大人社会科見学—グレートジャーニー 人類の旅—

【グレートジャーニー展のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

いつも見ている「めざましテレビ」の次の番組である「とくダネ!」になっても消さずに、テレビをつけたままにしていた。
その時特集されていたのが「世界最古のミイラ」。
その途端に目が釘付け!
なんと「世界最古」とされるミイラはチリのチンチョロ族によるものだ、という。
エジプトが最古じゃなかったの?
更にエジプトのミイラとは違い、身分の高低に関係なくミイラが作られ、家族単位で並べられているらしい。
これはすぐにミイラ好きの友人Mに知らせなくては!
「あ、それはグレートジャーニーだよ」
とあっけなく答えられてしまう。
「とくダネ!」の特集は、上野にある国立科学博物館で現在開催されている「グレートジャーニー 人類の旅」の宣伝だったことを知るのである。
グレートジャーニー」とは、フジテレビで放映されていたドキュメンタリー番組のことで、友人Mはその全てを見ていたと言う。
「すっごい面白いから!観に行こうよ!」
是非一緒に行きたいと言うROCKHURRAHも加わり、先日の「フランシス・ベーコン展」に続き、怪しい3人組は上野に向かったのである。

上野というのは、平日でも土日・祝日と変わらない人の多さなんだね。
「グレートジャーニー」のような、ちょっと学習チックな題材には特に子供が多いだろうという予測から、春休みが終わった平日を選んで出かけたのにも関わらず、平日には平日特有の群れがあった。
女性や高齢者の団体である。
JR上野駅公園口から、信号が変わる度に大勢の人が上野公園を目指して歩いている様子にビックリ。

上野公園内には東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、東京芸術大学美術館、恩賜上野動物園、東京都美術館、東京文化会館、下町風俗資料館、旧東京音楽学校奏楽堂、日本芸術院、日本学士院、上野の森美術館と、全く知らなかった館も含め、12もの施設があるんだね。
それに加え、不忍池や上野公園を散策するような人もいるだろうから、様々な目的を持った人達が行き来する場所ということになるよね。
前回、国立西洋美術館に来たのは2011年12月のこと。
あの時はウィリアム・ブレイクの版画展だったね。
今回の国立科学博物館は、一体何年ぶりのことになるんだろう?
恐らく子供の事に来たきりなのではないだろうか。

簡単に「グレートジャーニー」の概要だけ書いておこうかな。
探検家・人類学者・外科医である関野吉晴氏が挑んだ、通算16年、人類拡散の足跡を辿る旅の記録とのこと。
前述したように、SNAKEPIPEは「グレートジャーニー」のドキュメンタリーをテレビで見た覚えがない。
そのため今回のブログでは、「グレートジャーニー 人類の旅」に関する感想だけをまとめることになる。
もしかしたら友人Mのように、ドキュメンタリーを全て見ていたとしたら、また違う感想を持ったかもしれないけれど仕方ないね。
展覧会の構成通りに書き進めていこうと思う。

会場に進むと、恐れていた子供の姿がほとんどいないことに安堵する。
「グレートジャーニー展」が開催されてから、約1ヶ月が経過しているせいもあって会場内はそこまでの混雑ではなかった。
全体的に年齢層の高いお客さんが多い。
えっ、怪しい3人組もその中に含まれてるって?(笑)

プロローグ 遙かなる地に生まれて

アフリカ、タンザニア・ラエトリ遺跡にある、人類最古の足跡のレプリカが展示されていた。
この足跡こそ人類すべての始まりであり、ここから人類が地球上に拡散した、という。
これは360万年前のアファール猿人の足跡らしい。
父親、母親、子供という家族の物ではないかと推測し、家族で連れ立って歩いた最古の足跡化石を「グレートジャーニー」の象徴として位置づけている。
アフリカから住むのに過酷な地域に至るまで、人類はどのようにして生きてきたのかを探るのが今回の展覧会の主旨である、とのこと。
確かに足跡は二足歩行で歩いているのが解るし、足の大きさの違いも歴然としている。
人類は元々アフリカ人だった、というのは前に聞いたことがあるけれど、実際に証拠を見せられてる感じだね。(笑)

旅の始まり グレートジャーニーのスタート

熱帯、高地、極北、乾燥という4つの地帯に暮らす人々の紹介が始まる。

熱帯雨林 アマゾン 自然と共に暮らす民

熱帯雨林のジャングルの中で暮らす、アマゾンのマチゲンガ族。
自然を巧みに利用しながら調和を保ち、破壊することなく生きてきた先祖代々伝承の「密林で生き抜く知恵」について教えてくれる。

「これだけあれば生きられるセット」が展示されていた。
槍や火起こし用の棒など、アマゾンに住む人達にはそれだけで充分獲物を確保したり、調理して生活できるそうだ。
多く持っている人は、持っていない人に分け与えるのが当たり前という話も書いてあり、 「今の日本では考えられない習慣だな」と思う。
下着のトランクスを3枚持っていた関野氏は、残り2枚を村人に分け与え、代わりに槍をもらったという。
丁寧に「関野さんのパンツ」まで展示されていて大笑いする。(笑)

マチゲンガ族の住まいや食事についての展示があり、 「セキノ不動産」としてパネル展示されていたのが面白い。
築年数や間取り、部屋タイプなど、実際の不動産情報のように書いてあった。
食事については、レシピとして材料と作り方を紹介していた。
マチゲンガ族の場合はウーリーモンキーのレシピだった。
ウーリーモンキーは、とてもカワイイ動物だったので、食べることは考えにくい。
住む場所や習慣で何もかもが変わってくるんだね。

習慣が違う、ということを明確に示してくれたのが、今回の展覧会の目玉の一つである「干し首」の展示である。
(写真はInternet Museumより転用)
これは元々国立科学博物館に所蔵されていた物で、今回10年ぶりで公開されることになったという。
これが本物の人間の頭部なの?
だってその大きさ、なんと「こぶし大」しかないんだもん!
「干し首」の作り方(?)について、映像での解説があり、かなり加工して作り上げていたことが解る。
こんなに貴重な「干し首」を実際に鑑賞できるとは!
「干し首のレプリカ、ミュージアムショップで売ってるかな?」
ROCKHURRAHが真剣な表情で尋ねてきたよ。
売ってたら買う気なんだろうか?(笑)

高地 アンデス インカの伝統を残す

6,000m以上の山が連なる大山脈の高地に暮らすケロ村チュワチュワ集落の人々。
標高差3000mを賢く生活に利用し、標高4200mでアルパカ、リャマなどの家畜の放牧、標高の低いところでじゃがいも、さらに低いところでとうもろこしを栽培するという。

アンデスの標高が高いため、とても寒いために織物が発達したのかな。
飼育している動物の毛を刈り取り、織物にしていた工程が興味深い。
染色の技術も素晴らしく、発色の見事さに目を奪われる。
その昔よく通っていたのが、渋谷のチチカカ
この手の民族調モチーフは大好きなんだよね。(笑)
馴染みのあるチチカカ系の織物の作り方を教えて貰えるなんて嬉しいね。
染料はほとんどが天然の物を使用しているんだけど、時折「発酵した子供の尿」って書いてあるのが謎だった。
大人じゃダメなのかしら?(笑)

じゃがいもやトウモロコシの栽培に関しては、何種類も同時に植えて、万が一特定の種類がダメになっても、他で凌ぐことができるように工夫していたという。
知恵があったんだね。
こういうことがまさしく「生き抜いていくための知恵」ってことになるんだろうなあ。

極北 アラスカ シベリア マイナス40℃の世界に生きる

マイナス40℃が続く極北の地では生きるためにクジラ、セイウチ、アザラシ、ホッキョクグマなどの肉、皮、骨の全てを無駄にせず暮らしに役立てている。

一番初めに目に飛び込んできたのが、ホッキョクグマの剥製である。
他にもアザラシ、セイウチ、トナカイの剥製があり、その大きさにびっくりする。
こんなに大きな動物を捕獲できるとは!
セイウチ猟の様子が映像として流されていたけれど、銛で一撃だったんだよね。
そしてそれから解体作業。
最初の肉片を海の神様に捧げるシーンが印象的だった。
この映像が強烈だったせいか、この映像で作られていた保存食コパルヒンを、何故だか「とくダネ!」の小倉智昭に切り分けてもらって、食べる夢まで見てしまった!(笑)
小倉さんは「うまいよ、これ!」って言ってたけど、SNAKEPIPEはモグモグしたまま飲み込めないの。
食べたことない食物なのに、想像だけでも「ダメ!」って思ったんだろうね。
でもなんで小倉智昭だったんだろ?(笑)

他にこのブースで気になったのは、トナカイなどの毛皮を使って作った防寒着。
極寒の土地でも暖かく過ごすためには、やっぱりそこで同じく生活をしている動物の毛皮なんだね。
トナカイの毛皮は本当に暖かそうだった。
もう一つ驚いたのが、魚の皮も使って洋服作りをしていたこと。
上の写真の黄色っぽい服が、そのサケの皮を使用したタイプなんだけど、キレイな仕上がりだったよ!
防水効果に優れているらしい。
何年後かにアウトドアブランドが出したりしてね?(笑)

乾燥地帯 アタカマ、ゴビ、ヌビア、ダナキル 砂漠で生き抜く知恵

ほとんど雨が降らない寒暖差も激しいこの環境の中でも、人々はラクダを使い、砂嵐に耐え、水を確保し生きてきた。

ここでの目玉はなんといっても、アタカマ砂漠で発見された、チンチョロ族の約5000年前の子供のミイラだろう。
冒頭で書いたように、このミイラは「とくダネ!」で情報としては知っていたけれど、テレビと現物では、印象が全く違うもんね。
顔に着けたマスクが小さな穴3つだけなので、パッと見ると泥人形のようにもみえちゃうんだけど。
このミイラをCTスキャンで研究した映像が流れていたので、より理解を深めることができる。
なんとこのミイラには、背骨に沿って2本の棒が通されているため、もしかしたら立たせていたのでは、との見解もあるらしい。
「ミイラ師の技術が」などと解説で言ってるのが、おかしい!
ミイラ作りを職業にしていた人がいるのかな?(笑)
「干し首」と同様、この世界最古のミイラ鑑賞ができて、本当に来て良かったと思う。

縄文号 日本人のルーツの謎

「新グレートジャーニー」として、日本人のルーツに迫る「海上ルート」を旅するために作られた丸木舟「縄文号」が展示されている。

インドネシアのスラウェシ島から日本を目指して海を移動するプロジェクト。
なんともびっくりなことに、丸木舟は手作り!
その工程を映像で観ることができるんだけど、まずは木を伐採するための斧やトンカチのような工具を作るとことから始まるのだ。
子供の頃、砂場で磁石を使って砂鉄を集め、売りに行くと言ったら笑われた経験がある。
誰に売るつもりだったんだろうね?(笑)
このプロジェクトでは、本当に砂から砂鉄を作って、集めた砂鉄を熱で溶かして鉄にして、刀を作る要領で「鉄は熱いうちに打て」を実践しているのである。
すべて自分達の手によって作ることを、まさか砂鉄集めから始めているとは思わなかった。
10ヶ月の期間を使って丸木舟は完成!
そして3年を掛けインドネシアから石垣島までの旅を成功させるのである。
遥か昔、本当にこんな風に丸木舟に乗った人が、日本を目指して海を渡ってきたのだろうか?
ロマンを感じるねえ!

アファール猿人復元プロジェクト

プロローグで紹介されていたタンザニア・ラエトリ遺跡にある、人類最古の足跡を元に、アファール猿人を復元する。
この猿人のモデルになったのがナインティナインの岡村隆史。
あっ、確かこの話は「めざましテレビ」で見たことあるなあ!
学術的にバッチリだった、って言ってたもんね。(笑)
父親が敵を警戒しながら、子供の手を引いて一歩前を歩き、その後ろには妊娠している母親が続いている様子が復元されていた。
父親の握力は推定で、現在の成人男性の約2倍というから、驚きだね!
そのくらい力がないと、生きていかれなかった、ということなのかな。
360万年前にも、ちゃんと家族という単位で行動をして、父親が家族を守っていた姿は、頼もしく感じられた。
足跡から、ここまで作り上げるとは、お見事!

全ての展示を鑑賞し終わり、物販コーナーへ。
怪しい3人組はバラバラに、各々の興味のある品物を目指す。
足早に店内をグルッと回ったROCKHURRAH。
「やっぱり干し首、売ってないんだね」
本当に売ってると思ってたんだろうか!
ROCKHURRAH、恐るべし!(笑)
何故置いてあるのか不明だけれど、マトリョーシカ関連のグッズがいくつかあり、真剣に購入を迷っていた友人Mが、図録を観ているSNAKEPIPEに近づいてくる。
「あー、グレートジャーニーは本じゃダメなの。やっぱり映像じゃないと!」
確かに!
今回初めて「グレートジャーニー」に触れたSNAKEPIPEも、写真や文章だけでは完全に伝わっていないな、と感じていた。
DVDが出ているようなので、いつの日か関野さんの旅を追体験できたらいいな、と思っている。

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