ふたりのイエスタデイ chapter12 / ゲルニカ


【聴き込んだのに所持していなかった一枚】

SNAKEPIPE WROTE:

昨日2017年7月1日は、SNAKEPIPEにとって貴重な日になった。
2016年より情報が入ってきていた「ツイン・ピークス」の25年後を描いた「Twin Peaks: The Return」!
敬愛する映画監督デヴィッド・リンチが監督し、既にアメリカでは放映が開始されている。
日本での放映は、前回(といっても25年前だけど)と同じWOWOWで放映されることも知っていた。
7月からの放映に備え、25年前のシリーズを観直していたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
好き好きアーツ!#05 ツインピークス」で記事にしているのが2008年なので、直近で鑑賞したのが約9年前ということなるね。
今回再(何度めだ?)鑑賞して、改めてツイン・ピークスの魅力にどっぷり浸かっているところである。

思い返せばデヴィッド・リンチが監督した最後の映画が2007年の「インランド・エンパイア」。
リンチアンとして「次の映画はいつ?」と待ち続けて10年が経過したことになるね。
ところが先日リンチは映画監督をやめると発表しちゃったんだよね。
理由は今の環境では自分の好きな映画を撮ることができないから、だという。
つまりは興行収入重視の、エンターテインメント性ばかりを追求するような映画じゃないとスポンサーがつかない現在の映画界に嫌気がさしたんだと思う。
実際、リンチが本当に撮りたい映画は万人受けしないだろうから興行収入は期待できないよね。

25年後のツイン・ピークスはテレビ・ドラマなので、最初からスポンサーが付いているから問題なし!
放映前から世界的に注目されていたところからみても、SNAKEPIPEを含めて当時夢中になった人がどれだけ多かったのかよく分かるよね。

ROCKHURRAH RECORDSも、25年後のツイン・ピークス観たさにWOWOWに加入することにする。
7月22日からスタートだと言われていたけれど、7月1日に第1章、7月2日(まさに今日!)第4章までを先行放映するというのである!

そしてついに第1章が放映された!
ツイン・ピークスは25年ぶりだけれど、リンチが監督した映像ということになると10年ぶり!
「Directed By DAVID LYNCH」
の画面を観ることができて、本当に感激したよ!
ところが…。
WOWOWでの先行放映は、なんと吹き替え版のみ(二ヶ国語版)!
ROCKHURRAHも友人Mも同じで、映画は字幕版しか観ないんだよね。
それでも映像は観たいので、無理矢理言語を英語にして、字幕を日本語にして鑑賞。
ところがこの字幕とは、聴覚障害者向け字幕だったので、普段観ている字幕とはまるで別物だったんだよね。
せめて「吹き替え版」か「字幕版」を選べるようにして欲しいよ!
お願いしますよ、WOWOWさん!

第1章だけでは内容については何も言えないけれど、映像は「まさにリンチ」だったね。
7月下旬からの字幕版が楽しみだ!(笑)

さて、お次は25年前に熱狂したツイン・ピークスよりも更に昔の思い出話を綴ってみようか。

好きな音楽は?と聞かれたなら「ROCK」と答える。
本当はパンクだ、サイコビリーだ、ガレージだ、などと細かいジャンルはあるけれど、そこまで言って分かる人のほうが少ないからね。
洋楽というだけで最初から話が合わないことが多いし。(笑)
そんなSNAKEPIPEだけれど、学生時代には夢中になった日本のバンドもいたんだよね。

それはニューウェーブの時代!
YMOに始まり、ヒカシューやプラスチックス、ジューシィ・フルーツなど大好きなバンドがたくさんいたっけ。
書いてるだけでも懐かしい。(笑)
ふたりのイエスタデイ chapter02 / The Stalin」と同じ頃になるだろうか。
当時の友人達は皆、新しい音楽を吸収することに貪欲だった。
その友人の中の一人が持っていたのが「ゲルニカ」だった。
「ゲルニカ」といってもピカソの「ゲルニカ」じゃないからね。(笑)

当時は文化屋雑貨店に足繁く通い、丸尾末広の漫画を読み、東京グランギニョルを鑑賞するのが好きだったSNAKEPIPEにとって、魅力的なキーワードは「チープシック」で「レトロ」「アングラ」だったんだよね。
プラスして「エログロナンセンス」もあるんだけど、それはまた別の機会に。(笑)

1927年に制作されたフリッツ・ラングの映画「メトロポリス」 (原題:Metropolis)がジョルジオ・モロダーによって再編集版が公開されたことなども、1980年代の懐古趣味に拍車をかけた要因かもしれない。
今まで知らなかった古い文化を知る、まさに温故知新だよね!
そういえば良くサイレント映画を観に小劇場に出かけていたのも、この時期だったなあ。(通い目)
そういった環境の中、興味はすっかり過去に向かって前進していた(?)SNAKEPIPEのハートを射抜いたのが「ゲルニカ」だった。

「ゲルニカ」は1981年に結成されたバンドで、1982年にアルバムを発売している。
YMOの細野晴臣プロデュースによるデビュー・アルバムのタイトルは「改造への躍動」。
これを友人がカセットテープに録音してくれたのである。
このアルバムの中での時代設定は戦後ということになっている。
第二次世界大戦後、ということなら1945年直後の日本をイメージした世界観なんだろうね。
LP持っていれば、誰が作詞やってたとか詩の内容を知ることができたはずだけど、そういった情報は一切なし。
ボーカルの戸川純と作曲の上野耕路がレコードジャケットにも出ているので、この2人だけがメンバーかと思いきやアートワークと作詞で太田螢一も参加しているんだよね。
ROCKHURRAHが書いた「時に忘れられた人々【24】小栗虫太郎 第2篇」に太田螢一の「人外大魔境」があったね。
ヒカシューの巻上公一がボーカルの曲だけど、ほとんどゲルニカだね。(笑)

ゲルニカの懐古趣味は曲調やメンバーのファッションだけではなかった。
曲のタイトルや詩まで旧仮名遣いを使用し、徹底していたところも魅力だったね。
そのため「改造への躍動」は「くわひざふへのやくだふ」になるんだよね。
この旧仮名遣いも友人同士で真似たこともあったなあ。

太田螢一の作詞センスも見事だった。
本当に戦後の日本を見ていたかのような風景描写、その時代の最先端を表現するキーワードがちりばめられ、詩の情景が視覚化されて頭に浮かぶ。
文学的な要素を含んだ歌詞はSNAKEPIPEを虜にしたよ。(笑)
上野耕路の作曲も斬新だった。
渡辺はま子(蘇州夜曲)・ミーツ・テクノ、というミクスチャーだからね!
なんとも摩訶不思議なメロディを奏でていたよ。
戸川純の演劇めいたボーカルが、ドラマチックな仕上げをしている。
途中でオペラっぽくなったり、泣きそうな声になったりするんだよね。
歌でも演じているとは、すごいよね!

「改造への躍動」はカセットテープで擦り切れる程聴き込んだ。
ものすごく気に入ったんだよね。
だったら買えばいいのに。(笑)

LPも持っていないくらいなので、当然のようにライブに行ったこともなかった。
今回「ゲルニカ」を特集するために調べて、初めて映像を観たよ。
戸川純、若い!(笑)
上はYMOの高橋幸宏と細野晴臣が司会でゲルニカを紹介しているレアな映像。
エリートの上野耕路は挙動不審で、戸川純はセリフを何度も噛んでるね。
肝心のゲルニカの演奏が始まるまでの時間が長いかったので、映像を少し短縮したバージョンで載せている。
高橋幸宏と細野晴臣が登場するシーンが観たい方は最初に戻してみてね!

戦後の日本をテーマに選び、きちんとコンセプトを決めて編成された「ゲルニカ」は、その後2枚のアルバムを出していたようだ。
SNAKEPIPEは最初の一枚しか聴いていなくて、その後は戸川純のソロを聴いていた。
ソロになって初めてのアルバム「玉姫様」 もよく聴いたなあ。
「諦念プシガンガ」が好きで、詩に感銘を受けたことを覚えている。
作詞を担当したのは戸川純。
演劇、音楽、文学というジャンルをまたがった活動をしていることが分かる内容だったからね!
戸川純という存在もSNAKEPIPEに影響を与えた一人であることは間違いないだろうな。

今回はツイン・ピークスの話と学生時代の話を書いていて、気分が若返ってしまった。(笑)
特にツイン・ピークスは2017年最大の楽しみだからね!
下旬からの放映が待ち遠しい。

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