アンディ・ウォーホル展鑑賞

【ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの大好きな曲。映像酔いに注意!】

SNAKEPIPE WROTE:

去年のうちから森美術館10周年記念企画として「アンディ・ウォーホル展」が開催されることは知っていた。
そしてすでに鑑賞を終えた長年来の友人Mから
「ウォーホル展、すっごい良かったよ!あと3回は行きたい!」
という連絡も受けていたSNAKEPIPE。
ではせっかくなのでご一緒しましょうと、ROCKHURRAHも加わり、またもや怪しい3人組が六本木に集合することになったのである。

森美術館の開館時間に合わせて待ち合わせをする。
9時50分にチケット売り場を目指すと、もうすでにチケット購入を待つ人で溢れている。
ぎゃー!こんなにウォーホル展が大人気なのか!と思っていると、どうやら森アーツセンターギャラリーでは「ラファエル前派展」が開催されていて、半数以上のお客さんはそちらが目当てだったみたい。
あー、びっくりした!
きっとあやしい3人組は「ラファエル前派展」鑑賞チームとは思われなかっただろうな。(笑)

去年8月に国立新美術館で開催された「アメリカン・ポップ・アート展」も六本木だったので、2年連続でポップアートの展覧会が催されるのは珍しいんじゃないかな。
あの時はポップアートを支援していたパワーズ夫妻のコレクションが展示されている企画だったので、ウォーホルだけじゃなくて、複数のアーティストの作品を鑑賞することができたんだよね。
今回はウォーホル一人だけの展覧会。
「アメリカン・ポップ・アート展」の時のウォーホルについての感想に

有名な作品が展示されていたけれど、
あまりにも見慣れすぎているためか
確認作業をしている気分になった

と書いているSNAKEPIPE。
果たして今回の「アンディ・ウォーホル展」はどうなんだろう?
既に有名な作品については、その道の専門家もいてSNAKEPIPEが語るよりもずっと詳しい説明がされているはず。
シルクスクリーンについての説明はそんな御仁にお任せすることにしよう。
今回はもっと初期の、シルクスクリーン以前の作品について書いてみようかな!

入場するとすぐにウォーホルの自画像や写真など、ウォーホル本人に関する作品が展示されている。
確かにウォーホルってマリリンなどの有名な作品に負けないくらい、本人が前に出るアーティストだったもんね。(笑)
同じようにポップ・アートだったらすぐに名前の出てくるロイ・リキテンスタインは作品は知っていても、リキテンスタイン本人をすぐに思い浮かべることはあまりないよね。

ウォーホルの子供時代の写真や80年代の女装した写真などを鑑賞した後に、商業デザイナーとして活躍していた頃の作品が展示されている。
以前ウォーホルに関する本は何冊か読んだことがあり、デザイナーだったことは知っていたはずだけど、その当時の作品を観た記憶はない。
ウォーホルといえば、シルクスクリーンを使った例の作品群ばかりがクローズアップされるから余計だよね。
上の画像はウォーホルが女性ファッション誌用に描いたイラストである。
華奢なピンクのサンダルが横向きに描かれている。
他にも靴、バッグ、洋服など女性が喜びそうな素敵なイラストがたくさんあって
「ウォーホルって絵が上手!」
と今頃になって気付いてしまうのだ。
だってウォーホルの肉筆画を観たことないからね!

いくらアメリカのピッツバーグ生まれとは言っても元々スロベニア移民の子であるウォーホルだからなのか、色使いや構図がアメリカっぽくない感じがした。
鳥や蝶をモチーフにした作品が何点かあり、陶器や花瓶などに描かれていたら似合いそうな雰囲気。
そんな中、非常に目を引いたのが右の「2歳のアンディ」という作品である。
まるで子供がいたずらで描いてしまったような、ぞんざいな線がたまらない!(笑)
頭に乗ってる蝶、左右違う太さと長さの腕、無関心そうだけれど、ちょっと笑ってる顔!
本当にアンディ・ウォーホルが2歳の時はこんなだったのかな?

初期の作品でポスターがあったら欲しかったのが左の「feet」ね。
文字を描いている部分と貼り付けている部分が混在していて、とても魅力的だった。
別バージョンで手もあったんだけど、この2枚を並べて部屋に飾りたかったなあ!
ところが残念なことに、販売されていたのはやっぱりいかにもウォーホルらしいポップ・アート系の作品をモチーフにしたものばかり。
一目でウォーホルだ、と判るものじゃないと売れないんだろうね?

今回の展覧会で面白かったのは、ウォーホルがニューヨークで作品制作を行っていた「ファクトリー」を再現したスペースがあったことと、「タイムカプセル」と称されたウォーホルがコレクションしていた雑多な資料の展示。
「ファクトリー」に関しては、今までにも何度かブログで書いたことがあるけれど、SNAKEPIPEの憧れの場所なんだよね!
一度行ってみたかったなあ!
もちろん「ファクトリー」にたむろしているような人種は、何かしらアート関係に携わっているような、日本で言うところのカタカナ職業(死語)で成功している人たちだろうから、見学に行くような場所じゃないんだろうけどね。(笑)
芸術家達の交流の場だっただろうなと想像するだけでワクワクしちゃうんだよね!

「タイムカプセル」は、なんでも収集していつまでも捨てないでいる性格が見えて、ウォーホルらしさがよく解るよね。
お菓子の包み紙とか、どこかの店のコースターまであるんだもん。
生涯独身だったというウォーホルは、もしかしたら子供っぽさをいつまでも持ち続けていた人だったのかもしれないね?

「アンディ・ウォーホルTV」という番組があったのかな、あまりよく知らないまま用意された椅子に座り映像を鑑賞していた時、驚くことがあった。
何かのパーティのシーンで、会場までTVカメラを案内していたのがなんと「ツイン・ピークス」での赤い服を着た小人だったの!
その映像では「ゼルダの伝説」のリンクみたいな服装だったけどね。
赤い服の小人については先週のブログでも書いたばかりだよね!
友人Mと顔を見合わせ「あっ!」と叫んでしまった。(笑)
奇妙な偶然の一致に驚かされたよ。

複製をアートとして認めさせてしまった、というのがウォーホルのすごいところだろうね。
マルセル・デュシャンがレディ・メイドをアートにしたのは1917年とのことなので随分昔の話だけど、世の中で一体どれだけの人がデュシャンの「泉」を知っているのかなあ。
ウォーホルのことはかなりの人が知っているに違いない。
アートを大衆にも行き渡らせた功績は大きいよね。
一目でウォーホルの作品だと判ってしまう点も含めて、ね。

残念だったこと2点。
1点目はヴェルヴェット・アンダーグラウンドについてほとんど紹介されていなかったことかな。
出ていたのは映像作品で少しだけ。
鳥飼否宇先生から頂いた今年の年賀状にも「ルー・リードが亡くなってしまいました」と書かれていたけれど、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーだったルー・リード死去などについては一言もなかったからね。
音楽との関わりも楽しみにしていただけに物足りなかったな。

もう1点は、観客のこと。
情操教育のつもりなのか、鑑賞した日は子供連れの家族が多く、非常に不快な思いをさせられた。
子供が走り回る、奇声を発する、大声で泣く。
静かに鑑賞している他のお客さんに迷惑がかかるような場合には、森美術館側でも対処して欲しかったな。
美術館は遊園地とか公園じゃないから。
静かに鑑賞できない子供は入場させないルールを作ろう。
映画と同じようにR指定が必要じゃないかと思ってしまう。
扱いとしては図書館と同じではないかと感じるがどうだろう?

去年の「アメリカン・ポップ・アート展」とは印象を変えて、アンディ・ウォーホルというアーティストをよく知ることができた展覧会だと思う。
最初に書いた「確認作業」だけにならなくて良かったな。(笑)

「驚くべきリアル」展鑑賞

【毎度お馴染み、MOMA敷地内の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年よりずっとスペイン熱にかかっている。
あ、これ病じゃないからね。(笑)
スペイン映画がきっかけとなり、何かにつけてスペインをキーワードとして楽しんでいるのである。
東京都現代美術館でスペインのアート展があるよ!」
と教えてくれたのはROCKHURRAH。
当然のようにROCKHURRAHもスペイン熱に冒されているので、目を輝かせている。
2月15日から始まるから楽しみだね、と言い合っていたけれど、皆様ご存知のようにその日は大雪の影響で、とても外出するどころではなかったよね!
そしてその翌週、久しぶりに木場へと向かったのである。

前回行った日付を確認してみると、2011年11月の「ゼロ年代のベルリン展」だったみたい。
意外と長い間来館していなかったことに気付いてびっくり。
美術館情報はチェックしているつもりなので、SNAKEPIPEの好みの企画がなかったのかな。
木場駅からの長い道のりをテクテク歩きながら、横目で少し残った雪を確認する。
東京都現代美術館までの道のりは広大な公園があるので、散歩がてら歩くのは丁度良いんだよね。
そして日当たりが良いのか、本当に道の片隅にしか雪がなかったよ。
この日は晴れて気温も少し高かったので、歩くには良い日だったね!

「驚くべきリアル展」はスペインだけではなくて、スペイン語圏ということなのかラテンアメリカのアーティストの作品も展示されているとのこと。
スペインの現代アートにはなかなか触れる機会がないので、当然のようにHPでの紹介を読んでも知らない名前ばかり。
どんな作品に出会えるんだろう?

ガラス貼りの美術館は中に入ると陽射しで温められた空気が、少し暑いくらいだった。
この美術館はそんなに大勢の観客がいないことが特徴で、ゆったり鑑賞できる点がお気に入りなんだよね。(笑)
チケットを購入しようと売り場に歩いていく途中でまず目に飛び込んできたのが3体の人形だった。
「なに?あれ?」
一瞬で目が釘付けになる。
かなり不気味な雰囲気の人形で、少し近づいてみるとどうやら作品のようである。
まずはチケット買わないと!
それからじっくり鑑賞したいよね!

チケット購入後、受付の前にその人形たちはいた。
本来は一番最後の展示作品だったようだけれど、全くお構いなしにじっくり鑑賞する。
説明している文章によると、作者であるエンリケ・マルティの友人をモデルに、縮尺を変えて制作された作品とのこと。
その縮尺が変わっているといる点が、なんとも奇妙で不気味な雰囲気を醸し出している要因みたいだね。
頭部と手足だけが実物大の大きさで、体だけ小さい。
手や足の指の長さも実際とは違っている。
頭髪などは本物の毛を使っていたようで、かなりリアルな出来栄えなので、余計にギョッとしちゃうんだよね。(笑)
このアーティストの名前を記憶し、先に進むことにする。

次にまた足が止まったのは、エンリケ・マルティの作品の前だった。
実際にはエンリケ・マルティと知る前から、圧倒的な存在感の前に立ちすくんでしまった、というのが正しいのかもしれない。
壁一面を埋め尽くす、その大きさにまず驚いてしまう。
なんでもない家族のポートレートを組み合わせたような複数枚で構成された作品で、 タイトルはそのまま「La familia(家族)」である。
近寄ってみないと、それらが油彩画であることが判らないほど、精巧なタッチである。
そして更にじっくり一枚一枚を鑑賞していくと、ハッピーな家族の肖像だけではないことがわかってくる。
そのことに気付いてしまうと、あー、あっちにも、ここにも!という具合に気味の悪いポートレートに目を奪われる。 上の2枚のような絵が、ところどころに配置されているのである。
「幸せそうに見える家族だけど、本当はね」と内緒話をされているような、見てはいけないものを覗いているような罪悪感と、同時に秘密を知ってしまった優越感を持ってしまう。
そしてその暗部を描いた絵のなんとも魅力的なこと!(笑)
右側の人間なのか獣なのか判別し辛い生物が描かれている絵などは、大好きなフランシス・ベーコンの絵に通じる雰囲気もあるよね。
そして安穏そうに見える裏側には闇もあるんだよ、というテーマはまるで敬愛する映画監督デヴィッド・リンチを感じてしまう。

帰宅後、エンリケ・マルティについて調べたところ、自身のHPに作品がたくさん掲載されていて、見つけたのがこの作品。
タイトルはそのまま「Fire Walk With Me」(1999年)である。
これを観た時に「ああ、やっぱり!」と思ったSNAKEPIPE。
好きな物が似ているアーティストの作品はすぐにピンとくるものだからね!
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」(1992年)の原題が「Fire Walk With Me」、監督はもちろんデヴィッド・リンチである。
「ツイン・ピークス」の虜になった人であれば、この赤い服を着た人物が誰なのか瞬時に判るはず。(笑)
「Fire Walk With Me」はシリーズになっていて、他にもローラの顔やデイル・クーパーの顔も描かれていた。
いいねえ!エンリケ・マルティ!
このアーティストを知ることができただけでも、「驚くべきリアル展」に行った甲斐があったよね!
この世界観をもっと知りたい。
エンリケ・マルティ展やらないかなあ。(笑)

展覧会について書く時にいつも言ってることだけど、現代アートのジャンルとしてビデオ作品が必ずあるんだよね。
展覧会によっては何分の作品なのかを表示していないことも多くて、ほとんどの場合は途中から鑑賞することになり、結局意味が解らないまま数分だけ観て立ち去ってしまう。
どんな展開になるのかどうしても知りたいと思うような作品に出会っていないというのも理由なんだろうけど。(笑)

ビデオ作品には少々辛口のSNAKEPIPEが、今回はじっくり鑑賞した作品があったんだよね!
Oedipus Marshal」(保安官オイディプス)という2006年の作品でアーティストはハビエル・テジェス。
残念ながらハビエル・テジェスについての情報が少なくて、自身のHPも見当たらないの。
ベネズエラ出身のビデオアーティストで、現在はアメリカ在住だというくらいで許してね。(笑)

「Oedipus Marshal」はギリシャ悲劇として知られる「オイディプス王」をウエスタン仕立てにした作品だった。
しかも登場人物が着けているのは、日本人には馴染みのある能面!
ギリシャ・ミーツ・ウエスタン・アンド・ノーガク!(笑)
なんとも不思議なミクスチャーだと思ってしまうけれど、これが全然違和感なく鑑賞できちゃったんだよね。

上の写真でも判るように、ウエスタンの衣装に能面、なかなか良いよね?
そして映画みたいにセリフが入った作品だったんだけど、その時々で表情が違ってみえるところもびっくり!
日本の芸能でありながら、詳しくは知らない能の世界だけど、やっぱり伝統芸能っていうのは能面1つ見てもさすがだな、と感じることができたのは大きな発見だね。
音楽も能楽の音を使っていたんだけど、それもしっくりしていて作品に合ってたんだよね。
外国人から日本文化を学ぶとは!(笑)
この作品は映画として観ても十分面白いと思うので、アートの世界だけではなくて娯楽作品としての上映も希望したいところだ。

スペインのアートを全く知らないまま、ちょっと賭けのように出かけた展覧会だったけれど、ピッタリとフィーリングにマッチする(死語)アーティストに出会えて嬉しかった。
エンリケ・マルティの今後の活動に注目だね!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #25 David Lynch Snowmen

【雪だるまの顔に国の違いはあるんだろうか?】

SNAKEPIPE WROTE:

先週と今週の週末にかけて、40年ぶりと言われるような大雪に見舞われた関東地方。
2013年の夏は猛暑で大変だった記憶が薄らいできたかと思うと、今度は雪に苦しめられるとは、トホホ!
子供の頃は、雪が降ると嬉しかったはずなのに。
雪合戦はあまり記憶にないけど、空を見上げて降ってくる雪を見ていると空に吸い込まれそうな不思議な感覚に心が踊ったり。
真っ白な地面に一番で足跡を付けることに快感を覚えたり。
思い返してみると、雪の思い出にはワクワクした楽しいものが多いんだよね。
一体いつから「雪だと大変」に変化しちゃったんだろう?
この変化が子供心を忘れてしまった、ということなのかな。
それはちょっと悲しいね!
今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、雪をテーマにした作品について書いてみようか。
これで少しは雪を楽しむ気持ちが戻ってくるんじゃないかな?

雪に関するアート作品で、SNAKEPIPEが自宅に飾りたいと思う作品を探してみたけれど、なかなか難しかった。
例えば雪の写真だと、ほとんどがネイチャーフォトで被写体は風景や動物になってしまう。
もちろん素晴らしい作品はたくさんあるんだけど、SNAKEPIPEの好みじゃないのよ。(笑)
リンチの作品、あったじゃない」
と提案してくれたのはROCKHURRAH。
あっ、そうだった!
2012年11月の「好き好きアーツ!#18 DAVID LYNCH—CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE」で記事にしているように、リンチの個展をラフォーレ・ミュージアムで鑑賞した時に「雪だるま」をモチーフにした写真群があったっけ!


敬愛する映画監督であるデヴィッド・リンチは自称19歳!(笑)
実際の年齢は68歳なんだけど、雪を楽しむ気持ちを忘れていないんだもの、やっぱり子供心を持ち続けているってことだよね。
これは2007年にパリのカルティエ現代美術財団で行った個展「The Air is on Fire」で個展用のカタログと同時に出版された「Snowmen」という写真集から抜粋した写真である。
「雪だるま」と「カルティエ」なんて、普通なら同時に並ぶはずのない単語だよね。(笑)
大変申し訳ないんだけど、前述したラフォーレ・ミュージアムで鑑賞した時には、「Snowmen」の意味が解らなかったSNAKEPIPE。
「なんで雪だるま?」
としか感想を持っていなかったんだけどね。
ちゃーんとあるんだよね意味がっ!(笑)

I like the nowhere part of America…
They’re little truthful places,
but they’re not obvious.

リンチの言葉である。
確実にどこかに存在している、アメリカのなんでもないような場所が好き、とはいかにもリンチらしいね!(笑)
そんなどこにでもあるような田舎町を舞台に映画を制作するのが、リンチの得意としているスタイルだもんね!
田舎町や郊外が決して「のどか」で平穏な場所ではないんだよ、と教えてくれた(?)のが「ブルーベルベット」や「ツイン・ピークス」だったからね。

「Snowmen」に関しては

– old neighborhood
– gray days
* – quiet

「昔馴染みの近所、どんよりした日、静か」のキーワードで撮影に臨んだとのこと。
「quiet」の左にあるアスタリスクは原文のまま、なのでタイプミスじゃないことをお断りしておくよ!
撮影したのは子供時代を過ごしたことがあるというアイダホ州のボイシらしい。
リンチ自身が雪だるまを作ったわけじゃなくて、誰かが作った完成品を撮ったんだって。
この点がちょっと残念?(笑)

1枚ずつ鑑賞していると意味が解りにくいんだけど、写真集で一連の流れを追うと解ってくることがある。
そう、これは九相詩絵巻なんだよね。
形あったものが溶けて、地面と一体になっていく様。
九相詩絵巻と同じように考えると「無常」ということになるんだろうね。
リンチが「無常」を雪だるまで表現し、それを理解したカルティエ現代美術財団が「C’est si bon!」って言ったんだろうね! (笑)

There’s the relationship of shapes, one to another, that are pleasing,
and just this word ‘pleasing’ gets into something maybe about love.

カルティエ現代美術財団の個展カタログでリンチが語った言葉である。
やっぱり仏教的な雰囲気を感じるよね。
こうして調べていくと「Snowmen」を壁に飾りたくなってきたよ!
「Snowmen」鑑賞し続けていたら、SNAKEPIPEも「ドグラ・マグラ」の呉一郎みたいに精神に異常をきたしてしまうかもしれないけど?(笑)

ふたりのイエスタデイ chapter02 / The Stalin

【今聴いても血沸き肉踊る一枚!】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH WEBLOGで2014年から始まった新企画「ふたりのイエスタデイ」の第2弾はSNAKEPIPEがお送りしようか。
この企画は「一枚のレコード、または一枚の写真とかを選び、それについての思い出を語ってゆくという郷愁に満ち溢れた記事」になるという説明は第1弾でROCKHURRAHが書いてくれてるね!
あはは、実際一番上の画像で一目瞭然!
そうです、あのザ・スターリンの「STOP JAP」が今回選んだ一枚なんだよね!(笑)

ザ・スターリンを教えてくれたのは、学生時代の同級生Hだった。
夜間の外出などもってのほかだったSNAKEPIPEの自宅とは違い、友人H宅では外泊や外出に対して規則が設けられていなかったのかもしれない。
友人Hはバンドをやっていた関係から、年上の人達との付き合いがあり、ライブハウスに出かけていたようだった。
SNAKEPIPEが全く知らないことを経験している大人っぽい友人Hの話は、インターネットなどなかった時代には貴重な情報源だった。
どちらかというと無口なタイプだった友人Hがポツリと
「スターリンって知ってる?今度ライブ行くんだ」
と話してきた。
知らないよ、それなあに?と返答するSNAKEPIPEにカセットテープをくれた友人H。
これがSNAKEPIPEが初めて出会ったザ・スターリンであり、パンクだったのである。
時代的には当然ロンドンのオリジナルパンクのほうが先になるんだけど、SNAKEPIPEはザ・スターリンからだったんだよね。

そのカセットテープは文字通り擦り切れるまで何度も聴いたものだ。
思春期というお年頃、反抗期も続いているし、文学や芸術に敏感になっていたせいもあるだろう。
ザ・スターリンの歌詞、遠藤ミチロウの書く詞の世界や煽情的なミチロウの声は、その時代のSNAKEPIPEの心情にピッタリと一致してしまったようだ。
自分が何故この世に存在しているのか、存在意義の確かめ方を知りたいのにどうしたら良いのか分からない。
毎日イライラして、文学に答えを求めていたSNAKEPIPE。
なんて真面目な女子学生だったんでしょ!(笑)
そのイライラした感情をミチロウが言い表してくれていると感じたんだろうね。
バイトだと嘘をついたのか忘れたけど、何かしらの言い訳を考えて初めてザ・スターリンのライブに行ったのはそれから間もなくのことだった。
記憶に間違いがなければ新宿だったはず。
演奏を聴くどころではない、もみくちゃの状態になったこと、観客がみんなミチロウを指さすように人差し指を上げて熱狂していたことだけを覚えている。
ライブって大変なんだなあと思ったっけ。(笑)
ザ・スターリンを知ったのが遅かったせいで、次に行ったライブがザ・スターリンの大映撮影所での解散ライブだった。
撮影所だもんね、照明がすごくキレイだったなあ!
調べてみたら1985年の2月だって!
ぎゃー!29年前だよー!怖いー!(笑)

それからの数年間もずっとザ・スターリンを聴き続けていたSNAKEPIPEは、本当にどっぷりとミチロウの世界に浸っていたようだ。
当時はまだ学生だったSNAKEPIPE。
期末試験などで解答を早く書き終えてしまったけれど、時間までは着席していなければいけない余った時間に、テスト用紙の裏側に、「世界の終焉について」などと書き、その理由としてザ・スターリンの歌詞に加えて自分の意見などを書き綴ったりして時間潰しをしていた。

世界の果てまで俺を連れてってくれ
つぶれていってもいいんだ
失うものは何もない

これはザ・スターリンのメジャー・デビュー・アルバム「STOP JAP」に収録されている「STOP GIRL」の歌詞である。
世界の果てと聞くと、周りに何もなく、当然人もいない、遠くに地平線が見える風景を想像する。

人がいない、荒涼とした場所。
だだっ広くて、ずっと先のほうまで見通せる、
歩いても歩いても変化のない風景。
人がいた気配はあるけれども、全く姿を見かけない。
SNAKEPIPEにはそんな寂しい土地への憧れがある。

以前「SNAKEPIPE MUSEUM #5 Stephen Shore」に書いていた文章であるが、まさに「STOP GIRL」の世界観と一致していることに気付く。
実は今までずっとSNAKEPIPEの原風景のように感じていた寂しい風景がどこから来ているのか疑問に思っていたけれど、なんとそれはザ・スターリンの影響だったんだね!(笑)

数日後その答案用紙が採点され、先生から手渡された時
「ああ、あなただったのね」
と顔をマジマジ見ながら言うではないか。
一体何を言ってるのか謎のまま席に着き、採点結果を確認してから用紙を裏向きで机に置くと…。
なんとSNAKEPIPEが書いた「世界なんて滅んでしまえば良い」ことに関する理由についての採点がされていたのである!
理由1と理由3は矛盾している、などと赤が入れてある。
ぎゃーっ!SNAKEPIPEのイタズラに付き合ってくれる先生がいたなんて!
そこでやっと「あなただったのね」の意味が解り、赤面してしまった。
自分が何に興味があり何を考えているのか、すっかりその先生にバレてしまったからね。(笑)
それでもそんなSNAKEPIPEを叱るわけではなく、一緒に楽しんでくれた先生に感謝したし、その先生のことは今でも忘れていない。
遊び心のある面白い先生に出会えることはなかなかない経験だからね!

自立し、引っ越しを繰り返しているうちに、コレクションしていたレコードは全て手放してしまった。
当然のようにザ・スターリンのレコードも。
ある時やっぱり聴きたくなって、CDを買った。
手にした時に「違う」と違和感を持った。
テクノだったらCDでも良いんだけど、パンクはレコードで聴くものという気がするんだよね。(笑)
レコードサイズ以上に大きな存在だったザ・スターリンが、なんだか小さくなってしまったようで少し悲しかった。
サイズの違和感や、レコード特有の、曲が始まる前のプチプチした音がないことはもう仕方ない。
音源として聴くことができるだけで良しとしよう。

ザ・スターリン解散後にも遠藤ミチロウは音楽活動を続けている。
ミチロウのHPには「遠藤ミチロウ還暦記念ライブDVD完成」なんて文章も載っていて、ついに60歳を超えていること、そして今でも現役でライブを行っていることも知る。
SNAKEPIPEは、ザ・スターリン以降のミチロウについては「実物観たよ!80年代ライブ特集」に書いたP.I.Lのライブ後に見かけただけで、ミチロウ本人のライブに参戦したこともない。
それでもやっぱり応援しているし、ずっと頑張ってもらいたいと思っている。
ザ・スターリンは 今でも、SNAKEPIPEの核となる存在だからね!