好き好きアーツ!#34 鳥飼否宇 part12 –桃源郷の惨劇&密林–

【ROCKHURRAH作。桃源郷の惨劇(上)と密林(下)のイメージ画像】

SNAKEPIPE WROTE:

鳥飼否宇先生の旧作を再読し、感想をまとめていくシリーズ第3弾!
「桃源郷の惨劇」と「密林」はどちらも2003年発表の「観察者シリーズ」である。
今までに何度か説明させて頂いているけれど、「観察者シリーズ」とは大学サークルの野生生物研究会に所属していた4人が、卒業して20年近く経っても連絡を取り合い、奇妙な事件に巻き込まれる話である。
ところが今回登場するのは「観察者シリーズ」での探偵として活躍している鳶山久志、通称トビさんだけ!
読み慣れている「観察者シリーズ」とは違った雰囲気だよね。
「桃源郷の惨劇」が「観察者シリーズ外伝」として位置づけられているのはそのせいかな?
それでは「桃源郷の惨劇」の感想をまとめていこう!

「桃源郷の惨劇」は鳥飼先生の作品の中で、かなり短い小説である。
文庫本でページ数が137ページ!
日本を飛び出して海外を舞台としているため、内容的にはスケールの大きな作品なんだけどね!

簡単にあらすじをかいてみよう。
テレビ局の制作会社が、イギリスの新聞に載った新種の鳥「ミカヅキキジ」の記事を発見したことから、未知の生物を追う企画を発案する。
未知の鳥が発見されたのはパミール高原近くの、昔ながらの生活を守っている人々が暮らすトクル村。
春になるとトクル村には一面花が咲き誇り、天国かと見間違うほどの美しさだという。
更に住人達の顔が日本人に似ていることも含めて、企画はすんなり通り、
テレビ番組として放映すべく、スタッフがその村に向かうのである。

そのトクル村を表現するのにパラジャーノフの名前が出ていたことに驚く。
つい先日のブログ「映画の殿 第16号」でタルコフスキーについて書いた時に、パラジャーノフのことも書いていたからね。
以前もブログで「東京グラン・ギニョール」について書いたのと同時期に、鳥飼先生の新作に「東京グラン・ギニョール」の創始者である飴屋法水の名前があってびっくりしたっけ。
こういうシンクロはとても楽しいよね!(笑)

「観察者シリーズ」の主メンバーであるトビさんは、今回の番組制作を請け負った制作会社の代表でありディレクターの肩書きを持つ男の知り合い、という役どころ。
野鳥に関する知識の豊富さから、同行することになったのである。

通常の「観察者シリーズ」では、ネコこと猫田夏海の主観が文章化されて話が進んでいくけれど、「桃源郷の惨劇」に猫田夏海は登場していない。
そのためクルーの一人が思ったことや、「○○はそう思った」のような状況説明している三人称の文章になっているんだよね。
以前からトビさんと面識があるのはディレクターだけで、他のクルーとは初対面なので、「なにこのボサッした人は?」程度の印象しか持たれていない。
文体のせいもあって、余計にトビさんらしさが見えてこないみたいね。
確かに「桃源郷の惨劇」のトビさんは、「中空」で登場して以来、すっかり知り合いの気分になっている人物とは別人のようである。
もちろん生物に関する知識は豊富だし、大抵の物事に動じない姿勢は相変わらずだけど。
今回はクルーに同行している脇役だし、登場するシーンも喋っている場面も少ないので仕方ないかな?
生物研究会のメンバー達と接している時とは違うトビさんは、クルーが感じたような「正体不明のボサッとした人」になっちゃうんだろうね。
「観察者シリーズ」ファンから見ると、少し物足りないけどね!

テレビクルーは、村人に対しては村の生活を紹介するための取材と偽り、本当の目的はミカヅキキジの撮影だったため、秘密裏に行動していた。
そこで惨劇が起こるのである。

それにしても!
ミカヅキキジがクルーの想像に反して、ものすごく地味で華やかさに欠ける種類だったというところで笑ってしまった。
未知のものに対して、きらびやかで美しい想像をしてしまうのは何故だろう。
実際、読み進めていたSNAKEPIPEも、手塚治虫の「火の鳥」や極彩色の孔雀のような鳥を想像してたもんね。(笑)
ROCKHURRAHはあえてTOPの画像で鳥を極彩色にしたらしい。
「こうあってほしい」という願望なのかな?(笑)

「桃源郷の惨劇」でもう一つ興味深かったのは、辺境の村では新しい血を求めているという箇所。
自分が考える常識とは明らかに違う物であっても、土地によって知恵や習慣があるからね。
この手の話を聞くと、つい「エル・トポ」の洞窟の中を思い出してしまうね。
濃すぎる血がもたらす結果が、あの状態だからね。

「桃源郷の惨劇」は「観察者シリーズ」の中では今のところ唯一の海外を舞台とした小説で、今まで知らなかったトビさんの一面を垣間見ることができるという点が特徴かな。
トビさんが小説を書くところなんて、本当に意外だからね!(笑)
トビさんの小説、面白かった!
あの小説の部分はどのようにして組み立てられるんだろう?
鳥飼先生のご苦労が偲ばれます!

続いては「密林」について感想をまとめてみよう。
こちらの舞台は沖縄の「やんばるの森」。
「やんばるの森」というのは、アメリカ海兵隊の基地である「北部訓練場」を含む森林地帯だという。
ROCKHURRAHの故郷である九州に上陸したのですら2007年であるSNAKEPIPEにとって沖縄は全く足を踏み入れたことのない場所で、地名やら場所についての知識も皆無なんだよね。
そのため「やんばるの森」というのも初めて目にした次第、米軍基地の具体的な場所についても知らなかった。
狭い日本、なんて言われていても実際に行ったことのない知らない場所がたくさんあるよね。

「密林」は昆虫採集を目的とした2人組、松崎と柳澤が「やんばるの森」で悪戦苦闘しているシーンから始まる。
必死に探しているのはオキナワマルバネクワガタ、通称オキマルの幼虫。
昆虫ブリーダーとして生計を立てるため、なるべくたくさんの幼虫を見つけようとしているのである。
うーん、これは危機!「幼虫の危機」だね!(笑)

危機に陥るのは幼虫だけじゃなくて採集していた2人組も、なんだよね。
前述したように「やんばるの森」には米軍基地があり、松崎と柳澤が米兵に遭遇してしまうのだ!
実は2人が幼虫採集していたのは米軍基地内の森だったんだよね。
不法侵入していた松崎と柳澤は米兵に追われ、逃げることに。
他にも「やんばるの森」には違う目的を持った人物がいた。
イノシシ猟の狩人、渡久地である。
渡久地の目的は一体何なのか?
米兵に追われた松崎と柳澤の運命はどうなっていくのか?!

最後のほうは駆け足で簡単なあらすじにしてみたんだけど、Amazonの商品説明のほうがもう少し突っ込んだ内容になってるみたいだね。(笑)
コピーして貼付けるのは安直過ぎるので、自分の言葉にするとこんな感じかなあ?
ただし、「宝」や「暗号」というキーワードを全く入れないのは、「密林」の魅力を伝え切れていないことになりそうだよね。
そうです、「宝」があるんですっ!
そして「宝」の場所を示す地図と共に「暗号」があるんですっ!
更に追加するならミステリーでお馴染みのダイイング・メッセージも出てくるんですからっ!(はぁはぁ)
更に更に渡久地の猟犬は名犬ノブヒデの息子との記述もあるんだよっ!
ノブヒデ!
「中空」では飼われていたイノシシの名前だったよね。
鳥飼先生にはノブヒデに関する思い出があるのかもしれないね?(笑)

「密林」は自然界を舞台にしたミステリー、「観察者シリーズ」の醍醐味を存分に発揮した小説なんだよね!
SNAKEPIPEが強烈に恐怖を感じたのは、その自然。
気象条件、生物、地形に加えて、迷ったら出られない迷路のような状況。
何度かブログには書いているけれど、かなり重症の方向音痴のため、手に汗握る気分で読み進めていたんだよね。
他人事とは思えない臨場感があったのは、鳥飼先生の文章力はもちろんだけど、方向音痴で道に迷ったことがあるからだと思う。(笑)
以前ROCKHURRAHと雪が積もった青木ヶ原樹海を歩いたことがあった。
あの時は全てが真っ白に覆われていて、見えるはずのロープが全く見えず、ものすごく不安になったことを思い出す。
遠くに駐車していたトラックが見えた時の安堵感。
ああ、人がいるところに出た、と緊張がほぐれったっけ。

「自然を守ろう」というスローガンは聞き慣れているけれど、「守る=人間が近寄らない」という意味ではないんだよね。
自然に関する正しい知識を得て、ルールを守ってこそ「自然を守ろう」になるはずなのに、その部分は割愛されてることが多い。
先日観た「キングスマン」には、「自然を守ろう」の極論が提出されていて、大きく頷いてしまったSNAKEPIPE。
映画の中では「悪」とされていたアイデアだけど、現実に選択肢として入っていても良いように思ったよ。
未見の方、意味不明な文章でごめんなさい。
DVDになったら是非観て、感想をお寄せください!(笑)

トビさんの登場はかなり後になってからなので、途中で「密林」が「観察者シリーズ」だったことを忘れてしまった。(うそ)
トビさんは相変わらず物事に動じることなく、アマミヤマシギの観察をしている。
「密林」で大笑いしてしまったのが「名もなき花」に関するトビさんの見解だね。
「名もなき花」は新種だ、という。
だからそんな言い回しはおかしい、というのである。
おっしゃる通り!(笑)

もう一つはトビさんの先端恐怖症を表す箇所。
「中空」で明らかになっていたナイフ類が大の苦手という特徴は、「密林」でも怒りの形で表現されていた。
トビさん、嫌いなものがあると気が立つんだね。(笑)
怒りにまかせてまくし立てるトビさんは、かなり迫力あるだろうね。

「暗号」も「ダイイング・メッセージ」もトビさんが解いてしまう。
途中でネコこと猫田夏海に電話をして、ヒントを調べてもらうシーンがあったね。
そのおかげで「宝」のありかも判明。
最後はめでたし、で終わりになるんだけど、ちょっと不満も残る。
運命と言ってしまえばそれまでだけど、かわいそうに感じてしまったからね。

2作品とも読んだのはかなり昔、調べてみたら2007年「4冊でもご本」に写真を載せてたね。(笑)
8年も前だとぼんやりとした記憶しか残っていなくて、読み進めていくうちに「そうだった」と思い出していたSNAKEPIPE。
次は「樹霊」の予定だけど、こちらもまた薄い記憶!
また感想をまとめたいと思っている。

SNAKEPIPE MUSEUM #34 Kim Cogan

【寂れた雰囲気と色使いが最高だね!「The Alexandria Theater」は2013年の作品】

SNAKEPIPE WROTE:

エンリケ・マルティの作品かな?」
ROCKHURRAHが指をさすのは、ダイニングテーブルを囲んだファミリーの肖像画。
母親と思われる人物の顔がブレて、頭部が存在しないように見える油絵だった。
ちょっとオカルトっぽい作風は大好きなエンリケ・マルティに似ているけれど、あの毒気が感じられない。
どれどれ、とディスプレイを覗き込み、他の作品を見ると全く別のアーティストだと判った。
写真そのものに見えるスーパーリアリズムよりは絵画寄りの手法を用いて、ガランとした風景を描いているところに共感を覚える。

このアーティストはKim Coganという1977年生まれの韓国人。
1999年にサンフランシスコの美大を卒業し、その後はコンスタントに個展やグループ展で作品を発表している。
2013年には「アメリカの新進気鋭アーティスト25人」に選ばれているというので、かなり注目されているみたいだね!

 

廃墟好き、インダストリアル好きにはたまらない1枚だよね。(笑)
SNAKEPIPEが好んで撮影していたのも、こんな感じのコンクリートや鉄筋だったなあ。(遠い目)
レインボーブリッジ建設途中で撮った写真に似ているのがあるよ。
Kim Coganは写真を元に絵を描いているようなので、何枚もある写真の中からこの1枚を選ぶ気持ちが良く解るんだよね。
上の作品「Entering a city」は2014年の作品。
タイトルから推測すると幹線道路を横から描いた作品で、ブレているけど車の影も見えるんだよね。
Kim Coganは風景の中に人物を描き込んでいることもあるんだけど、主役は風景なんじゃないかと思ってしまう。
遠い記憶を再現しているような、存在感の薄い人物が多いからね。

SNAKEPIPE MUSEUM #5 Stephen Shore」の中でNo Man’s Landについて説明をしているSNAKEPIPE。
人がいない、空っぽの荒涼とした景色に惹かれてしまうことを力説したものだった。
今まさにそんな風景に出会ったよ!
見よ!この素晴らしい空虚さを!(誰だ、一体)
鉄の錆び具合、構図、色使い!
「Bronx River Crossing」(2013年)というタイトルの作品である。
ブロンクスと聞くと、黒人、ヒップホップ、麻薬、犯罪、ギャングといった危ない地域と思ってしまう。
今は随分変わってきたのかもしれないけど、SNAKEPIPEがラップ、ヒップホップを聴いてた頃はそんな感じだったからね。(遠い目again)
実際のところはどんな場所なのかはっきり確認しないまま書いてるけど、なんとも哀愁漂う、寂寥感いっぱいの風景に魅了されるよね。
撮影しながら歩いた西新小岩と平井を結ぶ平井大橋の下とは全然違う風情だよ。(笑)

最近よく映画の題材になる感染モノで、ほとんどの人が死滅してしまって、残っているのは本当に僅か。
果たして人類は生き残れるのか?!
なんてコピーが入るワンシーンのような1枚だよね。(笑)
白っぽい建物が並ぶと余計に空虚の度合いが増す感じ。
「Stockton Tunnel」は2006年の作品だから、今まで紹介してきた中でも古いほうになるんだね。
奥のトンネルはもちろん気になるんだけど、その前を横切る斜めの光を描きこんだところが写真的!
SNAKEPIPEだったら、もう少し近寄って斜めの光を大きくした横位置で撮影するかも。
きっとKim Coganは、車線の黄色を入れたかったんだろうね。

「Stockton Tunnel」を観ていると、Kim Coganの作風はフランスの写真家アッジェに近い感じがしてくるね。
芸術家の資料として売るための写真は、人がいないほうが都合が良かったために朝撮られていたらしい。
ほとんど人が写っていない風景写真なのは、そのせいだったんだね。
その無人でガランとした雰囲気が似ているのかな。
恐らくKim Coganも写真が好きで、もしかしたら自分で撮影してるのかもしれないね。
Kim Coganに関する情報が少なくて詳細は不明だけど、そんな気がするよ。

アッジェに似ているということは、画家のユトリロにも似てることになるよね。
ユトリロはアッジェの絵葉書を元に絵を描いていたというので、当たり前だけど!
Kim Coganが描いているのはニューヨークで、アッジェやユトリロはパリという違いはあるけれど、求めているテイストは近いんじゃないかな?
華やかな印象の都市だからこそ、音のない静寂が、より効果的に響いてくるんだろうな。

Kim Coganの作品を観ていたら、SNAKEPIPEも自分で撮影した写真を元に絵を描いてみたくなった。
チャレンジしてみようかな。(笑)

がっちりBUYましょう!vol.12 MAGFORCE編

【今回のスリングバッグの魅力を熱く語る外人の長編レビュー】

ROCKHURRAH WROTE:

9月前半は東京地方でも雨が降り続き、ジメジメの湿度で毎日イヤな日が続いたよ。梅雨時にそこまで大したまとまった雨もなかったように感じるから、ここまで降り続いたのも久々の体験。
個人的に台風直撃の被害を受けるようなところに住んでなかったから、自然の猛威については人並み以下の体験しかないけど、この雨と湿気には参ってしまったよ。

長らく愛用していた5.11のRUSH MOAB10というスリングバッグ(いわゆるワンショルダーのリュック)が連日の雨ですっかり濡れてしまい、帰宅後のメンテナンスを怠ったためにカビ臭いような、ぞうきん臭いようないやな臭いに成り果ててしまった。週末に洗って干して、臭いが取れたと思ってたのにまた雨に濡れるとぞうきん臭い。
自分で臭うくらいだから電車やバスで周りにいた人間にはもっと臭かっただろうと容易に想像はつく。

こりゃいかんと思って、代替でアークテリクスのQuiverというスリングバッグに荷物を入れてしのいでた。
5.11よりは雨には強いけど、大雑把にしか荷物が入らないので、色んなものを色んなポケットに入れたがるROCKHURRAHにとってはちょっと使い勝手が良くないバッグになる。とても軽いし見た目は大好きなんだけどね。
リュックは区別がつかないくらいに多くの種類を出しているアークテリクスだが、この手のスリングバッグはクイバーの一種類しか出してないようなので、それが残念。せめて大きさのヴァリエーションが欲しかったよ。

ちなみにこれらのバッグについてはこのシリーズ記事「がっちりBUYましょう!」のvol.4vol.6で書いてるから参照してみてね。
その記事でも書いたけどどうせリンクを辿ってまで読んでくれてる人はいないだろうからもう一度軽くおさらいしてみよう。

5.11は警察やFBI、特殊部隊などに広く親しまれてるアメリカのタクティカル・アパレル&装備品メーカーだ。開発している商品は多岐にわたっていて、上から下までひと通りこのメーカーで揃える事も可能なくらい。
リュックやバッグ類も定評あり、SNAKEPIPEも女性としてはかなり珍しい部類だが、ここのバッグを数種類愛用しているほど機能性が高い。

ROCKHURRAHは両肩からかけるリュックはどうしても馴染めず、ワンショルダー型のスリングバッグばかりを愛用してきた。これのいいところはすぐに後ろから前に回して中のものが素早く取り出せるという点に尽きる。
RUSH MOABはそういう意味では好みにピッタリのバッグだった。シンプルな見た目とは裏腹に「これでもか」と言わんばかりにどこのポケット開けても中にビッチリと小分けのポケットがついており、どんな小物でも適所に収納出来てしまう作りは感動してしまう。欠点は非常に少ない傑作バッグだと思うが、見た目の割にはメインの収納スペースがやや小さく、そこまで多量の荷物は入らないのが難点。
通常の男のバッグとしては充分な収納力なんだろうけど、片側だけかけるバッグとしてはこの大きさが限度なのかもね。
それと今回の記事の冒頭にも関係してくるが、防水的な機能はほとんどなく、底に空気穴みたいなのが開いていて、もしも濡れたらそこから排水せよ、というくらいの男気溢れる造りになっている。ぞうきん臭くなるのも当たり前。ん?そんなことない?単に干し方が悪かっただけか。
意外な事にタクティカル、ミリタリー系のバッグで防水性を謳ったものは少ないので、これは仕方ない。

軽くおさらい、と言った割には延々と書いてしまったが、 要するに5.11のRUSH MOABの代わりに別のバッグを買ったのが今回の主題。相変わらず長い前フリで自分でも呆れてしまうよ。

スリングバッグは本格的なリュックに比べると需要が少ないのか、そこまで出しているメーカーが多くないのが現状だ。出来ればミリタリーかアウトドア系で探したいと思って今回選んだのがマグフォースというメーカーの出しているこれ、Archerというもの(写真左)。

右がRUSH MOABだけど、並べるとほとんど一緒くらいの大きさに見える。特に興味ない人には同じものの色違いに見えてしまうだろうね。
あえて違う色にしてみたが、ダークな色の服装が多いROCKHURRAHでもそこまで違和感はない感じだった。
元々Max Peditionというメーカーでバッグやポーチなどの装備品を出していたらしいが、日本やアジアではなぜかマグフォースという別名になっているようだ。ミリタリーのオタクではないから詳しくは知らないが、とにかく質実剛健の強度を誇る値段が安めの装備品として、ミリタリーショップでも比較的容易に手に入る。
スリングバッグもMonsoon、HumbergとこのArcherという形の違う三種類があるので、よそのメーカーよりも選択肢は多い。
ROCKHURRAHは観たことないがドラマ「24」や映画「トランスフォーマー」などでMax Peditionのバッグが使われていたそうで、そういう方面のファンが買い求めたりするのかな?
とにかく最新のバッグというわけじゃなくて、むしろ「何をいまさら」というくらいの古い型なので今どき記事にするのもあれなんだが、ちょうど手頃な大きさのバッグがなかったのでこれに決めたよ。

実は数年前、5.11のRUSH MOABを買った時もマグフォースは選択肢にあって、どっちにしようか悩んだ末に「人とかぶる可能性が低い」5.11に決めたという経緯がある。今はファントム(横田や渋谷、秋葉原あたりに展開する老舗ミリタリー・ショップ)で普通に売ってるRUSH MOABだが、買った頃はなかなか売ってる店がなく、米国から取り寄せて二ヶ月近く入荷待ちしていたという苦労があったなあ。

マグフォースは比較的どこでも取り扱っていたが、ファントムで去年くらいに実際にかけてみたら思ったより使いやすそうで、ずっと気になっていたのだ。ネットショップの画像で見た限りは「固そう、重そう」という分厚いバッグにしか見えなかったけど、こういうのはやっぱり実店舗で試着するに限るね。このどちらも1000デニールを超える分厚いナイロンで出来ていて、空の状態でも1kgを超えるというシロモノ。とにかく頑強さが売りなわけだけど、例えば軽くて薄くて強い新素材が開発されて、ミリタリーの世界でも進んだらこの手のヘビーデューティなバッグは過去の遺物となってしまうかもね。
使い始めての感想は同じくらいの形の5.11よりは重さを感じない造りになっていて、個人的にはこちらの方が優秀だと感じた。たぶんストラップ部分が広いから肩への負担が軽減されているのと安定性の違いだろうね。

 RUSH MOABとの大きな違いはないけど、くるりと回すとこのように真横になる。内容物は横から取り出すことを前提としているのでポケット類も全て横向きについているのが5.11と違うところ。何か前面にコード類やストラップなどがごちゃごちゃしていて、案外使いづらい印象があるけど、日常の用途ではそもそもあまり使う予定のない機能なのでこの辺は街中ではただの飾りみたいなものだ。本気で戦場やアウトドアで使う人には至れり尽くせりだと思うよ。開閉のしやすさ、中身を素早く取り出すという点については5.11の方がROCKHURRAHの好みだった。あの隠しポケットは優秀だったからね。
代わりにこちらは横にボトルポーチのようなものが付いていて、ここにナルゲンボトルや水筒、ペットボトルなどが収納出来る。アウトドアのリュックでは定番の機能だけどこれは便利。ROCKHURRAHはここに折りたたみ傘を入れている。

中はこのようにしつこいくらいのポケットで区切られていて、それでもメインのコンパートメントは結構マチがあって荷物が入れやすい。同じくらいの大きさだけど5.11よりは荷物入れた時でもパンパンに膨れない。これが良かった点だ。しかしフタが閉められる小さなポケットは5.11の方が多くて、小分け整理マニアの人だったらこちらより5.11の方がオススメと言える。バッグをかけるポジションが違うと荷物が90度傾くわけだから、ものによってはポケットから出てきてしまう。
ミリタリー用途ではなく普段使いだから、細かいものはやっぱりフタ付きの方がいいかな。

Molleと呼ばれる軍用ではおなじみのシステム。前面などを見て貰えればわかるだろうが等間隔で縫い付けてあるベルトに取り付ける、あらゆる用途のポーチ類が存在していて、使う人が好みのセッティングでバッグの横などにデコレーション(?)してゆく。PALSなどと略される場合もあるが(Pouch Attachment Ladder System)お好みでこれらを取り付けろ、という事でこのベルトも至る所にあしらわれてる。
ROCKHURRAHはあまりジャラジャラつけるのが好きじゃないけど、この辺のカスタマイズしやすさはさすが軍用系の合理的なもので、ただのファッション・ブランドが作ったバッグとはここが大きく違う点だ。
最近はメンズ物とかでもミリタリーの影響で実用性と機能美を備えたアイテムが数多く出てきてるし、そこまでの違いもなくなっては来ているが、本格的で本物なのに格好いいというものにやっぱりROCKHURRAHは惹かれるよ。

実にどうでもいいけどかわいらしいギミックとして、このアーチャーのバックル部分に一箇所だけ、緊急時に吹くホイッスルが隠しアイテムとして搭載されていて、なかなかファニーな魅力。この武骨なバッグをかけて似合う女性はめったにいないだろうけど、暴漢に襲われた時などに役立つに違いないよ。

結局、5.11のRUSH MOABとマグフォースのアーチャーは細かい違いはあるものの大差ないという当たり前の感想になってしまったが、価格面でも大体同じこの二つのバッグ、永遠のライバルでしのぎを削り合って欲しいものだ。
よくもまあこんなに前回と大差ない記事を書けるよな、と自分で読み返してみてもトホホだが、こんなんでいいのか?
使い込んで柔らかさが出ればいい味出そうだし、5.11と併用して愛用してゆこう。

ROCKHURRAH紋章学 酒造メーカー・ロゴ編

【訳すと酔いどれ子守唄!(笑)飲み過ぎには注意だね!】

SNAKEPIPE WROTE:

幼少の頃から慣れ親しんできた、なんて書き方をすると小原庄助さんみたいな呑兵衛と勘違いされてしまうかな。(例えが古い!)
確かにSNAKEPIPEとアルコールの付き合いはとても長いんだけどね。
恐らく小学校の低学年の頃には毎週末毎に少しずつ飲んでいた。
当然だけれど、両親から勧められて飲んでいたのである。
あれ?確かこの話は前にもブログに書いたことがあるはずだなあ。
どの記事に書いたのかを忘れているので、ま、いいか。(笑)
子供の頃は甘いワインやチェリー酒などで、年齢を重ねていくうちに色んな種類のアルコールが飲めるようになった。
酒がないと生きていけないというほどの酒豪でもないし、銘柄にこだわりを持つようなタイプでもない。
仕事が終わってビールでぷはーっ!
美味しい料理に口当たりの良いワインで美味しさがアップする、という程度である。

今回の「ROCKHURRAH紋章学」は海外のアルコール醸造メーカーのロゴ!
当然だけれど、そのお酒を飲んだことはなくて、ロゴを見てお洒落とかカッコ良いと思ったものをSNAKEPIPEの独断で紹介していく、いつものパターンね。(笑)
では早速いってみよう!


えっ?まさかあのYAZOO
80年代に「Don’t Go」や「Situation」などのヒットを飛ばした男女のペア!
当ブログでは「ビザール・ポストカード選手権!7回戦」の中でYAZOOのアリソン・モエットについて書いていたり、良く聴いているインターネット・ラジオでもYAZOOがかかるので、あんまり昔っぽい雰囲気はないんだけどね。
えっ、このロゴとは全く関係ない?(笑)
それでもやっぱり80年代ニューウェーブを経験した人にとっては、目に留まること間違いないよ!
YAZOOのフォント、赤と白というシンプルな色使い。
そして旭日旗のような横尾忠則っぽいロゴ!
そのせいなのかちょっと和風にも見えてしまうよね。
このセンスはなかなか良いよ!(笑)

Yazoo Brewing Companyはテネシー州ナッシュビルにあるビール醸造メーカー。
2003年創業というから、まだ12年ほどの若い会社になるんだね。
設立者の顔写真が載ってるけど、中年にもなっていないように見えるよ。
そんな若い感性だからなのか、パッケージにもこだわってるみたいだね。
Yazoo Brewing Companyは季節毎に味の違うビールを販売しているみたいなんだけど、油絵で描かれたようなお洒落なパッケージも目を引くんだよね!
例えば左の黒いワンちゃんが走っているのは春のビール。
夏はボートに乗っている恋人同士、などのイメージがラベルとビールの箱に描かれているんだよね。
ビールの味もさることながら、こうしたイメージ戦略も必要だからね。
オンラインショップではロゴをデザインしたツナギやグラス類などのオリジナル・グッズの販売もしていて、ファンは大喜びしちゃうよね。(笑)


続いてはライオンVSシロクマの戦いをロゴにしているFirestone Walker Brewing Companyを紹介してみよう。
この会社名はどうやらfirestoneさんとwalkerさんという2人組が始めたから付けられたみたいだね。
1996年にカリフォルニア州でスタート、と書いてあったから約20年。
こちらも若い会社だけど、世界ビール・カップ(というのか?)のミドル級(で良いのか?)で4回優勝しているらしいので、味のほうも文句なしみたいだよ!(いい加減な文章だ)

firestoneさんがクマでwalkerさんがライオン、というイメージで作られたロゴのようだから最初に戦いと書いたけれど、本当はじゃれ合っている様子なのかな?(笑)
日本だとキリンビールが麒麟をモチーフにしているけれど、似たイメージで「力強さ」をアピールしたいのかな?
ん?麒麟は力強くない?(笑)

このロゴデザイン、非常に秀逸!
名前がキャッスル(城)のアルコール醸造メーカーだから、真ん中にボトルを浮かび上がらせて。
色合いが表現主義的で、シンプルなのに印象的!
これはCastle Brands Inc. というラムやウォッカを製造・販売しているアメリカの会社のよう。
何年創業などの詳しいことはHPでは確認できなかった。
そして販売しているボトルに上のロゴは使用されていないみたいで、少し残念ね。

ガーゴイルをロゴデザインにしているのはStone Brewing Co.というカリフォルニア州にあるビール醸造メーカー。
一番最初に紹介したYAZOO同様、最近はロゴやラベルにこだわりを持っているメーカーが多いんだよね。

Stone Brewing Co.だったら、今回のロゴデザインだけじゃなくて、ボトルパッケージ特集のほうで紹介しても良かったのかもしれない。
「Double Bastard Ale」という名前の左の商品は「Bastard」シリーズの1商品で、他にも3種類「Lucky Bastard」などがあるんだよね。
日本では何年か前に「波乗りジョニー」 なんてネーミングの豆腐が販売されて注目されたよね。
その感覚に近い雰囲気のビールだな、と感じた。
これも当然飲んでないから味に関しては何も言えないんだけど、こんなボトルが置いてあったらお洒落な飲み屋さんと思われること間違いなし!
もしかしたらもう既に置いている店もあるかもしれないね。
お洒落な飲み屋に行かないから分からないよね。(笑)
ラベルは基本的にアメコミ風のガーゴイルだけど、色んな種類を揃えてみたら楽しそうだよね!

最後はこちら!
Coney Island Brewing Companyのロゴは色合いがとっても50’Sだよね!
この淡いベージュとペパーミントグリーンを見ると、ピンクドラゴンを思い出してしまう。(笑)
今のピンクドラゴンは昔と違ってしまったようなので、80年代のピンクドラゴンということで4649!

Coney Island Brewing Companyもイメージ戦略が上手ね。
ラベルが上のようなイラストを使用していてとてもお洒落!
HPの作り方もなかなか、だよ。
このビールも飲み屋さんにお勧めしたくなるよね。
そしてSNAKEPIPEはこちらも欲しい。(笑)
こんなTシャツとかパッチがあったら嬉しいな、と思うデザイン。
日本のメーカーにはできない芸当だなあ。(笑)

何故か今回はビールが多くなっちゃったね。
またロゴデザインは検索していきたいと思う。