと共に登場したダムドこそが後の化粧バンド、仮装バンドの直接的な元祖なのは間違いない。 その前の時代のグラム・ロックや「ロッキー・ホラー・ショー」なども化粧で仮装だったけど、ダムドの場合は曲と見た目のインパクトが桁違いにカッコ良かったからね。まあこれは個人の好みの問題もあるけどな。
そのダムドのデイヴ・ヴァニアンは時代によって少しずつ変わってはいるけど、ずっとドラキュラ風というスタイルを貫き通している。 好きなもの、似合うものがずっと変わらないという生き方自体が偉業だと思えるが、そんな彼の代表的な映像が下のものだ。

誰が見てもドラキュラ・ルックの典型的なもの。常人がマネしようと思っても到底出来ないほどの美学だな。
これはテレビ出演の映像で楽器演奏してるフリだけだが、初期パンク・バンドの中でも最も演奏力は高いし、ライブのメチャクチャ度合いも素晴らしい野郎どもだ。横のキャプテン・センシブルのモコモコ衣装もすごいね。こんなモコモコ着てもパンクだったのはキャプテンだけだよ。 ドラキュラと言えばこの少し後のバウハウス、ピーター・マーフィーも同じ路線だったけど、全員のアグレッシブさ、派手さでダムドの方に軍配が上がるな。

The Mummies / Uncontrollable Urge
「マンスターズ」や「アダムス・ファミリー」「怪物くん」の例を出すまでもなく、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男などの花形モンスターに比べ、一段低い扱いを受けているのがミイラ男や半魚人といったモンスター達だ(上記の例に出てたかどうか全然覚えてないが)。
見た目のインパクトはあるもののどう考えても顔出し一切なしだもんな。顔を売るのが仕事の俳優が好んでやる役とは言いがたい。大昔のプロレスラーにザ・マミーなるミイラ男がいたが、あれはハナから顔を隠した覆面レスラーだから正体不明な方が効果的。
というわけでショウビズの世界ではミイラ男=
①正体は大物だが顔を隠す事情があった人
②自分自身では人気になれないから素顔を捨てた人
③何となく
という事になるのか?ん、ならない? そんな損なミイラ男に果敢に挑んだのが80年代アメリカのガレージ・パンク・バンド、マミーズだ。
メンバー全員が包帯グルグル巻にしてミイラ男なんだが、特に有名バンドが覆面でやってたわけではなさそう。こういうかぶりものは誰でも考える思いつきで、そのインパクトも一瞬だね。 宴会芸みたいなもんだ。

映像ではDEVOの有名な曲を割と誰でも考えそうなアレンジでカヴァーしている。 もうこのバンド名でこの見た目だったらガレージかサイコビリーくらいしか考えられないでしょう、という音楽。見る前から想像ついてたよ。
しかし一発芸で終わるはずのこのコスチュームをずっと続けていて、レコードのアートワークなどもいかにもこだわった50年代風。あゝ永遠のB級。 これはこれでROCKHURRAHの好きな世界だよ。

Demented Are Go! / Lucky Charm
「◯◯になりたい」という願望の中には現実世界で見かける職業や制服といったものよりも、やはりどうあがいてもなれないシロモノに対する願望の方が多いような気がする。
中でもゾンビや死体といった系列は誰でも将来的にはなれるという気はするが、生きている今、自分の目では見れないというジレンマがあり、コスプレで願望を満たすしかないのは確か。
そういうゾンビ願望(?)はサイコビリーという音楽の世界ではかなりポピュラーなもので、見た目もゾンビ映画の影響(を受けたバンドが多数)、音楽の方も歪んだエグいロカビリー。なぜかやってるカヴァー曲とかもみんな似通ってしまうという特異な音楽ジャンルなのだ。
みんなもう少しオリジナリティに頭を使おうよ、と思ってしまうが、同じテーマに挑戦する競作みたいなものなのかね?
そんなサイコビリーの世界でゾンビ・メイクの元祖と言えばやっぱりディメンテッド・アー・ゴー!、このバンドを挙げないわけにはいかない。
このバンドの主人公マーク・フィリップスはいかにもワル顔で人目を引くイケメン(1980年代初頭は)だったが、選んだ世界が暴力的で病的なサイコビリー畑。地獄の底からの咆哮のようなダミ声と、他のサイコビリー・バンドよりも一歩抜きん出たゾンビ・メイクのセンスで一躍有名となった。本当に一度聴いたら忘れないだけのインパクトを持ったヴォーカルで好き嫌いは抜きにしても強烈な個性があるのは間違いなし。
さらにそんな美形を台無しにする血みどろメイクや敢えてやるか?と思える傴僂コスチューム。サイコビリーの世界でやりたい放題が流行ったのは何と言っても彼らの影響が大きいはず。

映像は初期ではなく、今年のプロモ映像だとの事。もう随分老けてしまったはずだが、今でもやっぱりこんな事やってるのか。死体メイクでの撮影の模様をコミカルに表現した面白いPVだな。単なるゾンビではなくて頭に五寸釘だよ。並の神経ではマネ出来ないね。
彼らがデビューした80年代前半と比べると特殊メイクも随分と進歩してる、と言うよりは彼ら自身のなりきりぶりが進化してるのかも知れないね。

というわけでちょっと衣装を買い揃えればなれる程度の仮装、そうとう無理しないとなれない気合の入ったコスプレまで、秋葉原文化とは全く無縁のROCKHURRAHが書いてみた。

こういったバンドはいくらでも存在してるとは思うけど、とりあえず自分の気が済んだので、今回はこれでおしまいにしよう。 ROCKHURRAH自身は何になりたいかと聞かれれば、見た目ではなく、ヒマで余裕のある趣味人になりたい。

ではまた次の登場の機会まで。