KARAOKEぞんざい?

注意:別ウィンドウで開いて音が出ます。みんなで拳を振り上げて歌おう】

ROCKHURRAH WROTE:

先日のSNAKEPIPEによる記事「KARAOKE万歳!」にインスパイアされたというわけじゃないがROCKHURRAHもふと思いついた事があって、カラオケについて書いてみようと思う。

今どき珍しい人種なのかどうかも自分ではわからないが、実はROCKHURRAHはカラオケというものに数回しか行った事がなくて、歌う方はほとんど未経験と言ってもいいくらい。音痴とか友達がいないとか色々な要因はあるだろうけど、カラオケに行かない決定的な理由は好きで歌えそうな曲がぜーんぜんなかったから、という点にある。

そこで今回思いついたのが、カラオケ屋になさそうな曲を自分で加工してみてはどうだろうか?という事。とは言ってもカラオケ屋の膨大な曲リストにどんな曲がありそうかなさそうか、行ってもいないのに本当にわかるはずもなし。絶対にないはずの曲はわかるが、そんなマニアックなカラオケを作ってもブログを読んだ大半の人に理解不能だからなあ。その辺のバランスはなかなか難しいものがある。
まあ世の中は広いから、もしかしたらディス・ヒートの「Makeshift Swahili」とかレジデンツの「Constantinople」とか(両方とも難解かつ歌いにくい曲だと思える)案外カラオケ屋で熱唱してる輩もいるかも知れないか?
そういうわけで「ROCKHURRAHが夏休みの課題としてカラオケ曲作りに挑戦」という趣向で気軽に始めてみたわけだが、結果としては意外と難しく非常に不本意なものとなってしまった。まあこれで食ってるわけじゃないし、この程度で許して。

使ったのは以前に書いた記事「MacでRec」の中にも登場した波形編集ソフトとプラグインのみ。さあて、うまく出来ますかどうか。

カラオケというのは要するにヴォーカル部分を抜いた楽曲だからヴォーカルだけ消してしまえばいいわけだ。スタジオとかでレコーディングした曲はギターとかヴォーカルとか1トラックずつにわかれたデータだから、その中のヴォーカル部分のみを無音にすれば簡単にカラオケになる。が、それは製作者側の話で、それをまとめて2トラックのステレオにしてしまったCDとかレコードの場合は1トラックの中に複数の楽器が渾然と入っていて、そこから完全にヴォーカルのみを抜き去るのは難しかった。というか「うまく出来ますかどうか」などと書いた矢先で情けないがROCKHURRAHは出来なかった。
何だか毎回「うまく出来なかった」系の記事書いてる気がするな。レベル低いな。

まあ、色々と実験してみて何とかカラオケっぽくなったものがいくつか、その中から夏らしくパンチの効いた熱い曲を選んでみた。聴いてみてもし歌えるものがあったら歌ってあげてね。


まずはエクスプロイテッドの名曲「Dead Cities」から。個人的にUKハードコア・パンクの中でも別格に好きなバンドだし80年代初頭のこの曲で今でも全身の血が沸き立つ。ピストルズやクラッシュやダムドが今でも色褪せなくて有効なのと同じだ。まさにPunks Not Deadという奇跡。典型的にハードコアな曲も数多くあるバンドだが、この曲は70年代パンクをただ速くしてみましたという感じの曲調が好ましい。今の時代が好きじゃないから言える事だけど、2000年くらいに作られた曲で30年後まで色褪せない曲なんてあるのかね?さて、この曲はカラオケで歌うとどうだろうか。早口だから噛んでしまったらもうアウト。曲も短いから体勢を建て直す前に終わってしまいそうだね。と言うか本当にカラオケでないのかどうかあまり調べずに書いてるんだが、実は今どきありそうな気もする。


次はニューヨーク・ドールズの必殺ロックンロール・ナンバー「Pills」だ。これは素人がテキトーにやった割には比較的きれいにヴォーカルが小さくなってくれたガルボ。下品でチープでアブノーマルなこのバンドは大好きだったジョニー・サンダースのルーツでもあるし、30年どころか40年近く経った今でも不滅だと思える。有名なバンドだからカラオケになっててもおかしくはないけど、知らない者勝ちという事で作ってみた。


さて、次は逆に絶対カラオケでは存在しないと思える。五月に最高の来日公演を果たしたレジロスの代表曲「Somebody's Gonna Get Their Head Kicked In Tonight」だ。タイトル長いなあ。ウチのブログでもこの来日の時、記事は書いてるんだけど、本当にパワフルなライブだった。あまりヴォーカルは消えてないけど元気よくみんなダミ声になって歌おうぜの巻。


さあ、最後にとっておきの曲を歌って終わりにしよう。ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも大好きなこのバンド、ロビンの「Insane」だ。典型的なサイコビリーではないがパンクとサイコビリー要素がガッツリと盛り込まれたロビンのライブはいつでも最高。近場でライブやる時はぜひ見に行ってそのパワーを確かめて欲しいバンドだ。などと関係者でもないくせに宣伝したくなってしまうくらい素晴らしい。この曲はメイン・ヴォーカルがベーシストのヤスによるもので、実はロビンの曲を色々カラオケ化試してみたんだがヤスのヴォーカルだけは結構きれいに消えるという事が判明。おそらく声の周波数とかの問題なんだろうが、ヤスだけに易々と消えるのか?さて、ライブでもパンチ合戦が飛び交うこの危険な曲は委細構わず野太い声で歌って欲しい。横にヒロシ役の刺青男がいればなお良し。

時間と波形編集のテクニックがあればもうちょっとはうまくカラオケ化出来たんだろうが、今回は全体的に勉強不足の結果となってしまった。正月休みにでもまた再挑戦してみるかな。

時に忘れられた人々【04】Positive Punk

【あんパン、メロンパン、えっ?ポジパン!】

ROCKHURRAH WROTE:

暑いから「背筋も凍る音楽特集」でもと思ったが、そんなに都合良く寒気がする音楽なんか転がってなかった。なので今回はズバリ、80年代半ばを席巻したポジパン特集といこう。関連性は特にないがウチで結構扱ってるジャンルだから、一度まとめて書いておきたかったというだけ。

正式名称(?)はポジティブ・パンクなんだがこの音楽には後の時代に付けられたさまざまな呼び方が存在していてゴシックだのゴスだのデス・ロックだの、傍から見たらどうでもいいようなネーミング・センス。ROCKHURRAHとしてはやはり80年代的にポジティブ・パンクのままでいいじゃないか、と言いたい。 発生についてはよくわからないが80年代ニュー・ウェイブのジャンルとして発達したネオ・サイケ、ダーク・サイケと呼ばれるような音楽が元になって82年くらいから登場し、ホラーな化粧、神秘主義(?)、奇抜な衣装など悪趣味とも取れるようなルックスだった一団を主にポジティブ・パンクと言うようだ。

この手の音楽の先駆者としてよく挙げられる、つまりロックの世界にゴシック的な要素を取り入れたのはやはりジョイ・ディヴィジョン、スージー&ザ・バンシーズあたりなんだろうが、バンシーズはともかくジョイ・ディヴィジョンについてはポジパンと言ってる人はたぶんほとんどいないだろう。音楽的には後のポジパンに多大な影響を与えたのは間違いなさそうだが、見ての通りイアン・カーティスは特に目立ったところのない地味な若者。たまに機関車の車輪のように両手をぐるぐる回すといったアクションをするのは並じゃないが、ポジパンの大きな特徴であるどぎついメイクとか、そういう要素は皆無なのだ。

ポジパンのルーツとか成り立ちとか、そういううんちく話はいくらでも見てきたように書けるけど、今回は一切抜きにしてただ過去にポジパンの範疇に引っかかっていたバンドたちを純粋に追いかけてみよう。

Bauhaus

重厚で沈んでゆく曲調とパンクの攻撃性、ホラー・・・と言うよりはもっとクラシカルな怪奇映画趣味を取り入れて従来のグラム・ロックをより文学的、芸術的に再構築して、ダークなのに割と一般的に人気があったのがこのバウハウスだろう。
ピーター・マーフィーの中性的なヴォーカル・スタイルだけでなく、バンドとしての質の高さ、見せ方が非常にうまかったな。

彼らが登場したのはまだポジパンなどの音楽が誕生する前だが、後の時代のポジパンに直接的な影響を与えたのは間違いない。
何はともあれ「裸にメッシュ・シャツ=着ない方がマシでしょう」と言えば真っ先に思い浮かぶのがやはりバウハウスかな。何かやたら「的」が多い文章だな?

Sex Gang Children

ポジパン御三家の筆頭。
ヴォーカル、アンディ・セックスギャングの角刈りリーゼントのような髪形に白塗りの化粧というスタイルはポジパンと言うよりは一部のサイコビリーに通じるものがある。
音の方は典型的なポジパンもあるが、どちらかと言うとかなり珍妙な部類に入る曲が印象的。正体不明のモンゴル調なものなど、通常のロック的な観点からは笑ってしまうようなものだし、そういうキワモノという点がポジパンの理想とする姿にピッタリ当てはまったのか、人気は高かった。

ROCKHURRAH RECORDSの商品紹介にもよく書いてる事だが「カッコいいのを通り越してカッコ悪くさえある」という境地。
本人とファンが気持ち良ければ他はどうでもいいでしょう、の世界。

Southern Death Cult

セックスギャング・チルドレンと並ぶポジパン御三家の人気バンド。
最初はサザン・デス・カルトというバンド名だったがデス・カルト→カルトとだんだんバンド名が短縮されてゆき、それにしたがってポジパンという特殊なカテゴリーから抜け出して、より汎用性の高いロックに変身していった。
後半には化粧っ気もなくなるが初期の見た目はなかなか派手でインディアン風+アダム・アント風と言うべきか、日本のウィラードなどとも近いルックスをしていた。全盛期には音楽雑誌の表紙などを飾ったりもしたろう。

気色悪くて怖そうなセックスギャングなどと比べると確かに女性受けはするな(笑)。ところが個人的にヴォーカリストのイアン・アストベリーの声がどうしても好きになれず、あまり好きじゃないバンドだった。
この曲、デス・カルト時代の「Gods Zoo」などは良かったけどね。

Alien Sex Fiend

上のふたつと比べると少し劣ると勝手にROCKHURRAHは思い込んでるが、本当は人気あるのかも。その辺のご当地人気ランキングは見てきたわけじゃないからよくわからぬ。ポジパン御三家の真打ちなのか?
当時のイギリスでポジパンの聖地だったクラブ、バッドケイヴを中心に盛り上がっていたのがこのエイリアン・セックス・フィーンドだ。

何だかタレ目でタヌキ顔のくせに顔がのっぺり長いとか、化粧や服装、レコード・ジャケットが悪趣味でドギツ過ぎ、とか思い込んでいたため個人的にこのバンドはあまり聴いていない。んが何とSNAKEPIPEは持っていたそうで「この曲聴いたことある」だって。うーん、さすがは補完し合う関係だな。
ベースがいないというやや変則的な楽器編成だが、我が高校生時代もドラムマシーンとギターのみで曲を作っていたものだ。ん?そんな話は今は関係ないか。後のマリリン・マンソンあたりの元祖と言えなくもない。今回のブログタイトル下の写真はこのバンドより採用。

Virgin Prunes

アイルランド出身のキワモノ・カルト芸術集団といった風情で上記御三家よりはずっと好きだったバンドがこのヴァージン・プルーンズだ。
特にすごい芸術的理念を持っているわけではなかろうがキリスト教の国々ではタブーとされるような表現を数多く題材としていて、その辺のこけおどしB級感覚が好きだった。
ホラー映画に出てくるおばちゃんのような女装(なぜか人形を抱いたりしている)やヴォーカルの下品なダミ声もバンドの雰囲気にピッタリだった。
ごく初期は同じダブリン出身のU2と深い関係にあり、U2のジャケットで有名になった少年もヴァージン・プルーンズの一族だそうだ。

Specimen

70年代パンクの時代にイギリス最初のインディーズ・レーベルとして誕生したRAWレーベルで活動していたUnwantedというバンドのオリーが中心となったポジパンのバンド。
プロモ見てもわかる通りポジパンというよりはグラム・ロック的な要素が強くてロッキー・ホラー・ショーを彷彿とさせるメイクや衣装。
いわゆるゴシック云々の重苦しい部分はなくて少しコミカルなところに味があり、正直言ってあまり音楽的違いのないバンド達が多かったポジパンの中では面白い存在だった。
このプロモに限って言えばギターなんかはまるでHell-RacerのChiyo-Xみたいだし、そしてここでもやはり裸に網シャツが大活躍。

Screaming Dead

これまたドラキュラ風の化粧が似合ったバンド。
ポジパンがブームだった頃でも日本では不当なまでに紹介されず、あまり世間で知られてないバンドのひとつだと言える。
化粧をしてるという以外はポジパン的ゴシック的要素はほとんどなくて、ダムド風の演奏にジェネレーションX風のヴォーカルが実に恰好良いチンピラ・バンドだった。
先のスペシメンの時にも書いた通り、様式倒れというほど画一化してしまったポジパンには面白みがなかったもんだが、このスクリーミング・デッドのように威勢の良いバンドは大好きだ。レーベルもハードコアで有名なNo Futureだったしね。たまにGSっぽいような音楽もやっていて、それがまたいいなあ。
人気なかったのでプロモが少なく、前述のドラキュラ風化粧はしてないんだが、ROCKHURRAH RECORDSで販売中なのでそっちでジャケット写真をチェックしてみて。

Ausgang

非常に派手な見た目でルックスは典型的ポジパン、申し分なし。初期はKabukiなるバンド名だったが途中で改名したようだ。見た目とは裏腹に音楽の方はちょっとバースデイ・パーティもどきのプリミティブな部分があって一般受けは難しいもの。ヴォーカルの声も妙に甲高いし、そんなわけで日本での知名度はイマイチかも。この見た目でもう少しキャッチーな音楽やってればもっと人気出たろうに、惜しい。

Cristian Death

イギリスのポジパンとはたぶん全然違う発展をしてきたはずだが、アメリカにもこういう見た目のポジパンがちゃんと同時代に存在していた。それがこのクリスチャン・デスです(突然丁寧語)。
デビュー・アルバムのなぜかフランス盤を一枚だけしか所有してないのでこのバンドがどうなったのかは全然知らないんだが、やはり栄養も違ってガタイもでかい、体力的にも優っているアメリカ、というような印象で英国バンドより力強いものを感じる。もう書くのも疲れてきたので紹介もぞんざいだな。

The Sisters Of Mercy

「ゴスの帝王」などと呼ばれていい気になってる(なわけないか?)アンドリュー・エルドリッチによる伝説のバンドだが、上記のポジパン達とは違って彼らにはほとんど化粧っ気はない。
でっかいレイバンのサングラスとシルクハットのような帽子に長髪といったスタイル、そしてドクター・アバランシェなる名前の付いたリズム・マシーンに乗せて歌うくぐもった低い声、これだけで奇跡のシングル・ヒットを連発したというところが伝説なんだが、彼らが1stアルバムを出した1985年頃にはポジパンのブームはそろそろ終わりに近づいていたような気がしないでもない。そういう意味でポジパンの最後を飾る大物といった見方も出来るかね。
このシスターズの主要メンバーで大ヒットの影に関与していたウェイン・ハッセイ(後のミッション)は個人的に好きじゃないので省略。

March Violets

レーベルも初期は一緒だったしどちらもドラム・マシーンによるバンド構成だったし、シスターズと比較される事が多かったのがこのマーチ・ヴァイオレッツだ。
そのためか意図的にシスターズと違う路線を歩まなければならなかったところがすでに不運。と言うか特に似たところはなかったんだけどね。
本当は全然違うのかも知れないけど存在感のある兄貴と不肖の弟、というような構図が勝手にROCKHURRAHの中に出来上がってしまってる。
このバンドはそういうダメな部分も含めて大好きだった。
女性ヴォーカルとやや品のないサイモンDのいやらしい声の掛け合い、そして無機質なビート、謎の宣教師みたいな風貌、ヒゲもすごい。

プロモの撮り方が差別的でヴォーカルはヒゲ男サイモンDがメインなのに映ってるのは女性ヴォーカルばかりというアンバランスさ。まるで「ワンピース」のDr.ホグバック&シンドリーちゃん状態。知らない人が見たら勘違いしそうだが、たまにチラチラ映る方がリーダーなので間違えないように。

以上、ROCKHURRAH RECORDSらしくあくまでも当時のポジパンに焦点を当てて書いてみた。正直まだ書ききれないという部分もある反面、どのバンドも違う言葉で紹介する事出来ないよ、というくらいに書いてる本人まで区別つかなくなってしまった部分もある。要するに同じような嗜好を持った者の集まりという特定の形式だから、どれも似てしまうんだよね。

今のこの時代に80年代ポジパンを追い求めてる人は少ないと思うけど全盛期には街角にもごろごろこんな奴らがいた素晴らしい時代。「時に忘れられた人々」の趣旨とすればまさにピッタリな内容じゃなかろうか。

7月5日に生まれて

【共通点がまるでない者ども】

ROCKHURRAH WROTE:

本日7月5日はROCKHURRAHの誕生日だ。
プレゼントをくれると言うSNAKEPIPEに「その気持ちが一番嬉しいよ」などと返しながらも、いざ選ぶとなると思いっきりこだわり満載で我ながら毎年困った野郎だな。
いつもプレゼントを探しに行ってもなかなかこれというモノに出会わないんだが、今年は珍しくすんなり理想としてたのが手に入った。
帽子好きのROCKHURRAHのためにSNAKEPIPEが見立ててくれたのが中折れストローハットだ。ソフト帽もそうなんだがこの手の帽子の場合、ツバの広さと深さ、伊達さとチンピラ加減のバランスが大切。それが見事に調和した時の似合いっぷりはそんじょそこらの帽子男が逃げ出す程(大げさ)。
とにかくいい帽子が手に入って大満足。ありがとうSNAKEPIPE。

さあ、今回は何を書こうかと考えて、ありがちのテーマだが同じ日に生まれた有名人はだあれ?ってな感じで書いてゆこうと思う。最初に宣言しておくが企画倒れの可能性が非常に高い記事になりそう。実は探してみたがあまり有名な人も書けそうな人もいなかったような状態だからだ。まあ誕生日なので許してやってね。

この日が誕生日で世界的に有名だと思える人はやはりジャン・コクトーだろう。本業は詩人だと思うが小説や映画などでも著名、絵も描くし音楽もプロデュース(?)、この時代のマルチメディア・アーティストみたいなもんか。ただしROCKHURRAH、芸術だろうが何だろうが好きとか嫌いとか自分にとっての善し悪し程度はわかるが、特に造詣は深くない。だからコクトーについて語るような事は出来ない。コクトーに関する個人的な思い入れは色々あるが(過去に敬愛していたビル・ネルソンとコクトー・レーベルなど)、今回は関係ないのでそれらの話もやめておこう。コクトーの多才ぶりを示すのかどうかはわからないが、体から阿修羅のように六本の手が出てペンを持ったりタバコすったりしてる写真とか、「美女と野獣」におけるジャン・マレーのタヌキ男みたいな特殊メイクとか、この辺の紙一重の稚気は好きだな。

続いては英国のファッション・デザイナー、ポール・スミスも7月5日生まれだ。残念ながらこの人がデザインした服に興味を持った事がなくて店も一度も行った事がない。近所の古着屋でポール・スミスのジッパーが壊れていた革パンが破格値だったので買ってきて自分で修理して穿いていたのが唯一のポール・スミス体験。しかしすぐに色々な場所が破れて、そこにカーゴパンツのように革のポケット縫い付けてごまかしたりダメージ加工のようなミシン・ステッチをしたり、苦心して穿き続けたものだ。だからポール・スミスの革は破けやすい、という思い出ばかり。たまたまROCKHURRAHが買ったものが程度良くなかっただけで、実際はそんなはずはないだろうけど、皆さんもお気をつけなされ。

音楽の世界ではどうだろうか?うーん、あまりぱっとした人がいないなあ。70年代の大スター、藤圭子。この人も同じ誕生日だ。可愛らしい顔で怨み演歌というギャップが受けて大人気。後の時代では宇多田ヒカルの母親としての方が知られているようだがこの辺はROCKHURRAHは全然興味なし。同じ怨み系だったらだんぜん女囚さそりで有名な梶芽衣子の方がいい。誕生日とは全然関係ないけどね。

他も探してみたんだがさらに悲惨な結果に。80年代前半と言えばイギリスではニュー・ウェイブ真っ盛りだったが、同時代のアメリカで大人気だったバンドのひとつがヒューイ・ルイス&ザ・ニュース。そのヒューイ・ルイスも同じ誕生日だ。個人的には全くもってどうでもいいんだが、この日が誕生日の有名人となると真っ先に出てくるのが情けない。
クラッシュの初代ドラマーだったテリー・チャイムスもまた7月5日生まれだが、二代目のトッパー・ヒードンの方が有名すぎてかなり地味な印象。

ある意味上記の誰よりもTVで見た回数が多かったかも知れないがドリフの仲本工事もこの日が誕生日だ。うーん、体操出来て音楽も出来て、多才なのは確かなんだがドリフの中では地味だなあ。嫌いじゃないけどコメントする事がない。

最後となったがジョン・ミリアス監督の傑作映画「デリンジャー」で1930年代に世間を騒がせていた実在のギャング、ジョン・デリンジャー役をやっていた俳優ウォーレン・オーツも同じ誕生日だ。デリンジャーはその生き様がセンセーショナルだったために何度も映画化されたが、渋味のあるチンピラ悪党おやじという点でこのウォーレン・オーツが最もハマり役だったと思える。今回の誕生会の中でROCKHURRAHが最もシンパシーを感じるのがこのウォーレン・オーツだし、これくらい苦み走った悪オヤジになりたいものよ。(銀行は襲いません)

軟弱ロックにも栄光あれ

【わけあってプレイヤーは別窓で開きます。音が鳴るので要注意】

ROCKHURRAH WROTE:

先々週あたりからSNAKEPIPEと二人して風邪をひいてしまい、インフルエンザ騒ぎもあったために珍しくマスク着用で通勤してしまった。こんな時期に紛らわしいというか運が悪いし、人には警戒される始末。SNAKEPIPEはすぐに治まったが、ROCKHURRAHの方は鼻炎も併発したらしく、大変に辛い一週間となった。おかげで自慢の(語尾がはっきりしない)こもった声が鼻声になり情けない。

さて、そんなことも踏まえた上で本日はROCKHURRAHの得意とする分野(?)、パンク&ニュー・ウェイブ時代のヘナチョコ声ヴォーカリスト特集だ。
ヘナチョコ声といっても感じ方は人それぞれだし、定義の難しい分野ではあるが、あくまでも個人的にそう思えるものを選んでみた。

そもそもロックの世界ではこういう声は決して異端でもなく、むしろ力強く堂々とした声の持ち主よりも人口は多いかも知れない。そんなヘナチョコ声ヴォーカルに市民権を持たせた代表はヴェルベット・アンダーグラウンドのルー・リードやデヴィッド・ボウイという事でいいのだろうかね。まあこれらはロックを聴く人なら大体誰でもわかると思える鼻詰まり系元祖の人だから、わざわざ語るまでもないな。

さてパンク、ニュー・ウェイブの世代になるとヘナチョコ人口はグッと増えてくる。ボウイやルー・リードを聴き狂って影響を受けた直接の世代でもあるし、ちょっとした程度の歌と目新しい演奏が出来れば誰でも人気者になれる機会があった時代だからね。

この時代で個人的に好きだったヘナチョコ・ヴォーカリストはハートブレイカーズのジョニー・サンダースがまず挙げられる。彼の場合は声に限らずギターも生き様もヘロヘロだったわけで、破滅型ロックンローラーの代表と言うべきだね。
そのジョニー・サンダースのベスト・オブ・弟分であるシド・ヴィシャスなども舌ったらず系ヴォーカルで数多くの人に愛されたな。この辺はROCKHURRAHのいいかげんな説明よりも伝記などを読んだ方がいいだろう。

そして誰が何と言っても軟弱声の極め付けはオンリー・ワンズのピーター・ペレットだろう。堕天使のような風貌(写真によって見た目が随分違うが)と誰もが倦怠感を一緒に感じてしまう中性的なヴォーカル・スタイル。古い順に書いてるから早い段階で登場してしまったが、これはもうヘナチョコ声チャンピオン間違いなしの一級品だ。日本では誰でも知ってるという程の知名度を得なかったし、パンク好きの人でも「Another Girl, Another Planet」くらいしか彼らの曲を知らないって人も多かろうが、他にも素晴らしい曲がたくさんあるので知るべし。

いきなりチャンピオンが出たからこれを破れる人はそうそういないんだが、例えばバズコックスのピート・シェリーなども同じ傾向かな。元々は奇妙な髪形の才人ハワード・デヴォートがヴォーカルだったが、彼が抜けた後にギタリストだったピート・シェリーがヴォーカルも兼任したというパターン。この時代のパンクとしては抜群に優れたポップ・センスとスピード感のあるバンドで、ちょっと素っ頓狂に裏返るシェリーのヴォーカルも魅力に溢れていた。後の時代に多大な影響を与えたで賞。

前々から何回もこのブログで取り上げてるベルギーのプラスティック・ベルトラン。これもまた愛すべきヘナチョコ・ヴォーカリストだ。延々と同じビートが反復するワン・パターンに甘えた声、映像見ても一人で跳ねて踊って歌ってるだけ。それでもパンク。彼らもオンリー・ワンズの「Another Girl〜」同様、一般的に知られている曲は数多くのバンドがカヴァーした名曲「Ça Plane Pour Moi(「恋のウー・イー・ウー」または「恋のパトカー」)」しかないのが悲しい。

忘れちゃならないのはパンクからニュー・ウェイブ転換期に活躍した早過ぎたバンド、ワイアーのコリン・ニューマン。「ロックでなければ何でもいい」などという発想で次々と既成概念を解体するような新しい試みの曲を量産し、あっという間に自らも分裂解体してしまった伝説のバンドだ。パンク・ファン以外でも知ってるような知名度の高い曲はうーん、あまりないなあ。ワイアー時代は「12XU」みたいに絶叫する曲もあったからヘナチョコ声のレッテル貼るのもちょっとおこがましいが、「I Am The Fly」「 15th」あたりからコリン・ニューマンのソロに至るまで、ドリーミーでクリーミーな世界を繰り広げている。

ニューマンで急に思い出したんだがニュー・ウェイブ初期の78年くらいに大ヒットを飛ばしたチューブウェイ・アーミー=ゲイリー・ニューマン、彼もまたヘナチョコ鼻声の持ち主だ。エレクトロニクス・ポップス略してエレポップ、もっとわかりやすく言えばテクノ・ポップと呼ばれた分野で大活躍した幻想アンドロイドこそが彼だ。デヴィッド・ボウイが持っていたイメージの一面を極端にデフォルメした非人間性が目新しかったものよ。しかし人気出たもののヒットは数曲、おまけにアンドロイドのくせに太ってしまうという致命的なミスを犯してしまい、いつの間にか消えてしまったな。

ここまでニュアンスはそれぞれ違うがROCKHURRAHが言わんとするヘナチョコ声質はわかって貰えた事と思う。だがヘナチョコ声はそれだけではない、もっとヴァリエーションのあるものだ。その一例を挙げてみよう。

デヴィッド・ボウイと同時期に活躍したロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーが得意としてた、かどうかよくわからんが、いわゆるファルセット、裏声。歌唱法とすればロックの世界でもアリとは思うが、これも一般的にはヘナチョコ度が増す行為だろう。

ファルセットとは言わないのかも知れないがナチュラルに高音だったヴォーカリストと言えばアイルランドのアンダートーンズ(フィアガル・シャーキー)などは特徴的だ。当時、政治的に不安定だった北アイルランド出身のくせに見よ、この陽気なポップ魂、どこから声出してんの?パンク時代のモンキーズのようなバンドだったな。「Teenage Kicks」をはじめ「Here Comes The Summer」「Jimmy Jimmy」などなど、はじける名曲を数々残している。
近いタイプとしては日本での知名度はかなり低いがフィンガープリンツなども同じパターン。こちらはどう考えてもヴォーカリストには向かんでしょうという人がわざわざヴォーカルをとってて反省させられる内容。ただし曲はすごく良くてパンクというよりはパワー・ポップ系なのにパワーないぞ、というところが魅力。これぞヘナチョコ・ロックの面目躍如。

高音と言えばアソシエイツのビリー・マッケンジーも有名だ。80年代前半のイギリスで大人気だったバンドで83年くらいにはインディーズ・チャートの常連だったくらいに次々とヒットを飛ばした。陰と陽がどんどん入れ替わるような奇妙なポップスを得意としていたが、ただ不安定な高音やはっきりしない曲調、とっつきにくい部分もあってこの手のバンドを苦手な人も多数いるはず。同じ傾向であるキュアーのロバート・スミスが人気者になれたのに、やはりもう少しの個性が必要だったのかね。代表曲「Club Country」が知られてる程度で日本ではあまりヒットしなかったなあ。このビリー・マッケンジーは完全に落ち目になった90年代後半に鬱病が悪化し自殺している。そういうシリアスは我等が提唱するヘナチョコ道には反する行為なんだが。

ここまでパンク、ニュー・ウェイブ中心に書いてきたけど出そうと思えばいくらでも出てくるヘナチョコ族ども。ハッキリ言って掃いて捨てるほど存在してるな。書いててキリがないので90年代後半に出てきたアップルズ・イン・ステレオのロバート・シュナイダーをこの系譜の一番最後にしよう。ギター・ポップと言えばROCKHURRAHの世代では断然イギリス、スコットランドあたりなんだが、この90年代後半から21世紀のはじめくらいはアメリカ物の方が旬な時代だった。アップルズ・イン・ステレオもそんな中に登場したバンドで、この上ないほどポップスの王道を行く楽曲と素晴らしいヘナチョコ・ヴォーカルでギター・ポップ好きの心を鷲掴みにしたものだ。しかしこの女性受けする声のロバート・シュナイダーは小太りでメガネの冴えない男で秋葉原あたりにいても何ら違和感なしという風貌。「この声で美形じゃないなんて」と数多くのファンをガッカリさせた経歴を持つ。後年になって「ロード・オブ・ザ・リング」で有名なイライジャ・ウッドからの依頼じゃ、という事で彼のレーベルから出したりもしたが最近の活動には疎いもので、その後はどうなったのか?

というわけで思いつくままヘナチョコ・ロックの歴史を振り返ってみたが、こういうのばっかりあまり続くと食傷気味。ストロングでハードコアなものも続けると疲れてしまう。どちらもほどほどにバランス良く取り入れて健康なのが一番だね。
(何じゃこのしまりのない締めの言葉は?)